第百三十四話
これは酷いな。
ファンネルの機動と言うのは何処か機械的でパイロットが操作しているのではなく、サイコミュがある程度簡略化して指示を出しているためだと報告が上がってきている。
ファンネルがパイロットの意志を100%反映するなら射撃で落とされることはない。
そしてこのサイコミュが指示の簡略化しているのはパイロットの負担が大きくなる。原作のララァがエルメスで遠距離からビットを動かすのに副作用があったのはコレなわけだがマリオンちゃんズはレベルが違う。
疲労こそあるが頭痛や吐き気などはないため、普通のニュータイプには掛けられているリミッターを解除して使っているらしい。
その結果は酷いもので、ファンネル1つ1つがパイロットが操縦しているかのような機動をしている。
まぁさすがにマリオンちゃんズ本人らが動かすよりはかなり劣るがシーマ様や新黒い三連星達より良い動きをしているように思う。
「何よりあの小さなファンネルを普通のパイロットに落とせってのは無茶ぶりだよな」
開始1分で25機が撃墜、残っているのはヤザン達と閃光チームだが脚が無かったり腕が無かったり武器が無かったりで戦えているか、と聞かれたら否と答えるしかないな。
シールドブースターや位置取りや連携で何とか凌いでいたが——
「限界が来たか」
ヤザン3人衆のうちの1人が撃破されると他の4機も瞬く間に撃破された。
結局2分の壁は突破できなかったか、ティターンズとエゥーゴに差がないというのが笑える。
つまりエース機と量産機でそれほどの差がないということになる。
もっとも試験運用する前と後だからその動きは歴然とした違いがあるし、何より有線式からファンネルに変わっているから同じにするのはティターンズが可哀想か。
「さて、次は俺達か」
「そういえば前回ファンネル使いませんでしたね」
……
「決して忘れていたわけではない。切り札はとっておくべきものなのだ!」
(誤魔化すブルーニーさん萌え〜)
ということで今度はファンネルを使おうと思う。
対ティターンズは艦砲射撃はエゥーゴ戦同様だがモビルスーツは変わらず30機、これはただ単にTR-1が30機しか用意してないというだけだ。
さて、模擬戦開始……と言いたいところだが、なぜかティターンズがなかなか出撃してこない。
どうしたんだろうな?と思ってジャミトフ連絡を入れてみる。
『それがエースの1人がまた同じことになるからと乗るのを拒否しているのだ』
「エースというと……」
『ヤザン・ゲーブルというものだ』
おい、ヤザン、心折れんなよ。
ゲモンと組んでゲゼで戦った根性見せろよ。
まぁZZでは酸欠で脳がやられたのかと思うほどキャラが変わりすぎちゃってたけどさ。
『他に組んでる2人もヤザンほどではないが拒否しておる』
こらこら、ハンブラビ3人衆揃ってかよ。
「それでどうするんだ」
『無理やり乗せることも考えたのだがキレてこちらに向かってこないとも限らんからどうしようかと途方に暮れておるところだ』
「代わりに新人でも乗せたらどうだ」
『やはりそうなるか……わかった。すぐ準備させる。待たせてすまんな』
いいってことよ。
お、代理のパイロットの名前が送られて……エマ・シーン、ジェリド・メサ、カクリコン・カクーラー?
ここに来てMk-2トリオか。原作通りティターンズに入ったんだな。でもこの3人って原作24歳のはずだから今は20歳、いくら模擬戦とはいえ、こういうイベントに参加するには若いだろ。
もしかして訓練の一環で参加してたのかな。
そんなことを考えているとTR-1が続々ど発進してくる。
「発進最中に攻撃したら楽勝なんですけどね」
マリオンちゃんの容赦の無さに感服します。
もちろん実践はしないけどね。
出撃が終わり、陣形を整えると開始の合図が発せられる。
さて、TR-1の追加武装はどの程度の性能か、見せてもらおうか。
「さすがブースターが多いだけのことはありますね。直線的な動きはどうかと思いますけど速さは相当ですね」
計測したらノイエ・ジールより速かった。もしかしてノイエ・ジール対策の機体なのかな。
武装を実弾にするのはそれほど手間ではないだろうし、もしそうなら有効な可能性大。
ただし俺達にも通じるかどうかは別の話だけどな。
「いけ、ファンネル」
マリオンちゃんと共有しているから動かせるファンネルは……ん?マリオンズのファンネルより動きがいいな。
「それは私がファンネルを動かすのに専念しているからです。マリオンズの場合は自身の乗るモビルスーツも操縦しながらになりますからどうしても幾らかは疎かになっちゃうんです」
「なるほど、役割分担できている俺達は更に効率よくファンネルを動かせるわけか」
