第百六十話
思ったより早く終決したジオンの内乱。
被害こそあったが、最終的には不穏分子を全て追い出したことで国内がほぼ一枚岩になり、より強固な政権と化した。
後は跡継ぎでもいれば2世代ぐらいは安泰、かもしれない。
と言うかいい加減愛人を嫁にするなり、別の女を娶るなるしろっての。
そして今、俺達はサイド5のダイヤで紫バ……うちに亡命してきたからキシリアと呼ぶことにする……キシリアと対面している。
「今回は助かった。礼を言う」
「そちらの配下には俺達がいらない横槍を入れたなんて言ってる奴等もいるがな」
どんなに教育が進んでもバカはいなくならない。
確かにアイギス級が落ち、俺達がノイエジールを落としたことにより眉なしの戦力はかなり低下していた。
しかし、それは一時的なことだ。
予備戦力を投入すれば直ぐに逆転するような戦力差なんだから余裕がある内に止めるのが正解なんだよ。
「それに関しては申し訳ないと思う。後ほどしっかり言い聞かせておく」
キシリアが連れてきたのはグワジン級1、ドロス1級、ザンジバル級4、チベ級3、ティベ級2、ムサイ級10、パプワ級8と大部隊で到着した。
……うん、途中で変なのが混じってるよな。
なんでドロス級がここに?!内乱の時は出撃してなかったじゃん!と思ったら武装は外されていて完全に空母化しているそうだ。
以前眉なしとキシリアの末端同士が衝突する事件があったがその時に武装解除をさせられたんだと。
それで空母として出撃しなかったのは単純にモビルスーツの数より艦の方が多くて出撃させる意味がなかったんだってさ。
今回は大量の物資を運ぶのに大活躍!……軍艦だよな?
ただ、モビルスーツはある程度置いてきて減っているようだ。
「敵とはいえ今となっては唯一の肉親。置き土産ぐらいはすべきだろう?亡き父上も私達兄妹の思いやりに感心していることだろう」
「キシリア、勝手に殺すでない」
ちなみにこの場にはダルマ(デギンのことね)も一緒にいる。
久しぶりの親子の再会なんだけど……なんかキシリアがフランクだ。キャラ違わね?
それとモビルスーツを置いて来たのはあまり多くのモビルスーツがあっても維持ができないからってのが本音のようだ。
「元々キシリアは家に居る時はこのようなものだったぞ」
「公私で顔を使い分けるのは政治家として当然だ」
あれ、ここって公の場じゃね?
今は俺とマリオンちゃん、キシリアにダルマしかいないからか?
「本題だが私や部下はどういう扱いになる」
「移住者と同じ扱いにする予定だが、モビルスーツや艦艇を残す場合は傭兵として起業するかブルーパプワに所属するか、だな。ちなみにデギンは内で人材育成の顧問をやってもらってるぞ」
「……父上、元とはいえ公王がそのようなことをされると問題が」
「固いこと言うでない。先の短い老人の楽しみなんじゃから」
こっそりヒールで若返らしていつ死ぬかわからないけどな!
いやー、案外デギンの人材教育はなかなか侮れない。
公王なんてしてたぐらいだから外交とかマナーとかニューギニア特別地区に足りない部分を補ってくれるんだよ。
今は卒業した1期生はマハラジャの部下として活躍している。
「それにしても本国に居た時より若々しくなっているように見えますが」
「キシリアもそう見えるか、実は儂もなんじゃ。腹も随分小さくなったし、糖尿病もほぼ基準値に戻っておる」
ヒール万歳、これぞチート……いや、まぁマリオンちゃんズが1番のチートなんだけど。
最近俺ってそんなにチートじゃない気がしてきた。
「話が逸れたな。傭兵団を起業しよう、とも思ったが——」
「信用がないから散々な目にあって全滅だろう」
そもそも雇う側が連邦とジオン、ティターンズ、エゥーゴ、ロシア、日本、中国ぐらいだ。
連邦とジオンはもっての外、ティターンズも同様、エゥーゴはもしかすると……でも幹部にシャアがいるから怪しい、むしろ嬉々として死地に突撃させるかもしれないな。突撃機動軍なだけに。
ロシアは滅亡カウントダウン中、日本が1番まともかな?中国はもう色々とダメっぽい……が、稼ぎは良さそう。
何処と契約しても結局は使い捨てで終わりそうだ。
本来死神の陽炎も使い捨て、磨り潰し上等!的な使い方をされるんだけど俺達の武威で阻止しているがキシリアにはそう言った後ろ盾がない。
「だろうな。しばらくは私共々ブルーパプワに所属しようと思う」
「それはいいがあまり露骨なスパイ活動は控えてもらえるかな。あの程度で俺達の防諜を突破できると思われるのは心外だ」
実は入港にあたっていくらか工場や開発所に侵入をしようとするやつらがいたんだ。
ま、俺達の予想通りだけどな。対策として暇をしていたマリオンズ6人を連れてきてたから何の問題もなし。
そして顔半分が隠れていてもわかるぐらいに顔色が悪くなるキシリアと呆れるダルマ。
「ち、違う。私はそんな指示は出していない!」
無実を訴えるキシリア、チラッとマリオンちゃんを見ると頷いたから本当なんだろう。部下の暴走というか配慮の一環だろうな。
それでも亡命してどうなるかわからないうちにそういうのはよくないぞ。少なくとも心象的には。
「そういうことにしておこう。ただしブルーパプワに所属はさせるが当面は非正規員でしばらくは監視下におくけどな」
「当然の処置だろう」
こうしてキシリアとその部下はニューギニア特別地区に亡命することとなり、そのほとんどがブルーパプワに所属することが決定した。
もっともキシリアとキシリア派という下部組織ができたような形ではあるけど。
