第百三十三話
俺達が向かう先には50機の的。
的は『てき』の誤字じゃなく『まと』と読む。
もっとも相手からすれば俺達こそが的だと思っているだろう。
さっきから艦砲射撃が行われているが、さすがに相手が俺達1機ということでインチキはしてこないようだ。
ただしミノ粉は散布してないから衰えていない射撃管制システムが元気に活躍しているため恐ろしいほど正確な射撃が行われている。
普通なら瞬く間に撃墜されているだろうな。と言うか、この射撃管制システムが機能するならそりゃ連邦もモビルスーツなんか警戒しないわ。
今回は急遽艦隊が参加することになったので模擬ミサイルはない、これの示すところは死角が存在するということだ。
艦砲射撃を行う砲塔は可動域が狭いし、旋回速度が遅い……もっとも俺達基準であって、ゲルググやジムクゥエルだと撃破されるのは間違いない。
「そういえば何気に宇宙で連邦と戦うのは初めてか」
「終盤は連邦側についてることが多かったですからね」
いきなりがバーミンガムとアレキサンドリア3隻、マゼラン6隻、サラミス12隻というのはなかなか豪勢だな。
注目であるバーミンガムのレーザー砲連装だが、赤い彗星の名言通り当たらなければどうということはないを実践してるから威力のデータは獲得できない。
ただ、やりとりしているデータから察するにレーザーは有効射程が思ったより短く設定されているようだ。その理由は太陽の光が干渉して減衰するっぽいことと同時に少数ならともかく、多数のレーザー砲を放つと出力が不安定になるらしい……って、欠陥武装過ぎるだろ。
ちなみにこのデータは本来マスクされていたものだが俺達のハッキング能力の前には意味を成さない。
「さて、モビルスーツとの乱戦か」
敵モビルスーツとの距離が縮まり、艦砲射撃が止む。
いくら火器管制が優秀と言っても混戦状態だとうっかりフレンドリーファイヤーして上司の魔砲少女に高町流OHANASIされてしまう可能性が高いから正規軍人ならそんな危険なことはしない。そういやティターンズでそんなことしたやつがいたな。
モビルスーツ同士の戦いが始まったわけだが、ネモはジムカスタムの親戚のような存在だ。どういう意味かというと特徴がないことが特徴という点だな。
バランスはとれているがそれだけだ。
もちろん機動力もあるし運動性も悪くない、でも——
「俺達の相手には物足りない」
ビームライフルからレーザーが発射。落とされたマリオンズはこのレーザーを確実に回避していたのに細工が施されていて有効範囲が5倍以上に設定されていた。
今回はそこまで露骨なことはしていないが……動きがいいネモが4機いるな。
明らかにエゥーゴやサイコガンダム達の時とは違い、ベテランっぽい……ん?この動き、もしかして不死身の第四小隊か……あれ?不死身の第四小隊がエゥーゴに?また原作と随分と変わったな。
原作から考えるにバニングがエゥーゴの誰かに繋がっていた……いや、スターダストメモリーが不発に終わっている現状、シナプスも現役軍人だからそっちからエゥーゴに繋がったという可能性もあるか。
さすがに他の素人に毛が生えたようなパイロットとは違い、回避と連携が上手い。
雑魚は既に10機を片付けたが、まだ10機しか倒せてないところ考えるとさすがのエース達だ。
「と褒めておこうかね」
「それでも私達のAIは止まらない!」
魔法先生焼き鳥の作者の初連載作品とかマニアック過ぎる。大体はラブひなの方が有名だろう。
「フロッピーであんな高性能なAIが作れるとか天才ですよね。私達も負けてられません」
「あのへんは時代を感じるよな」
とか雑談してる内にもう10機撃破、そのうち不死身の第四小隊の誰か不明だが4機中1機を撃破した。
多分妙に騒いでる機体はモンシアだと思うからモンシア、指揮が保ててるっぽいからバニング以外の2人のどちらかだな。
艦隊はモビルスーツが減ってきてヤバイと感じたっぽく、艦砲射撃を開始した。
気持ちはわかるが経験の浅いパイロット達の行動を鈍らせるのはどうかと思うぞ。というわけで追加で10機。
これで半数を切ったわけだ。
砲撃を躱しつつ倒しても問題にはならないんだけど、せっかくなので艦隊を襲ってみようと思う。
「結局ビームとレーザーの速度の差は戦いに思うほど左右されませんね」
「通常の人間の反応速度じゃどっちも躱せるようなものじゃないから出力が足りないなら大人しくビームの方がいい」
Iフィールドにどのような作用があるかわからんが、無効化出来たとしてもその前にモビルスーツに落とされるのが山だと思うんだが。
おっとっとっと!!あぶねー、つい格好つけてサラミスの艦橋を思いっきり蹴りつけるところだった。
