第七話
「はぁ〜るばるぅ来たぜハワイ諸島!」
「なんだか字余りですね」
気にすんな。俺は気にしない。
ハイドロポンプ…じゃなかったハイドロジェットすげー便利。
燃料が10%ぐらいしか消費してないってどんだけ〜。
この調子なら我が故郷日本に寄れるな。
そして東南アジアも遠くないな。…で08小隊の舞台になった東南アジアって何処よ。
こういう時は困った時のマリオンちゃん。
「マリオンちゃんマリオンちゃん、東南アジアの一番やばい場所って何処かわかる?」
「それはベトナム、インドネシア、パプアニューギニア、タイ、カンボジアでしょうか。特にインドネシアとパプアニューギニアは資源が豊富で相当激しい戦闘が繰り広げられているそうです」
「そういえば日本の状況はどうなってる。あまり話に聞かないけど」
「日本は大昔から生産力こそそこそこありますが資源がありませんし、重要視されず、ジオンに占領されたようなされてないような…平和ボケといいますか、戦争しているのに兵器の生産だけは断固としてしないらしく家電製品ばかり作ってるとかなんとか、しかも軍の駐屯するなら作らないとかなんとか」
なんかベクトル違いに日本がパワーアップしとる。
平和ボケなのは変わらないにしても海外の支配者に屈しないとか日本人らしくないなー。
まぁあくまで俺のイメージだけども。
「あ、ただザクは一部の人種には熱狂的な支持者がいるらしく、噂ではザクが貰えるなら兵器の生産も吝かではない!むしろザクを上回る性能を持つモビルスーツを作ってみせる!とか言ってたらしいですけど」
アニオタ自重しろ。
日本はオタクに占領されてしまったのだろうか、俺達は見つかったら分解されんじゃね?
いや、ひょっとしたらご神体になれるかも?ちょっと反応を見てみたいような見たくないような。
何にしても日本人らしいなぁ、と思ったのは俺もそっち側だからだろう。
「そんな日本に色々と危険を感じたらしく、軍も置かずに引き上げたらしです」
日本人は魔改造大好きだから多分耕作用モビルスーツとかお掃除用モビルスーツとかアプサラスを先に作ったりとかやりそうだからなぁ。
多分パトレイバーみたいなのは間違いなく出来ると思う。
「最近は一部企業がモビルスーツの開発を始めてるって話を聞きます」
ああ、そういえばムラサメ研究所は名前からして日本人が関わってそうだ。ということはサイコガンダムとかは日本人の魔改造の結果…ああ、ある意味納得。
もしかしてムラサメ研究所の強化人間って連邦製っぽくなってるけどもしかしてジオン製?だから強化人間なんて研究してるのかもしれんな。
連邦主導で強化人間なんて研究したらさすがに国民から一斉に叩かれるだろ。宗教団体とかもうるさそうだし。
「それにしても海底は食材の宝庫だったんだな。知らなかったぜ」
「私達だけですけどね。食材になるのは」
海底が食材と言う名のゴミ処理場になってます。
ティターンズ総帥のジャミトフが目指した地球環境再生って実は間違ってないよな。
現代でも相当だったけどこんな醜い海は嫌になるわ。
ただ利用する仲間を間違ってただけで…特にバスク。
まぁこっそりだけど俺達も手伝って進ぜよう。
「潜水艦は鯨の肉だとわかったけど…さすがに小物(自転車や自動車、空き缶など)なんかは纏めて食べるせいで味なんて分からんな」
「複雑怪奇な味だね。あまり食べ続けたくない」
こう…味なんて考えず色々な野菜や果物を入れたジュースみたいだ。
一口毎に甘かったりしょっぱかったり辛かったり苦かったりラジバンダリ…わかる人いるか?このネタ、まぁ分からなかったらググれ。
「これのおかげで燃料は増え続けてるんだから感謝しないとな。味はともかく」
「そうですね。ゴミバンザイ!」
「いや、それは違うからな」
無いなら無い方がいいに決まってる。
俺達が困ろうとも…いや、やっぱりこのままでもいい気がしてきた。自分本位でサーセン。
「おかげで燃料1900%になった。これで宇宙に上がれるかはまた別問題だけど何回かは戦闘しても大丈夫な感じだな」
「東南アジアでどれほど戦闘するか分かりませんから多ければ多いほどいいですね」
燃料切れになったら完全に動けなくなる可能性もあるからなぁ。最悪連載終了のお知らせだ。
「それにしてもパラシュートを求めて地球を一周するハメになるとは」
「人の協力者がいれば簡単なんですけどね」
それは難しいだろうな。
一応外部スピーカーから俺の声が発せられる事は確認したし、無線を通じて会話もできる事は確認している。
しかしどんなに頑張っても俺達は兵器なのだ。直接会って話すことができない人間なんて誰が信用する…ニートじゃないぞ。
そしてなにより何より対価がない。
「……と思ってたんだけど……これ、どうしようか」
「どうしましょうねー」
それは偶々見かけた木造船が切っ掛けだった。
ちょっと興味を惹かれて触ったらバラバラになったんで若干慌てたんだけどその後に出てきたもので更に驚いた。
金塊が現われりゃそら慌てるだろ。
あまり大きな船ではなかったから量的には大したものではない。ないんだけど…今の俺達には必要性を感じなくとも元人間として蒐集したくなるのは仕方ないだろ?
