第百十五話
ジャミトフにパンダをくれ、とお願いしたら快くもらえた。
と思ってたら日本から錦鯉、ジオン地球領からトラ、連邦を代表してオーストラリアからカンガルーとコアラ、エミューが届いた。
軽く動物園だな。
実際動物園に展示したんだが……正直動物園ってあまり人気無いんだよな。
ニューギニア特別地区はいい加減動物だらけなのにわざわざ動物を観に行くなんてなかなかしないんだよ。
小中学校の遠足などが主に活躍の場である。
もちろん全部タダだ!繰り返す、全てタダだ!
お返しにオペレーションメテオされる権利をやろう……って言ったら全力で断られた。解せぬ。
「そういやネットで俺達のこと話題になってたな」
「ええ、宇宙海賊レインボーゴースト、何処からともなくやってきて船は落とされ、モビルスーツは粉砕、生きている者は宇宙の彼方に飛ばされる……とか何とか」
「概ね事実だな」
何が楽しいのかネットでスレが20も立ってる。多分アナハイムの憂さ晴らしだろう、うん。
「話題は主に蒼い死神や死神の鎌とどちらが強いか、ですね」
「……中の人が同じだって暴露してやりたい」
もちろんしないけどな。
ちなみに素の俺達と海賊の俺達が戦ったら素の俺達が勝つはずだ。そもそも運動性、つまり追従性の差があるからな。
トランクスがパワーアップを勘違いして筋肉モリモリになってもスピード落ちてセルには攻撃が当たらないのと同じ原理だ。
「ところでアナハイムの動きは」
「私達対策として大規模船団ではなく、小規模船団を多数送り出すことにしたようです」
「なるほど、俺達が少数であることを利用して被害を最小限に抑えようってことか……それにしても思いっきりがいいな」
「おそらくですけど私達——この場合は蒼い死神や死神の鎌を指しますが——のような規格外に慣れたんでしょうね」
簡単にまとめると……
「諦めて規格外とは戦わないように、これが最善だと決めたんでしょう」
「それって海賊ごっこがやりづらくなるってことじゃん」
「ええ、効率が落ちますね」
せっかく偽装したのに活躍の機会少なすぎるだろ。
「そういえば、こうやって海賊ごっこにチョバムアーマーを使うと戦場でチョバムアーマーが使えませんね」
「あ」
そらそうだわな。同じ格好すりゃ速攻でバレる。
うわー、これでようやく射程の問題が解決した(ビーム防げるから直線的に動ける)と思ってたのに戦場で使えないなんて。
「私達は何気にビームコーティングされてませんからねー」
そう、俺達はシールド以外ビームコーティングされていない。
喰っても喰っても吸収されず、マリオンズに協力してもらってビームコーティングを直接施したらカラーを変えようとした時と同じように吸収された。
塗料は無理なのか?とも思ったがアッガイの電磁波吸収塗料は吸収に成功しているんだから、ただただ運が悪いという可能性が高い。
もう1つの可能性として、普及率によって吸収できる確率が増減するんじゃないかと思っている。
もっとも武装ではなくオプション装備は6個しかなく、そのうち1個は自力で手に入れたチョバムアーマー生成だから実質5個なので検証と言えるほど数があるわけではない。
「そういえば吸収で新しい装備が最近増えませんね」
「最近のモビルスーツは汎用性重視だから基本スペックが上昇することはあっても特殊な何かがないからしかたない」
それに特殊な装備をしている機体って案外少ないんだよ。
えーっとIフィールド以外にインコム、変形機構、フィンファンネル、ファンネルミサイル、プラズマ・レーダー。隠し腕……他になにがあったっけ?(できたら感想スレで書いてくれたら嬉しいです)
何にしても主人公やラスボス、強敵とかいてライバルと読む的な奴等が乗ってるものばかりだから本格的な戦争が起きないと増えないだろう。
「そういやダミーバルーンなんてものもあったか」
「以前言っていたモビルスーツに似せた風船ですか……そんなもの効果あるんですか?」
ニュータイプレベルMAX(?)なマリオンちゃんは誤魔化せないだろうけど、ほぼ完成された強化人間のギュネイが騙されてたぐらいだから効果はあるだろ……多分。
「これ、一般兵まで流通させると敵味方が混乱しそうなんですけど」
……言われてみれば引っかかるのは敵だけじゃないよな。
乱戦中にそんなもの出したら味方の足まで引っ張りそうだ。
少数精鋭部隊向けの武装だったんだな。
「とりあえず開発チームに話しておくか、気が向いたら作ってくれるだろ」
「ですね」
デスクワークをしていたら反ティターンズ組織エゥーゴが組織されたと風のうわさで聞いたのでジャミトフに確認。
『甚だ遺憾ではあるがそのようだな。コーウェンが後ろ盾となり、ブレックス准将が中心に据えられている』
判明しているメンバーのリストをもらったんだが、原作通りヘンケン、ブライト……ん?この段階で参加してるのか?
