第百二話
やあ、ブルーニーだよ。
今俺達は……宇宙にいる!
いやー傭兵家業の方はマリオンズのアプサラス部隊が警邏してりゃ問題ないだろうし、ニューギニア特別地区に関してはできるだけの指示はしてある。
つまり俺達にはやることがなくなったから宇宙にお散歩(1ヶ月以内に帰って来いって言われてる)だ。
マスドライバー施設って便利だな、経費安くてコンテナで打ち上げるから中身確認しないし(自社のみ)何より自分達で作った成果だから感慨深い。
「久しぶりの宇宙……こうやって改めて宇宙に出てみると不思議なものですね。本来この空間はほとんどの生物には耐え切れない死の世界、それなのに私達は地球にいるのと変わらず生きてます」
「まぁ生物として生きているのか、という点には疑問があるけど……ただ、俺達はここにいることが本来のあるべき姿な気がする」(作品を書き始めた当初は宇宙にあげて海賊する予定だった)
宇宙は静かでいい。
ニューギニア特別地区では疲れを知らない俺やマリオンちゃんズに仕事を押し付けるやつらがいるから煩くて仕方ないんだ。アイナとかシーマ様とか……最近はコッセルまでも俺達を使いやがる……ギニアスは別の意味で煩い。
「さて、俺達の夢の都、サイド5に向かうとするか!」
「ええ!道中につまみ食いもしましょうね」
「おう」
俺達が宇宙に出たのは前々から言っていたように食い倒れツアーをするためだ。
デラーズ・フリートが拠点としていた茨の園は3年もの間潜伏できるほどの大量のデブリがある。しかも発見したのではなく、自分達で宣戦布告して発覚しただけなのだからどれだけ深いデブリなのか……機体が高まる。(誤字にあらず)
「おっ、早速そこそこ原型をとどめたガトル発見」
「ガトルはまだ食べたことありませんでしたね」
では早速いただきます。
「って、しじみ汁かよ。しかも70個分!」
「なんで数がわかるんですか?」
それは大人の事情で言えません。
肝臓の働きを手助けする二日酔いの味方がガトルとは……ああ、そういやドラッツェはハマグリのお吸い物だったから貝類の汁物って繋がりなのか、ザク改はアサリの味噌汁だったし。
「幸先がいいスタートですね」
「ああ、これなら色々期待できるな。ジオンの宇宙艦艇は1隻も喰ってないからどんな味か楽しみだ」
「でもグワジン級やドロス級は難しいでしょうね」
「沈んだ数自体が少ないからなぁ」
すごく残念だ。
だが、燃料補給は俺達の命題。なくなれば死ぬかもしれない身体なのだから念には念を、だ。
サイド5に到着。
その道中にも色々喰った。
例えばMS-06C量産型ザクIIや珍しいものだとザクIIどノーマル、型番で言うとMS-06だな。
おそらくルウム戦役の残骸だろうな。
味は量産型ザクIIがちくわ、ザクIIどノーマルがはんぺんだ。
なんでザク系は練り物なのかね?美味かったけどさ。
「あ、あれが私達のコロニーですね」
「そうみたいだな。まだ半分も作られてないけどな」
最初はフィッシュボーンの簡易コロニーを大量に設置すればいいかと考えていたんだが、農業コロニーにする場合太陽光の取り入れとその調整が難しいため、普通にコロニーを作ることにした。
コロニーができれば完全ブルーパプワの支配地ができるわけだが、空気や土などを定期的に輸入しないといけないから若干面倒ではある。
そういえばギニアスからコロニー武装化計画があがってたな。いっそイゼル○ーン要塞のような主砲でも用意するか?いや、俺達の場合アプサラスIIIの高出力メガ粒子砲か……多連装にすると面白いかも。
「マリオンズを常駐させておくなら自立型ファンネルを作って配備するのもありかもしれませんね」
「……なるほど、コロニーをデカイモビルアーマーと考えればありかもしれないな。むしろ防衛戦力の軽減できるか」
ただ、そうするとサイコミュの出力が問題になるかも……ってそういえばエルメスの段階でかなりの遠距離で操作が可能だったな。
後はマリオンズにどの程度副作用があるのか、か。
「またマリオンズに負担を掛けるな」
「それは言わない約束ですよ」
「そんな約束した覚えはないが……生まれてからずっと助かってる」
「えへへ」
マリオンちゃんに偶にのご褒美によしよし、と頭を撫でる……ん?偶にじゃなくて割りとやってる気がする……気のせいか。
ん?マリオンちゃんが少し顔をしかめたぞ?……ああ、もしかして——
「マリオンズから抗議が来たのか」
「はい。私ばかりズルいーっと」
俺に念話で抗議がないのは遠慮してるんだろうが……
「これからはマリオンズにも定期的に時間を取るようにするか」
「マリオンズも喜びます……私も忘れないで下さいね?」
「もちろんだ!」
全員同一人物なのに別々に対処しないといけないあたり、少し面倒に思わなくもないけどマリオンちゃんズのためなら苦ではない。
実質1人なのにハーレムとはこれ如何に、エターナルロリータで俺得、アッヒャッヒャッヒャッヒャ。
ちょっと興奮して思考が乱れたな。
どうもマリオンちゃん少しコンプレックスがあるらしい。
それはマリオンズが好きなように髪型や色を変えることができるのに自分だけ髪が伸びる程度にしか変化がないことだ。
