第十二話
ウザいウザいウザい。
何がウザいかって…あのブルーディスティニー、略してBDとするけど…が頻繁に襲ってくるんだよ。
止めを刺そうとすると救援が来る。
しかも何がって全身ビームコーティングしてやがんのよ。
格闘戦で腕へし折ったり足へし折ったりするんだけどすぐに全身ビームコーティング仕様の陸ガン、ジムもしくはガンタンクなどが援護に駆けつけてくる。
てっきり中ボスかと思ったらやたらと強いはぐれメタルだったみたいな。
わかったのはコーティングは中距離のビームなら弾ける(正確にはコーティング気化して防ぐ)が近距離なら多少威力が落ちても撃墜できるということ、連邦が俺達との戦闘でデータ収拾に使っていることぐらいか。
もっとも俺達の戦闘データってそんなに役に立つかなぁ、俺達の動きって明らかにモビルスーツじゃないんだけど。
無線傍受した感じ俺達はジオンに盗まれた事になってるらしい。
まぁマリオンちゃんがジオンだったからあながち嘘じゃない?
「そんなわけでBD対策会議を始めます」
「わーパチパチパチ」
「それで何か意見ない?」
「粉砕!玉砕!大喝采!」
絶対転生者だよな?!
いやひょっとして部分的な前世の記憶持ちとかか?それはありえる…
「真面目にいいますと早く元を断つしかありませんよ。それにどんな味がするか気になります」
おい、仮にも兄妹、もしくは自分の分身だぞ。それでいいのか?
俺は中の人が俺のような存在でもないから別にいいんだけど…どうも釈然としない。
マリオンちゃんがセイバー化してるような…しかも共食いと来たらどっちかというと黒セイバー化だな。
ま、可愛いから許す。
作戦会議という名のイチャイチャタイムをした結果『とっとと倒して食べる』という結論に至った。
作戦会議の意味が無いとか言ってはいかん…俺達ってこんな脳筋だっけ?
もっとも本当に戦うことを避けるんだったら海に逃げ込めば追いかけられない、もしくは追いかけてきても勝てるんだけどね。
「陸戦型達がビームライフル持ってるのも厄介なんだよなぁ」
こっちは身体はもちろんシールドもビームコーティングなんてしてない、つまり保険がないのだ。
んー、こういう時にステータスを見ると……あるし、しかもシールドだけビームコーティングってまた中途半端な。改めてシールドを眺めてみると確かに色というかツヤというかが違う。
そういえば既にビームコーティングされたモビルスーツを20機ぐらい喰ったからそれの影響かな。
中途半端ではあるけどこれでちょっとだけ安全マージンが上がったか…結局全部躱してるからどうとも言えないけどな。あ、シールドのビームコーティングってもしかして燃料消費で修復されるのか?ならシールドも体の一部判定?つまりシールドも燃料消費で修復可能なのか?!
くっ、スペアがないから実験ができないのが辛い。
「まずはジオンからの依頼を終わらせて——と行きたい所だけど間違いなくBDがいるよな」
「間違いありませんね。むしろ居ないなら何処かに隠された基地があると思ったほうがいいでしょう」
さすがに基地の守備にいるであろうモビルスーツ中隊以上とBDを同時に相手しようとは思わない。
流れ弾でもビームライフルに当たれば痛いで済むかどうかわからないし、何より人混みは嫌いだ。
「なんですかその思春期の子供がいいそうな言い訳は」
「今、ナチュラルに心読んだな」
「私、ニュータイプですから」
「偉い人はいいましたニュータイプはエスパーではありません。と」
「その偉い人って誰ですか」
ハッ?!しまった。まだロリコン仮面はサングラス残念イケメンになってない?!
