第三百七十二話
「……見栄を切って一日と言ったが、さて、どうしたものか」
ただただ姿絵を描くだけなら難しくない。それなりのものなら手本なんぞ無くとも描ける……が、特別な、と言われると難易度は爆上がりじゃの。
とりあえずアイディアが思い浮かぶまではできるだけ仕事を片付けておくのじゃ。
しかし、どんな特別仕様であれ、問題になるのは時間じゃ。全く、本当に吾は大馬鹿じゃ。一日でできる特別仕様なんてたかが知れておるというのに……。
吾が思いつく特別仕様なんてカラー、デフォルメ、マンガぐらいじゃぞ。水墨画は普通過ぎるしのぉ。となると画法ではなく、デッサンや構図を凝った方が良いか。
とりあえず、パラパラ漫画は付録としてつけておくとして……う~ん……少女漫画でも描いてみるかのぉ?今までも漫画は描いておったが、どちらかというと少年漫画寄りのものが多かったが少女漫画のような内容はあまり描いておらんかったな。
後は薄い本的なものじゃが……さすがに自分題材で薄い本的なものを人様に贈るのは抵抗があるしのぉ。いや、自分題材にするのはいいんじゃよ?吾も人様を題材にする以上は自分だけ題材にせんわけにはいかん。
しかし、贈る相手が孫権じゃと……その……のぉ?後が怖いというか、なんというか……華琳ちゃんなら、冷たい視線と共に「またこの蜂蜜お馬鹿さんは」なんて言われるだけじゃが、孫権じゃと真に受けられるのも、軽蔑されるのも辛すぎるのじゃ。それに姿絵が欲しいってお願いされて、薄い本が届いた時の心情も考えるとさすがに冗談にしても……のぉ?
よし、少女漫画と少女漫画の一枚絵でも描くかの。
ただ、吾を題材にするとなると吾はヒロインか?ヒーローか?そもそも身近なメンバーを登場させると……百合百合しいのぉ。まぁ華琳ちゃんの例があるからそれなりに需要はあるじゃろう。
それともいっそ学園ラブコメでも描いてみるか。主人公は吾か孫権か……ヒロインも吾か孫権かのどちらかにした方が……いや、でもそれじゃと真に受けられた時に困るのは同じでは……しかし……くっ、生徒会長役が関羽で悪役令嬢は華琳ちゃんというのはすぐ決まったというのに!あ、ちなみに悪役令嬢(小ボス)は袁紹ざまぁで、いつも本物悪役令嬢華琳ちゃんにコテンパンにされるやられ愛されキャラ的な立ち位置じゃ。いっそ悪役令嬢悪役令嬢というカップリングもありじゃろうか?昔はそんな感じで仲が良かったしの。その仲を裂こうとする脳筋系悪役令嬢春ちゃん、毒舌系悪役令嬢荀彧のへっぽこコンビ……あれ?悪役令嬢ばかりではないか。あ、秋ちゃんは副会長で関羽共々問題児ばかりで苦労する役柄じゃな。
……と考えると吾はヒロインでもヒーローでもなく、やはり悪役令嬢ではないか?七乃と紀霊と魯粛を取り巻きに……でも悪役令嬢ばかりではのぉ。
というか、これ、悪役令嬢ではなくてただの問題児の集まり?不良校の間違いではないか?
などと考えつつ、仕事の合間にプロットをカキカキ。
「お嬢様、なんだか楽しそうですねー」
「うむ。やはり絵を描くのは気晴らしには良いの」
「でも関羽さんに頼まれたのは姿絵ですけど、漫画でいいんですか?」
「……ま、まぁ孫権は吾が描いたものならなんでも喜んでくれるじゃろ」(滝汗)
「それはそうでしょうね~」
ちょっと路線がズレてしもうたか。