第九話
さて、一番厄介なのはジオン側からもらったこのデータが罠でジオン軍に取り囲まれる事だったが…杞憂に終わったようだ。
「設置されている兵器と軍服などにより連邦軍基地と断定、ブルーニーさんの杞憂でしたね」
「そだな。ところでジオン側からの尾行とか偵察とかありそう?」
「いえ、それが全然。信用してるのか、それほど余裕がないのか、どちらでしょう」
十中八九余裕がないんだろうね。
ジオン軍が成立してまだ30年も経ってない真新しいとはいえ正規軍は正規軍、素性の知れない傭兵なんて利用しようと思う事は通常ありえない。
まぁモビルスーツで基地まで乗り込まれて、しかも明らかに今苦戦してる敵とそっくりさんな上に倒せるだけの戦力がない。
そりゃ一時的に追っ払う為にも取引は成立させるわな。無理な条件は出してないしな。
「奇襲といえばやっぱ夜だよな。海と夜襲の時は蒼いカラーリングに感謝だな」
「陸戦型ガンダムなんかはなぜか明るめのグレーですから若干目立ちますからね」
もっともカラコン挿入するとメインカメラの赤色に輝くからが目立つけどそれは気にしないでおく。
それにしても…
「基地って言うより野営場って感じだな。倉庫とかあるけど兵士の宿舎がテントってどうなんだ」
「本当はインドネシアはそれほど重要な地じゃなかったらしいですね。観光地が主産業だったらしいですから、でもジオンがここの資源に目をつけてから一変した感じです」
「この近辺で重要基地と言ったらインド、オーストラリア、ハワイだったけど」
「オーストラリアはコロニー落としで大混乱した上にジオンの地球降下作戦により一部を除いて占領されました。この場合一部とはいえ守っている連邦を褒めるべきでしょう。ハワイは御存知の通りジオンの占領下、インドはシーレーンの確保と北側からのジオンの侵攻を受け止めるだけで精一杯、では何処から戦力を持ってきたのか…私はジャブローからだと思います。」
「そりゃまた遠路遥々って感じだな。まぁでもそれなら陸ガンが積極的に投入するのも分かる」
「恐らくですけどジャブローからインドまでのシーレーンを復旧させたいんだと思います」
なるほど、だから野営場のような佇まいなんだな。
遠征っていつの時代になっても難易度が高いのには違いないだろうし、じゃなかったらアクシズの距離と言う名の要塞が成立しないしな。
「後、ジオン水泳部の皆さんが頑張っているのでしょう」
「通商破壊か、機会があったら狙ってみるか」
是非ズゴックの味がカニ味なのか確認したい。
「とりあえず目の前の基地の攻略に専念しないとな。優先すべきはモビルスーツより航空機かな」
「経験上そうですね。航空機は攻撃がし難く、隙も生まれやすいですから飛び立つ前に仕留めるべきです」
今まで出番がなかったミサイルランチャーを使ってみるか、マシンガンとは違い体の内部にあるんだから撃っても燃料で補充ができるか確認したいし、こういう時以外にミサイルランチャーに使い道はなさそうだ。
滑走路は土を均しただけの簡易なものだから壊すのは簡単、直すのも簡単だがさすがに戦闘中に直すのは効率が落ちるだろうし妨害も容易い。
「燃料も2400%とかなり余裕がある、いざとなればゲリラ戦を仕掛けて食事を取りながら戦えば燃料が切れることなんてないだろう」
シロー君は何処にいるのだろう。
ここにいたなら今日相まみえる事になるけど…残念ながら陸ガンは少数だが量産機、実際情報では12機この基地に居ることがわかっている。
それのどれがシロー君いや、リア充君なのかはわからないだろうな。あ、でもケンタッキーと紅蓮が近くにいればチームワークで分かるかも。
「夜が待ち遠しい」
「今宵のブルーニーさんは血に飢えておる…」
「マリオンちゃん…厨二病乙」
「ちゅ、厨二病ちゃうわ!」
そろそろいい時間だろう。
「夜這い開始だ」
「夜這い?」
「そのまま綺麗なマリオンちゃんでいてくれ」
「綺麗なんて……そんな」
照れてるマリオンちゃんハァハァ。
紳士はここまで、シリアスモード突入。
「帰ってきたモビルスーツ合わせると48機はちょっと厳しい気がするが何とかなる…か?なんかタコ殴りにされそう」
こんな事なら昼間に攻撃するんだった。
なんでこんなに数が増えんだよ。
「食材には困りそうにありませんからEXAMシステムの使用を増やせば大丈夫です。幸い私達が持っているビームライフルは先行量産型、つまり配給されている可能性は極めて低いです」
それならなんとかなりそうだな。
1機の夜襲のメリットは敵の哨戒を掻い潜る事が容易になること、そして移動速度が速いこと。
「ブースター全開!」
ある程度近寄り、空中からの奇襲。
ミサイルランチャーを滑走路に放つ、数は6発。
これでミサイルランチャーは本来弾切れだが…
「マリオンちゃん、ミサイルの残弾はどう?」
「……補充を確認しました。どうやらミサイルも補充されるようですね」
「ということはバルカンも補充されるだろうから遠慮無く使えるな」
俺達にはバルカンは4門もあるからこれは大きい。
これで航空機に対して多少倒しやすくなる…けどぶっちゃけ胸部バルカンって誰に使うんだろ。火力は頭部バルカンよりあるみたいだけどザクには効くかもだけど連邦のモビルスーツに効くのか?
