第百三十六話
冗談で言っていた痛艦だが、よくよく考えれば良い案だ。
宇宙航行資格を実施したなら個人が宇宙船を保有することが可能だ。
前世の車や家のように宇宙船を買うためのローンも商品化できるし、何より痛艦にするにはそれ専用の塗装業者が必要になる。つまり雇用が生まれるわけだ。
ちょっと真剣に練るか……マハラジャとマレーネが。
「ハァ、やはり私達なんですね」
「珍しくマレーネが来たから意地悪してみた。好きな子に意地悪するのは当然————」
次の瞬間、*いしのなかにいる*状態になってた。
だが残念ながら俺は息をしてないから死ぬことはないのだ。
ズモッと壁に嵌った状態から抜け出す、そして目の前にはなぜか服の背中部分が弾け飛び、オーラっぽい何かを立ち昇らせているハイライトが消えたヤンデレ風マリオンちゃんが立っていた。
と言うかいったいどこで瞬閧を学んだんだ。
「もぉ、ブルーニーさんたらぁ……そんな冗談ばかり言ってたら私、ヤンデレしちゃいますよ?」
いや、十分ヤンデレっぽいぞ。
「まぁヤンデレはともかく、これもスキンシップの1つだろ」
「ですね」
「ええぇぇ」
マレーネが異議があるようです。
却下します。
「ちなみに瞬閧は通りすがりのポニーテールの若いのに妙に年寄り臭い女性が教えてくれました」
それって夜一さんですよね?!
え、なに、ガンダム世界とクロスしてんのか。
もしそうなら独立戦争時は死神達は大忙しだろうな。(あくまでネタでしかありません。クロスしません)
それは置いておくとして。
「とりあえず、宇宙航行資格実施が上手くいかないと絵に描いた餅、か」
「誰でもできる仕事はハロでもできますからねぇ」
ハロが仕事を奪っているわけか、なんということだ。
確かにニューギニア特別地区の清掃会社は専門的知識がいる場所やハロが動きづらい場所などを請け負う会社しか残ってない。
おかげで家事の中で掃除というものが無くなりつつある。
他にも日本ならティッシュやビラ配り、ペットの散歩なんかもな。
ペットの散歩は人間優先だから偶に人間を襲おうとした犬をトリモチで抑えて問題になってたりするんだが余談だな。
「さっきの流れ……全部なかったことにするんだ……」
「幸いニューギニア特別地区は人手不足ですけど日本は失業者増えて困ってるようですね。サファイアのことも目線を逸らすための餌みたいなところがあるみたいですよ」
「今、日本の完全失業率ってどの程度?」
データがなかったようでマリオンちゃんが首を傾げたので2人でマレーネに視線をやる。
ビクッと跳ねたがちゃんと答えてくれた。
「7%ほどだったかと」
「んー?それってやばくね?」
日本ってニューギニア特別地区とは違って人口が多い。
失業率自体はそんなに変わらなくてもニューギニア特別地区の人口は最近やっと3300万人ぐらい、それに比べて日本は2億ほどで前世日本より人口が多い。
5%ってことは1400万近くが失業って……ニューギニア特別地区だと231万だからな。正直231万人ぐらいなら政策1つで割りとどうにかなる程度の数字だが、1400万人となるとさすがにちょっと……。
そもそもニューギニア特別地区の無職って、職についてないだけで自給自足、とかいう人達が圧倒的に多いからなぁ。
ホームレスと書いて狩猟民族と読む的な感じだ。
失業と言っていいのかわからんな。
(例で言えば現代の2014年アメリカの失業率が6.29%で日本は3.4%だ。つまり先進国的に困る数値でもある)
「ハロが販売されて増えた失業者は0.7%ほどでBL規制で増えた失業者は1%ほどです」
BLってそんなに雇用生み出してたのかよ。
政治家もヒィヒィ言ってそうだな。
「そういえば最近BL規制を批難することで政治界に殴りこみした方がいましたね……今ならちょうど番組がやっているかと——」
そう言ってテレビをつけると……
『BL規制は表現の自由を侵害し!国益を損ない!私達に苦痛を強(し)いました!私、フラウ・ボウはBL規制を定めた現政権と断固とした戦い。自由で、薔薇色な未来を手に入れてみせます!』
…………
………
……
…
ナニヤッテンデスカふらうサン。
「彼女が最近貴腐人の党を立ち上げたフラウ・ボウさんです」
ちょ、党立ち上げってどういうことよ。
政治家、いや、議員になることまではわかるにしても、党立ち上げってのはちょっと無理あるだろ。
「女性議員が軒並み貴腐人の党に加入しましたから今では3大政党の1つですよ」
貴腐人の党が政権とったらどうなるんだろ。
日本の将来は真っ暗だ!
