第百二十七話
ジオン、アナハイムから海賊狩り参戦の要請が来た。
海賊がゲリラ戦を仕掛けて損害が出てるんだってさ……知らんがな。
という訳で俺達も参戦することにした。
「ただしレインボーゴーストでな!」
「よーし、頑張りますよー」
レインボーゴーストだから当然海賊側だけどな!
いやー、これから先活躍できるかどうかわからないから最後に威勢よく暴れてやろうではないか。
マリオンズや死神の陽炎、衣はもちろん討伐側として参戦している。そして俺達にジオンやアナハイムの情報を流してもらう予定だ。
「さて、割合はアナハイム7:ジオン3で狩る予定だが……」
「とりあえずマリオンズからの情報待ちですね」
待っている間に少し自我なしっ子改めリリーナ(ピースクラフトではない)はナタリーに押し付け……ゴホン、面倒を見てもらうことにした。
ナタリーも何かを感じ取ったのか知らないが甲斐甲斐しく面倒を見ているらしい……が、はにゃーん様がしっと団に入団したようだ。マリオンちゃんがしっとマスクを贈ったんだけど引き攣った笑顔で受け取りタンスの肥やしになっている……よかったな、捨てなくて。捨てたら……
はにゃーん様はことあるごとにリリーナに絡むらしいが……まぁのれんに腕押し、なんの反応も返ってこないんだけどな。
そしてそれを嗜めるナタリー、更に空回りするはにゃーん様、そして我関せずならぬ我無しなリリーナ。
そのうちはにゃーん様が折れることになるだろう。
それにしてもはにゃーん様のコミュ障は俺達が思っている以上に根深いようだ。
これでMMOとか始めたら最悪だな。最近はモビルスーツコレクション、略してモビコレ、ネット上ではMSコレと呼ばれるどっかの艦隊っぽいものが流行ってるし……まぁ作ったのは俺達なんだが。
「何とかしないと本格的にニートになりそうだな」
「大丈夫ですよ。その時は無理やりニュータイプとしてのレベルを上げてあげればブルーニーさんの言うハマーン様になりますよ」
それはつまり、マリオンズ式ニュータイプ覚醒訓練を施すということか。
まぁアレを受ければ多少の障害は一発で治りそうではあるが。
「ヒールも最低限の再生だけにすれば色々と楽しいことになりますよ」
それはハマーン様じゃなくて強化後のキャラ・スーンみたいにならないか?
「あ、情報来ましたよ。思ったより近くにいますね。通常速度で1時間弱のところにジオン、アナハイム混合部隊がいるようです」
「では今回も操縦はマリオンちゃんに任せるぞ」
「私の経験値はマリオンズの経験値、私が強くなれば皆強くなる!」
しかも年に1人増え続けるという、なんというチートにして無理ゲー。
まぁ、コロニーができたせいで戦力分散してるし、戦争もしてないから1人増えても劇的に変わったなんて思えないけどな。
防諜がより厳重になったのは間違いないけど。
今回は経験値的な意味で奇襲ではなく、正面から堂々と戦うことにしている。
「目標捕捉、ブルーディスティニー、マリオン・ウェルチ、目標を駆逐する!」
誰だよ、あのBL臭漂うネタガンダムネタ教えたの。(フラウです)
俺が、俺達がガンダムだ!
言わないといけない気がしたから久しぶりに言ってみた。
「以前は警備業の半端者相手でしたけど、今回はさすが本職さんですね。動きが違います……ジオンは。アナハイムは相変わらずですね」
モビルスーツで区別するまでもなく、1つの機動でジオンとアナハイムが判別できるほど差がある。
さすがジオン、開祖なだけあってパイロットの操縦ノウハウは大したもんだ。
それに比べアナハイムは……まぁ深くは語るまい、一言だけ言わせてもらえれば所詮新米、だな。
「敵はチベ級ティベ型1隻とムサイ級の後継艦、もしくは改修艦2隻、そしてコロンブス級2隻、ガルバルディβ9機、ゲルググM9機、ドムII25機、ハイザック25機、計68機ですね」
わかりやすく言うとティベや新型ムサイ級の3隻がジオン、コロンブス級がアナハイムだな。
……にしてもアナハイムは力入れすぎじゃね?
