第五話
「赤いザクを確認、赤い彗星ことシャア・アズナブルの機体と思われます…多分ジョニー・ライデンではないと思いますが…」
カラーリングが似過ぎて困るよなその二人。
「そして白いモビルスーツはRX−78ガンダムと出ました。私達とは親戚になりますね」
俺達ブルーディスティニーの型番RX-79BD、RX-79Gは陸戦型ガンダムとなる。つまり後継機…じゃなくて不良品を集めたリサイクルモビルスーツだけどな。
チタンなんて難しい金属使ってたから不良部品がいっぱいできたんだろうね〜。
ただ俺達は最初から宇宙でも動けるように設計されているから陸戦型ガンダムとはちと違う気がするけど。
「なぜあの方達はモビルスーツで空中戦なんて阿呆な事してるんでしょう」
「さあ?ガンダムに限って言えばホワイトベースからガンキャノンなりガンタンクなりで砲撃すればいいのにな」
しっかしなんでシャアはパラシュートを背負ってない。
あれじゃ着地の時にバラバラになるぞ。
あの重さをブースターだけで降下速度を和らげるとなると推進剤とか物凄い量がいる…ああ、でも空中だと推進剤はあまり使わ——ない事もないか攻撃躱すのに。
俺達が手を下さなくても死ぬんじゃないか。
ま、何にしても様子見だ…もし生きているようならシャアを始末する——だからEXAMシステムは黙れ!
『……』
マジで静かになったし、実は話がわかるシステムなのかもしれん…話がわかるシステムってなんだよ。あ、マリオンちゃんもそうだったか、こりゃ失敬。
しかし前回は黙らなかったのは…ああ、俺が真剣に取り組んでなかったからか。
「おお、ブルーニーさんやりましたね!もうちょっとで私は…」
え、マリオンちゃん?何する気だったのかな?おじさん少し気になるけど聞きたいような聞きたくないような。
ヤンデレはやめてね。
俺は普通のヒロインがいい。でもチョロインもあまり好きじゃない、あれって絶対洗脳かなんかだろ。
「赤ザクがもうすぐ降りてきますよ」
おっと余計なこと考えてる場合じゃないな。なんか誤魔化されてる気がするけど今はそれどころじゃない。
着地するかしないかぐらいのタイミングでビームライフルで風穴を開けてやる。
「………いまだ!」
ちょ、マジで躱したぞおい。でも腕はもげたけどな。
それでもショックだわー、だって真後ろから撃ったんだぜ?さすがレベルが若干低いとはいってもニュータイプってか。
いやだねーニュータイプって…ただしマリオンちゃんを除く。
「なにぃ?!」
おや、声が、遅れて、聞こえ…じゃなくて聞こえてくるな。
傍受能力も上がってるっぽいな。いや上がってるんじゃないか、最初は無かったんだから追加されたのか…いったい俺は何処へ向かうのだろう。
今から向かうのはシャアザクに、だけどね?
「新手のモビルスーツだとぉ——しかもあの白いやつと同型か?!」
おしい、ちょっと違う。大体はあってるけど。
シャアさんは斧を装備した!
いや、マシンガン持ってた方の腕がもげたからだけどね。
せっかくなんでエース級の腕前というのを経験しておくのも一興。
「飛燕連脚!」
飛び回し蹴りから後ろ回し蹴りからの〜…オーバーヘッドキック!
「メインカメラが?!」
結局他の蹴りは躱されて最後のオーバーヘッドキックしか当たってないとか凹むわー。
相手操縦してんのによく避けれんな。俺だからこんな変則的なネタ技をガチ技でやれてんのに、それを躱されるのはガチ凹みだわー。
「くそ、何なのだ。この化物は!これも連邦が創りだしたと言うのか?!」
半分正解で半分外れ、俺はハイブリットだ。
ソフトはジオン製、体は連邦製。
たった一つの命を奪う、見た目は連邦!頭脳はジオン!その名は蒼い死神ブルーニーさんですよっと。
あ、コラ、くだらんこと考えてる間に逃げるな!
腰にタックルをかまして捕まえるが…妙だ…抵抗が…まさか?!
「コクピット開いてる…逃げられた?!さすがに人間を探すほどセンサーは便利じゃないし…もう無理か」
戦闘自体はスペックの差で楽勝だったけど…何処か釈然としない。
「食料が手に入ったのでいいじゃないですか、幸いEXAMシステムも静かですし」
とりあえず食材を運んで隠れて食うか、あまり目撃者増やしたら厄介なことになりそうだし。
追撃もなく無事食材の運搬に成功した。
重かったは重かったけど宇宙世紀史上もっとも有名であろうシャア・アズナブル。
そしてその代表的なシンボルであるシャア専用ザクを食せるのだからこれぐらいの苦労はないにも等しい。
「では頂くとしよう」
「専用機ってどんな味なんでしょう。ワクワクします」
初めての専用機がシャア専用ザク…感慨深いなー。
では一口。
「………か、辛?!めっちゃ辛い?!これやべぇ麻婆豆腐だ。痛い痛い痛い」
「なんでずがごれ、毒でずが?毒でずよね?!」
ぐぉ、マジでキツイ…何がキツイってこの体、水が飲めないんだよ!!金属しか食べれないの!
