第百十九話
カーン一家が来てから1ヶ月経った。
はにゃーん様ともいくらか話が————できてない。
どうやら避けられてるようだ。
さすが上から数えた方が早いニュータイプさん、見事な回避を見せる。
マリオンちゃんが捕まえようとしてくれたが負けた気がするので意地でも俺が捕まえる!
そのかわりと言っちゃなんだがセラーナが懐いた。
誰に作ってもらったのか、えらく本格的なコントローラーを持ってきて「ブルーディスティニージュニア出撃!!」とか言っちゃうもんだからブースター吹かして期待に答えたのが悪
かったのだろうか?
しかもそのコントローラー
マレーネはマハラジャの補佐をしている。
シーマ様が言うにはマレーネはなかなか有能なんだそうで、シーマ様の調整役の仕事も手伝っているんだが、ほとんどの仕事をマレーネが処理できるらしい。
なんなんだカーン一家って、チートばかりじゃないか、はにゃーん様も覚醒すれば女帝だし、セラーナは記憶が確かなら将来外務次官になったはず……これがエリートというやつなの
か!?
「ブルーニー様、こちらをご確認ください」
そう言って渡されたのは法改正案。
パラパラパラッとな。
「増税却下、移住規制却下、他はokだ。さすがアクシズをまとめていただけのことはある」
「ありがとうございます……しかしやはり増税と移住規制はしていただけませんか」
「増税して労働意欲を無理やり駆り立てようってのはわからないでもないが、連邦やジオンのような税率じゃ誰も寄り付かないぞ」
「しかし、これではあまりにも民を甘やかし過ぎです。人口比で考えれば連邦なら4倍、ジオンなら3倍の税収はあります」
「ニューギニア特別地区の生い立ちは知ってるだろ、増税なんてしたらデモ隊結成、最悪クーデターだぞ」
せめて信頼を気づくために10年は必要だろうな。
10年……マリオンズ27人とか世界征服できるんじゃね?
「それに税収はジオンの時はもちろん、連邦の時より増えているだろ」
「それはまぁ……約4倍ほどには」
人口増加はニューギニア特別地区発足当時から3倍程度だから税収はちゃんと増えていることになる。
ここ3年の間にこれだけ増えれば十分だろ。
「それと移住規制の方は軽犯罪歴がある者は拒否する、か……治安維持費はハロで済むんだから大目に見ろよ」
「ですが民から苦情が出ていますし……」
「それは外から入ってきた人間の価値観だろ。実際ニューギニア人がそんなこと問題にしないしな」
元々主要都市がマフィアに半分以上乗っ取られていたことから他国のような裁判をすると人口の5分の1ぐらい刑務所に入ることになる。
特別地区発足当時でも人口が減ること自体は問題なかったんだが、刑務所が満員になったり、飯食わすのに金がめっちゃいるので罪の重さに合った軍隊式教育をビシバシしてもらった
。
マリオンズが参戦した頃には重犯罪者ばかり残っていたので洗脳コースへ、そして今では何人かは養殖ニュータイプに、残りはほとんどは死神の陽炎に所属している。
つまり移住者の犯罪歴なんて気にしていたら最初から隣人を追い出さないといけなくなるわけだ。
もっとも今の治安状態は軽犯罪が年に500件届かないぐらいまで良くなっているし、強姦などは本人の主張次第なところがあるからわかりにくいが、殺人などの重犯罪発生件数は100件
前後と人口の割合から考えるとあり得ない数字が叩きだされている。
これは治安維持ハロに足を向けて寝られないな。
ただし、これは村や町などある程度の人口密集地のデータではある。
過疎地などではたまに行方不明者が出たりしているし、ジャングルの中には犯罪組織の隠れ家があったりするが……そこのトップはブルーパプワのスパイだったりするが余談だな。
「移住民をないがしろにするつもりはないが、軽犯罪ぐらいでガタガタと……」
というかそれ、どう考えても世論操作の一環だろ?どこのスパイだ。
いや、無自覚な煽動者として送られてきた、もしくは偶然来てしまったのかもな。
とりあえず、こっそり間引きしておくか。
「わかりました。では、他の法案は通して問題ありませんか」
「ああ、他は問題ない」
他の法案はさすがマハラジャと思わされるものばかりだ。
特にコロニー移住に関しては秀逸で、それだけでも眉なしと取引してよかったと思う。
「それとジオン地球領と南中国に関してですが、もう少しこちらの影響力を強めてはどうでしょうか?今のままでは他国や他企業に奪われる可能性があります」
「ジオン地球領の方はまだしも南中国はありえるな」
3大都市の1つを保有しているだけあって南中国はそれだけでもそれなりの経済を保っている。
それだけ基盤があるということなので俺達への依存度は低い。
それに比べて地球領は経済基盤自体が小さくて俺達への依存度はジオンが俺達に配慮している以上のものがある。
「んー……ああ、そういえば関税が前のままだったな。そこから優遇して影響力を強めるか」
「それがよろしいかと、ブルーパプワの方では巨額の投資を行っているので文句は出ないでしょう」
まぁ、南中国には最終的には兆単位の投資を行う予定だと伝えてあるからな。
いやー、中国はやっぱり自然保護とかには甘々で助かる。
逆にニューギニア特別地区はマフィアばかり居たくせになぜか自然を大事にするもんだから困ったもんだ。
「他に何か報告はあるか」
「諜報部から1つ、コーウェン将軍が推し進めるガンダム開発計画ですがGP03開発のためにオーガスタ研究所が協力しているそうですが」
「ああ、こちらでも確認している。そもそも今連邦の主力となっているジムクゥエルやジムカスタムなどはあそこが設計、開発したものだからな」
最近はオーガスタ研究所は連邦、というよりコーウェンよりの方針を採っているようで、ティターンズがジムクゥエルを使わず、ブルーパプワのドートレスを採用する一要因となって
いる。
「最近は強化人間の研究に力を入れているようですが……実はオーガスタ研究所はジオンとも繋がりある組織なのです」
「へー……」
想像がついてたけどね。
だってナナイ・ミゲルやガンダムmk-V(ドーベンウルフのこと)とか流してるからな。
なによりローレン・ナカモトってブルーディスティニーの開発に携わってた人らしいし、プルトゥエルブも……おや、もしやプルシリーズはオーガスタ研究所出身なのか?
