第百三十五話
ティターンズのTR-1ヘイズル5機VS連邦のGP02単機の戦いはGP02の勝利に終わった。
TR-1も高機動重視の機体であるためいい勝負をしたが、最終的にはパイロットの腕の差で決着が付いた。
ティターンズは連邦に配慮して新米パイロットを2人混ぜ、連邦のGP02はユウ・カジマが操縦していたらしい。
ユウ・カジマでもGP02の加速と機動に翻弄されたのか……と思ったら何の事はない、ただの訓練不足……と言うか本格機動が初めてだったらしい。
そりゃキツイわ。
それにしてもユウ・カジマさんとか久しぶりだなぁ。元気なようで何よりだ。
「ブルーニーさん以外で私を操縦した唯一の人ですねー」
「嫉妬メラメラ、ちょっと殺ッテクル」
「ダ、ダメですよ。今襲っちゃうと連邦と戦争になります」
チッ、運のいいやつだ。
それにしても今回は実入りが多かった。
連邦内のモビルスーツ開発の傾向、エゥーゴからの受注減少(ネモが開発されたため)という予想、サイコガンダムの有用性の証明、俺達が使うファンネルの強さなどなど。
ネモのスペックは現在エゥーゴに卸しているαタイプより劣るが生産性は上回る。
エゥーゴの懐事情は連邦の実働部隊の1つなので限られているためにお寒い限りなので生産性が、簡単に言うと値段が安いからネモの方が優れているということになる。てか、ネモって中身はドムIIな気がするんだけど
その点ティターンズはトップであるジャミトフの力が強く、スポンサーが多いため資金が豊富で順調にαタイプを買ってくれる。
さて、一番の実入りは何より俺達の強さを連邦に、ひいてはジオンにも再認識させたことだろう。
これでニューギニア特別地区の安全性が高まったわけだ。連邦は歯ぎしりしてるかも。
ジオンは喜んでるだろうな。もし俺達が衰えた場合、地球領の防衛戦力を自分達で構えないといけなくなるから。
「今年ももうすぐ終わるね〜」
そういや原作ではデラーズ紛争があったけど、やっぱりこの世界ではなかった。
ジオンが勝ってるんだからあるわけがないか。
来年にはジオンの模擬戦も付き合わされることになるが……面倒だからマリオンズに任せるかな。
いや、ムラサメ研究所の新型サイコミュが開発されてサイコガンダムに載せた後にしてもらうか、その方が俺達にもメリットがあるし。
「あっという間ですね。まだ1ヶ月も経ってない気がしますよ」
ちょっと何言ってるかわからないですね。
「そういや、戦争がある前提で開発しているが、これ以上戦争あるのかねぇ」
連邦とジオンが冷戦状態になり、各々派閥、勢力争いをしているが実際戦闘にならないと俺達の商売上がったりなんだよ。
冷戦状態が儲かるのはそういう『研究・開発』を行う資金力や組織力、人材が存在する場合に限る。つまり全てが揃っているアナハイムはウマウマでも、どれも劣る俺達にとってはイマイチなのだ。
「多分あると思うぞ。ほれ」
そう言ってシーマ様が渡してきた書類を受け取って中身を確認する。
「ロシア解放作戦、ねぇ」
そういやロシアはハッキリとした条約を結んだってわけじゃないから、結果的休戦でしかないんだよな。
それにしても本人等が望んで独立したのに解放とかお節介だろ。実際ロシアの民衆が政府に反発する動きがない。
作戦は連邦、ティターンズ、エゥーゴの3勢力合同で行われるようだからロシアは終了のお知らせ、と言ったところか
「これもジャミトフから?」
「いや、ブレックスからさ」
え、どういうこと?俺達にどうして欲しいわけ?
