第八十五話
プランテーションの話をすると魯粛と七乃が乗り気になって本当にすることになった。
ただ、裏商会でやるには後ろ盾がなく、働く奴隷達の暴動や逃亡を抑止できないということで表商会でやることにしたのじゃ。
南陽は肥沃な地であるが開拓するのに手間が掛かり過ぎて食糧難を解決するには時間がかかり過ぎるのでこのような方法にしたのじゃが、魯粛は更に外交と経済を絡めることができるという……言われてみればプランテーションにはそういう問題があったのぉ。
育てる作物の値崩れで経済崩壊、なんて言う話があったな。もっともしばらくは食糧難が解決しないじゃろうからこちらは意味がなかろうがな。
それに大規模な自然破壊をしてしまうという難点もあるが、それは元々農地であった部分をまとめて
一番の問題は他国の企業が大きな利権を握ることじゃな。まぁこれは吾等が利権を握る側であるから相手が気づかなければ問題ないので推し進めるとしよう。
もし相手が耐え切れずプランテーションに手を出すならこちらは大儀を得れるしのぉ。
ということでプランテーション(他国企業による農業侵略)は実行することとなったのじゃ。
まず最初のターゲットは……豫州じゃ!
袁家本家のお膝元である豫州を選んだ理由はまずはどの程度の成果を得られるかテストするためじゃ。
まぁ豫州と一言で言うても結構広いからの。袁家の力が影響せん場所もあるので試すにはちょうどいいんじゃよ。
それに袁家は今、吾と袁紹ぁ、どちらを当主にするかで分裂しかけておるとも聞く。
一郡太守に過ぎぬが人口は州とほぼ同等で金はあるし中央の繋がりはあるけど子供のように我が儘な吾と基盤こそまだまだじゃが冀州という恵まれた地と権力を手に入れた天然お嬢様袁紹ざまぁ、確かにどちらを推すかは難しいところじゃな。
まだまだ袁隗ばあちゃんが元気じゃからしばらくは表面化することはないじゃろうが反董卓連合あたりで決まるじゃろうな。
反董卓連合の中心は中央が崩れない方が有利な吾ではなく、十中八九嫉妬深い袁紹ざまぁじゃから恐らく袁紹ざまぁに大きく意見が偏るじゃろう。
そうなると豫州のプランテーションは大いに役に立つことじゃろうなぁ。
「河川港を整備したんじゃし養殖場を……あ、駄目じゃ。絶対管理せずに食べられてしまうぞ」
それに養殖ともなると餌が必要になるからのぉ。
南陽以外の郡では魚の餌とそれほど変わらない物を口にしているのが現状じゃから川魚の安定供給以外に種の保存ぐらいしかメリットがないか。
儲かるとは思うが……余裕が無いからのぉ。
長安におる孫権からの報告では長安の物価の値上がりは乱終息宣言にもかかわらず緩やかに上昇傾向で、涼州では飢餓の兆候が見られると報告がある。
影達に調べさせたんじゃが旧都長安だけあって遷都されても十分栄えておるのじゃが、そんなばかりに商人達が協調して値に釣り上げておるようじゃ。
長安で値が上がれば涼州も否が応でも影響を受ける……いい加減羌族に手を焼いておるというのに可哀想なことじゃ。
んー……食料を送って名声を得るのも一つの手じゃが……まぁあちらには主人公がおるんじゃからどうにかなるじゃろ、放置で良いか。
劉備達が江夏に到着したようじゃ。
……それにしても……南陽を出発した時には三千を超えぬ程度の軍であったのに、江夏に着く頃には一万近くに膨れ上がっておるとは……まさにチートじゃな。
まぁ、吾も方向性が違うチートじゃがな。吾の場合じゃと兵士ではなく、金じゃがの。
しかも、史実同様馬家の白眉と登山家を臣下に加えたようじゃな……劉表のじじいに配慮する気ゼロじゃな。
……吾も声掛けたのに……。
ただ……もう本当に笑ってしまうのじゃが……なんか黄皓まで拾ってるってどういうことなのじゃ。草不可避、奸臣キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
これは蜀滅亡フラグじゃろ!……まぁ、黄皓は女じゃから宦官にはなれんし、そもそも年代が違うのに登場しておる段階で史実なんてあてにできんが……やはり史実を知る身としてはどうしても気になってしまうのじゃ。
いやー、こういうこともあるんじゃな。
これで劉禅が出てきたら最恐タッグじゃ……だが、残念なのことに劉禅は今のところ確認できておらん。やはり劉備の子供がそうなるのじゃろうか。
それはともかく、劉備達はこれから江夏を間借りして南荊州四郡を解放することとなる。
孫権達から借りた荊州のように実効支配されそうな予感がするのは吾だけじゃろうか?……いや、考え過ぎか、今の劉備は徐州によっておらんから本当に人材不足なんじゃよ。なにせ劉備の財布こと糜竺もおらんぐらいじゃからの。
まぁその代わりに糜芳もおらんのじゃから五分五分か?それに黄皓がおるから大丈夫じゃろ。
なんて思っておると急使が来たのじゃ。
一体なんぞや?と届けられた手紙を見ると……
「……いや、さすがに早過ぎるじゃろ」
そこに書かれておったのは袁紹ざまぁによる反董卓の檄文……ではなく、劉備達が零陵を制圧したという知らせじゃ。
一体どうなっておるんじゃ……と思ったらどうやら蒋苑(機種依存文字は面倒なので当て字)が話をまとめて劉備に降伏したようじゃ。
それにしたって零陵ってどうなのじゃ。
江夏からじゃと長沙を越えた先ではないか、しかも両脇を武陵と桂陽に挟まれておる……つまり三方共敵に囲まれて……いや、ちょっと待つのじゃ。そんな無謀なことをするほど蒋苑が無能とは思えん。
さては、既に長沙も調略済みか。
もしかすると他の郡も降伏とは行かずとも内応ぐらいは取り付けておるかもしれんな。元々四郡を支配しておった区星は賊じゃし、更に黄巾賊が混ざってカオスな状況となっておる。
それを快く思っておる者は少なかろう。今までは劉表のじじいではどうしようもないと諦めておったが劉備という新たな光を見つけて活気を取り戻したのじゃろう。
長沙と零陵を得ることができたなら敵を分断することができるから挟まれて攻撃されることよるデメリットよりメリットは大きかろうな。
それにしても……劉備か、わかってはおったが、これほどの活躍をされると面倒じゃのぉ。
そのうち劉表のじじいを炊きつけてみるか……と劉表のじじいも劉備も同じようなことを考えておるじゃろうなぁ。