第百五十八話
なんかファンネルからミサイルが出たんですけど。
そんなの有りなのか?いや、ノイエジール・ガトー機(マリオンちゃん識別)に致命傷ではないにしろ無視できないダメージを与えることに成功しているのだから有効なんだろう。
しかしビームに頼らないというのは逆に言えばそれだけ容量が取られるということでもある。
ファンネルのサイズから考えると多くて2発、もしかしたら1発しか弾数がないはず。それにガトーほどのパイロットだと警戒されれば簡単に当てられない。
とはいえ、これは開発するに値するな。
ファンネルミサイルはミサイル誘導にサイコミュを使うというものだからサイズも大きく、単価が恐ろしいことになるだろがミサイルを撃つファンネルならほとんどコストは変わらない。
「ガトーさんから後悔と自己嫌悪が感じられます」
狂信者的なガトーのことだからきっと『閣下から頂いた機体を自分の不注意で傷物にしてしまった』なんて思ってるに違いない。
本来ノイエジールは実弾装備が乏しいはずだが、今回の戦いはお互いIフィールド搭載機と戦うことを前提としていたため、いつもより多くの実弾装備がなされている。
実際ガトーが操るノイエジールにはミサイルランチャーがいくつも外付けで装備されている……どうみてもザクJ型の脚部につけてるミサイルポッドだけどな。
もう少しマシなもんはなかったのか。
そして両手にはMMP-80マシンガンが握られている……それでどの程度ダメージがあるかは疑問があるが……バズーカを当てるよりは現実的か?
クスコ・アル……呼び捨てにするとクスコかアルだけど、なんかしっくり来ないのでフルネーム……もマシンガンの弾を躱せるほど規格外ではなく、結構被弾している。
おや?マシンガンの弾が勝手に爆発した?
もしかして時限式で爆発するようにしてるのか、そのままあっちこっち飛ばれるよりは自爆させて細かくしたほうがコロニーへの損害は出にくい。考えたな、ジオン。
「アスナさんがアイギス級にもうすぐたどり着きますよ」
おっと、パーフェクトなジオングの活躍は見ておかないとな。
足が飾りかどうか見せてもらおうか!……いや、ノイエジールが出てくるまで見てたけどね。
「でも邪魔が入るみたいですね」
現れたのはグフ、ただしカラーが緑って……それはオーソドックスカラーなのか、パーソナルカラーなのか見分けがつき難いんですけど。
と言うか、緑色がパーソナルカラーのキャラいたっけか?もしくはオリキャラか?この前、桃色なんていうラクス(偽)を彷彿とさせるやつがいたけど、確認してみたら原作に出ていなかったエースという落ちだったし。
「しかも天然物のニュータイプみたいですよ」
眉なし派には原作キャラ勢の中にニュータイプはいない、つまりモブキャラ確定かな。
いるとしたら強化人間かクローン系のどちらかだろうから天然はない。
なんとなくだけどギレンの野望の展開と似てるよな。もしかしてニュータイプに嫌われる質なのかね。
「アスナさん頑張れ!」
まぁ知り合いと見ず知らずの人なら知り合いを応援するよな。
Iフィールドがないパーフェクトなジオングにはグフのビームマシンガンはキツイようで、進行を阻まれている。
やはりニュータイプといえど弾幕はキツイようだ。
「ああ、そっちに逃げたらまた遠ざかりますよ。そこは当たらなければどうということはない!とか言って華麗に躱してたたっ斬るのです」
そんなことできるのは俺とマリオンちゃんズぐらいだからな。
それとパーフェクトなジオングにはビームサーベルがないからたたっ斬るのは無理があるぞ。と細かくツッコんでみる。
「有線式の手を腕を飛ばすのはいいですけど動きが全然なってません!覚醒コースを受けに来ますか!」
いやいや、ニュータイプ訓練だけは1歩や2歩どころか100歩ぐらい先に行っている俺達だから言えることだからな。
というかマリオンちゃんの反応がプロレス観戦してるみたいだ。
「そこで蹴りを——って反応が遅いですよ。って、あれ?アイギス級天頂から」
言い終わる前にメガ粒子砲の雨が降り、アイギス級を穴だらけにする。
天頂から物凄いスピードで現れたのは……
「ノイエジール、しかもジョニー・ライデンか」
そりゃいますよね。
元々紫ババァ派だもん。
やっぱり間合いを詰められたアイギス級は脆いな。
「にしてもさっきのメガ粒子砲、何かおかしくなかったか」
「アレは拡散メガ粒子砲ですよ。ただ出力が従来の拡散メガ粒子砲の比になりませんけど」
ああ、なるほど。だから妙に外れ彈も多かったわけだ。色々開発してんなぁ。つまり金太郎飴ザクレロの成果なわけか。
サザビーの拡散メガ粒子砲もこれが基なのかな。
「ちょっと出てくるのが遅いんじゃないか、白狼殿」
少し遅れて出てきたのは白いノイエジール、つまりシン・マツナガ機。
その武装はガトー機と同じで実弾が多く装備されているのに対してジョニー・ライデン機はどノーマル……大丈夫かジョニー・ライデン——って逃げた?!