そのせいでマリオンズブートキャンプ覚醒コースで強化できないのが残念、そのうち出て行くかもしれない組織だから若干扱いに困る。
それとフラナガン機関は来月には移転してくるという。
今最も熱いのは開発部だろうな。
早速Iフィールドと新型拡散メガ粒子砲の開発にとりかかっている。
現状では両方共サイズが多くて機体重量的に無理があるので軽量化を図る。
近いうちにビームすら防ぐ無敵の俺達が登場するかも?……なんて悠長なことはしない。
「さて、早速食すと致すか」
「久しぶりの新型ですからウキウキしちゃいます」
目の前にあるのはシン・マツナガのノイエジールとゲルググNNだ。
レインボーゴーストで捕ってきたから解析に回せないんだよ。キシリア派の目に入ったら困るし。
ちなみにグフはない。時間と運べる量の関係で見送ることになった。
残念なのはキシリア側のノイエジールじゃないから新型拡散メガ粒子砲とかミサイルファンネルとかが手に入らないことだが欲を言ってもしかたない。
それにミサイルファンネルは弾数さえきにしなければ技術的にはそう難しいものではないらしい。
期待してるぜ、開発部。
「では、いただきます」
「いただきます」
まずはいきなりノイエジールから。
「…………」
「…………」
「これは、オリーブオイル、か?」
いや、生前でもオリーブオイルは口にしたことあるよ?でもそれは料理に使ってのことで、オリーブオイルをそのまま飲んだことはない。
つまり何が言いたいかというと……
「微妙」
「不味いわけではないんですけど特別美味しいというわけでもないですね」
高級な味っぽいんだけどね。
フレンチを期待してたのに牛乳が出てきたみたいな気分だ。意味わからない?俺もだ。
「重要なのはステータスか、確認してみるぞ」
特殊オプション: EXAMシステム(マリオン・ウェルチ)
マグネットコーティング
憑依
ハイドロジェット
電磁波吸収塗料
アンダーグラウンド・ソナー
ミノフスキー粒子散布
ミノフスキー粒子体(マリオン・ウェルチ)
ミノフスキークラフト(低)
ミノフスキー粒子体(ブルーニー)
サイズ変化
マリオンちゃんニュータイプ占い
サイコミュ
ニュータイプ(レツ・キッカ級)→(ミライ級)
マリオンエディッタ(目、髪、肌)
マリオン分身の術(満年齢と同数だけ)
サイキッカー(マリオン・ウェルチ)能力:ヒーリング、テレパシー
チョバムアーマー生成
Iフィールド(低)
おお、とうとうIフィールドが……って、あれ、普通のIフィールド喰ったのに手に入ったのはNNの劣悪品?
ノイエジールでこれってどうなのよ。
これってNN喰っても進化しないよね?
「なんだかとても微妙になる気がします」
「……ま、とりあえず喰ってみるべ」
とりあえず淡く儚い期待を抱きながらNNを口にする。
「ほうれん草のマカロニグラタンか、なんか久しぶりに洋食だな」
「ええ、最近和食が多かったですからたまにはいいですね」
さて肝心のステータスは……
特殊オプション: EXAMシステム(マリオン・ウェルチ)
マグネットコーティング
憑依
ハイドロジェット
電磁波吸収塗料
アンダーグラウンド・ソナー
ミノフスキー粒子散布
ミノフスキー粒子体(マリオン・ウェルチ)
ミノフスキークラフト(低)
ミノフスキー粒子体(ブルーニー)
サイズ変化
マリオンちゃんニュータイプ占い
サイコミュ
ニュータイプ(ミライ級)→(レビル級)
マリオンエディッタ(目、髪、肌)
マリオン分身の術(満年齢と同数だけ)
サイキッカー(マリオン・ウェルチ)能力:ヒーリング、テレパシー
チョバムアーマー生成
Iフィールド(低)
「……Iフィールドに変化がない上に、ニュータイプレベルがダウンしてね?」
「どうなんでしょう?そんなに変わらないような気も……」
まだだ、まだ怒るな。俺。
まだNNは2機ある。
そして喰った結果。
ニュータイプ(レビル級)→(グレミー級)
ニュータイプ(グレミー級)→(ナナイ級)
Iフィールド(低)→(中低)
……中低ってなんだよ。
それにニュータイプレベルがカオスすぎる。とりあえず低いってのはわかるけど、納得行かねぇ。
と言うかニュータイプ全員出るのかこれ?
「今までステータスダウンしたことはありませんから多分パワーアップなんですよ。きっと」
多分最終はマリオンちゃんズなんだろうね。一体どれだけ先か知らないけど。
「それよりIフィールドを早速試してみましょう。ひょっとしたら思ったよりも使えるかもしれませんし」
「そうだな。嘆いてばかりいられないか」
マリオンズの協力の下でテストした結果、ブルーパプワ製の新型ビームライフルの有効射程を2割縮めることに成功した。
アナハイム製なら3割ぐらい、連邦製は4割、エゥーゴはアナハイム製、ティターンズはブルーパプワ製を使ってる。
日本に関してはフジのビームライフルは別系統でまだ入手できてないから計測できない。
「まぁこれぐらいなら効果はあるか」
「問題はIフィールド維持に燃料消費がいることと、Iフィールドに被弾するとそれ相応に燃料が消費されることですね」
燃料にはかなり余裕はあるが無駄遣いはしたくない。
Iフィールドでビームライフルを防ぐと貫通する威力だと1発1000%ぐらい燃料が消費される。
あまりタコ殴りにされると燃料がすごい勢いでなくなることは間違いない。
「ニュータイプレベルも結構変化があるようだし、思ったより成果があったな」
相手の思っていることを少し敏感に感じることができる。もっともその能力を使う機会なんてあまりないだろうけど。