「これは現政権にテコ入れしまくらないと大変なことになりそうだ」
「ですね。BL規制撤回程度ならいいですけど世界中に薔薇腐臭を漂わされたら困りますね」
「あの、ブルーニー様達は彼女とお知り合いで?」
あ、そうか、マレーネが来た時にはフラウはもう日本に隔離してたんだっけ。
「ジオンでいう木馬のクルー兼パイロットで、アムロとも幼馴染みだな」
「ちょっと前までブルーパプワに居たこともありますよ」
「そうなんですか……なぜ今は日本に?」
「「BL感染症を患っているから」」
「ハハハ」
苦笑いで流された。
まさかとは思うがカーン姉妹もBL感染しないように注意する必要があるな。
……はにゃーん様は別の意味で手遅れ臭いけど……この前、なぜかパイロットスーツが黒波になってたからな。
俺が見てるの気づいたら顔を真っ赤にしてたが恥ずかしいならやめろよ。身体ピッタリのプラグスーツは体の線がモロ見えなんだよ。俺得過ぎる。
そしてコスプレのトラウマ何処いった。
「ということはサファイアは反規制派に対してのガス抜きでもあったわけか」
「ですね」
まぁおかげでコロニー建設が早まってサイド(コロニー群的な意味で)らしくなってきたからいいんだけどね。
「ブルーニーさん、BLってなあに?」
「うお?!セラーナか」
やばい、セラーナにBLなんて教えてはいかん!
「セラーナには関——」
いや、ちょっと待てよ。
関係ないというのは言葉的に良くないし、何よりいけないいけないと教えれば逆に興味を抱くのが子供だ。
ここは——
「セラーナ、いいかい?BLというのは俺やマリオンちゃんがこの世で1番嫌いなもので、悍(おぞ)ましくて汚い、不衛生なものなんだ。もしBLなんかに興味を抱くようなら——」
「殺しちゃいますよ」
マリオンちゃんも乗ってくれた。
俺もわざわざEXAMシステムを起動してカラコンを挿入してみた。
そのかいあってセラーナも納得してくれたようで壊れた人形のように首をカクカクッと頷いてくれた。
「よかったよかった、セラーナが悪い子になったら俺もマリオンちゃんも嫌だからな」
「ですね」
怖がらせるだけで終わらすと嫌われるかもしれないから2人でよしよし、と撫でて落ち着かせる。
え?マインドコントロール?なんのことだ?
「……それと関係ないようにしてますけどマレーネさんも一緒ですからね?」
「は、はい!」
さすがマリオンちゃん、しっかりマレーネにも釘を刺したな。
セラーナを甘やかしながら仕事に戻る。
「そういえば、食の聖地プランの件はどうなってる?」
「優良プランだと政策部では判断しました」
政策部ってのはマハラジャを筆頭として補佐にシーマ様、マレーネ、アイナで、部員としてはコッセルやニューギニア特別地区やダイクン派、ニューギニア特別地区内ジオン派とジオン地球領のジオン派などから知識人を集めたブルーパプワの頭脳とも言える部だ。
ニューギニア特別地区やジオン地球領の政やブルーパプワの開発や方針を補助する組織だ。
やっとこういう組織ができたよ。俺達が好き勝手やるのもいいけど、最近は面倒だったんだよなぁ。無責任に放り出すことはしないが疲れるもんは疲れるんだ。
「そうか、ならコロニーの建設に掛かる費用を見積もって——」
「こちらです」
これだよ、これ。こういうのを待ってた。
全部命令しないと動かなかったから面倒だったんだよなぁ。
別にシーマ様が段取り悪かったってわけじゃないぞ?単純に人手不足な上での知識不足だ。
「予算はダイヤとそう変わらないか……しかし、ロシア解放作戦があるからな。資源の値段も多少上がるだろうからロシア解放作戦が終わった後にするか」
「それがいいかと思われます」
とうとう0084年が始まった。
そして——
「ブルーニーさん、よろしくお願いします」
新たなマリオンズも参加。
1年に1個師団が生まれているような感じだな。どんなチートだ。
「これからよろしく頼む」
「はい!頑張ります!」
これでマリオンちゃんズは合計で19人、少し余裕が出てきたな。
「それでギニアス、スランプなんだって」
「ああ、なかなか良い案が浮かばない……というかIVの完成度が高過ぎる」
「確かにIV1機あれば大体はどうにかなるからな」
正確にはIVじゃなくてマリオンズがチートなんだけどな。普通のパイロットどころかニュータイプすら動かせないんだから。
「そうだ。IVはナンバーズに頼ることになるから普通のパイロット、もしくは普通のニュータイプが操縦できるものを作ってみたらどうだ」
「……それはサイコガンダム、それの完成形のサイコヴィエーチルでいいのではないか」
「そりゃ宇宙や陸はな。でも空の制圧はナンバーズの人数の関係で少数配備しかできない、つまり局所的には制空権を確保できないからそれをフォローするようなアプサラスを作ればいいんじゃないか」
「……なるほど、いい考えだ。よし、早速取り掛かるとしよう」
良かった良かった。いつものギニアスに戻ったようだな。
本当は水中型モビルアーマーでも新設計して欲しいところなんだけどアプサラスへのこだわりが強いからなぁ。
そのうち折を見て頼むか。