第百二十一話
お正月っていいよね。
特に寝正月とか。
ニューギニア特別地区でも三が日を休みとしている。
現代日本みたいに何処かに旅行に行く人もそこそこいるが、基本的には家でゴロゴロするのがニューギニア流。
そうそう、ゴールデンウィーク頃に日本から旅行客でホテルの予約がいっぱいになったらしい。
いったいなんで?と思って調べてみたら、なんと……コスプレをするためなんだとか。
日本では一時期過激なメイド服や執事が溢れていたそうで、それに抑えるためにコスプレが規制されたんだって。
そしてどうやら何かの拍子にニューギニア特別地区のコスプレ自由を知ったらしく、なら行くか!という流れで予約が殺到。
現在ホテルが一杯になったから民宿のようなマイナーな施設にも予約が舞い込んでいるらしい。
「ということで、軍需ではなく民需で利益になりそうな話が出たところで対策会議を始めます」
「コスプレ……いやーーー」
「コスプレ怖い」
なんかマレーネとはにゃーん様がトラウマになっているようだがそこはスルー。
「とりあえず観光パンフレットの作成と日本人特有のマナーを把握、巡回要員の増援は当然として……」
「やはり命題はBL文化侵入の阻止ですね!」
「「「「「異議なし」」」」」
うむ、BL本場の住人がやってくると思うとどうしてもフラウが頭を過る。
なんとしても水際で止めなくてはならない。
「しかしどうやって判断するんですか?」
「まずはアメ公がやってる問答無用な持ち物検査で没収、帰国の際に返却するという形でいいだろう」
アメリカに腕時計とかデジカメなどの高級品を持って行く場合、手提げバッグに入れておくことをお勧めする。
なくなっても保証してくれませんし、いざ無くなってから訴えるとめっちゃ時間を喰うことになるからな。
「現物さえなければ拡散しないと思うが……」
「問題はブルーパプワ内にその火種になりそうな人達がいるってことですね」
そうなんだよ、フラウ感染症患者がいるんだよ。
感染源と結構長い間隔離できたから数は減ってるんだけど、陽性は回復しつつあるんだが、陰性(他人に進めたり、TPOを守らないやつら)はなかなかに手強い、そんなやつらと日本人が合併すれば……想像もしたくない。
「ゴールデンウィークのシフトは感染者を優先すべきだろうね」
「わかりました。今から調整します。ですが全員を、と言うのは無理がありますよ」
「ならばコロニーへ研修に行かせればどうだ。宇宙を1度体験してみるのもいいだろう」
おお、いつもは俺達が舵取りしてるのに今回は皆が積極的に意見を……そんなに嫌なんだな、BL。
「我らの地に慰安旅行などどうですか」
「ノリス……いい加減暑いニューギニア人がインドネシアやベトナムに行きたいという人は少ないと思いますよ。むしろ友好の証としてティターンズの領地などがいいかと」
なるほど、慰安旅行ねぇ。
元々そこそこ人気がある旅行先であるチベットも今となってはティターンズ領だしな。
「よし、慰安旅行ならいくらでも調整が効くだろ。それでいこう」
「では私の方からティターンズに連絡しておきます」
そうか、こんな細々とした仕事をやってくれるのか、助かるぞマハラジャ!
そういや、ダイクン派をかなり取り込んでるが、デギンがいること伝えてないけど大丈夫だろうか?最近は贅沢を控えて痩せたからパッと見ただけじゃ気づかないだろうが……まぁマリオンズが護衛に付いてるんだから大丈夫か、この前ダイクン派がデギンの講習受けてたし。
「あ、お汁粉おかわり来ましたよー」
ニューギニア特別地区は暑いんで、もちろん冷たいお汁粉だ。
最近、ここが沖縄なんじゃないかと錯覚し始めている。
ブルーパプワの食堂におにぎりは外食で手を出してるからもちろんだが、納豆とかイナゴの佃煮が並んでるあたり末期だと思う。
そこでマリオンちゃんがマゼラアタック……つまりイナゴの佃煮の正体を知ってしまったんだが……うん、絶叫してたな。
「今年から本格的に農業用ハロが導入されるので各部署サポートしてやってくれ。ただ、あまり農業の効率化をされると働かなくなる可能性があるから土地とハロの値上げを検討中だ」
あまり農業が楽で儲かりすぎると他の仕事に人が回らなくなる可能性があるからバランスには気をつけないと。
「あまり安すぎると市場が荒れるので問題ないかと」
「むしろ通常のハロより2回りほど大きいハロにして1機の値段を上げれば問題ないかと」
よし、その意見採用。次回ロットからそうするか。
新たな設備が必要になるが必要経費だから折れるとしよう。
大きくなる分だけ丈夫になるし、収穫時の収納も楽になるはず。
「アプサラス・アーマーの設計も進んでいるぞ」
「一応GOサインは出したけど、アーマーってモビルスーツに対してのアーマーなのか?それともアプサラスにアーマーって意味か?」
