第百十一話
そういえば、日本は上海は返したが台湾は返さなかったようで、今日本はちょっとした台湾ブームが起きている。
人を犠牲にしてまで得た土地、小さい面積だが戦死者の屍の上に成り立つ島、意味を持たせないと不憫すぎるという気運が高まった結果っぽい。
ナケルハナシダナー、自分達が言い出したことなのに何気取ってんだか、笑いすぎてへそで茶を沸かすぞ。
「私達の場合リアルで沸かせそうですね」
装甲温度をあげれば割りと簡単に……じゃなくてだ。
台湾を手に入れた日本は海洋国家としてまた一歩成長した。もっとも海を把握するのにそれなりに時間が掛るだろうから本領発揮するのはしばらく先になるが。
面積増えて利権ウマウマ、クーンがよく売れる。最近日本がケチになってきたから、その代わり精密機器の輸入を始めたんだけど、値段がべらぼうに高い。
なるほど、現代日本もこんな感じなんだろうな。いい製品なのはわかるけど値段も相応過ぎる。
ただし、それのおかげでモビルスーツの運動性が3%上昇したから侮れない、軍需はハイエンド機が基本だから目を瞑るか。
この技術、なぜかヤマトには使われていない。中小企業の技術だから取りこぼしたか?相変わらず大企業同士が結託して利権独占してるんだろう。
おかげで独占契約(半乗っ取り)に成功したけどな。
「もしかして日本ってブルーパプワに足りない技術を補うのにちょうどいいのか?」
「日本人って器用な人が多いですよねー。餌さえ与えてれば黙々と働いてくれますし、ニューギニア人とは反対ですね」
ニューギニア人は不器用とは言わないけどちょっと大雑把なところがあって、仕事中もめっちゃ喋ってうるさいんだよ。
まぁそれでも仕事はちゃんとしてくれてるからいいんだけど。
「中小企業を狙って買収を進めるか、幸い資金はあるからな」
「ええ、サイド6支部の収益を回収するのをすっかり忘れてましたから」
別口座だったなんて俺は知らなかったんだよ!アイナは俺達が知ってると思ってたしシーマ様も同じく。
全く、死金になってたじゃないか、金は使ってこそ生きる……ただし、酒、タバコ、博打なんか買うなよ?どうせなら酒を作る、タバコを売る、博打の胴元になる気概を見せろ!闇賭博でもいいからさ!違法?そこは自己責任でお願いします。
「ソース文化も流行らせましょう!焼きそば、焼きうどん、たこ焼き、お好み焼き!」
なんでマリオンちゃんはそんなに熱心なのか。
「いや、流行らんだろ」
「なんでですか!」
「それはな……暑いからだ!熱い食べ物を暑いところで食べたい奴がどれだけいる!」
「あ」
忘れてたな。
ニューギニア特別地区は常夏の島、日本みたいに四季がないんだから暑い時に熱いものを、なんて思う人はそんなにいないはずだ。
「アイスクリームは既に定番化しているし……適当に和食を導入してみるか」
「ハロにレシピを投入ですね!」
「いや、そちらは既存の介護ロボット製造会社を買収して新しく導入すればいいだろ」
「ぶー」
どうやらマリオンちゃんはハロ万能説を打ち立てたいらしい。
漁業用ハロの開発も試作機を作ってみたが、魚を捕獲するまではいいんだが、ハロのサイズや出力の問題で魚が暴れると沈没するという欠点を見つけて再検討中だし、廃品回収用ハロはうっかりデブリにぶつかって大気圏突入して、何処かのバンダナ変態男のように、あー死ぬかと思ったなんて言って助かるはずもなく、塵と化したりと色々トライ・アンド・エラー。
ハロはやっぱり人工知能が似合うと思うのは俺だけだろうか?スパロボ的に。Gジェネ的にはモビルアーマーも有りか。
「なんにしても和食ブームを起こすのは有りか」
「夏といえば……流しそうめんなんてどうですか、調理も簡単ですし」
栄養がないのがちょっと気になるが、日本人の夏の風物詩だから広まれば日本人観光客も増えるかもしれない。
BL文化を持ち込まれないよう規制するけどな!
