第百三十九話
クリスチーナ・マッケンジーの愛称をクリトリ——にしようとしたらマリオンちゃんにめっさ睨まれたからクリちゃんに決定。
この愛称でも白い目で見られた……全くおませさんなんだから。
「言っておきますけど私、19歳です。もうすぐ成人です」
……時の流れって残酷だな。
全く成長してないなんて。
「……ブルーニーさん、何処を見てるんですか?」
「胸だ!」
「開き直ってもダメですよ!というかもっとダメダメです!」
貧乳はステータスだ!
さて、クリちゃんのことだが少し驚いたことがある。
実はクリちゃん、養殖ニュータイプの中で10本の指に入るほどの実力の持ち主なんだそうだ。
訓練をろくにしてない現在のアムロに勝てるほどの腕前で部隊指揮も熟せる優等生らしい、さすがポケ戦の主人公……はベナウィ、じゃなかったアルフレッドが主人公だっけ……まぁガンダムタイプがザクに負けた稀有な作品だからやっと汚名返上ができたってところか。
それとマリオンズブートキャンプ士官コースを正気のまま卒業した数少ない個体とか何とか、どんな地獄なんだろうね。俺は怖くて聞いてないんだけど。
報告ではヒールで治せないほど狂っちゃってるらしいけど……それって強化人間になってるんじゃ?
「もしかして無印コースを受けずにいきなり士官コースを受けさせれば耐えられるのか?」
「なるほどー、人間には両方はオーバーキルってことですか」
いや、キルって……死んでないだろ。
「いえ、何人か雑魚養殖ニュータイプが死んじゃってます」
サラッとカミングアウト。
ヒールじゃ治せなかったの?
「どうも精神が死んじゃってるようで……一応植物状態で生物学的には生きてることは生きてますけどね?肉体の死は治せるようですけど精神の死は治せないようです」
つまり闇のゲームに負けてカードに封じられたりしたら治せないわけか、また1つヒールの欠点が……まぁ一律で治せないわけでもなさそうだけど。
「そういえばギニアスさんから新しいモビルスーツの開発プランがあげられました」
「ギニアスからモビルスーツの?アプサラスはモビルアーマーだろ」
「私も最初は見間違いかと思ったんですけどどうやら本当にモビルスーツみたいです」
む、これは……なるほど、サイコミュを使った指揮官機か。意思伝達はマリオンちゃんズでもなければミノ粉の影響で通信範囲が限られ、そうでなくても声に出して聞いて認識するという手間がある。
通信距離を拡大し、意思伝達の手間を大幅に短縮する方法としてサイコミュを使って行おうというコンセプトだ。
原作でもなかった革新的なものだな。
ニュータイプはそもそもお互いの意志を感じることができるがやはり鮮明に伝えることができないし何より養殖とは言ってもニュータイプレベルにバラつきがあり、カツ程度のものもいればララァほどのものもいる。
カツにハマーン様ほどの感応能力をみせろと言っても無理無茶無謀な話だ。だからサイコミュをサポートしようというのだ。
「なかなかいいんじゃないか、もし士官コース合格者が増えなくても現在いる人数分は使えるわけだし」
「ですねー。これが使えるようなら連携がうまくいくようになります。私達の念話アドバンテージが少しなくなりますけど」
戦闘中に念話でのコンビネーションはマリオンちゃんズの強みの1つだが……ぶっちゃけそれほど強みなのかどうかと言われると微妙、それにニュータイプが連携するほどの数を揃えれるのは俺達ぐらいだからマリオンちゃんズのアドバンテージが死神の陽炎のアドバンテージに変わるだけだ。
「開発許可だな。ギニアスってアプサラスとアイナ以外でも考えることができたんだな」
「それはちょっと酷いと思いますよ。サンダースさんのことも考えてます」
そうか、ケンタッキーの存在を忘れてたな。ハッハッハ……なんか違う気がする。
ちなみにこのサイコミュ意思伝達システムの開発にあたって、受信機の小型化も予定に入っているのでファンネルの小型化、もしくはエネルギーCAPの容量が増加するだろう。
「これで養殖ニュータイプ部隊が本領発揮して戦えるようになるな」
「今度のジオンとの模擬戦は私達が参加しませんからサイコガンダムをもう3機ほど生産して養殖ニュータイプチームで参加させるのはどうでしょうか。私達が参加するとボロボロにしてしまって可哀想なことになるのは連邦でわかってますし」