それにドムIIやハイザックが持つビームライフルが以前と違っている。俺達がビームライフルを開発したようにアナハイムも開発していると考えるのが妥当か。
「チョバムアーマーが貫通されると思って戦った方がいいな」
「ですね。元々受けようと思わないと当たりませんから問題無いですけど」
マリオンちゃんが男前すぎる。
新型ムサイ級はコムサイが撤去されて格納庫が追加されてるっぽいから恐らく宇宙専用に特化させたんだろうね。
そもそもコムサイは中途半端過ぎる性能なんだから除けて正解だろ。
コロンブスはモビルスーツ50機が搭載できるのに25機しか出てこないあたり補給物資も運んでるんだろうな。
是非とも鹵獲したい、というかコロンブスって海賊達にとっては宝箱扱いだったりするが本当にそのとおりだよな。そうなると護衛達は宝箱を守るモンスターかトラップといったところか。
「さて、前々から欲しいと思っていたガルバルディβがついに手に入るな」
「鹵獲用と食料用に1機ずつ確保しないといけませんね」
ガルバルディβは今まで露出が少なく、確保する機会が少なかったから今回は絶好の機会だ。
それと新型ビームライフルも確保しないとな、プロトタイプサイコガンダムと一緒にテストしている新型ビームライフルは、動作が不安定なために完成にはしばらく掛かると聞いているのでそれの手助けになればいいな。
さて、そろそろ戦闘が——
「お、っと、やっぱり新型ビームライフルですね。射程がこちらより長いようですし、この距離からなら問題ありませんが、こちらの射程に入った状態だとチョバムアーマーを貫通するようです」
肩のメガ粒子砲なら射程内だが、今はチョバムアーマーのせいで使用不可だから間合いを詰めるまでは一方的にやられるばかり……まぁ当たらないんだけど。
厄介なのは新型ビームライフルを持つモビルスーツ50機もいることだ。
アウトレンジから弾幕が襲うが運動性が落ちている俺を軽やかに動かすマリオンちゃん。
これが通常装備なら相手が土下座してくるんだろうなぁ。
機動性はこちらが上回っているので一方的に攻撃される時間はそれほどではなく、こちらからもお返しに瞬く間にドムII3、ハイザック3を落とす。
それも全てコクピットを貫いている。
「ちょっと勢い良くやり過ぎ、これじゃ俺達の関与が疑われるぞ」
「あ、そうでした」
ガルバルディβが落とせていないのはシールドをきっちりしていたためだ。やはり練度が違う。
それにガルバルディβ自体のスペックは前評判通りなかなか優秀なようでギャンの血族だというのも納得できる。
ヤマトの高性能さは制御系(特にOS)などから来るものだがガルバルディβは出力や推力など機体そのもののスペックが高い。この2機を融合させれば次世代機ができるだろう……まぁαタイプがそれに近いんだけどね。
マリオンちゃんは手加減を始めて、腕なし足なしの敵が増え始めた。
そうそう、そうやってネコがネズミを虐めるかのようにジワジワと……窮鼠猫を噛むというが俺達に限ってそれはない。
……うん、すごい傲慢さだな。
「ライフルの射程の違いがわかったようだな。戦い方が半包囲からのアウトレンジになってきてる」
「こちらの射程内だと負ける気がしませんからね」
しかしそうなるとチョバムアーマーは貫通できないので躱す必要もなくなる。
そして相手は所詮素人ということなのかな、ジオンも気づいてないから戦いに集中し過ぎてるだけか?
「マリオンちゃん、今狙うならあそこだ」
「え……あ、本当ですね。じゃあ突撃します!」
こちらが1機だから舐めているのか知らないが、半包囲するってことは分散するということだ。
分散するということは各個撃破……と思うだろ?でも1機だからそれに意味はない。なら何が意味するかというと……
「艦橋に命中、ティベ型沈黙。続いてムサイ行きます」
そう、艦隊の護衛も分散しちゃってるのだ。
機動力は俺達の方が上であることはわかっただろうに距離を置いて半包囲なんてすれば一点突破して艦隊を攻撃することができる。
「さて、ムサイ級も1隻黙らせたし降伏勧告でもするか」
「そうですね。全ての艦を落とせばモビルスーツ達は死ぬしかないんですからね」
海賊だから降伏勧告とかしても意味あるかわかんないけどね。
案の定というか、無視して攻撃仕掛けてきたからコロンブスの動力を撃って行動力を奪う。
「もう1回やってみようか、今度は全部落とすと脅して」
「はい」
さすがに自分達が不利と悟ったのか降伏、人間はコロンブスに詰めて送り出して気づいた。
「あ、これ、どうしましょう」
あ、どうやってコレ、運ぼう?
ムサイ級も解析したいし、ガルバルディβは言わずもがな。
どうしよう……
「……ミノ粉を散布させた状態でムサイ級にコロンブスを牽引させて無人航行でどうでしょう?後はマリオンズ達に回収させれば問題なし」
「うーん、それにするか。何かあったらあったで仕方なし……とりあえずガルバルディβ1機は喰うけどな!」
喰った結果、人参のグラッセだった。ピンと来ない場合はハンバーグやステーキの付け合せにある甘い人参と言えばわかりやすいだろう。
俺的にはあまり好みじゃない、俺は自然な甘さはともかく砂糖や水飴で加えられた甘さはあまり好きじゃないんだよ。
新型ビームライフルを装備して試し撃ちをしてみたところ、ジムクゥエルのビームライフルより当然威力も連射性もいい。
問題はレインボーゴーストでは持ってても不自然じゃないが通常だと問題有りだということだな。
ブルーパプワ製の新型ビームライフルに期待したいところだ。