第百三十話
はにゃーん様、覚醒。
ただしオタクとして。
いったいなぜこうなった。
誰だよ、トップをね○え!を魅せたの。
「そういえばこの前セラーナちゃんに貸してませんでした?」
……結局俺のせいか?!
く、これは早く粛清……じゃなくて更生しなくてはいかんな。
もしかしてヤンデレ的な原作ハマーン様より酷いことになる可能性が……俺しか知らないこととはいえ、これが二次創作なら炎上ものだぞ。
「ヒールでどうにか……」
「病的に嫌いな物や日常に支障が出るほどのトラウマ、依存症と言えるほどの症状などは治癒できることがわかっていますが、今のハマーンさん程度だと恐らく不可能ですよ」
ちなみにフラウの病はマリオンちゃんズのヒールが唯一致命的な物のなかで治すことができなかったものだ。
「マリオンズブードキャンプでどうにか……」
「精神を鍛えるのはいいかもしれませんね。ニュータイプに覚醒すれば……治療に失敗した場合、他のニュータイプに感染する可能性がありますが」
なんということだ、オタク病はこれほど根深いものなのか?!
はにゃーん様の対処を考えているとドアがノックも無しに勢い良く開かれる。
視線をやると話をしていた本人、つまりはにゃーん様の姿があった。
珍しいな、日頃は俺から逃げてるのに……
「貴様にしてもらいたいことが——イタッ!」
原作のハマーン様が降臨したかのようなもの言いにビックリしていたらマリオンちゃんが容赦なく叩(はた)く。
叩くというには痛そうな音だったが……それとあまり人気キャラに色々されると問題が……
「いいですかハマーンさん。色々影響受けやすいお年頃というのはわかりますが自分、そして家族の立場を考えて発言なさい。ブルーニーさんを貴様などと……気をつけなさい。……でないと……こうです」
マリオンちゃんの喋り方がいつもと若干違うんですが……めっちゃ怖いです。
何処からともなく取り出したるは……何の変哲もないハロ。
それを両手で掴み……!
「ハロ…ゥ……」
象が乗っても壊れないようにできている(嘘)ハロを見事圧殺、ハロの声も虚しく響く。
まぁ象が乗ってもというのは嘘だが馬に踏まれても壊れないのは確かだ。
それにしても……マリオンちゃんが残虐過ぎる件についてスレを立てざるを得ない。
「今度はあなたの頭がこうなりますよ?」
そして後でヒールで治すんですね、わかります。
「は、はぃ」
怯えてるはにゃーん様萌え〜……って言ってる場合じゃねぇ。
フォローしてやんないと。
「まあまあ、ハマーン様も厨二を患うこともあるさ」
あれ、ハマーン様が何か貫かれたようによろめき、orz状態に。
「さすがブルーニーさん、見事な一撃です」
いや、俺はそんなつもりで言ったんじゃないんだが……というかはにゃーん様、厨二って言葉知ってるんだな。
「それで俺にして欲しいことってなんだ?」
「これを作って欲しい」
渡されたのは……パトレイバーのデータ媒体。
……南雲しのぶか?!そうなのか?!
「なぜこれなんだ?」
「なんかビビッと来たのよ。それにウサギみたいで可愛いし、白いし」
うーん、言われてみればガンダムやザクより愛嬌がある顔をしているのは認めるし、白色が好きなのはキュベレイから察することもできる。
しかしだな。
「俺に言いに来たということは、プラモ……ってわけじゃないよな?」
「もちろん実機が欲しい」
簡単に言うがモビルスーツ1機にいくらかかると思ってるんだ。
国家間でならオモチャ感覚でやりとりする程度のもの……でもないけど、高級車ぐらいの感覚でやりとりしているが、個人間で億単位の金を使わされてはたまったものじゃない。
「それにこれを開発するとしてどうするんだ。ただ遊びたいだけならさっきマリオンちゃんが言っていた——」
「死神の陽炎に入隊するわ!」
またこのお嬢様は……基本的に世間知らずなんだよな……まぁ基本的にアクシズ自体が世間知らずなんだけどさ。
「まずはマハラジャとマレーネ達と相談しろ。話はそれからだ」
「……」
睨まれても変わらんよ。
マハラジャに相談せずに勝手にはにゃーん様を死神の陽炎に入れてストライキなんてされたらまた仕事漬けの日々が始まるのは間違いない。
マレーネもマハラジャに習うだろう、そうなると……うん、考えたくない。
最近アイナも仕事が楽になったと言っていたし、シーマ様は言わずもがな。そしておまけのコッセルもだ。
そうなるとシローやギニアス、ケンタッキー、ガイアも後に続くだろう。
アレ?なんかブルーパプワが乗っ取られてないか?
