第百二十三話
ゴールデンウィークが過ぎた。
感染者の隔離にはほとんど成功した。
多くの感染者にBL聖地計画の情報をリークすると多くが興味を示し、自分達が宇宙で過ごせるか試すための宇宙旅行に赴いたことが幸いした。
日本からもBL大使という巫山戯ているかのような肩書を持つ者まで訪れる始末、こりゃ本格的にBL聖地計画を進めないといけない……ということで聖地(コロニー)建設にあたって日本と共同で行うことが決定した。
ただし、コロニー自体の所有権はサイド5を再建するために連邦とジオンとで結んだ条約によりニューギニア特別地区が保有するのは決定事項だったので関連企業を多く誘致し、優遇することで合意。
元々輸入大国である日本は重要であるインド洋に続く航路のほとんどをジオン地球領とニューギニア特別地区のせいでズタズタにされ、優良輸出国であった中国とは戦争で関係が悪化して市場が縮小されたので新しい市場が小さくても欲しかったのだろう。
日本と協力して作られる第3コロニーは年末に完成する予定だ。
今回のコロニーは他のコロニーより大型なものを予定していて、当初の予定ではBLの聖地となっていたが、さすがにBLというジャンルだけでは維持する方が大変そうだということで、オタクの聖地となることになった。
なんかジオンや連邦各地域からも声が掛かってるんだが……どうしようか……まぁマハラジャとマレーネが調整してくれるだろう。
「それで次のハロのバリエーションは投影機か」
「はい、オタクの聖地と謳うならそれに相応しい何かが必要だと考え、思いついたのがアニメや等身大キャラなどをハロでコロニー内外で投影することです」
原作のコロニーより近未来的になりそうだな。
「既存のハロより高音高画質、データ容量の増設、そして新しい要素としては何かの拍子に転がらないようにする足……他にもガチャを内蔵する、フィギュア製造販売機など案としてあがってますね」
途中まで納得できるが……フィギュア製造販売機ってなんぞ?3Dプリンタを内蔵させるってことか……資料を見る限りそうみたいだな。
フィギュアをそのまま詰めるより素材を入れる方が多く入るのか……いやいや、ショップで買えばいいじゃん。
「ハロにあるデータから製造されるので素材切れはあっても売り切れはないのでいいと思いますよ」
マリオンちゃんもまだまだ甘いな。
世の中絶対数が決まってるから値段が上がるんだ。
希少性=高額=コレクション性が高いということであり、数量が無制限というのは価値が少ない。
そんな機能を持たせるだけの価値はないだろう。じゃなきゃUFOキャッチャーがあれほど根強い人気があるわけない。
ガチャを付ける方が妥当だ。
「それなら何千、何万という種類を用意してその中から毎日ランダムで抽選されるようにすれば希少性も出ませんか?」
「そこまでする価値があるかなぁ」
正直フィギュアを機械任せに作らず、人の手で作った物を売った方が付加価値がつく。
機械だとどうしても所詮は……という思いがどこかにあったりする。
もちろん、どちらにしてもファンなら揃えるべきものだけどさ。
手作りだとそういうオタクの就職口になっていいと思うんだ。
そういやオタクの聖地を作るのはいいが、金を稼ぐ手段も考えないといけないか。でないと観光地としてはいいかもしれないが移住などがうまくいかない……つまり感染者を隔離できない!
「雇用が思ったより生まれないな」
「絵描きや小説家、造形師などは個人の才能が左右されますから限度があります」
一応自分の作品を自由に販売することが可能なようにする予定だが……それに日本企業と話し合い中だが、聖地限定で著作権フリーにしてもらうつもりだ。
日本政府からもガンガン圧力を掛けてもらうようにしたから多分大丈夫。
これで1年中コミケ状態になるな。常態化しちゃうから新鮮味が薄くなるだろうからイベントも考えるけどね。
「廃品回収業はいいとして他に何か考えないといけないな」
「メンテ用ハロの存在で船などの修理が簡単にできるようになりましたから運送業とかいいじゃないですか、地球と往復する便が増えるでしょうし」
それはいいかもしれないな。
人を運ばず、貨物なら問題が起きにくいか。
現在、輸送船の運用は整備や修理などを除けば車とさほど変わらない程度になっている。
事故があった場合は真空に漂うことになること以外は、だが。
それも交通量が増えている関係上、事故があれば酸素が無くなるまでに救援されるだろう……多分。
「なら宇宙航行免許でも作らせるか」
「ですね。それでも働き口が足りませんが、それは追々考えましょう」
工業コロニーサファイアにいくらか回すかな……感染拡大しなければいいけど。
予定通り5月にプロトタイプサイコガンダム試作機が完成した。
デザインは原作通りのプロトタイプサイコガンダムだが、制式採用になった場合ヴィエーチルに変更される予定だ。
「武装が設計図と随分変わってないか?」
「当初の予定であった有線サイコミュ式『腕部』ビーム砲は新たに開発した高出力ビームライフルに変え、有線サイコミュ式可動砲は予定通り肩上部に2門、腰カバーの内側前後に2門ずつ、計6門が装備されている」
ギニアス、お前こっちの開発にも首突っ込んでるのか。
それにしてもビームライフルの開発してたのか、確かにモビルスーツの武装はあまりチェックしてなかったが結構な予算を割いている。成果は特になかったから忘れてたがやっと成果が出たか。
「ブルーニーが確認してないだけで他にも実弾兵器の開発もいくつか成果が上がっているぞ」
マジで?
