第六十二話
華琳ちゃんの戦いに関しての詳細が入ってきた。
妙に被害が少なかったのは……華琳ちゃんが関羽の前で気合が入っていたことと春ちゃんの嫉妬パゥワーとその副官によるものみたいじゃ……個人の才覚でこれほどの戦果を上げられては吾達の将来が心配なんじゃが。
春ちゃんの副官……ガンダム○ンマーを振り回す許緒じゃ。
こちらは原作通り華琳ちゃんに仕えたみたいじゃの。
もしかしたら黄巾賊を狩っておった討伐軍が拾うとちょっとだけ期待したが……まぁもし出会ったとしても地元を離れるのに抵抗があった可能性もあるがの。許緒と典韋はどこか庶民的じゃからなぁ。
典韋の存在はまだ確認できておらんが許緒がおる限りは華琳ちゃんの下に仕えることになるじゃろう。
うーむ、羨ましいのぉ。
吾らには武に長ける将は紀霊と楽進、周泰ぐらいしかおらん。
文聘も呉懿も李厳も一応はそこそこの武はあるが、どれも統率者としての将じゃ。
客将ならばおるんじゃが……なんていう歪さじゃ。
と言うかその気になって客将達がクーデターを起こせば乗っ取られそうじゃな。
孫策、周瑜、黄蓋、甘寧、関羽、文官じゃが程立、郭嘉……うん、間違いなくクーデターは防げんな。
「というわけで甘寧さんや、本格的に吾に仕える気はないか?」
「……」
瞳を閉じて動かぬ甘寧。
迷っておるんじゃろうか?ここで断れば路頭に迷うかもしれぬとか他の者に害意を向けられるかもとか。
さすがにそんなみみっちいことはせんぞ。さすがに吾の誘いを断ってすぐに孫家に仕えるなど空気を読まん行動をされればちょっとムッとするがそれでも何かするつもりはない……まぁ周りにどういう目で見られるのかまでは責任とれんがの。
しかし、ここで給金の話をするのは野暮じゃしなぁ。いくら金の力が強いというても万能ではないからのぉ。
さて、何か惹きつけるものはなかろうか。
「一つ、確認したいことがあります」
「なんじゃ、吾が話せることならなんでも良いぞ」
「孫権様が貴女に仕えていると聞いた」
「うむ、その通りじゃな。魯粛や七乃と共に頑張ってくれておるぞ」
なぜここで孫権の話?やはり原作の影響じゃろうか。
まぁ孫権と甘寧は生真面目な者同士じゃから気が合っても不思議じゃないがな……もっとも同族嫌悪という可能性もあるがな。
「私は孫権様の下に付きたい」
「ふむ……んー、それはどちらの意味じゃ?孫権の家臣となりたいのか、あくまで吾の家臣となった上で孫権の下で働きたいのか」
後者なら別に構わぬが……前者なら少々困ったことになる。
甘寧が孫権に仕えるとなれば生真面目な彼女じゃ、精一杯仕えようとするじゃろう。しかし、それは孫権の首を締める可能性があるのじゃ。
生真面目というのは忠誠心にも現れるがその忠誠心はいとも簡単に暴走するもので……隠密としても優れる甘寧が暴走して万が一吾の秘密を知ってしまう恐れがある。
これが吾の家臣としておるならこちらの裁量でどうとでもできるが、孫権の家臣となった場合、発覚すると孫権の責任となるし、もしかすると孫策達にまで情報が漏れる可能性もある。
もっとも孫策達に知られたからといって何がどうという問題ではないが、秘密を知る者は少ないほどいいに決まっておるからの。
「できれば孫権様に仕えたいと」
ですよねー。
でなければこんな話はせんな。
しかし現実に問題が他にもあるんじゃが、解決しておるんじゃろうか?
「この話は孫権には?」
「まだです。袁術様に伝えてからが筋かと思い」
「ならば知らんで当然じゃが、孫権に甘寧とその郎党を抱えるほど余裕はないと思うぞ」
南陽で五番目の権力の持ち主である孫権はそれ相応の給金が支払われておる。
本来なら甘寧郎党を抱えるぐらい問題にならんほどではあるのじゃが、孫堅が作った借金の支払いに加えて、孫家への上納金(こんなものがあったのを最近知った)、孫家が抱える私兵の維持費負担、孫策や黄蓋が出す経費という名の酒代の立て替えなどなどがあって結構余裕が無い。
まぁ、さすがにそこまでの事情は話さぬがな。
「それは後で本人に聞くと良いぞ。さすがに吾から話す内容ではないからの。吾のおすすめはとりあえず吾に仕えて孫権の下に配属、孫権に余裕が出てきたら仕えればいいと思うが……まぁ、そういうこともできるということは覚えておくと良いぞ」
「……わかりました」
むぅ、結局手駒増えず、か。
いざとなったら甘寧の郎党は吾に、甘寧自身は孫権に、なんて方法もあるからのぉ。
これならどちらにも角が立たぬ……が、これが一番吾が損するパターンじゃな。甘寧の郎党などという忠誠がこちらに向かぬ兵を手に入れても使いづらいだけじゃろうからな。
唯一得をするところは水兵の調練に使えるぐらいじゃが、吾の水軍も結構育ってきていて絶対必要というわけではない。
ハァ、もっと有力な武将を探さねばならんな。
やっと袁紹ざまぁが動き出したようじゃ。
六万の大軍で討伐軍や華琳ちゃんを追いかけるように進撃、道中におった黄巾賊をなぎ倒しながら最短ルートで向かっておる。
さすがに討伐軍や華琳ちゃん、そしてもうすぐ朱儁ばあちゃんと皇甫嵩爺ちゃんが合流するとあっては無視できなくなったようじゃ。
そうそう、華琳ちゃんの下に劉備が現れたようじゃ。
劉備は趙雲、張飛、諸葛亮、鳳統を率いておるそうじゃ……ほぼ原作のままじゃが、趙雲は公孫賛に仕えなかったらしい。
……普通の人、カワイソス。さすがに可哀想じゃから蜂蜜と幾ばくかの資金を贈っておくことにする。決して将来の袁紹ざまぁが掛ける迷惑に対しての慰謝料ではないぞ。