第百十八話
カーン一家の迎えにはマリオンズ2人と養殖ニュータイプ10人を派遣している。
ハマーン様を迎え入れるのは私情が多々あるが、マハラジャを迎え入れるのは組織にとってプラスなことが多い。
まずは前回でも言ったが政に強い人材が初めて加入すること。
次にダイクン派の支柱ができること。ただし、これはシャアの素性が知れた場合はデメリットになる可能性を秘めているが。
そして何より一番大きいのは俺達の仕事が減ることだ!!
「疲れはしないものの、さすがに飽きます」
「だな。早く気て欲しいものだ」
本人の意志なんて無視、是非頑張ってもらおう。
『こちらカーン一家護送隊のマリオンズです。カーン一家が乗るザンジバルを捕捉、コンタクトを取ります』
「了解、頑張れ」
『はい!』
実はマリオンズはサイド3に迎えに行かず、航路を計算してなるべく早く合流させるようにした。
急がせたのはマハラジャの寿命がどの程度かわからず、死なれたら困るからだ。
それに万が一眉なしが暗殺にでないとも限らない。
不安な点があるとしたらサイズと補給の関係でアプサラスIVが同行できなかったことや母艦がフィッシュボーンだということだ。
地上なら問題ないが宇宙では距離が有り過ぎてアプサラスIVの補給が難しくなる。やはり専用補給艦か何か用意しないといけないか。
『コンタクトに成功、まだマハラジャさんは無事ですが体調は悪いようです』
急がせて正解だったかな。
ヒールは今のところ老衰すらも防ぐことができることは証明しているので、間に合いさえすれば死ぬことはない。
「間に合ったようでよかった」
「ですねー。せっかく取引してまで引き抜きして合流する前に病死なんて嫌ですから」
おそらくブルーパプワ社員死因は過労死か精神異常による首吊りだろうな。
過労死は短い間に働き詰めにしないとマリオンズにヒールされて、ただただつらい目に合うだけだろうけど。
『面会に成功、挨拶する時に握手して治療完了しました』
握手するだけの簡単なお仕事です。
『言われた通り2年ほど逆行させました』
いきなり完治なんてさせると怪しまれるから少しずつ回復させる。
決して余命を握って裏切り防止なんかじゃないんだからね!
まぁ、あまり逆行させ過ぎて若々しくなられると能力露呈の恐れがあるので、機を見て病気を完治するがな。
『少しトラブルです。ナタリー・ビアンキという女性も一緒にこちらへ来たいとのことです。どうしたらいいんでしょう?』
C.D.A.若き彗星の肖像のキャラでそんな人いたな。
確かハマーンの姉的存在にしてハマーンの思いを知りながらシャアを寝取った人だっけ。しかも子供までできたってんだから有罪決定だよなぁ。
そのせいで見殺しにされたはずだが……まぁシャアがアクシズに行ってないし、何よりシャアの隣にはララァがいるから大丈夫……だよな?なんでかシャア達はガンダムさん的な要素が入ってるからハーレムとか起こりそうで嫌なんだけど。
ニューギニア特別地区ではハーレムも合法だし。
「んー……希望者は連れてきてもらっていいぞ。ダイクン派ってことにしとくから……あ、もちろん敵意がある奴等は弾いてね」
嘘も方便……というには捏造が過ぎるかな?眉なしに何か贈り物でもしておくかな。
そういやアクシズを地球圏に持ってきて第二次防衛ライン(ソロモンが第一、ア・バオア・クーが最終防衛ライン)にするという計画がジオンで出ている。
押しているのはゴモラやコンスコンなどの武官達、反対してるのが眉なし、紫ババァ、壺などの文官達……メンバーを見る限り、この計画は頓挫するだろうな。
アクシズは火星と木星の間に配置されており、中継基地としての役割はかなり大きい。
それにそもそも開発段階からアナハイム利権でもあることから、地球圏に来たところで利が少ないためアナハイムからも反対されている。
まぁ、実現は不可能な計画だ。
カーン一家がニューギニア特別地区に到着。
航行中、海賊に2度ほど襲われるという事件があったがマリオンズが操るヴィエーチルと養殖ニュータイプに軽く粉砕。
戦闘の記録を見たが……さすがマリオンズが選抜した精鋭部隊だ。瞬殺だった。
そして目の前にマハラジャ・カーン、ハマーン・カーン、そして……誰だ?
「初めてお目にかかります。マハラジャ・カーンです。そして娘達です。ご挨拶しなさい」
「長女のマレーネ・カーンです」
……あれ?マレーネもこっちに来ちゃってるの?
まぁ、こっちに来ること自体はわかってたけど、なんで同乗してるのか、という意味だ。
ソロモンに居るって話だったのに。
「じ、次女のハ、ハマーンです」
おお、はにゃーん様だ。
まだツインテールで女帝って感じじゃない、と言うよりむしろ緊張しているその姿はすごく女の子らしい。
「三女のセラーナです」
はにゃーん様よりしっかりしてるっぽい幼女。
セラーナ?えーっと……確かC.D.A.若き彗星の肖像に出てたけど、元ネタは古いゲームなんだっけ?