……あ、そうか、反ティターンズ組織だからか。
地球連邦の小さい組織の1つにも関わらずデカイ顔をしているティターンズが気に入らない者の集まりなんだね。
……目標ちっちゃ。
それは置いといてメンバーは……レコア、ロベルト、アポリーが所属してるってことはシャア、じゃなくてクワトロは……あれ?いない?もしかしてティターンズの情報部がまだ掴みきれてないのかな?
『私の政敵と組んでいるのはもちろんだが、奴等はジオン内部とも繋がりがあるようで、侮れない勢力となりつつある』
「無いとは思うが、もしこちらに接触してきた場合対応はどうする」
『兵器の売買なら好きな様にやってもらって構わない。そもそも連邦経由すればいくらでも流せるものだからな。ただ傭兵家業は控えてもらいたい』
「まぁ、俺達はティターンズ支持だから致命傷になりそうな仕事は避けるとしよう」
『そうしてもらえれば助かる。そうじゃ、忘れておったがドートレスの追加注文を近々出すから頼む』
これぐらいのことなら対価なしでもいいんだけどね。
原作のエゥーゴはともかく、ここのエゥーゴは味方する気にはなれない。
大義が無さ過ぎる。簡単にいえば派閥争いを武力でやろうって話だからな。
とか思ってたんだけど……
予定通り第2コロニー『エメラルド』の建設が始まって0082年8月末、ブルーパプワにある俺達の書斎には客人が来ていた。
さて、誰でしょう?ヒントは金髪にサングラス、え?ほとんど答えだって?
「私はクワトロ・バジーナ大尉」
おそらくほとんどの方は正解。
そしてもう1人客がいるんだ。
それは誰でしょう?ヒントは挙動不審、肌黒、ビンディ、少女。
「副官のリリィです」
正解はララァさんです。
偽名が全て1文字ずつズラしただけとか舐めてんのかね?
とりあえず——
「ブルーニーだ。セイラ・マスに繋いで——何をする」
いきなり通信を切るなんて酷いじゃないか。
「い、いきなり、だ、誰に通信をしているのかな」
「いやーちょっと具合が悪くて医者に診てもらおうと思ってな。ハッハッハ」
妹と感動的な再開をしようって気はないらしい。
しょうがないので話を進めるか……ところで、マリオンちゃん?なんでリリィ、もといララァにガンつけてんの?
「おのれ、その胸、寄越せー……って、ブルーニーさん、何するんですか」
「ほれ、どうどうどう」
今にも獲物に飛びかからんとするライオンとそれに怯えるネズミになっていたのでライオンをよしよしして宥める。
正確に言えば膝の上に乗せて後ろから抱きしめてるんだけどね。いいだろー羨ましいだろー。
それにしてもなんでララァがなんであんなに怯えてんだ。
シャアも若干顔色悪いし。
「それでシャア、今回はなんのようだ」
「私はシャアではない、クワトロ・バジーナだ」
「おお、そうか、それは悪かった……それでシャア、今回はなんのようだ」
「……」
睨んでもお前がシャアであることはわかってんだよ。
しばらく睨み合って、言い合いしていたらノックの音とともに現れたのはアムロとメイ。
「ブルーニーさん農業ハロに関してですが——ってなんでここにいるんだ?シャア」
素顔見たことないはずなのにわかるのは、やはりニュータイプだからだろうか。
そしてシャアかたなしm9(^Д^)プギャー
「ハァ……もう隠し立てしても仕方ないか、ご両人にはできれば他言無用に願いたい」
「別にいいぞー、ただしセイラには暴露するけどね」
「あ、そうですよ。セイラさんが心配してましたよ。またあの馬鹿兄がバカなことしないかって」
「そのあたりは大丈夫です。私がしっかり導きます!(使命感」
あー、ララァってダメ男に引っかかるタイプだったんだねー……って原作でもそんなに変わらんか。
「それでエゥーゴ代表で訪れたシャアは何のようかな」
「シャア、お前、ボーナスもらって自由気ままに暮らすんじゃなかったのか?!」
「仕方ないのだよ。こちらも色々と事情が——」
「実は私のノイエ・ジールと大佐……じゃなくて大尉のゲルググMの修理、補給費用が自腹でされていたのです」
…………
「「「は?」」」
「くっ、あの紫ババァめ!まさか契約書の隅に専用機の修理と補給は搭乗者が支払うなんて誰が思う!」
いや、うん、普通思わないよな。
契約書の確認不足が悪いとはいえ、さすがにちょっと。
「ボーナスはパァどころか莫大な借金で縛られる始末、なんとか夜逃げに成功してジオン地球領に逃げ込んだが日中騒動のせいでそれも不安定に、中国に派遣されることになって資金を得て、やっと暮らせると思えば何者かが私達の周りを調べ始めたので連邦へ……そしていつの間にかエゥーゴに参加することになって今ここにいるということだ」
もしかして俺達のせいでジオン地球領、中国から逃げることになったのか?ちょっと悪いことしたな。