「これで2人で一緒に戦えますね!」
「2人で戦えば無敵だな!」
実際すごい勢いで敵が減っている。
そしてびっくりなのがMk-2トリオが何気に健闘していることだ。
まぁ、マリオンちゃんが慣れるためにネコがネズミを甚振(いたぶ)っているから撃破されてないだけなんだけどね。
それでも気を抜けば沈められる程度には本気なんだけどな。
エマやジェリドはわかるけどカクリコンもそこそこセンスがいい……禿げてるのに。
TR-1の数も既に13機が撃破判定。
もうね、ファンネル使っちゃうと艦砲射撃なんて意味ないわ。俺が回避に専念していればマリオンちゃんが操るファンネルが片付けてくれるんだからな。
「サイコミュが古いままでこれだから新型にすればもっと活躍が見込めるな」
「ですね。でもファンネル本体の新型化、もしくは改造、改修もした方がいいと思います」
「となるとムラサメ研究所と開発チームを合同でやらせるべきか、日本に行くと感染拡大する可能性が高いからニューギニア特別地区にムラサメ研究所を移設させることも検討するかな」
あまり研究所が近くにあると嫌な気分になるからやりたくないんだけど。
「ならダイヤに移設させてはどうでしょうか、それなら私達もそれほど嫌な気分にならずに済みますよ」
「せっかく俺達が本当の意味で遠慮せずにいられる空間を汚すのもなぁ……ジオン地球領に移設させるか」
「なるほど、それがいいですね。伝えておきます」
本当にマリオンちゃんズの念話は便利だよなぁ。
「さて、そろそろ片付けるか」
「了解しました」
ファンネルが今までより機敏に動き、容赦なくコクピットを貫いていき、その中にMk-2トリオも含まれ、全滅した。
「マリオンちゃんとファンネルは偉大だな」
「いえいえ、ブルーニーさんとの共同作業だからですよー」
なんて言いながらティターンズ戦終了。
え?扱いが悪い?圧倒的な我が軍はあまり細かく描写すると同じパターンばかりだから仕方ないのだ……ん?電波か?
「これで予定終了っと」
「後は帰るだけですかね」
「まだ何かあるみたいだよ」
ジャジャ丸に帰還してブリッジに移動していたんだがシーマ様と遭遇、話しかけられた内容からすると俺達を迎えに来たんだろう。
それにしても一体どういうことなの。
「ジャミトフから連絡があったのさ。どうやら新しいモビルスーツを開発した……例のガンダム開発計画とやらの成果が拝めるらしいって」
マジでか、わざわざGPシリーズを見せてくれるとか太っ腹だな。
もしかして今回の模擬戦はこれが目的か。
「それで俺達がまた戦うのか」
「いや、さすがに新型をお披露目で撃墜されたらたまらないんだろうね。ブルーニー達は見学だろうだってさ」
兵器の新型なのに負けるのが怖くて強者とは戦わせないとか、それでいいのかねぇ。
「私が連邦でもあんたらと戦わせないねぇ。規格外過ぎるんだよ」
「それほどでもありませんよ〜」
「褒めてるんだから反応は間違ってないんだけどなんか釈然としない」
そんなやりとりをしながらブリッジへ。
しばらく駄弁ってたらティアンムが何やら偉そうに演説、そしてジャミトフ情報通り新型モビルスーツのお披露目。
「あれがGP02か」
TR-1を上回る性能を目指して開発されたモビルスーツ……ぶっちゃけドムIIやヤマトの方がTR-1より優れてるんだけどね。
平たく言えば次世代モビルスーツの開発なわけだが、その姿はガンダム試作1号機フルバーニアンだな。GP02なのにGP01とややこしいことになってる。
とは言っても違いがあってブースターポッドが2個ずつ、計4個になっていて翼が広くなったように見える。
しかも腰にもブースターが付いている。おそらく姿勢制御に使うんだろうね。
でも腰にブースターってコクピットに近いし危なくないか?
それと加速性と機動性を重視しすぎだろ、パイロット死ぬぞ……いや、もしかして対G対策が新しく開発されたのかな。
リニアシートでも軽減できるがそれでも限界があるからな。
「なんだありゃ、バッタか?」
まさかシーマ様から原作通りの名言がいただけるとは?!
それだけでも参加した価値があったな。
「とても速いですね。TR-1高速形態より速いですよ」
ティターンズ涙目だな。とは言っても防御力はTR-1の方があるのは間違いないけど。
それにしてもあの機動って普通のパイロットじゃいくらビームでも動かない的にも射撃が当たらないと思うぞ。
「あ、外しましたね」
「そりゃあれじゃあねぇ」
「せめてビームガトリングガンあたりにしないときついだろ」
「しかしあの加速性……ぜひデータが欲しい」
「これはSFSの機動力を上げないと売れなくなるかも……」
また考える事が増えそうだ。