第百五十一話
あーぁ……本当に韓国と日本、戦争始めたよ。
ロシアが韓国に進軍し、兵站がズタズタになった日本とエゥーゴは戦線を後退させるしかなく、早々にソウルを手放し、対馬からの補給で維持できる釜山まで後退した。
簡単にいえばほぼ韓国を取られたということだ。
ココア閣下の言っていた兵站と謀略の大事さがしみじみとわかる出来事である。
謀略とは弱者が行う遊びとはよく言ったものだ。
そうなると俺達は魔術師あたりか?寡兵で数に優る敵に勝つわけだし……力押しで勝つんだからオフレッサーか?なら現代の勇者とでも名乗るとするか。
「それにしても韓国は相変わらず考えなしだな」
まぁナッツが原因で飛行機を引き返させるような国だし、不思議じゃないんだけど……実はロシアより大罪を犯してることに気づいているのかね。
ロシアは独立を目指すという大義で動いている上に、まだ1度目だが、韓国が連邦に牙を向くのは2度目であり、大義が日本死ね、氏ねじゃなくて死ね!だから国際世論も味方してくれない。
味方に引き込んだロシアもこれほど上手く行くとは、とどこか半信半疑なところがあるそうだ。
まさか自分達の策が上手く行き過ぎて疑うことになるとはなんという皮肉。
「後世でBL戦争なんて名前にならないことを祈ろう」
「大丈夫ですよ。私達は不老不死ですから都合がいいように書き換えられますよ」
……勝者が歴史を好きにできるというが、寿命が長いというのも同じだな。
記憶媒体がしっかりしている現在でも超絶解釈でどうとでもなる。
それに歴史の模造は今話題の国のお得意としたものだから手本にするか……延々とロビー活動して石碑建てて教育機関乗っ取って歴史の教科書ですり替えて……うん、韓国にもできたんだから今の俺達ならできそうだ。
「ティターンズから可変モビルスーツの開発依頼が来てますけど、どうしますか」
日本のフジの機動力に目が惹かれたんだろうけど……正直、気乗りしない。
可変モビルスーツはその性質上、普通のモビルスーツより複雑になるのは間違いなく、そして複雑になればコストも掛かるしメンテも大変になる。
少数精鋭に向いているように見えるが、少数精鋭だからこそ最低限の装甲しか持たないムラサメのようなバルカンすら防げないような機体は致命的だ。
ガンダリウムγが軽いとは言っても発泡金属よりは重いから同じ設計にはできないし、出力や推力の関係で長距離飛行には至れない、長距離飛行できないなら必要ではない。
ミノフスキー・クラフトも出力とサイズのせいで劣悪なもの(降下速度を緩める程度)になっているんだからな。
「ムーバブルフレームを完成させてそのデータをくれるならやるって答えといて」
「そういえばいつ完成するんでしょうね。82年ぐらいから研究しているはずなんですが……」
まぁ今回の戦費や四川省への投資なんかでかなりキツイんだろうな。
そういや今まで忘れてたけどティターンズは地球『人』至上主義だけどジャミトフは地球至上主義で目的は地球から人間を追い出すこと……のはずなんだけど、今はどう思ってるんだろうな。
ひょっとするとロシアの独立騒ぎの裏にいるのはジャミトフか?
「でもそれはブルーニーさんが知ってる原作ですよね?ジオンが滅んでないこの世界だと無理じゃないですか?」
だよな。
地球で戦争を繰り返して連邦を崩壊させてもジオンが無事なままだとジオンが地球に侵攻して支配者が変わるだけになる可能性が高い。
それにいざとなったら俺達が黙って見てるわけもないし……警戒すべきは——
「ソーラシステム、コロニーレーザーのような大量破壊兵器か」
「ただ、ソーラシステムは展開の速さから考えて無理かもしれませんがコロニーレーザーは私達に向けて放たれる場合、多分感知できますよ?巨大な悪意を感じるでしょうし……ソロモン決戦の時は私自身がまだニュータイプの力を扱いきれてなかったのでダメでしたけど、今なら気づけます」
マリオンズ網を誤魔化して大量破壊兵器を投入するのは難しいか……となると力押しかねぇ。
大量破壊兵器といえばオールズなんたらとかいうジオン残党が作ってたオリンポス砲?キャノン?はどうなるかな。
サナリィ、F90フラグのジョブジョンが死んじゃってるし起こるなら俺達が防がないといけないけどジオンが残ってるんだから大丈夫だと思うけど、紫ババァあたりが開発指示出してそうで怖い。
スパイを送るにしても隔離され過ぎて無理があるよなぁ。
「火星方面開拓計画でも考えるか」
「サイド5すらまだまだですから無理かと」
ですよねー。
あ、そうか!