俺は気にしないんだけどそこは複雑な乙女心というやつなのだ。
こればかりはどうしようもない……マリオンちゃん系の強化要素が消失した今となっては見込みがない。
何かあるようならマリオンちゃんニュータイプ占いで教えてくれるだろうしな。
「まずはコロニー護衛に付いているマリオンズに挨拶しておきましょう。でないと拳で語り合うことになっちゃいますから」
「マリオンズの方が数が多いから敗北必至だな」
「はい……」
同一人物でもマリオンちゃんは特別扱いだが、あまり贔屓するとじゃれあい程度の喧嘩ぐらいは起こるらしい。
マリオンちゃんが優遇されている最大の要因は俺、ブルーディスティニーに同乗できることだ。
実は俺のコクピットはマリオンちゃん以外が座ったことはないからな。
丸2日間、護衛任務についていたマリオンズ2人に時間を割いた。
「機は熟した!いざ参らん、食材の都!」
「サイド5跡地へ出陣じゃー」
コロニー建設にはしているものの巨大で膨大なゴミの山は簡単になくなるわけもなく、そのゴミの山の一角を掃除して住宅を建てているような状態が現状だ。
結構な頻度でコロニーにデブリが飛んできるのはご愛嬌、有害なサイズのデブリを取り除くためにネットを張ったりしてるが、そのネットをコントロールする端末にデブリが当たって駄目になることなんかもある。
一応最終防衛ラインの自動迎撃システムがあるから被害が出ることはないが、コロニーが完成するまでにある程度ゴミ山……否、食材の山を崩しておかねばなるまい。
ぶっちゃけ放置していても廃品回収部の仕事が増えるだけで問題ないんだけど……まぁ喰うには不都合だから仕方なし。
「それにしてもこれだけあれば食い放題なのは間違いないが軍が隠れてても気づかないのは仕方ないかもしれん」
「ですね。ブルーニーさんの知識ではジオン残党のデラーズ・フリートという勢力が拠点にしていたんでしたっけ」
「ああ、この世界ではギレンが生存している以上、ジオン残党なんてそうは生まれないと思うが……」
「……?デブリの奥に結構な数の人間がいるようですよ?」
え、もしかして俺、フラグ立てた?
「マリオンズに確認してみましたが、そんな奥まで手を出してないとのことですから……」
「一番可能性が高いのは賊か」
「はい、マリオンズはコロニー護衛が忙しくてデブリの奥まで気にしてなかったのでいつ頃からあるかもわからりません」
また面倒なことにならなけりゃいいけど。
「とりあえず直接出向いて確認するか、食材は逃げないし」
「ですね。場合によっては新鮮な食材が手に入るかもしれませんしね」
マリオンちゃんと共有して大体の位置を把握、突撃開始。
それにしてもデブリ避けるのって結構面倒だな。これを普通は操縦して躱すんだよな?いやーパイロットって凄いんだな。
もうすぐ大勢人が集まっているであろう場所が視認できる、というところでモビルスーツ出現。
「って言ってもザクII……しかもF2ってレア機体過ぎるだろ」
この世界ではモビルスーツの開発速度が早く、F型はともかくF2型はザク改やゲルググの開発に追いつかれて3機程度しか生産されなかったはず。
そのうちの1機に出会えるなんて俺達は運がいい。
お、よく見るとリックドムもいるじゃないか、こちらもゲルググ生産が間に合ったため次世代主力兵器に外されて少数生産だったと聞いたけど……あれ?もしかしてその奥にいるのは……初期型ジムさんじゃないですか、これはもろ俺達のせいなんだがルナツーで生産を始めてすぐ俺達と性能的にジムより優っている陸戦型シリーズが戦って一方的敗北をしてしまったためジム自体が見直され、ジム改にされてしまった経緯があるためほとんど初期型ジムは残っていないはずなんだけどな。
なんという珍味の盛り合わせ、これは是非いただかないと!!
「それにしても連邦やジオンのモビルスーツが混合しているのは変な感じだな。いったいどういう集まりなんだろうか」
「流れていたモビルスーツを拾って直したか、そもそも持ち込んだものなのかで敵勢力の事情が把握できそうですけど……少なくともアナハイムの回し者ということはないでしょうね」
「確かに」
こんな旧式ばかりじゃマリオンズどころか死神の陽炎の一般兵にも勝てんよ。
さて、実弾兵器で攻撃してくるが……お前ら、デブリ内で実弾とかなかなか根性あるな。跳弾してどうなるか……あ、ジム改の腕が飛んだな。だから言わんこっちゃない。
「とりあえず殺さずに全部捕獲するか、事情も知りたいし」
「ですね」
跳弾で味方がやられたのにも気にせず、遠慮なく放たれる銃弾を躱しつつ——もっとも口径からして直撃してもダメージがないけどな——間合いを詰めて久しぶりのシャッフル!
5回ほどすると機体が動かなくなった。ニュータイプの感覚的にもパイロットは気を失ってるように感じるので間違いない。
3分後、全部で10機いたモビルスーツは宙に漂うデブリと化した……いや、ちゃんと動けるはずだけどね。
さて、問題はこいつらを運んであちらの拠点にお邪魔してお話するか、それともこいつらをフィッシュボーンの簡易コロニーに連れ込んでお話していただくか、ってことだな。