「武装が武装ですから仕方ないですよ」
そうかもしれないけど、逃げるのに一切躊躇なかったから見事といえば見事だけど……あ、ガトーとクスコ・アルの方へ向かってるぞ。
このままクスコ・アルが落とされたらキツイぞ。
って、まじかよ。
「アスナさんが無謀過ぎる件について」
本当にね。
さっきまで戦っていたモブニュータイプを倒したアスナが、まさかビーム兵器しかないパーフェクトなジオングでノイエジールに挑むとか……おかげで優勢に戦っているクスコ・アルの方が焦り始めているようだ。
戦場での焦りは死を招く……というか死亡フラグだよな。
それでも懸命に戦い——ガトー機の片翼を斬り落とすことに成功する。代償としてクスコ・アル機も穴だらけだけど。
「しかもコクピットの近くだが生きてるか?」
「ええ、少し精神に乱れがありますから怪我をしているんでしょうけど生きてます」
マリオンちゃんの感応能力が便利過ぎる。
「アイギス級が1隻落ちたせいで陣形が乱れて艦隊に被害が出てるな」
「はい……でもキシリアさんのモビルスーツ隊の損害はそれ以上ですよ。一騎当千のクスコさん、アスナさんが足止めされ、他のニュータイプ達も補給中だったため数で押されたようです」
このままじゃ両者共に救いがない戦いになるだろう……元々戦争に救いがあるかどうかは置いといて。
「しょうがない、少し手助けしてやるか……というわけで連絡を入れてみた」
『それはこちらに誰か派遣してくれるとでも?』
連絡を取ったのは紫ババァ。グラナダ近くで戦ってる関係でレーザー通信がしやすかったんだよ。
「いや、派遣はしない。そもそも派遣しても消耗戦に変わりないだろ。連邦が喜ぶだけだ」
『……ならどういうことかな』
「大人しく逃げろ。俺達のところまで」
軍事的抵抗には成功しているが紫ババァには大義名分がない以上長期戦になれば不利、どころか現状を保てていることが驚きである。紫ババァって意外と人望あるんだな。
それとも眉なしが人望ないのか?
「側近や幹部だけ連れてサイド5までくれば守ってやる。俺達的にもこれ以上ジオンの国力を落とすのは望ましくないんだ」
ニューギニア特別地区はジオンが後ろ盾になってできた地区だ。連邦も俺達に配慮しているのは俺達が怖いからだけではない。
なのにジオンが弱体化してしまえばひょっとするとニューギニア特別地区に侵攻してこないとも言えない。
なにせ外から見ると弱小だからな。ウチは。
『私にグラナダを捨てろと』
「多分1週間以内にアナハイムも敵に周りだろうけど、勝てる自信はある?」
『……』
アナハイムが敵になるのはテキトーな推測だけどそれほど的はずれじゃないと思う。
恐らく強化人間の規模が小さいのはアナハイムの援助を受けていないから。そして強化人間がいいものであることを知ったアナハイムは強化人間に手を出そうと動くだろうが、その場合、紫ババァは障害でしかないので処分に動く可能性がある。
『わかった。世話になろう』
よっしゃ!これでIフィールドが手に入る!俺達無双始まった!……あれ?あまり変わらないような。
という訳でレインボーゴースト出陣。
会話をしながら戦えば俺達のアリバイが作れる……かもしれない。
「じゃあ代金としてIフィールド技術と新しい拡散メガ粒子砲技術を貰いたい」
『いいだろう。用意しておこう』
と会話しつつ大型ゲルググNを2機沈め、ガルバルディβ3機を戦闘不能にする。
『レインボーゴーストが!レインボーゴーストが現れました』
通信中に会話に割り込むとは失礼なやつだな。
『なに』
「あいつは死んだはずだが?」
コクピットにわざわざ輸血用パックの血まで撒き散らしておいたから疑われることはないはず。
『となると模倣犯か、それとも仲間か身内か』
『戦闘能力から考えて仲間かと』
だろうね。中は同じだし。
と言いつつ白狼のノイエジールを撃破……あれ?いつの間に脱出したよ。
「被害が大きくなる前に撤退すべきだと思うぞ」
『わかっている。撤退を指示しろ!』
『ハッ!』
こうしてジオンの内乱は終わりを告げた……あ、まだ眉なしと交渉しないとダメか。