「そんなに見ても死の点や線が見えたり、石化したりはしないぞ」
邪気眼なら——と言い終わる前に出て行くはにゃーん様。
よくよく考えたら原作のハマーン様も若干厨二入ってるんじゃね?喋り方とか。
「これで諦めてくれれば……いや、死神の陽炎に入隊させれば叩き直す良いチャンスか?」
「入隊理由が既に末期ですよ」
おおぅ、言われてみれば確かに。
しかし今現在のはにゃーん様に専用機を与える大義名分がないよなぁ。
マリオンちゃんズを贔屓していたりするが、それはあの戦闘能力を知らしめた後だったから問題はなかった。
今のはにゃーん様は所詮幹部の娘でしかない。
鍛えれば全てシーマ様を上回る才能の持ち主だろうが……果たしてこの世界のはにゃーん様はハマーン様になれるのか。
後日、マハラジャがやってきて話し合った結果、成人してから死神の陽炎に入隊させることが決まった。
パトレイバーもどきの専用機も死神の陽炎に入ってマリオンズに次ぐエース級になれば、ということに落ち着いた。
専用機なんて目立つものに中途半端なパイロットが乗ったら戦死は当然として、乗るのが女性だから捕虜になったりなんかしたら……後は言わなくてもわかるな?
将来的にはシーマ様と並ぶ、もしくは上の役職に就いてもらうかも……うん、変な方向(オタクでも危険な類)にいかないよう、しっかり教育しよう。
教官を務めるのはもちろんマリオンズ、ニュータイプにマリオンズブートキャンプ(養殖ニュータイプ覚醒訓練)がどんな結果をもたらすのか楽しみだ。
この訓練自体は今から始める……はにゃーん様、挫折しなければいいなぁ。
ちなみにリリーナもはにゃーん様の護衛として死神の陽炎に入隊することになった……まぁ最初からその予定だったけどな。
11月、ムラサメ研究所から小型化じゃないがサイコミュの高性能化に成功したと報告が入った。
ちっ……命拾いしたな。
更に小型化に関しても来年の春と大雑把にだが目安が立っている。
「そのせいでモビルスーツを再設計しなくてはならんがな」
「アプサラスシリーズが行き詰まってるんだからいいだろ」
「む、ぅ」
最近ギニアスはスランプ気味らしい。
何を考えたのか、アプサラスという名の普通のモビルスーツ(つまり人型)とかアプサラスという名のグラブロとか……それは既にアプサラスじゃないだろ。
「そういえば新たに手に入ったザンジバルの改修しているが実験的にサイコミュを搭載できるようにしておくということでいいんだな」
「ああ、サイズがどの程度になるかわからないからとりあえずオーガスタ研究所から届いたサイコミュのサイズで作ってくれ」
マリオンズは年々増えていくんだからそれに頼った艦が1隻ぐらいあってもいいだろうと思って考え出されたザンジバル級巡洋艦サイコミュ化計画。
サイコミュ兵器は有線式可動砲じゃなくて初期型アプサラスIVと同じタダの可動砲の予定。
理由はマリオンズだけではなく、予備として養殖ニュータイプを複数人でも運用できるようにするためだ。
サイコミュも2つ搭載した上にそれぞれサポートハロが導入されるから問題はないはず。
本来24時間活動できるマリオンズだから予備なんて必要ないように思うかもしれないが他の乗組員がいるので24時間張り付かせるわけにはいかないんだよ。
「サイコミュ化によって必要乗組員と物資が削減できているから積載量が減ったのは大きい」
「機銃を手動でやるのは戦死率も高いからな」
問題はアプサラス同様、Iフィールド搭載機が相手だと圧倒的不利になるんだよなぁ。
実弾仕様のファンネルとか作るべきか?いや、弾数の問題が……むう、原作ではファンネルミサイルなんてものがあったが、コストも高ければ、サイコミュ端末のサイズも問題だ。
今ムラサメ研究所が開発しているのは脳波を送信する側の小型化で、受信する側の小型化などはまだしていない。
つまりファンネルや有線可動砲の先端部などの小型化はされていないのだ。
そしてミサイルの難点はビーム兵器で無効化できることだよな。
「連邦艦の再設計はしばらくは難しいな。連邦側の兵器は今まで扱ってきたのは戦闘機と輸送機、モビルスーツだからノウハウがない」
「やっぱり難しいか……ビックトレーや潜水艦とはわけが違うか」
仕方なし、か。
じゃあ一応練習艦的な扱いで使って、廃艦するかな。連邦はもう買ってくれないだろうし。
「そういえば人伝に聞いたのだがティターンズとエゥーゴが今年中に模擬戦を行うらしいぞ」
マジでか、すっごく殺伐としてそうだな。
模擬弾の中に実弾が混じってるとかあったらリアル血の雨が降るな。
「そしてどうやら死神の陽炎に模擬戦に参加依頼を出すという話もあるという噂だ」
え、嫌ですけど何か?
「ついでに現状のサイコガンダムがどの程度のものか検証してきてはどうだ?」
まぁ、示威行動にはなるか……新たな火種にならなければいいけど。