第九十二話
さて、十常侍からの依頼を拒否るにはまだまだ時期ではないので即行動じゃ。
まずは袁家縁の者達の情報を集めることから始め……ようと思ったら既に手元に資料があったりする。
「最近、ご実家の様子が怪しかったので既に調べておりました」
とは影のリーダー楽就の言葉じゃ。グッジョブ!
というわけで有能で抹殺しても問題ない者、有能で抹殺すると問題がありそうな者、騒ぐだけの無能な者などの一覧を作成する。
抹殺しても問題ない者は引き抜きに失敗すれば消す、有能で抹殺すると問題になる者は金や女で転がす、それでも駄目ならば周りの者を消していく。
騒ぐだけの無能は金さえ与えておけば黙るじゃろう。
この一覧を見せて袁隗ばあちゃんに圧力を掛ける。袁隗ばあちゃんが動かねばこうなるぞ、とな。
政争が疲れたなどと言われても引退もしておらんのにこちらが困るのじゃ。
当主の座を吾か袁紹ざまぁに譲ったなら、まだしものぉ。
中央で動いておる者には皇甫嵩爺ちゃんと朱儁ばあちゃんに押さえてもらうとするか、あの二人は何進派というわけではないしの。それでも収まらねば、どうなるかは身を持って体験することになるじゃろうな。
「ふっふっふ、孫権もこういうことは経験しておく方がいいじゃろう。最上位を目指す者ならば、な」
「……」
む?反応がない……まだ葛藤しておる……のか?
フッ、やはりまだまだじゃな。民を戦争で殺しあわせることは是とするのに暗殺や謀殺は否などとは……わかっておらんのぉ。
戦場で、戦争で人が死ぬのには意味は無い、なぜならそれが当たり前だからじゃ。むしろ平和な時に人が死ぬのには意味がある。
平和な時に人が死ねば犯罪となり、戦争への引き金になり……そして尊き平和を延長することができることも理解せねばならんのじゃ。
話し合いで全てが解決するならば戦争なんぞ起きん。理想としてはもちろん平和な日本で生きておった吾もこのようなことをせずに済めば良いとは思うが理想でしかない。
もちろん無意味に人を殺すことは犯罪じゃぞ?……うん、きっとたぶん無駄に殺してはおらんぞ?……すまん、嘘をついた。
あまりにも無能と無責任と犯罪者が多過ぎて憂さ晴らしに何人……何十……何百も殺したのぉ。せめてもの手向けと蜂蜜を贈ったが……まぁ何の意味も救いもないがな。
「孫権よ。ああは言ったが辛かったらやめても良いのじゃぞ。こういうことは誰かに任せても良いからの。吾なら魯粛や七乃、おぬしなら……まだ吾や孫策の配下となっておるが甘寧や周瑜などが担うことができるからの」
この手のことを……暗部を他人に任せるとその者が怖くなったり、野心を持つと下克上されたり、自分の大事なものまで勝手に抹殺されたりしても文句言えんからあまりお勧めせんぞ。
銀河な英雄で伝説的なのに出てくる義眼とかだと次々身内が殺されていきそうじゃからな。ただ、義眼は外面を繕っておらんからわかりやすいが現実は猫を被っておるから大変じゃ。
「やります」
……煽ったような形になってしもうたが大丈夫じゃろうか。
もう少し自分で悩ませておいた方ががいいのでは……今更言っても仕方ないか。
「ハァアアアア……温泉は気持ちいいのじゃ〜」
ちょっとダーク美羽ちゃんで疲れたから今はお風呂に入っておるのじゃ。
ちなみに温泉と言っておるが、温泉地に来ておるわけではなく、吾専用の風呂じゃ。ただし、お湯はちゃんと温泉じゃよ?もっとも源泉から引くことができぬから人の手で運んできたものを沸かしたものじゃがな。
人手が必要であるため、吾ですら偶にしか入ることができぬのじゃよ。
「この年で肩こりに悩まされるとはのぉ……適度に運動していても仕事量が多過ぎてどうにもにゃわわわわ……」
いかん、ふやけるのじゃ。
ああ、難しいこと考えたくない……と言うか考えない。
残念なのは温泉じゃと蜂蜜の風味を壊してしまうことじゃな。蜂蜜の味が損なわれるのは許せんから我慢せねばならんのじゃよ。本当に残念じゃ。
この後マッサージも頼むとするか……言っておくがエロい意味はないぞ。普通のマッサージじゃからな?勘違いするでないぞ。
「せっかく美人さんが周りにおるのに混浴ができんのが残念じゃなー。その理由が相手が拒否するからではなく、吾の貞操が危ないからという理由なのがなんとも言えんな」
まぁ、男の娘のサービスシーンでやられてしまうのは仕方ないのじゃ。現代でも一定の需要があるくらいじゃからのどこのか天下取った人物と同姓同名みたいに、の。
そういえば劉備達はとうとう零陵まで制圧してしもうたようじゃ……どんだけー。
劉表のじじいの面目丸つぶれじゃの。
しかも、七割ほどが降伏してそれを吸収したことによって勢力拡大に成功したようじゃ……まぁこれからが本当の戦いじゃがな。
ただ、いくつか気になることもあるのじゃ。
原作知識から考えると諸葛亮や鳳統が主導している……と思うじゃろ?どうも攻略に関しては蒋苑と馬良、馬謖が主導しておったようじゃ。
思っていた流れと少し違うのぉ。てっきり諸葛亮達頼りの勢力となると思っておったんじゃがな。
こうなってくると一番怖いのは華琳ちゃんじゃな。
劉備達はいくら頑張っても名前のせいで漢王朝を引き継ぐしか手がないため、攻めようと思えばどうとでもなるし、所詮は田舎者の集まりじゃ。
それに比べ、三国志の実質勝者である華琳ちゃんが史実通りの人材を集めたりすると大変なことになるのじゃ。
まぁ、既に吾が一部引き抜いておるから多少はマシじゃろうが、郭嘉も程昱も結局は華琳ちゃんのところに行くことが確定しておるしのぉ。
もっと人材集めに力を入れねばならぬか……しかし、それができるなら既にしておるわ!