模擬戦なのに死人が出たら笑えない。
ビームライフルで艦橋と主砲を黙らせて次へ、そこでやはりというか弾幕を通り過ぎて艦の懐に入った途端に攻撃が緩くなる。
味方を巻き込むなんていう風に火器管制システムも設定されてないんだろうな。
色々な問題を考えず敵の撃破だけを考えるなら味方を巻き込んででも攻撃するべきだ。
モビルスーツに懐に入られるとその艦だけでどうにかするのはほぼ不可能、このあたりがモビルスーツに主流を取られた所以だろう。
それから後、ネモ4機、マゼラン1隻、サラミス4隻、アレキサンドリアの武装を剥いだあたりで突然模擬戦が終了させられた。
「新しい艦を早々に落とされるようなことは避けたかったんだろうな」
「連邦はやることなすことが汚い。さすが連邦、汚い。マリオンズの仇はこの程度では終わらせませんよ」
今回で就役するアレキサンドリア級が模擬戦とはいえ早々に落とされるのはさすがにイメージが悪くなるための対処だろう。
勝敗はもちろん俺達の勝ち、これってエゥーゴの顔を踏みつぶした上にタップ・ダンスして四股踏むレベルだよな。
これ、放送されるのか?……多分されないな。
「それでも蒼い死神ここにありってところをやっとみせれたな」
「最近はマリオンズやレインボーゴーストの方が目立ってましたからね」
これでモビルスーツの性能の違いが、戦力の決定的差でないということを教えてやれたと思う。
まぁもっとも技術的に劣っていたわけじゃないけどな。推力とか出力は俺達の方が多いし、疲れと補給は無縁だし、ニュータイプですし、サイコミュ搭載ですしおすし。
それにしてもティターンズ戦でなんで不死身の第四小隊を出さなかったんだ?
「それは恐らくパイロットの2人がお酒を飲んでたからかと」
1人はモンシアで決定だな。
と言うか酒飲んで模擬戦してたのかよ。よく吐かなかったな。
「次の戦いはマリオンズVSティターンズか、TR-1のシールドブースターにビームコーティングされると戦いはそこそこ長引きそうだ」
コクピット焼きするから関係ない、とか思うだろ?俺も最初はそう思ったんだ。でも、TR-1の高機動形態をよく見ると原作と違う点がある。
それは……3枚のシールドブースターのある位置だ。
原作だと背中、両腕という感じだった。しかし、ここでは前面、両肩という正反対な感じに配置されている。
後でジャミトフに問い詰めたら言葉を濁したがどうやら俺達やマリオンズがコクピット焼きをやり過ぎたせいでコクピットを守るような形になったらしい。
結局俺達のせいということだな。
そのせいでマリオンズも速攻で片付けるということはできなくなっている。
まぁ、またデータを弄られるようなことがない限り負けることはない。
連邦のチートに関しては厳重に警告を発しておく。
色々言ったがまとめると——
「今度舐めたことしたらニューヤーク、キャリフォルニアベース、ジャブローにオペレーションメテオを仕掛ける」
と言ったら(引き攣った)笑顔で防止に務めると言ってくれた……信用するからな?
そういやサイコガンダムの改修を少ししたって言ってたが大丈夫か。
「大丈夫ですよ。改修と言っても宇宙仕様にしてからテストしてなかったので色々洗い出ししてその場凌ぎですけど反映させただけですから」
「いや、それって大丈夫じゃないだろ」
言われてみれば宇宙仕様にしてからテストなんてしてなかったな。
それだけ準備に時間がなかったんだよ。
本当に地味な嫌がらせだ。
「あ、そういえば先ほどギレンさんから通信がありまして、ジオンでも模擬戦するから参加して欲しいとのことです」
……俺達が連邦寄りと思われないために対抗してのこととわかっているが、また模擬戦か〜(書くのが)面倒だな。多分これが小説だとダイジェストだろ。間違いない。
と言うか味方に付けたいならIフィールド発生装置寄越せよ!
「模擬戦が始まりますよ」
「お……って、サイコガンダムのバックパックが大きくなってるんだが、不具合でもあったのか?」
「いえ、そうではありませんよ。ちょっとしたサプライズです」
いや、ガンダムと言えばサンライズだろ……って、アレはファンネル?!
「そうです。うっかりしてましたが宇宙戦では有線式の必要なんてどこにもないんですよね……その代わりサイコミュの負担が増えたので機体制御が甘くなってますけど」
質で勝負してたのに、いつのまにか数でも勝負できるようになってしまったらしい。
これで養殖ニュータイプ達までファンネルが使えるようになら連邦はまだしもジオンには戦力は匹敵するんじゃ……まぁ疲労度は半端ないから継戦能力に難ありだけどな。