ごめん、すっかり存在忘れてた。
そして俺をガン見してるんだが……やはり見掛けが気になるのだろう。
そういう意味では他のメンツは肝が太いのかポーカーフェイスなのかわからないが、俺に関して特にリアクションがない。
「これからはこちらでお世話になります」
「いやいや、呼んだのはこちらだ。お世話するのは当然だ……が、それなりに働いてもらうがな」
「聞いた話ではダイクン派を匿ってくださっているということですから微力ながら協力させていただきます」
話していて思ったがマハラジャは執事っぽい。
「よろしく頼む、病気の治療も追々やっていくので頑張ってくれ」
「……私の病は治療法がないと聞いています」
どうやら俺が気休めに言っていると受け取ったようだ。
ハマーン達も暗い顔をして俯いている。
おお、幼女にそんな顔をさせるとは、情けない。
「眉なし……ギレンからカルテはもらっている。あの程度なら治療可能だ」
つい、いつもの癖で眉なしと呼んでしまった。
マレーネが身体を小刻みに揺らしている。ツボに入ったのか?
「ほ、本当ですか」
「ああ、とりあえず明日から2、3日は治療に費やすが(麻酔で眠らせて適当に放置するだけ)それだけで当面は問題ないだろう」
「そ、そうですか」
気持ちはわかるが家族で抱き合って、ホームドラマっぽく感動のシーンをやられても困るんだが。
この後馬車馬のごとく働かされるんだから覚悟はしておいて欲しい。
家族と過ごす時間はそこそこ用意するけどな。
こうしてカーン一家は俺達の仲間となった。
今回は主役ではなかったから話せなかったがナタリーは技術士官としてはそこそこ優秀だったと思うからアムロ達と組ませるかな。
とうとう、養殖ニュータイプが400人を突破。
そろそろニュータイプ専用機の本格導入を考えるべきかもしれない。
プロトタイプサイコガンダムの完成が待ち遠しい。
問題はファンネルが搭載されてないことだが、そこはプロトタイプということで目を瞑る。
目指せキュベレイmk-2!決してキュベレイやヤクトドーガ、サザビーみたいな高性能機でもなければサイコガンダムやクインマンサ、αアジールみたいな大型なものではない。
量産できるニュータイプ専用機を所望する!
ぶっちゃけニュータイプにファンネルが通じないのは数が少ないからだ。
実際アプサラスIVの有線式サイコミュ可動砲の波状攻撃にアムロは1分と保たない。まぁ友軍無しの設定だったから当然といえば当然だが、ファンネルも数が揃えばニュータイプにも通じるという証明にはなった。
400人のニュータイプが放つファンネル、それは1人フェンネル6個として2400個のファンネルが押し寄せる。
ファンネルを飛ばすのは疲労が溜まりやすいので継戦能力は短いだろうが殲滅力はソロモン決戦で見せたノイエジールの活躍以上のものだろう。
とは言っても全員がコロニーに駐留しているわけではなく、地上に駐留している者もいるから勢揃いすることはないだろうが。
宇宙勤務300人、地上勤務100人と宇宙の方に偏っている。
ニューギニア特別地区は面積こそ広いが所詮180度ぐらいしか攻撃されることはない、だが宇宙は360度攻撃可能であり、しかもビームの減衰率も低い。
何より、マリオンズの駐屯数も少ないのが主な理由だ。
「ブルーニー様!これはなんですか?!」
ブルーパプワで初めて俺のことを様付けで呼ぶのはマハラジャ、余計に執事っぽくなった。
どうも本人もそれを意識しているっぽいところもある。
「それは……なんだ、ただの外交記録じゃないか」
「ただの……これが、外交ですか?!明らかに砲艦外交でしょう!」
「そりゃ、俺達がこのニューギニア特別地区を貰うきっかけになったのも同じようなことだから仕方ないんじゃね?」
「戦争が終わった今、砲艦外交をやり過ぎては戦争の火種をバラ撒いているのと変わりありません」
でも正直普通の外交をすると(書くのが)面倒なんだよなぁ。
「そうは言っても外交向きなのが俺とマリオンちゃん、シーマ様、営業的な意味でアイナしかいないんだから仕方ないだろ」
ニューギニア特別地区にいる官僚共にやらせると連邦よりになるしさ。
それに俺達が出向くと結果的に砲艦外交になっちゃうんだよな。
「それにこういうことを止めるためにマハラジャを引き抜いたんだ。頼むぞ」
「……わかりました。誠心誠意頑張らせていただきます!」
おお、なんか燃えてんなー。こんなキャラだったっけ?
いや穏健派だからこういうのは好きじゃないのだろうか、ダイクン派なんだからそうかもしれないな。
「それでセラーナはいつ入ってきたのかな?」
「セ、セラーナ?!いつの間に」
「……お父様と一緒に」
「そうかそうか、それで俺に何かよう?」
「ブルーニー様のコクピット、開くの?」
…………そういや、どうなんだろ?開くのか?
それにしても、わざわざここまで来て、聞くことがそれか?
「よし、やってみるか」
「無理して付き合わなくても……」
「いや、俺もわりと気になるからさ。よっと!」
「開いた。……すごい精密」
幼女のくせに難しい難しい言葉知ってるな。
開けたものの自分で見えないとは……残念だ。
「失礼します。こちらにセラーナが——お邪魔してますね」
続いて現れたのはマレーネか、セラーナを探してここまで来たらしい。
「むう、私とブルーニーさんの愛の巣におじゃま虫が……」
マリオンちゃんが拗ねている。
拗ねているマリオンちゃんも可愛いぞー。