「風鈴とかもいいですね。真鍮風鈴とか綺麗ないい音と聞きますし」
「攻めるところが渋すぎるだろ」
現代日本人は風鈴すら忘れかけているのに、それを真鍮とか。
「そして忘れてはいけないのはお寿司すき焼き焼き鳥」
「最後は聞き覚えはないが、お寿司は無理だと思うぞ」
「なんだか今日のブルーニーさんは意地悪です」
「いやいや、こんな暑いところでナマモノとか食中毒を起こしてくれって言ってるようなもんだって」
鮮度が良ければいいけど、ニューギニア特別地区は山地のもそれなりの人口がいるから流行らすには無理があると思う。
一応冷凍するって手段もあるが、やはり味が落ちるよな。
食には妥協しないぜ。海外の和食みたいな偽物は許すまじ、店で出すラーメンがインスタントとか喧嘩売ってるのかと。
0082年6月、ついにアナハイム、宇宙引越公社、コロニー公社の妨害を退けて、ついにサイド5再建の1歩が踏み出された。
「結構あっという間にコロニー完成したな」
「元々他企業であるものの既存の技術ですから」
サイド5、第1コロニー『ダイヤ』が一応の完成をみたわけだ。
ちなみにコロニーの名前はまた青からスタートしようかと思ったがマンネリ感があったから宝石で決めていく予定だ。
移住するのは茨の園モドキに住んでいた奴等だ。
もちろん本人達も危険を承知で住んでくれる。
他にも数は少ないが保険に入れない無いが就職斡旋、本格移住開始まで全税金免除、本格移住が始まっても向こう30年は免除、というのに釣られた移住者が200人ほど住む予定だ。
ダイクン派開発者もブルーパプワと合流してアムロ達と仲良くハロ開発に精を出している。
マリオンズの常駐も3人から2人に減らし、アプサラスIV2機を配備して養殖ニュータイプを10人を地上より多少スペックが落ちるがドートレス、ジェニスで常駐させることで対応させる。
そしてブルーパプワでは新たにアプサラスIV改を2機製造中だ。
サイコミュの小型化が成功して、高性能になったおかげでマリオンズの無敵っぷりに拍車がかかった。
有線式ビーム砲も導入したがおかげでミニパトゥーリアになってしまった。地上でもウニョウニョと触手を伸ばすぜ。
モビルスーツの触手プレイなんて誰得だよ。
それはともかく砲門数も合計100門になり、しかも触手によって前後上下左右とか関係なくなった。
俺達も模擬戦をしてみたんだが……粘りに粘ったが模擬戦ではビームサーベルが使えないため触手を効率よく削れず、引き分けとなった。
アプサラスってモビルアーマーというか、もう特機だよな。後、足りないのは合体機能とか必殺技か。
他には介護ロボに和食を導入したところ、本当にブームが起きた。それによって米の需要が高まったことで日本から米を輸入し始めた。
最近日本は米離れが現代より深刻化しており、今回のブームで挽回できるよう頑張ると息巻いてるらしいがそんなに上手くいくかな。
しかも、ニューギニア特別地区に集まってくる小麦粉(オーストラリアとサイド3、6産)を日本に安く輸出してるんだけど……大丈夫かね。
「それにまさかマリオンちゃんが言ってた風鈴が本当にまさかの大ヒットとは……」
「ですねー。私もこれほどとは思いませんでした」
最初は普通に家にぶら下げるのではなく、公園やバスなどの公共の場に設置してみたんだが、それが的中してまさかの注文殺到。
ただし、あまりに多くぶら下げすぎて大合唱となり、最近はご近所トラブルにもなっているので対処が必要だな。
「地味にヒットしてるのが冷やし飴ってのが笑える」
「飲んだことないのですごく気になります」
俺達は食べ物を広めているが、実は自分の首を締めているようなのだ。
食事がバラエティ豊かになっていくほど俺達は切ない、なぜなら普通の食事は食べても砂を噛んでいるようにしか感じないからな。
ああ、前喰ったA5ランクの松阪牛ステーキがもう1度食べたい……すまん、見栄を張った。A5ランクなんて食べたことない……すまん、嘘を吐いた松阪牛なんて喰ったことはない。
「ブルーニー、例のものが完成したぞ」
「おお、とうとう完成したか」
「今日はいいことが多いですね。私達の日頃の行いがいいおかげでしょうか」
そんなに日頃の行いがいいか疑問なんだが、マリオンちゃんが嬉しそうだからいいか。
ギニアスの後についていくと格納庫に到着した。
そこに現れたのは……
「これが、俺達の鎧か」
「そうだ。これがNT-1のフルアーマーオペレーションの1つだ」
チョバムアーマー、それが俺達の鎧の名だ。
ギニアスが言ったように本来ならNT-1に装備されるはずだったものだが、機動性はともかく運動性の低下をアムロが嫌った結果、お蔵入りしてしまったプランの1つだ。
これが少し前、ギニアスに頼んでいたものだ。
それを俺達の鎧とした。もっとも最近俺達が戦闘していると敵が逃げ出すので偽装がメインだが……
「早速着せてもらおうか、どれぐらい掛かる」
「5分は掛からない程度で装着可能だ」
「まだ少し時間が掛かり過ぎじゃないか」
「ほぼ常時付けておくと言ったのだからこのぐらい問題あるまい」
装着し終わった姿は……うん、何処からどう見てもブルーディスティニーには見えん、と言うかカラーリングが同じせいでNT-1がチョバムアーマーを装着してるのとそんなに変わらないな。
やっぱりヘッド部分も一回り大きくなってゴツくなってる……いや、顔がGP02にそっくりで悪役面になってるな。
「チョバムアーマーを装着している状態だとオプション装備のほとんどが装備不可能になる。更に肩にあるメガ粒子砲も塞がれていることを忘れるな」
「了解」
まぁ、いざとなれば装甲はメガ粒子砲でぶち破れば使えるしな。
「もう1つのオリジナルフルアーマープランはどうだ?」
「そちらは少し時間が掛かる」
「そうか、期待してるぞ」
これで偽装すれば……宇宙海賊ごっこができるぞ!!