第三百七十八話
「楽進楽進」
「はい。袁術様」
「蜂蜜を持ってきてたも」
「はい。わかりまし――」
「違うのじゃ!もう一回!」
「は、はいっ!」
では、改めて――
「楽進楽進」
「はい。袁術様」
「肩が凝ったので揉んでほしいのじゃ」
「はい。わかり――」
「違うと言っておろう!」
「す、すみません!」
全く。
「楽進楽進」
「はい。袁術様」
「この書類をやっておいてたも」
「え、あ……う……わかりま――」
「そうじゃないと言うておるじゃろ!」
これは先が思いやられるのぉ。
「お嬢様~。楽進さん相手に何やっているんですか~?八つ当たりですか?」
「む、失礼じゃな。吾がそのような理不尽をするわけがなかろう」
「どこからどうみても理不尽なことを言っているようにしか見えませんよ?そんなお嬢様も可愛いですけどね~」
といつもどおりの台詞を聞いた瞬間に楽進へと視線を送る。
それを感じ取った楽進は一歩踏み出し――
「私は今特訓中――」
「そうじゃないと言っておろうが!」
全く、せっかく吾が直々に指導しておるというのに学ばんやつじゃなのぉ。
「特訓、ですか?」
「うむ。楽進を幹部に引き上げたのは主な要因としてはツッコミ役としてじゃったろ?にも関わらず楽進はその役目を果たせておらん」
「楽進さんは関羽さんとは違って受動的な真面目さんですからねぇ」
「うむ、だからこそツッコミを入れる特訓しておったんじゃ!」
「確かに止める役目の楽進さんがそれでは困りますね」
「そうじゃろそうじゃろ」
「あの~……」
「ん?なんじゃ?」
「そもそももっとツッコミも必要ないぐらい真面目にするというのは――」
「「無理じゃな(ですね)」」
「く、食い気味に答えなくても……」
……あ、ようやく上手くツッコミができたの!これからも修練するんじゃぞ。
(うぅ、ある意味書類よりも難しい仕事だ……胃が痛い……帰りに胃薬を貰っておこう。何より――)
「その調子で頑張るんじゃぞ!もちろん帝も例外ではないぞ?」
「やっぱり?!」
(いや、でも陛下ならおかしなことを口走ることはない……はず……ですよね?信じてます。陛下)
ん?なにやら楽進が祈るような表情になったが……なぜじゃ?
「そういえば帝が大食い大会を主催したい……しかも参加したいとか言っておったな」
「陛下あぁあ?!」
なにやらムンクの叫びのようになっておるがどうしたんじゃろ?
しかし、帝が主催するのが大食い大会とは……いいんじゃろうか?まぁ長い中国の歴史(現在はまだそんなに長くないけども)の中にそんな帝がおっても良いか。まぁ漢王朝はそんなに長く続かぬのじゃがな!
「現実的なのは匿名で参加することじゃな」
「あの……お止めしないのですか?」
「全ては帝の御心のままに、というやつじゃな!」
「と大食い大会の中に蜂蜜を入れようとしているお嬢様でした」
「七乃!シーッなのじゃ!」