「俺が言った」
「…………ではどうします。指定されている基地から手前にはもう基地はありませんし、何より依頼主であるジオン軍が劣勢ですよ」
スルーされてしまったがマリオンちゃんが言う通り問題は俺達よりもジオン軍の劣勢なのだ。
俺達が自己補給できるなんて知らない連邦軍は俺達の補給源であろうジオン軍基地への攻勢を強めた。
不幸中の幸い、俺達の居場所をあえて隠さないようにして連邦軍基地の近くを彷徨いている事からBDはその基地に拘束できている事で手助けはしている。
BDがジオン軍基地に向かえば1時間しないうちに陥落するだろうから大きな手助けになってるんだけど…ジオン軍側からすれば俺達がサボっているように見えるので早く攻略しろと催促されている。
実際BDが配備されている基地は現在ジオン軍基地に攻勢を仕掛けている部隊の半分以上の補給を担っているっぽい。つまりここを落とせば補給が滞り、撤退を余儀なくされるだろう。
「輸送隊を襲おうにも肝心な物資はミデアで送ってるっぽいし俺達しか動けないことを知ってるのか補給隊をバラバラに出されて半分も狩れないし、単独では無理があるよなぁ」
そういう意味ではさすが連邦、物量が違いすぎる。
「おかげで燃料が増えてますけど」
連邦の物資の多さにびっくりだ。
もっとも苦肉の策かもしれないけど。
「それも最近になって輸送車にトラップを仕掛けてる場合があるのは厄介だ」
時限式なら早々に食べてしまえば問題ないがリモートコントロールによって食べる前に爆発させられた場合はダメージが相応にある。
まったく、オチオチ食事も出来ないじゃないか。
「それにしても陸戦型を既に100機は撃破してると思うんだけど、先行量産型にしては多くね?」
「多いですね。恐らくですけど私達の存在が影響しているのかもしれません」
「ん?なんで?」
「正規量産型にあたるRGM-79ジムですが陸戦型に比べると低スペック、そしてその陸戦型を特殊機として改造されたのが私達ですからジムの生産を諦めたか、もしくは更なる量産機の高スペック化を目指し、それまでの繋ぎとして以前とは違いRX-78ガンダムの余りではなく、正式に先行量産型陸戦型が採用、生産されている可能性があります」
あーなるほど、俺達がジオン軍に使われている=ジオン軍はそのデータを元に更にモビルスーツ開発するだろうから原作のジムじゃキツイかもしれないからちょっと様子見、って感じか。
…でも陸戦型って高いんだよな。大丈夫か連邦。
ん?そういえば初期の方に戦った陸戦型と若干見た目が違う気がするし、最近あいつらの機動力が落ちてる気もするからもしかして装甲変えた?味も微妙に変わってるし。
何にしてもこれでジム・スナイパーII相当の機体が出てきたらジオン大ピンチだな。もっとも俺の知ってるジオン軍基地は今でも大ピンチな訳だけど。
「でも地上で使う分には航空機と戦車でいいと思うんだけどなぁ、宇宙は旋回速度の差でモビルスーツ有利かもしれんけど」
うるさいハエが居なくなるから俺達からすればモビルスーツにしてくれた方が助かるんだけどね。
「また来ましたよ。3時の方向、ミデアで——BD降下確認、続いて陸戦型ガンダム3機、データに無いジムタイプ3機です。RGM-79の派生機か後継機だと思われます。注意してください」
データに無い、ねぇ。
マリオンちゃんが警戒してないってことは脅威度は低いはずだ。
「俺からは見にくいな。マリオンちゃん拡大できる?」
「はい、こちらです」
このシルエット…確かジム改か、普通のジムが丸顔の昔の日本人としたらジム改は彫りが深い外国人顔だよな。
ジムの完成が早まってるな。
マリオンちゃんが知ってるジムは本当にノーマルタイプのジムってことか。
もしかすると装甲の必要性の無さに気づいたか?ぶっちゃけ動いて壊れなくてビームコーティングさえやっとけば俺達対策にはいい。ザクなんかの実弾程度なら本来のジムの装甲で十分だ。つまり装甲の重要性ってほとんどないんだよね。
強いて言えば重さ?
「またどっかにガンタンクがいるんだろうなぁ、面倒くさ———」
「砲撃来ます」
言ってるそばからとか!しかも数多いって!
それはまるで暗殺者一家の龍星群のようだ…威力は断然こっちの方がありそうだけどな。
まさか砲撃の面射撃とか埃被っちゃうじゃないですかヤダー…ま、俺達に掛かればそれぐらい——
「うお、なんか別方向からも来た?!なんかめっちゃ気合入ってんな今日は」
「モグラさんから圧力が掛かったのかもしれませんね」
明らかにガンタンク30×2はいるな。毎回邪魔されるけど距離が離れすぎてて逃げられるんだよ。
しかも陰をチラッと見たけど多分量産型だ。分離できなさそうだったから、その分丈夫そうだったけど…砲しか撃たないガンタンクって…自走砲とかじゃ駄目なんだろうか?
