第百四十話
ジオンから模擬戦の延期が通達された。
ロシア解放作戦前に連邦がピリピリしているのでロシア解放作戦の後にするそうだ。
正直忙しいから助かる。
これでサイコヴィエーチルの完成を急がせなくていいな。
ただ、ティターンズがサイコガンダムを寄越せと言ってきてるんだよ。
模擬戦のサイコガンダム無双を見りゃ、完成品だと思うわ。んー未完成なものを売るのってやっぱり問題あるよなぁ。
原作のプロトタイプサイコガンダムと変わらずコードとか露出したままだし、サイコミュは外付けだし他にも色々小さい問題も多数ある。
渡せばティターンズが勝手に改修するだろうけど、それは商売をやってる俺達からしたら屈辱だ。
結局そこそこに仕上げないといけないわけか……そういやサイコタイプ(サイコガンダムとヴィエーチルの総称)は重量を抑えるために実弾装備が全くない(バルカンすらない)からIフィールドやミサイルの迎撃なんかが脆弱なんだが、どうするかな。
ビームバルカンなんてまだ開発されてない、それどころかその前身っぽいビームマシンガンが開発されてないんだよね。
原作だとシーマ様専用ゲルググMが装備してたはずだからもう出ててもおかしくないんだけど、今のところそういう情報は入ってきてない。
「仕方ない、ブルーパプワでビームマシンガンの開発させるか」
「でもビームマシンガンができたとして、サイコタイプに装備させるんですか?ニュータイプ専用なのに弾幕用兵器って……」
言いたいことはわからなくもない。
射撃能力の高いニュータイプがわざわざ弾数で補う必要があるのかという疑問だろう。
「やっぱりビームライフルは弾数が少ないからな。アプサラスシリーズのようにエネルギーパックと動力による補充が同時にできるならともかく、ライフルのエネルギーパックだけじゃ心許ないだろ」
現行のビームライフルは30発、アナハイム製新型ビームライフルは28発、ブルーパプワの新型ビームライフル(仮)は26発。
200%迎撃、1発のビームで2発のミサイルを落としても最大で60発。
マシンガンにすれば100発超えるはず、射程が怪しけどな。
「支援砲撃機(ザウートもどき)が完成したところで弱点があるのには変わりないし」
「……そうですね。弾数重視のビームライフルと考えれば悪くないかもしれません」
マリオンちゃんも賛同してくれたということで開発チームに伝えておいて。
「はーい」
2月終わりにロシアからドップブースターを優先して欲しいと要求があったのでブルーパプワ、地球領、南中国、サイド6のαタイプからドップブースターへ生産切り替えた。
そのおかげで今月(3月中旬)ドップブースター6700:αタイプ3380から13220:3000になった。
コスト的にαタイプ1に対してドップブースター4だから数字的にはおかしくない……なんて言ったら算数できてねーだろってツッコミが来るよな。
ドップブースター1000増えている理由はオーストラリアの投資の成果が出たからだ。
オーストラリアから感謝状が贈られてきたがそんなもん貰っても……まぁ箔は付いたか?
αタイプの生産に大きく変化がないのはジオンからサイド5に派遣労働者が到着してαタイプの生産が増えたからである。
ちなみにサイド5の生産がαタイプのままなのはサイド5は新しく作っただけのことはあり、最新設備が用意されていて、日本から輸入している精密機器も製造できるから1からαタイプを輸入に頼らず製造できるので単価が抑えられるからだ。
輸送費もロシアに向かって落とすだけだから安くて便利なんだよね。
なにせ地球のロシアへの輸送ルートはシーレーンなんてないから(不凍港がないので今の季節は利用できない)南中国から北中国へ、そしてロシアという地上輸送するしかない。
しかも戦争が始まるとこの輸送ルートは破壊される可能性が高いのでどうしようかと検討中だ。
「そして早くもサイコガンダムが完成したって……やっつけ仕事じゃないよな?」
「サイコヴィエーチルはブルーパプワの主力機になる機体だから汎用性重視にしているがティターンズは治安維持を名目とした組織ではあるが連邦の支援を受けれる立場にある」
「つまりある程度欠点がある機体でも優れていればいいと」
「その通り」
ギニアスの意見はわかるがティターンズは少数精鋭の部隊だから汎用性がいると思うけど……それは次回作で修正すればいいか。
「サイコミュを内蔵したため全高23mと少し大きくなった」
「許容範囲内だな」
むしろこの時代のサイコミュ搭載機の中では格段に小さい。
ジオングが比較的小さい方だがアレには脚がない上に他の兵器と違った推進の仕方をしていて操縦に難がある。
それに比べたら他のモビルスーツと同じ形をしているサイコガンダムは及第点を軽く超えている。
「それより気になることがある」
「ん?」
「ティターンズはニュータイプを確保できているのか?」
…………そう言われればそうだな。
確認してないが大丈夫か?