「嫌な考えではあるが、これがあればある程度信用が買えるか」
「それには賛成です。お金は大事ですよ。したいことも、生きることも、人のためにも」
なんかマリオンちゃんの言葉が凄く重たくて実感のこもった声が生々しい。
もうマリオンちゃんが貧困層出なのは確定かな。もしかしてフラナガン機関に売られたのか?
まぁ相手が話したくなるまで深く聞かないのがいい男ってもんだろ。
「とりあえずこの辺には無人島がいくつかあります。そこまで運んでから考えませんか」
「そうだな。何にしても引き上げはしとくか…1回で運べる量っぽいし」
陸にあげてどうするかを考えた末…結局海に埋めることにした。
やはり持ち運ぶには無理があるので見つかり難い場所に埋めて必要になったら取りに来る事にした。
水中移動のコストも軽くなった事が1つの要因になったのは間違いない。
マリオンちゃんに座標の記憶も頼んだので見失う事はないだろう。
誰かに見つけられたらその時はその時だ。
何だかんだあってハワイ到着。でも用事ないんだよなぁ。
あ、でも海中に船の残骸があったのは行幸だ。
ハワイ攻略ぐらいなら俺達だけでできそうだけどやる意味がない。
ルッグンの哨戒もウザいのでとっととおさらばしようと思う。
人間の頃に一度は来てみたかったなぁ。
ちんすこうが食べてみたかった…あ、あれは沖縄か(爆)
「ブルーニーさん、なんだか今までにない強い電波を感知、どうやら何か重大な放送が行われるようです」
うーん、時期的に考えると…
「モニターに出してくれる?」
「分かりました」
『我々はひとりの英雄を失った!しかし、これは敗北を意味するのか?!否!始まりなのだ!』
ああ、やっぱりか。原作通りの展開だねぇ。
「とうとうザビ家にも戦死者ですか、一生懸命鼓舞してるみたいですけど士気低下は否めませんね」
確かに、統率者の身内が死ぬなんて普通に考えたら暗殺以外ではありえない。
どんな時でも後ろにいるんだからな。
お、そろそろ来るぞ。俺もあの台詞を言わねばなるまい。
『私の弟、諸君らが愛してくれたガルマ・ザビは死んだ!なぜだ!』
「坊——「戦争してるからですよ。自分から始めて何言ってるんでしょうね」——ソウデスネ。マリオンチャン」
まさか潰されるとは思わなかったわ。しかも至極まともなこと言ってるし。
「そんな事言うなら最初から戦争しないでもらいたいものです」
なかなかご立腹なマリオンちゃん。
「でも戦争してもらわないと俺達おまんま食べれませんよ?」
「それとこれとは話が別です」
バッサリと切られますた。
しかしシャアは専用ザクを失ってよくガンダムと渡り合えたな、むしろよく誘導できたというべきか?予備でもあったのかな。
そういえば態々シャア専用ザクで戦ってたけど地球ではJ型の方が使いやすいんじゃ…砂塵対策してるとも思えないし、ひょっとしたらJ型を改装してガンダムを圧倒してたりしてな。
いや、ここはランバ・ラルより先にグフに乗って、赤とは違うのだよ赤とは!!とか言ってたら笑えるんだけど。赤から青に…信号の彗星とかね。
「そういえば普通のテレビの電波って拾えるのか?」
「ええ、今もハワイのでしたら受信できますよ。観ますか?」
「今はいいや、日本についたら観てみる」
日本だったら戦時中でもアニメやってるかもしれん。
東日本大震災の時もアニメを放送したって伝説があるぐらいだ…ネットで見ただけで事実かどうか知らないけどな。地方に住んでたから。
ジャブロー攻略戦っていつだっけ?オデッサ攻略戦後だっけ?前だっけ?やべーズゴックとかゾックとか食べる機会って他にありそうなのはポケ戦のOPのハイゴッグぐらいじゃん。
ズゴック優秀なのに出番少ないよ。多分本来通商破壊がメインなんだろうから仕方ないけどね。
それにしてもジャブロー攻略戦のためのMS開発されてたあの無駄兵器はどうなんだろうか、正直あんなに種類いらないだろ。
俺達にとってはメニューが増えるんだから嬉しい限りだが。
日本到着。
さすが日本、海底がそれなりに綺麗だ。
ああ、違うか、戦闘になってないから大きいゴミが生まれてないのか。
テレビ番組をつけたらアニメがやってたんだが——
「……おえぇ」
俺が人間だったら食事が無駄になってたに違いない。
なんでよりにもよって——
「腐女子向けアニメなんだよ」
無駄に上半身裸、無駄にキラキラ、無駄に男同士が見つめ合う、無駄に頬を赤らめる——イカンまた吐き気が。
「なんですかこの気持ち悪い感覚」
よかったマリオンちゃんは腐ってないらしい…が、なにやら強化人間特有のトラウマのようなものを発動したようで顔色が凄く悪い。
「マリオンちゃん、チャンネル変えてチャンネル!」
しばらくマリオンちゃんの調子が悪かった。
そして体調が良くなった時…彼女は覚醒した(腐っていた)
いや、嘘だからな。