「これがリストだ」
クラスターミサイル……あれか、クラスター爆弾に推進剤付けたやつか。誘導ができないから数で補おうということらしい。
バズーカで2発1弾倉として、子ミサイルの飛ぶ方向は前方に向かってある程度集束した形で拡散するタイプと花火のように広がるタイプが撃つ前に設定が可能らしい。
これはマリオンズやアムロ、養殖ニュータイプなどの回避に長けているパイロット達やノイエジールのようなビーム兵器が通じない高機動機対策に開発されたとのこと、狙い通り出番はありそうだ。
弱点はこの手の兵器共通で、拡散する前に迎撃されることだがそれでも有用なのは間違いないだろう。
問題はバズーカはあまり使わないことだけどな。
バルカンは威力を若干落とし、軽量化、速度上昇をさせてミサイルや戦闘機の迎撃用に調整された。
そもそもバルカンでモビルスーツを落とせないなら威力なんてそんなに必要はない。人間ならもっと必要ない。
マシンガンは装甲が厚いモビルスーツ対策にと貫通性に優れたものが用意された。
まぁそれでもノイエジールのような機動力だと一般兵は当てることすら難しいから対策となっているかと問われたら微妙としか答えられない。
俺達は機動力で追いつけるから問題無いとして、マリオンズや養殖ニュータイプには必要な装備か。
まぁそれは置いておくとして。
「プロトタイプサイコガンダムの性能はどうだ」
「機動性、運動性はヴィエーチルを大きく上回る……はずだ。サイコミュなどの装備を外せば次世代機と言っても過言ではないだろう。残念なのはブルーニーの依頼でミノフスキークラフトの優先順位を下げたせいで浮くことすらもままならず、ゆっくり降下してしまうことか」
どっかで聞き覚えがあるな……あ、俺達かw
「推力はアプサラスの生産で得たノウハウで優れたブースターを開発できた。運動性はヤマト、ヴィエーチル、αタイプのハイブリットだ」
「日本、連邦、ジオンの合作か……それだけあって値段がたけぇ」
「簡単に計算してみたがヴィエーチルの3倍だな。量産すれば2倍程度に落ち着くだろう」
それでも高いっての、お前の大好きアプサラスがいくつ作れると思ってんだよ。
「日本製の部品や機器を購入して使っているのも1つの原因だ」
納得、つまりヤマトの部分が割増で高くなってるわけね。
代替……ができるならもうしてるよな。
「無理だな。ブルーパプワで生産しているもので替えるとなると10%は性能が下がると思ってくれ」
それは痛い。
「この機体は試作陽だから真剣に考えても仕方ないんだがな」
「それもそうか」
ちょっと早まったか、速く量産して俺達の餌として献上せよ!
あ、そういやジェニスやドートレス、SFSなどを喰ってなかったな。
どんな味がするのか今度チェックしないとな……ハロも喰ってないか、なんとなく海ぶどうとかマスカット、葡萄とかっぽいけどさ。
「では、いつもどおり死神の鎌が試運転か」
マリオンズガンバ!
応援が聞こえたように張り切ってやるのはいいが……オーバーヒートさせちゃいかんだろ。
しかし、なかなかの機体だ。
まだ俺達の方が機動力が上だが、それでもなかなかのもので養殖ニュータイプが操るαタイプ10機を全滅させた。
試作品でこれだから完成品は……と期待してしまっていいだろうか?正直ムラサメ研究所は負け組臭いから困らされる。
「正直小型アプサラスIVだよな」
「全然違う!アプサラスIVは長くて太くてたくましい!」
なんか下品なこと言ってるように聞こえるのは俺が汚れてるからだろうか。
「でもアプサラスIVと違いはどこよ」
「空が飛べる!大気圏まで上げれる!装甲が厚い!緑色!」
「モビルスーツサイズにしたら無くなりそうなものばかりだな……というかカラーは変えられるっての」
こうして本格投入ではないがプロトタイプサイコガンダムが一先ずできあがった。