口直しに食べるものもないぃ——痛い痛い!!辛子だけの辛さじゃなくて他のスパイスも入ってて味わい深いのは分かるけど辛さが全面に出過ぎ!
「しかし記念なので全部食べるのでマリオンちゃん、覚悟をよろしく」
「えええええぇぇぇぇぇぇ」
きっとこの麻婆豆腐は麻婆神父の差金だと思う。
ゆっくり食べるから地獄なのだ一気に食べれば!!
「やっぱり地獄だった!」
「ブルーニーさんのアホー」
マリオンちゃんにアホ言われた…ちょっと首吊ってくる。
首吊って死ねるかどうかは疑問だが。
なんとかマリオンちゃんに文句言われながらも完食、体に良さそうな味ではあったけどモビルスーツな俺達に効果があるのかどうか。
それにしてもシャアを殺し損ねるとか油断してたな…ネタ技なんか使わず普通に戦えばよかった。
これじゃあ戦争は原作通り泥沼に……あれ?俺達ってさ、戦争してモビルスーツ生産、廃棄されないと生活できないんだから泥沼な戦争の方がいいじゃないか?!
何やってんの俺、シャアはネオ・ジオン起こすんだから食料供給にいくらか手助けしてくれるはずだろ。
もしかしてEXAMシステムの影響?いや、ただ単にストレスのせいかな。決してマリオンちゃんがNTRれる妄想して殺そうとした訳じゃないんだからね!
これからは原作に関わらないでおこうと思う。
でもせっかくなんで重要ではない部分には介入しようと思っている。
08小隊とかポケ戦、0083などが狙い目かな。これらだったら一人で全滅させても戦争が起きないという自体は免れるだろう。
ノリスとかガトーなんかとは一度戦っておきたいなー。
逆シャアなんかはアムロの世代最後の戦いなんで遠慮なしに参戦するつもり、ただ、この様子だとサザビーは食べない方がいいかもしれん。怖いもの見たさ的に食べてみたい気もするけどな。
「もうそろそろ許してくれよマリオンちゃん」
「……」
さっきからガン無視されてます。
ガンダム無視って新しいな。
じゃなくてマリオンちゃんが不機嫌になっちゃってるんだがどうしたらいいだろう。
これが普通の人間ならプレゼント攻勢でなんとか濁せそうだけどあいにく俺達は普通の体ではなく一心同体状態、合体!はしてないけど。
マリオンちゃんの機嫌は割りと命に関わることになるのをついさっき知った。
なんというか…感覚が鈍るんだ。
ニュータイプ的直感が鈍るだけなら問題ないんだけど明らかに手足の動作が鈍くなってる。
どこかのシンクロ率と似たものがあるみたいだ。
これって本当に仲違いしたら動けなくなるんじゃね。
その時はその時か。
「マリオンちゃんが頼りなんだよーマリオンちゃんがいないと僕マダオになっちゃう」
「ブルーニーさん…僕ってキモいです。それとマダオって何ですか?間男の親戚?」
グフッ…痛い、心が痛いです。
マリオンちゃんが反抗期に入ったようです。
そして間男とは関係な——いこともないか?間男もマダオの一種のような…
「マダオ、まるでダメなおっさんの略だな」
「じゃあマダオじゃなくマダモの間違いです」
「まるでダメなモビルスーツの略って言いたいのか?」
「はい」
「言っとくけどその言い方だとマリオンちゃんも含まれるからな」
「あ」
やっぱりマリオンちゃんは若干天然だと思う。
マリオンちゃんの機嫌を何とか直して今後の作戦会議。
「諸事情でシアトル行きは中止としました」
「諸事情が何かはツッコミませんけど、次は何処へ向かうんですか」
「激戦区で有名な東南アジアに向かいます」
「そういう意味ではアフリカも両軍が睨み合ってるらしいので食材には困らないと思います」
「確かに…ただし両方海を渡らないといけないというのが難点だな」
渡海はどうしても燃料が必要だ。
陸地で徒歩で移動する分には謎ではあるが燃料消費はない、もしくは極々小さいものらしい。
海底を歩いて行くという手段も無いではないけど多分何十日も掛かって嬉しくない。ヘタしたら一年戦争が終わるかも。
原作組に影響を与えにくい地域を選ぶとヨーロッパのオデッサ、ベルファスト以外とアジア、ユーラシア、オーストラリア、アフリカかな。
ぶっちゃけうろ覚えです。
もう面倒だから引き返してジャブロー単機制圧とかして伝説残してみるか?それから竹中半兵衛のマネして返してみるとか…誰も理解されないだろうなぁ。
「現在の燃料500%、思ったより食材が多くて助かった。で、この燃料でも長い間の渡海は厳しい」
「そうですね」
「だがしない訳にもいかない…それでここ」
モニターに移されている世界地図上のアラスカと東シベリアの間にある海を叩く。
「ベーリング海峡を渡ろうと思う」
「データでは距離86km、海流とか無視すれば一番渡りやすそうですね」
何とか行けると思うんだけど…問題は残量がどれぐらいになるか、補給はできるのか、不安はいっぱいだ。
「提案なんですがキャルフォルニアベースで補給しませんか」
「それって赤字になりそうなんだけど…」
「私に策ありです」
マリオンちゃんはやっぱり転生者じゃないのか?