「既存のアプサラスにアーマー化して美しくなるなら既にしている。今回はモビルスーツのフルアーマーという意味だ」
でも、それってアプサラスの意味なくね?と突っ込むのは野暮ってもんだろ。
とりあえず設計図が出来上がるまでは暖かく見守るとしよう……暴走しないように注意しとかないとな。
「警備部は最近特になにもないため怠けが出てきています。注意はしていますが治るような気がしません」
「わかった。ちょっとナンバーズが〆に行くからと伝えておけ」
警備部とはいえ死神の陽炎であることに変わりなく、死神の陽炎の標語は常在戦場としている以上処罰対象、マリオンちゃんズ先生、遠慮なく殺っちゃってくだせぇ。
「うむ、任せて」
シローが顔を青くしているが隣でアイナに慰められてるから同情はせん。
「他にはあるか?なければビンゴ大会に移るが」
「「「「特になし」」」」」
ちなみにビンゴ大会はマリオンちゃんズは不参加。
直感で当てちゃうからね。
はにゃーん様が俺達を避けてた理由が判明した。
どうやらニュータイプ研究のモルモットにされると思ってたらしい。
いやいやいやいや、研究のモルモットにするならマリオンズでいいから、わざわざ品質落とす意味ないから。
それにもうちょっと質を落とせば養殖ニュータイプ達がいるんだから心配する必要性無いっての……まぁそこまで疑ってしまうあたりフラナガンに居たっていうことの証かもしれん。
マリオンちゃんが少し本気を見せるとそれも粉々になったようだけどな。
ニュータイプレベルが高いだけのことはあって、格の違いを認識したようだ。なかなかの荒療治だな。
そういうわけで結局俺は1度も捕まえられず普通に会えるように……なっておらず、相変わらず逃げられている。
マリオンちゃんが変なことを囁いたんじゃないかと睨んでいる。
まぁ追いかける楽しみを残してくれたことには感謝するが……最近蒼い死神が女の子の尻を追いかけてるなんていう噂も出てきているので注意が必要か。
そしてマレーネが俺達の周りによりつかなくなった。どうやらコスプレさせられたのがよほど恥ずかしかったらしいな。
セラーナはいつもと同じくよく遊びに来るのは変わらない。
「仕事の邪魔もほとんどしないから別にいいんだけど、マハラジャ、育児放棄してないよな?」
「そんなわけありません。それよりティターンズの情報でガンダム開発計画のGP02に関して情報が入りました。どうぞ」
へー、対物理攻撃用にウェラブル・アーマー、それにビームサーベルより間合いを広くするためにツイン・ビームスピアかー……って何処のジムストライカーやねん。
ジムクゥエルより旧式だろ、アレ。
まぁウェラブル・アーマーはリック・ディアスに引き継がれてるから意味ないことはないだろうけどさ。
「今回の情報は正確にいいますと、GP02はいくつもの設計プランがあるようです」
「試行錯誤中ってことか、一応戦時ではないから問題にはならないんだろうけど……この情報、あえて流されたんじゃね?」
「……やはりそうでしょうか」
ベースとなるモビルスーツの情報じゃなくて武装の情報から漏れてるってあたりから怪しいって。
「ウェラブル・アーマーと名前を変えてはいますが、内容は随分昔からあるリアクティブ・アーマーと同じものですし、ビームスピアに関してはツインにする意味が何処にあるのか」
色々ツッコミどころがあるよな。
んー……そうだ。オーガスタ研究所にマリオンズを派遣してみるか。
買収するには多分資金が足りないから派遣(工作員的な意味で)するのはアリかな?確かサイコミュの小型化や変形モビルスーツ、インコムなどムラサメ研究所に比べると華々しい成果だ。
もしかしなくても買う場所間違えたか?
「ムラサメ研究所から報告がありました。大体の設計が終わったので、後はブルーパプワの開発者と細かく修正するだけのようです」
「プロトタイプサイコガンダムか」
実戦に耐えうるならファンネルを外付けでもいいから装備させたいな。
ファンネルそのものは宇宙でしか使えないんだから万が一推力が足りなくてもある程度はカバーできるだろう。
いっそのことファンネル専用機でも用意するか?
何にしても自分の手で原作のモビルスーツを作り出せるなんて嬉しい限りだ。
マハラジャに手配を任せ、他からの報告も読む。
インフラ整備も着実に進んでいるんだが、人口増大により渋滞が深刻化してきている。
人口集中させているせいもあるだろう。自然を守るには人口を集中した方が負担が少ないから仕方ないんだよ。
対策として現代日本でも行われている公共交通機関の数を増やし、利用を促す。
公共交通機関って基本赤字運営だから政府の負担が増えるな。
国債を追加で買っとくか、いや寄付にすべきか?
「もういっそモビルスーツを交通手段にしてやるか!」
「高級車過ぎるでしょう」
1台億円とかw……ってツッコミどころはそこか?