1度探りを入れておくべきだな。
「うん、いいことを聞かせてもらった。少し警戒するとしよう……そういやそのGP03の開発は順調なのか?」
連邦でニュータイプ導入なんてやられるとその量で俺達も圧倒されかねん。
GP01がIフィールド発生装置で苦戦しているのは知ってるし、GP02のTR-1を上回る機体の予定だったがドムIIというライバルも現れたので設計をし直したと聞いているがGP03だけは他と
は毛色が違うためあまり多く情報が入ってこない。
「いえ、どうやらニュータイプの回避能力を活かした一撃離脱するようなモビルスーツを考えているようですが装甲素材の強度不足に重量問題などで頓挫しているようです」
ガンダリウムγがないからですね、わかります。
アレってアクシズが開発してシャアがエゥーゴに渡してアナハイムに渡ったんだよな?あれ、ジオン残党がアナハイムに渡したんだっけ?
まぁどっちにしてもフラグが折られてるんだがどうなるんだろう。
あるとすればジオンからアナハイムへ流れるってとこか。
時が経つのは早いもんで、第2コロニーエメラルド完成。
まだ中身は半分ぐらいしかできてないけどそもそもダイヤも人口が少ないので問題ない。
これにより廃品回収業が活気付き、それを再加工するエメラルドの工場も活気付く、そしてコロニー移住者優遇キャンペーンを展開したところ、ダイヤの人口は5万人を突破。
そして半住居半農業コロニーであるダイヤを完全に住居コロニーにすべく、農業コロニーの建造も計画中だ。
南中国でも次々工場ができあがり、生産力はなかなかのものになりつつある。
これでもアナハイムの生産力の半分以下なんだけどね。
そしてなにより……
「農業用ハロの試作機完成だ!」
「やりましたね。後は実践データの蓄積と改善だけですよ」
「アムロくん、メイ、お疲れ様」
アムロ達の開発チームにナタリーを加えたことにより、なにやらブレイクスルーがあったらしい。
パッと見、アムロハーレムだから殺したくなるけど我慢我慢……今回のはそもそも俺がやったことだしな。
最近アムロとセイラにちょっと変化があったようで、よくセイラがアムロを訪れている。
どうもシャアに会ったことでセイラのなにかが吹っ切れたっぽい、これがいいことなのかどうなのか知らないけどな。
ただ、アムロとセイラがくっついて子供が生まれたらめっちゃ強そうだよな。
「これで農作物の値段が更に安定するな」
物価は安定させとかないと給料の上げ下げだけで対応できるもんじゃないし、悪徳商売も増える。
「それでもまだ適応してない作物があるんですけど」
「いきなり全部やろうとしてもうまくいかないだろうし、何よりそこまですると農家の仕事がなくなるぞ」
「そうですね」
まぁ農家なんてしなくてもいくらでも仕事はあるけどな。向いてるかどうか考えなければ。
「これでやっと肩の荷が降りましたよー。国の将来が掛かってるなんて仕事はしばらくは遠慮したいですね」
モビルスーツのOS作成も十分国の将来に関わるんだが?
「ブルーニー……見つけた」
後ろから幼女の声が……って、またタックル、もとい抱きついてくるがその度におでこを赤くして涙目になるんだからやめればいいのに。
幼女の涙目とか萌え殺す気か。
「ほらほら、大丈夫かセラーナ」
ナタリーが空気を読んで冷たいお絞りを渡してくれたのでおでこを冷やしてやる。
あまりこういうことを繰り返してると馬鹿な子になっちゃうぞー……そういうのでもマリオンちゃんズに頼めば治るのだろうか?
今度誰かをパンチドランカー状態にして試してみるか……大人しく認知症患者でいい気もする。
「ブルーニーさん!私の出番が少なく——