「さて、私じゃなんとも……こういうのは専門家に聞いてみるのが1番さ」
つまり執事(マハラジャ)の出番か、帰ったら聞いてみるかな。
「この模擬戦、士気向上も兼ねていたのさ。結果的には士気が上がったかどうかは微妙っぽいけどねぇ」
エゥーゴもティターンズも圧倒的少数の俺達に負けているから士気が上がってるとはとても思えない。
ふむ、1つのことでいくつもの効果を得ようとしていたわけか、さすが連邦。俺達も見習わないと。
「なんにしても、こんな情報を聞かされたからにはロシアに営業を掛けるしかないだろ常考」
「そうなると連邦の作戦を漏らすことになるよ」
あ、そうだった。
んー……細かくはマハラジャと話し合って決めるけど、ジオンに伝えて、ジオンからロシアに伝えてもらうか。
いやー戦争って本当にいいものですねぇ(昔の金曜ロードショー風)
ニューギニア特別地区に帰ってきて今年の成果をまとめる。
オタクの聖地にして第3コロニー『サファイア』完成。
現在は移住者募集と企業側の準備中でまだ本格稼働には至っていない。
以前言っていた宇宙航行資格を実現化するためにニューギニア特別地区、ジオン、サイド6とで共同で進行中だ。
他にも日本から食の聖地としてコロニーを、という話が来ている。
調子に乗りすぎじゃね?と思わなくもないが『食』は何より雇用を生むのでどうかと日本企業が言ってきている。
さすが飽食の国日本だな。
サファイア住民の働き先としては有用なので一応プランは考えてるが食材の輸送費を考えるとイマイチ乗り気になれない。
南中国への投資は順調、主に投資したのは工場建設だがまだニューギニア特別地区ほどの工業力はないが来年の終わりには追いつきそうだ。
鉱山利権も一応手に入れているが現在は廃品回収した資源の再利用の方が利益が上がっているので当分は小規模投資かな。
今度のロシア解放作戦に向けてドップブースターを大量生産する予定だ。
地球領の方は……地味なところで言うとモビルスーツが更新されたな。
ゲルググMが主軸だったのをαタイプ、ジェニスへ。余ったゲルググMは下取りしてカラーを変更してサイド5に配備。
MIP社が新型水陸両用モビルスーツを開発し始めたらしい。
今まではズゴックIIのバージョンアップや改修に力を入れていたが、水中ではクーンに勝てなくて悩んでいるらしい。
そりゃ水陸両用と水中専用が互角じゃ売れないだろうが、と小一時間説教したい気分になった俺は悪くない。
経済は相変わらずニューギニア特別地区に、正確に言えばマスドライバーに依存している割合は大きいがほんの少しだけ改善傾向が見える。
食の聖地コロニーの建設は地球領からも具申されている。
食材を卸す先が増えることは歓迎だろうな。
ニューギニア特別地区の現状は至って良好としかいえない。
経済は安定している。
ただ、ダイヤやサファイアの完成で移住者が多数いるので人手不足に陥りそうな傾向があるのが問題だ。
出産ラッシュはいまだに続いているから14年ほど経てば、それからは労働力に困ることはなくなる。
食糧事情もコロニー建設と農業用ハロのおかげで心配なくなり、人手不足の食い止めに多少は役に立った。
特に農業用ハロのおかげで人件費の減少により物価も減少傾向にある。
クーンの配備も規定数に達したし、αタイプの配備も現在進行中……まぁロシア解放作戦用に生産ラインを変更する可能性は高いがな。……と言うか連邦等からSFSの発注が大量に来ているからもうそろそろ切り替えなくちゃいけないかな。
日本から派遣された医者のおかげで医療技術も充実し始めている。
ニューギニア特別地区の医療技術は3世代ほど前のものだから困ったものだ。
もっともそれでも現代より科学が発展しているからどうも感覚がおかしくなるんだけどな。
「クーンとドップブースターの発展型の開発は?」
「クーンに関しましては来月には設計プランが上がるとのことです。ドップブースターは難航しているようで見通しが立っていません」
航空機は古くから主力兵器として採用されてたんだからそう簡単に開発が進むわけがないか。
一応追加予算も組んでおかないと、重力圏内で戦うなら航空戦力は必要不可欠だからな。モビルスーツ万能説を信用して空を飛ばせばいいなんていう人間が少なからずいるが、まぁニューギニア特別地区内で言わないなら気にすまい。
「一部の開発者が変形するモビルスーツの開発をしているようですが」
大人しくガンダリウムγのサンプルが手に入るまで待ちなさい。
ガザCみたいな中途半端な機体になるから……とは言えない、何のことが理解できないからさ。
原作知識のせいで色々無駄に思えてしまうが、原作とは違った開発がされるかもしれないか。
「設計図をみるだけはするから出来上がったら持ってこさせるようにして」
「わかりました。後、ギニアスがスランプから抜けだせずに苦しんでいるようです」
……後で相談に乗ってやるか。