「別に無理しなくていいのか。マリオンズを派遣すれば万事解決」
いやー、距離の壁なんてマリオンズの前には衾程度でしかない。
食料要らず、推進剤は有限だが食料分だけ積載可能なんだからな。
それにいざとなったら推進剤を入れたタンクだけ飛ばせば問題ないはず……うん、これで行こう。
「というわけでマリオンズ火星遠足計画を秘密裏に行う」
「そのオリンポスキャノンだか砲だかが危険なのはわかったし、必要もあると思うけどさ……なんで私に話したんだい?まさか私に準備しろってんじゃ——」
「そのまさかだ」
だって面倒だし……シーマ様、どうしたんだ?頭を押さえて……風邪か?ゆっくり休ませてやらないといけないな。仕事の後で(ゲス顔)
「それでナンバーズ……マリオンズは何人送る予定なんだい」
「サイコタイプで3人を予定している。シーマ様にはフィッシュボーン1隻と必要な弾薬を用意してくれ……万が一の場合に備えて自爆装置もな」
「なっ、マリオンズを犠牲にするつもりか!私は反対だよ」
……?なんでそんなに激おこぷんぷん丸なんだ?
「ブルーニーさん、そういえばマリオンズが私の能力というのは話しましたけど、生成できることを教えてない気がします」
「……言われてみれば確かに」
「え、なに温度差……私にまだ話してないことがあるかい?」
「話してないというよりうっかり忘れてた。マリオンズはマリオンちゃんの年齢の数だけ生成されるんだがそれはあくまで上限で、死んだりしても1日経てば生成できる」
「つまり何かい、死神の鎌を全滅させたとしても1日経てば全員……」
「復活しますね」
「それ、なんて地獄だい」
ハッハッハ、魔王様は無限に蘇生される勇者からは逃げられないのだ!
まぁプレイヤーが逃げることがあるけどな!
「1番最悪なケースは捕縛されること、次にサイコタイプの情報漏洩、両方を防止するための自爆装置」
「なるほど、使い捨てできる戦力なわけかい」
「誤解されると嫌だから言うが、本当に最悪の事態を想定してのことだ。使い捨てにするつもりなんか欠片もない。それよりマリオンちゃんズが捕まって知らん男共にあんなことやこんなこと——」
「わかった!わかったから落ち着きな!デスクが変形してるよ!」
デスクがいつの間にか可変機能が付いたと申すか……俺が握りしめすぎてて跡がついて——あ、取れた。
「わかってると思うがこれは極秘事項だからな。拷問されても治してやるから絶対誰にも言うなよ」
「ああ、意地でも言わないさ……まぁ言ったところであんた達なら根こそぎ物理的に消去しちゃいそうだけどさ」
アプサラスIIIが火を噴くぜ!
ま、ぶっちゃけマリオンちゃんズが捕縛されても皆殺しにしちゃいそうだけどな。
最近はモビルスーツ相手でもどうにでもなりそうだもんな。
「じゃあ手配は頼んだ」
「あいよ……アイナに気付かれないようにしないといけないとか難易度高過ぎじゃないかい?」
11月、ロシアは銀色の世界となり、戦線は膠着……してるんだけどモスクワが大変なことになっている。
連邦の動きが鈍かったのはどうやら冬を待っていたかららしい。
普通ロシアを攻めるのに冬?と思うかもしれないが、東線戦の時に言ったようにロシア全域の輸送コストが大きくなる。
それは連邦も同じ、どころか大軍を基地から遠くへ動かすと考えれば膨大なコストが掛かる。
しかもコロニー落としの影響で地球全体の気温が低くなってしまっているので独立戦争前より寒い。
両軍このまま春まで実質休戦……かと思ったが、違った。
「まさかタンクタイプによる飽和攻撃とか」
「首都を砲撃され続けていますから世論を反戦に傾けるには最適かと、実際効果が出てきてます」
実害がある状態だと情報操作とか意味ないからな。
ロシア側から攻めなくちゃいけないわけだが、国力的に劣る方から攻めるというのはなかなか厳しい。
「しかもサイコタイプは寒冷地仕様なんてしてませんから機動性、追従性がダウンしちゃってますし」
まさかロシアが冬まで持つとは思ってなかったんだよ。
おかげで大慌てで準備してる。
「ロシア&韓国VSエゥーゴ&日本の戦いももうすぐ最終対決みたいだな」
「下馬評ではロシア&韓国ですけど……韓国がヘタリアじゃなければいいんですけどね」
それもあるがシャアがこのままとは思えない……それになんだか嫌な予感がするんだよな。
なんだろう、この嫌な予感……テレビをつけちゃいけないと魂が叫んでる。だが、ここは確認すべきだ。
リモコンを取り、テレビをつける。
そして目に飛び込んできたのは——
『今こそ百合などというおぞましいものを広める悪しき国を滅ぼす時だと私、ファ・ユイリィは確信しています。日本国民の皆さん!今こそ貴腐人の党と共に戦いましょう!』
……ピッ