第三百七十話
「おお、関羽!久しぶりじゃの!この度はご苦労じゃった」
「ハッ。袁術様の助勢を持ちまして無事鎮圧することができました」
「助けになったなら幸いじゃ。……で、その助勢に赴いた孫権は揚州に残ったようじゃの」
「ハッ。未だに周瑜が訪ねてきた理由も判明せず、統治も安定しないため孫権殿には揚州に留まっていただいております」
報告書に既に書かれておることではあるが、公にこういう会話をすることが求められる……本当に面倒な立場になったもんじゃのぉ。
大した内容でなければいつも通り、報告書で終わらせるところじゃが、さすがに叛乱鎮圧の功労者を迎えるのにそれでは味気なさ過ぎるのじゃ!!総出で出迎えを!!…………………という周りの意見に押されて仕方なしに総出とはいかんかったが、それなりの人数を並べたのじゃ。ちなみに人選する際には殴り合いに発展した。一体何が奴らをそこまで駆り立てておるのか……まぁその準備中は書類仕事が減り、準備のために身体を動かすことになるとはいえ、気が滅入る文字を読み続ける作業からは解放され、しかも……
「……」
「……ZZzz」
「スースー」
謁見の間で立てったままで眠っておるからの。小奴ら。
簡単に言ってしまえば書類から逃げるためにこんなことを企てたということじゃな。まぁ物騒なことを企むよりも断然いいんじゃがの。
そこまでして休みたいのかや?!
休みたいのじゃ!!
異論は認めん!!
だから目を瞑っておくのじゃ。吾、優しいじゃろ?ただし、あまりうるさいイビキだった場合は書類増々じゃぞ。
「それにしてもまた揚州に行くんじゃったか」
「ハッ。孫権殿とは気心知れた仲なので、今度は私が助けたく」
(このまま洛陽に居たら今度孫権に会った時に問答無用で斬りつけられそうだ……そもそもこちらに帰る際に見送りをしてくれたが、無意識に剣の柄を握って怖かった。無意識だから殺気もないから斬りつけられると防げるか怪しい)
「ふむ、そうか。しばしゆっくりすると良いぞ」
「ありがたき幸せ」
「もちろん褒美も期待して良いぞ」
「ハッ」
とは言うたものの、正直褒美って難しいんじゃよなぁ。
普通じゃと金や貴金属、宝石、絹などじゃが……正直吾が与えんでも関羽は全て手に入れるだけの金を持っておるんじゃよなぁ。官位や権力なども欲しいならいくらでもくれてやるが……うん、絶対いらぬじゃろ。官位は飾りじゃし、権力が欲しいならいくらでもやるが漏れなく書類がついて回るからの。そもそも権力的な意味では上から数えた方が早いぐらいじゃし。
……んー、後は……あれか、結婚相手でも探してやるべきか?
しかしのぉ。吾の人脈って実は大したこと無いし、袁家の者は……なんの罰ゲームじゃって話じゃし。官僚同士でお見合いパーティー、は時間が取れんから普通にお見合いかの?
恋姫じゃから吾がハーレムを作るというのも……なんじゃろ。全く想像がつかんな。男の娘じゃから百合百合しいのは間違いないが。