ふむ、あのリンチ模擬戦でアンチニューギニア特別地区の勢力が増えたとジャミトフやイーさんはもちろんのことコーウェンやブレックスからまで聞くし、俺達は切り札化した方がいいのかもしれん。
「サイコガンダムじゃなくて急ごしらえでいいからサイコヴィエーチルに仕立てて参加させるぞ。そうすれば見栄えもいいだろ」
「また開発チームが泣いて喜びますね」
「だな」
まさかのブルーパプワで過労死発生。
調べてみたら案の定、日本人だった。
ちなみに過労死って日本特有なんだってね。この世界に来てから知ったよ。
前世の俺って国際的じゃなかったから日本以外のことなんて知らないことが多いんだ。
子供って親と一緒に寝るもんだと思ってたけど海外では赤ちゃんと呼べる頃から1人で寢らすってことも今世で知った。マリオンちゃんからすればこっちが普通なんだそうだ。
過労死した理由は労働時間の上限を定めてなかったのを利用して借金払うために無茶苦茶な労働してたことなんだが……間接的な要因としてロシア解放作戦特需で仕事が腐るほどあり、仕事を詰めようと思えばいくらでも詰めれるという状態にあることも一要因だ。
正直労働時間なんて定めなくても必要最低限、もしくはちょっとした贅沢しかしないニューギニア人と自己管理がしっかりしてる移住民がほとんどだったから必要性を感じなかったんだよな。
調べてみたら貧困層、というより借金に困ってる奴等が働き詰めなのがわかった。
仕事がわりと豊富で労働基準法が緩い(正確に言うと審査が緩い)ニューギニア特別地区では借金の上限金額も高く設定されているようだ。
なんともはや……というか最大の利益をあげているのがブルーパプワなんだからどうしようか悩むところだ。
過労死したからって苦情が来てるわけでもないし、制限を設けると一番被害が出るのはブルーパプワだ。
んー……放置でいいか。
実はこの過労死が原因になったのはロシア解放作戦の日程が決まったからだ。
予定は5月。
現在が2月だから3ヶ月しか余裕が無い……いやいや、とてもじゃないがドップブースター60000とαタイプ53000なんて用意できない。
連邦側についてるサイド6が暇そうだったので工場をいくらか借りたがそれでも足らず、どうしようかと思ってたらジオンからお声が掛かった。
どうやら直接的にロシアへ兵器を売るな、って連邦とアナハイムに釘を差されたらしい。
連邦はわかるけどアナハイム?と疑問に思ったが、エゥーゴのネモはアナハイムが作っていて、それを採用することと引き換えにジオンとロシアを分断するようアナハイムに頼んだ結果らしい。
ジオンが利益を上げ過ぎると影響力が相対的に小さくなるアナハイムは抵抗なく受け入れただろうな。
そんな事情もあってジオンは直接ロシアに兵器を売ることができなくなったのでブルーパプワを介して売ろうって腹だ。
まぁこっちも手一杯だからザンジバル級の改修版の設計図を渡して10隻を任せることにした。
ブルーパプワでもザンジバル級2隻が造船されている。余った分は自分達で使う予定。
「今月生産予想がこちらです」
マハラジャから渡された書類に目を通す。
地名:ドップブースター:αタイプ
ニューギニア特別地区:3000:800
ジオン地球領:1000:200
南中国:2200:300
サイド6:200:30
サイド5:0:2000
オーストラリア:300:0
合計:6700:3380
うん、全然たりねー。
本来ならMIP社と共同で生産したいところなんだけど、ロシアから別注文されてMIPも手一杯だから仕方ないよなぁ。
工業コロニーエメラルドが100%運用できてたらαタイプがもう1000ほど増えるんだが、人材不足はどうしようもねぇな。
「オーストラリア投資の効果は恐らく来月の半ばから発揮されると思われます。それとジオンからエメラルドに労働者を貸し出しして頂けるとのことです」
「マジでか」
「はい、その代わりこちらの食料輸入量を増やして欲しいとのことですが」
「政策部の見解は?」
「戦時特例として前例を作っておく、ジオンとの関係を密接にするという2つの理由で期間限定で受け入れるべきとまとまりました」
「じゃ承認」
「ではジオンへお伝えします」
食料は多ければ多いほどいい。
人口減少の兆しなんて見えない現在は特に。
「人がねずみ算式に増えていく、これが団塊の世代と呼ばれる日が来るんだろうか……ま、人口が半減したんだから当分は増えるよな」
人口増えるなら食料はあっても困らん。
日本は人口増えてなくても掃いて捨てるほどだけど。