メインカメラ破壊するだけならイマイチな兵器だよな。でも装甲を貫通する威力があるなら俺達も同じということだから厄介な兵器となるし…どっちがいいんだろ。
実戦で試してみるしかないか。
新たに補充されたミサイルランチャーを20発ほど叩きこむ。
「これでしばらく航空機は無視していいだろう」
バルカンでも遠慮なく対空兵器を処分していく。
哨戒していた部隊が騒ぎを察知してこちらを向くのが分かるが基地がミノ粉に包まれた事によってセンサーが当てにならず、メインカメラだけの目視確認で迎撃しないとか大変だな。
攻撃がミサイルだったからミノ粉を散布したんだろうけど使い方がなってないな。せめて敵がどの程度か判断してから散布すればいいのに…いや、上空からのミサイル攻撃だから散布は間違ってないのか?
着地地点は格納庫の真上、天井を打ち抜き侵入成功。
モビルスーツが3機とフライマンタ、セイバーフィッシュが合わせて10機ほどが並べられていた。
航空機はバルカンで一掃、モビルスーツはコクピットだけをビームサーベルで焼いて使用不可にしていく。
「陸ガンと陸ジムってこれほど生産されてたんだな」
ギレンの野望とかやってると陸でしか使えない高コストなモビルスーツなので研究に1部隊作るか、1スタックを作るのに3部隊にするか程度にしか使わなかったので微妙な気分になる。
「それだけ危機に面しているということでしょう。…敵が来ます」
今のはセンサーとかじゃなくてニュータイプの勘だろうな。
ミノ粉の濃度が戦闘用なので高く、センサーは欠片も役に立たない。
さすがに基地となると濃度が半端ない。
「何処から」
「出入口に待ち伏せてるみたい」
「数は」
「正確な数字まで分かりません…便利じゃありませんよ。私の能力は」
そらそうか、そこまで分かれば苦労は——
「大体モビルスーツ6機かな。他にも装甲車っぽいものが…」
いやいや、マリオンさん。あなたの能力超便利過ぎますって…ならその能力、共有しましょう。
「トランザム!あ、間違った」
『EXAMシステム、スタンバイ』
えー…間違えたのに起動っていいのか?
「ブルーニーさん、間違えましたね」
「いや、わざとじゃないんだ」
「わざとだったら怒ってますよ!」
そらそうだ。
それにしても本当に便利だなニュータイプ、大体の位置が分かるとかどんだけぇーこりゃ危険視されても仕方ないかも。
「それそれそれ」
相手は実弾兵器、俺達はビーム兵器、つまり壁の障害などあってないようなもの!
ぼんやり分かる敵の位置に壁越しにビームライフルを撃ちまくる。
何機か生きてるっぽくて正面から出るのは何なんで——
「ジャジャン拳の使い手に習って…」
壁をぶち抜き、外へ出て回りこむと08小隊で出てたホバートラックにバルカンの雨、生き残ってたモビルスーツも生き残ってただけで破損しており胸をビームライフルで撃ちぬく。
これで後モビルスーツ39機とその他大勢…結構倒したけどまだまだだね。
隣の格納庫へ向かおうとすると出入口から陸ジム登場、だがビームライフルで即撃破。
「ちっ、さすがにもう出撃し始めたか」
「格納庫の中でかなり警戒してるわね」
もう一度壁越し射撃を行ったが今度は中に居た2機のモビルスーツを撃破、何かは確認してないが陸戦型なになにだろう。
そして中に残っていた航空機を処分——しようとしたんだが。
「くそ、61式戦車がいたか」
ニュータイプは悪意と闘争心に敏感だ。つまり兵器に搭乗して戦うつもりがないと感知し難い。
61式戦車にギリギリ搭乗したんだろうね。俺達が感知できたのは攻撃される直前だった。
改めて壁越し射撃…なんかコレ、インチキ臭いな。
「それにしてもマリオンちゃんのニュータイプレベル上がってないか?最初はこれほど鋭敏じゃなかったと思うんだけど」
「そう、かもしれませんね。自分のことだからかよく分かりませんが」
そんなもんかもしれんね。
さて、中に入ってバルカン乱射。
ついに格納庫内からモビルスーツが出撃して俺達を攻撃してくる。
「ここからが本番か、しかしこの壁越し射撃は壁があれば室内室外関係なく使えるのだ!」
格納庫と格納庫との間を疾走しながら敵のいる位置に向かってビームライフルを撃ちこんでいく。
あまり離れると減衰しすぎて有効なダメージは与えにくくなるから程よい距離を狙い、次々とモビルスーツを撃破する。
結構倒したなぁと思ってマリオンちゃんに数を確認すると後28機もいる事が判明、えぇ…まだそんなにいんの?元取れるかなぁ。
「しかもバルカンとかミサイルランチャー結構高いなぁ」
バルカンの燃料消費は微々たるものではあるんだけど連射することを考えると結構な消費量、どれぐらいかというと逃走中の秒単位で増える賞金が罰金に変わった感じ。
ミサイルランチャーはビームライフルと五分かそれ以下って感じ。
「一回撤退して…いや、そうなると食材が回収されてどうされるかわからないか」
「ここは強気に行きましょう。大丈夫です。私達なら勝てます!」
「なんか負けフラグっぽいけど…」
「旗がどうしたんですか?」
マリオンちゃんの知識の偏りについて研究してみたいです。
ついでに体も———おい、なにを———