第百二十話
またまたカーン一家の話になるが、本当に引き抜いてよかった。
なぜなら……俺達の仕事が減ったからだ。
もう少し言うと届く書類が半分ぐらいになった。
おかげで自由な時間を確保することができるようになった、ようななってないような。
「ブ〜、最近ブルーニーさんはセラーナちゃんにかまってばかりで私にかまってくれません……釣った魚にも餌を与えないと波乗りサーファーのように餌と間違えて食べられちゃいますよ」
「いつから人食いサメになった」
まぁ俺は人ではない。つまりガッちゃんサメか、天敵過ぎるだろJK。
人がサメに勝つより難しくね?ビームライフルでも倒せ無さそうなんだが。
まぁマリオンちゃんが言っているのは大げさだけどセラーナは本当に飽きもせず、よく遊びに来る。
近所のよく懐いたネコのようで可愛い。
「そうだ、ネコ耳でも付けさせるか」
きっと似合うと思う。
「マリオンちゃんは犬耳な」
「ワン」
早速犬耳を付けたマリオンちゃんが、いや、それだけでなく尻尾までは予想の範疇。
「肉球手袋だと?!けしからん、けしからんぞ!」
しかも触感がなんとも言えぬ……これはけしからん。
「そういや、マリオンちゃんズは服装を好きに変えれるが本体から離した場合どうなるんだ?」
「……どうなるんでしょうね?」
試してみた結果、服装変更には燃料消費がなかったがマリオンちゃんから服が離れた瞬間に燃料が消費された。
「まさかハロだけじゃなくて服まで大量生産ができるのか」
「最近ブルーパプワの収益は全部投資で使ってますから、私達だけの服屋さんでも始めましょうか」
確かに戦争が終わってからブルーパプワを通さない収益の減少で自分達の食事——この場合は進化への試み的な意味——が自由にできないのだ。
自分の国だから脱税とか意味ないから帳簿がきっちり書かれてるんだよ。不明金とかほとんどでないぐらい。
「即日オリジナルデザインとか流行ると思うんですよ。マリオンズなら体型も自由ですからサイズも問題なしです!」
服装実体化→脱ぐ→売る、なにこの大量生産チート、しかもマリオンちゃんズの脱ぎたてが買えるなんて……
「売るのはレディースのみだな」
メンズ……男に売ってなるものか!!
「とりあえずセラーナ用のも用意して」
「はーい」
案の定、今日もセラーナが来た……が、マレーネ同伴だ。
「……よし、ついでだ。マレーネもだ!」
「イエッサー」
「ちょ、え、な——いやー!」
それほど嫌がらなくてもいいと思うんだが、所詮クマ耳と熊の手、尻尾、口装備の鮭ぐらいなんだから……ちなみに尻尾は服にくっ付くんだからな、決して入れているわけではない。
セラーナは嬉々として装着、よく似合ってる。
これではにゃーん様が居ればカーン一家コンプリートなのに……マハラジャ?男の獣耳なんて誰得よ。ただし男の子を除く!!
「ん?マレーネがいなくなってるな。何処いった」
「お姉様なら……」
「お姉様離して!今まで頑張って逃げてきたのになんで……それにそのクマ耳どうしたの」
「いいからこっちに来なさい」
はにゃーん様ご降臨……しかし、俺が捕まえたかったなぁorz
それでなぜマレーネがはにゃーん様を連れてきたの?ん……はにゃーん様を俺達に突き出されたが……まさか?!
「さあ、ハマーン、貴女も堕ちるのです」
「お、お姉様?!」
自分だけ恥ずかしい思いするのが嫌で連れてきたのか、なんとも外道な姉だ。だが遠慮はせん!