いつもはBDが先行して俺達と戦い、やばくなったら命を張って逃がす役割の護衛。
「けど、今回はマジっぽいな」
「そうみたいです。BDはもちろん他の6機からも気迫を感じます」
マリオンちゃんとの共有で感じるプレッシャー、相手がニュータイプではないから強くはないが一般兵のそれとも違う。
「こりゃもしかしてエース級か?でも連邦軍のモビルスーツ乗りって機種変に苦労しそうだよな。ガラケーからスマホに変わった時みたいに」
「ガラケー?スマホ?」
「そこはスルーでよろ〜」
まずは挨拶代わりに立ち位置を変えてBDに1射撃、軽々と回避された…と見せかけて本命は後ろにいる陸ガンを狙ったんだけどそっちも回避、やるねー前回これで2機潰したのに。
ビームライフル7発、ミサイル・ランチャー1セット(左右1発ずつ)ほど撃って撃墜数0…どころか与えたダメージ0。
「間違いないな。こりゃエース級か」
「赤い彗星はこれほどではなかったんですけどね」
多分不意打ちと機体性能の差だろう。
今回のようにシャアとも正面から戦えばやられないまでも苦戦はした…かもしれない。
シャア専用オーリスならもしくは——どうにもならないかw
別に今も苦戦してる訳ではない。ではなぜ倒せないかというと…ただ単純に逃げるのとフォローが上手いのだ。
「レオン、左に回り込め。マイクは右、オレがフォローする」
「「了解(です)」」
「カレン、サンダース!俺達はユウ中尉の援護だ」
「「りょーかい(了解です)」」
通信を傍受、なんだこの豪華なメンバーは?!ホワイトディンゴに08小隊だとぉ!!
なんか殺すの勿体無いなー…殺すけど。だってこれからどんだけキャラと会うか分かんないし、と言うかユウ・カジマのお仲間が出てこないって事は最初に出てきた奴のどれかがそうだった可能性高いし、今更だよなーって。
そういえばブルーディスティニーにホワイトディンゴってセガ出身ゲーム勢揃いだな。
「ギニアスさん、あなたの妹の悪い虫はオレが始末しておきます。リア充なんて死んじまえ」
「ギニアス?確か名家サハリン家の現当主でしたね。落ち目ですけど」
おおう、マリオンちゃんは相変わらず色々とバッサリ斬るね。
「妹ということはアイナさんですか?」
「おや、もしかして知り合い?」
「ジオンで何度か、そうですか…アイナさんの想い人なんですか?」
「むしろ相思相愛?ただ見たらわかると思うけど敵同士だからねー一種の禁断の愛だな」
「そうですか…」
「ん、なに?助けてあげたい?」
「どうなんでしょうね。私自身もよくわからないんです」
特別親しい関係ではなかったけど顔見知りよりは知ってるから困ってるのかな。
「なら殺さないようにしますか、別に俺達に殺す理由はないし」
そう、別に機体を喰うだけなら殺さなくても喰える。
多少面倒だけどマリオンちゃんの心残りになる可能性はなるべく排除しときましょう。
「ありがとうございます」
「なんのなんの、マリオンちゃんの憂いを晴らせるならこれぐらいのこと何ということはないわ!」
シロー・アマダ、思わぬところで生存フラグ立ちました。おのれ何処までリア充なんだ!!
「でもここで他の仲間を失えばもしかしたら会えないんじゃ…いや、ここはシローをアイナの下へ連れて行くのも一興か?」
そういや宇宙打ち上げってそれなりに設備いるからもしかしたら報酬を払ってくれるとするならギニアスの基地なんじゃないか?
そうすれば皆ハッピーエンドだ!(生きてる人だけな)
よし、とりあえずシロー・アマダは捕虜だな。
仇討ちをしようとなんて思われても面倒だから08小隊は生き残らせとくか、捕虜にするかは別だけど。
でも…偶然死んじゃったらその時はごめんね?