「場合によっては死神の陽炎から出向させることも考えるか」
「それでは死神の陽炎を雇っているのと変わらない、どうせなら売ったらどうだ」
まさかの人身売買。
んー、でもいい考えではあるよな。野球の移籍と思えばいいか……いや、よく考えればニュータイプを外に出せば俺達にしっぺ返しが来ないか?
「各国に売る数を制限すれば問題あるまい。ジオンに100、連邦に100売ったとして合わせても200+αでしかない。ニューギニア特別地区の敵ではないはずだ」
いや、集中投入されたらさすがにこちらの被害も大きくなるぞ。
……あ、ニュータイプが相手ならマリオンズ1人で対処できるのか。
「政策部に検討させてみるか」
「サイコガンダム自体の出来は上々、不満といえばミノフスキークラフトで浮かせれない(以下略」
ミノフスキークラフトはそれそのもののサイズもだけど必要な電力量が問題なんだよなぁ。
解決策はミノフスキークラフト自体の必要電力量を減らすか核融合炉を小型化してスペースを拡げてジェネレータを増やすかジェネレータそのものの出力を増加させるしか手はない。
まぁΞガンダムで初めてまともに装備された機体だからな。まだ20年も先だから仕方ない。
「ただ、ナンバーズ専用機なら装甲が薄い分、浮かぶ程度なら可能かもしれないという試算だが」
……なぜだろう、ヅダが空中分解した映像が頭を過る。
いや、アプサラスIVでも成功してるんだ。大丈夫なはず……だよな?
浮く程度でもマリオンズなら戦果が期待できるな。他のパイロットだと弾幕に当たって大損害になりそうだから無理だけど。
それこそアニメの序盤のザクIIのようにバルカンで落とされたら洒落にならない。
一応言っておくが、バルカンでザクは落ちん。もしそんなに簡単に落ちるなら戦車や高射砲で問題ないからな。
モビルスーツなんて黒歴史だ。
「じゃあ早速ジャミトフに連絡入れてテストパイロットを派遣してもらうか」
まぁニュータイプは何人か来た。
来たんだが……そのうちの1人が、なぜかサラ・ザビアロフ。
原作でも若かったのに今はもっと若いぞ。12歳って軍人として使っちゃって大丈夫か?
それにしても有線サイコミュ式可動砲はニュータイプレベルがそこそこあれば動かせるが……
「動かしやがったな。まぁ俺はファンネルだから飛ばせなかっただけだよな?うん、そうに違いない」
「ブルーニーさん、負け犬の遠吠えにしか聞こえませんよ」
ぐふっ、マリオンちゃんの言葉の刃が俺を切り裂く。
……それはともかく、なかなかいい腕だな。
ただし——
「そろそろ限界か」
「ですね。あの若さにしては優秀ですけどサイコミュから来る精神への負担、Gから来る身体への負担は耐えられませんね」
モニターには、ぐでっとしたサラが映し出されている。
多分失神してるんだろうな。
もしサラが実戦に出るなら薬剤投与をすべきだ。まだ若いから寿命を削ったり、精神不安定になるかもしれないが戦場で死ぬよりはマシだろう……多分。
何よりサイコガンダムは1機でαタイプ3機の値段だし、ニュータイプは替えが利かないからな。
ティターンズもそのあたりわかってはいるだろうがクレームなんて付けられたらたまったもんじゃない。
やっぱり養殖ニュータイプの販売は需要がありそうだ。
政策部も倫理観を除けば是とすると回答が来ている……怖いのは非人道的なことが表に出た場合だよなぁ。
連邦みたいに情報統制すれば問題ないように思えるが、ティターンズという外に売り出すんだから弱みを握られるのはちょっとねぇ。
ああ、でも養殖ニュータイプの作り方が漏れれば人身売買なんて比にならないほど非人道的な行為だったな。
よし、売るか。
試しにジャミトフに10人ほど打診してみたんだが即決で買うと言われた。1人3億なんだがいいのかと確認してみたら発掘するのには手間暇が掛かり過ぎる上に、ニュータイプへの覚醒も難しい、しかも成功してもレベルがバラバラで安定せず、費用として10億掛かって数人しか発掘できない。
それなら多少金が掛かっても確実でしかも訓練を受けているニュータイプを買えるなら安い買い物なんだとか。
養殖ニュータイプの育成費用って燃料を金に換算して1000万届かないんだけど……ボッタクリな気がするが気にしない。
モビルスーツ売るより儲けてるとか考えてはいけない。
売り過ぎるとそのうち自分の首を絞める……かもしれない。
「大丈夫ですよ。販売する時にマリオンズがしっかり躾けしますから」
まぁそもそも俺達やマリオンズに敵対行動できるか疑問ではあるけどな。
そしてサラの価値暴落、ちょっと可哀想なのでウチで引き取ろうか悩み中。