「ゆけ!マリオンちゃん!」
「イエス、マイロード!」
結果を見た俺。
我が生涯に一片の悔いなし。
ちなみにこの後はにゃーん様の俺に対しての回避率が上昇した。きっとひらめきを覚えたに違いない。
そういや、もう年末やね。
お歳暮の季節がやってまいりました。
お決まり的にハムを送っておく……決して公孫賛ではない。
来年になるとまた新しい家族が増えるな、心強いような俺の価値がだんだん下がってるような。
「さて、今年も派手に〆ますか」
「ですね」
今年で4度目の年末、1度目はまだニューギニア特別地区が成立してそれほど経ってなかったせいと戦争の真っ最中ということで落ち着かなかった。
元日本人の俺はいつまで経っても寒くない年末というのはなかなか慣れないけどな。
「そういや来年か」
「確かスターダストメモリーでしたっけ、ブルーニーさんの言う原作があるんですよね」
そう、来年は0083。
ジオン存続にティターンズ発足済み、ガンダム開発計画も随分変更され、エゥーゴも存在する今は既に原作から大きく離れているが、やはり原作があった年月は感慨深いものがある。
今もどこかにコウ・ウラキやキースがいるんだろうな。キースはサモナーだったりしないだろうか……ないか。
2人が原作通りガンダム開発計画に携わっていた場合はコーウェン派、もしくはエゥーゴ所属か。
ガトーや狂信ハゲ者は眉なしが生きてるから多分出てこないだろうな……シーマ様艦隊に関しては言わずもがな。
本当に原作との剥離が酷いな。
「ブルーニー様、このお年玉というバラマキ政策はどうかと思うのですが」
「子育て応援政策だって」
年末年始にかけて16歳未満の子供がいる夫婦に1万ずつ商品券を配布している。
意図は単純に親にお小遣いだ。子育ての疲れを労(ねぎら)うことが目的だ。
ぶっちゃけ日本で行われた地域振興券なわけだが、あちらと違うのは消費を促すものではなく、子育て応援なんで経済効果自体はそれほどない。
とは言え、人間とは現金なものでバラマキ……おっと、子育て応援政策はかなり人気がある。
「今の金より未来の人材に投資していると思えば大した額じゃないさ」
問題は来年だよな。
日本から医者を派遣してもらったおかげで幼児死亡率は目に見えて低下しているし、来年は赤ちゃんラッシュなのは既にわかっている。
それと同時に産休によるシフト調整が苦労していると報告もかなり来ている。
農業用ハロにより効率化によってなんとか凌げているが将来はどうなるやら……子育てで女性が前線から離脱するから人材不足が進む。
移住者募集は進めてて正解だな……しかしそれだけでは苦しそうだな。
対策をねらないと大変なことになる。
当面戦時フル稼働状態になるかも、まぁ連邦とかではザラにある仕事量なんだけど。
「まぁ面倒くさいことは来年考えるとして今は歌って騒げ〜」
「ですね〜最近はBLじゃない日本文化が入ってきて風流になってきましたから華やかですしね〜」
「……いや、年始を迎えるのにコスプレってのは華やかでまとめていいのか?」
BLではないがオタク的な文化が多く流れてきていて、大通りを歩く中に10人に1人ぐらいの頻度でコスプレイヤーを見かける。
日本だと規制されているがここでは特に規制していない。
見ていて面白いとは思うが……どっからどう見てもギアスのヴィレッタやゼロ魔のキュルケ、BLEACHの夜一、少女革命ウテナのアンシーなどなど、俺以外に転生者がいるんじゃないかと思う。(フラウ?そんな奴は知らん)
見事褐色系キャラばかりだけどな。
何人かは白粉でごまかしてやってたけど、ちょっと無理がある。
こうなるとはにゃーん様にコブラのアーマロイド・レディに……ってマニアックすぎるか、パトレイバーの南雲しのぶか?いや、あえてマウアーという選択も。
「ブルーニーさん、最後の決済書類を持ってきました」
「アイナ——か?」
なぜベルダンディーのコスプレ?いや、中の人ネタなんだろうけど……あ、そういやマンガ終わったらしいね。おめでとう。
「じゃなくて、どうしたんだその格好」
「最近シローさんがマンネリ——「あぁ、そこまででいいから。自分が何言ってるか自覚してから発言しような」——は、はぃ」
恥ずかしいなら言うなよ。というか性活の話を職場に持ち出すなっての。
ちょっと浮かれ過ぎだろ。
「俺は信じたい……人類を……この世界を……そして、俺自身を!だから戦う!生き抜くために!ファイナル・フュージョン!ガオ!ガイ——」
「光になれぇぇぇーっ!!!」
「ぐはぁっ!……俺の、台、詞」
いや、読めてたけど、読めてたけどさ。
シロー……無茶しやがって……というかなんでアルティメットアーマーがロックマンX仕様なんだ?
「シーマ様は——普通だな」
「なんだい。私にもあんな変態になれってのかい」
いや、安心したよ。
さすがにクレヨンしんちゃんの風間トオルは酷いだろ。
「でも元々コスプレみたいなもんだし」
「あんた、喧嘩売ってんのかい」
イイエ、ソンナコトハ。
さて、ここまで来るとギニアスもコスプレしてるだろう。
でもギニアス(速水奨)ってマリオンちゃん(林原めぐみ)の次ぐらいに主役級をやってるから予測しづらいな。
最近の作品だと遠坂時臣とかそうだよな。
「こういう時こそ勇気を振り絞るのが本当の勇者だ」
「……いや、そんな勇気はいらんと思う」
というか……なんだそのロボットは?俺に対しての挑戦状か?
「勇者エクスデスだが」(本当はエクスカイザー)
なんか後でネオエクスデスとかになりそうな名前だな。
「なんだ知っているではないか」
まさかの偶然?!て言うかもしかして種類的には勇者王と同類か?勇者王はニコ動のネタによく使われてたから見たんだけど他はちょっと。
「そんな……バカな」
こんなバカなことをしながら年末は過ごした。