第百六十一話
キシリア達はしばらくは一纏めにしてサイド5の第1コロニーダイヤに移住させた。
分けると管理が面倒で本人達が落ち着くまでは纏めて放置が安全だろう。
本来なら武力蜂起とか注意するかもしれないが、そんな愚策をするようならその誘発させて消滅させた方がいい。
多少責任問題になろうが独裁国家では不満をもみ消すのはそれほど難しくない。
用事も済んだとニューギニア特別地区に帰ろうとしたところで面会希望があった。
相手はマリオンちゃんと1字違いの紛らわしいやつ、マリガンなる存在だ。
確か原作キャラだったはず……だよな?
ギレンの野望ではファット・アンクルがお似合いと言われる雑魚に埋もれる雑魚。ちなみにそれ以下のゴップとかリードなどは雑魚以下のクズだ。……あ、ゴップはモグラだったか。
「それで俺達に何の用だ?」
ただ、そんな雑魚中の雑魚がなぜか先の内乱では指揮を執っていたというんだからわけがわからん。
原作でどういう役割を果たしていたのか全然覚えてないけど、能力値から察するに大した活躍はしてないはず。
原作からかけ離れた存在は今のところ4人確認している。
まずは俺、そして俺の影響を受けているマリオンちゃんズ、そして貴腐人代表まで上り詰めたフラウとそれを支援しているファだ。
つまり——転生者、もしくは転生者が近くにいるはず。
「……」(うわ、マジでブルーディスティニーがSD化してるぞ?!ネットで書かれてるまんまだよ)
返事がない。ただの屍にするぞ。
「自分で呼び出しておいて無視するたぁいい度胸だ。蜂の巣でいいな?ちなみに無視とスルーの違いは無視は許されないことでスルーは許されることだ」
「ちょっ、マシンガンまで再現とか?!しかも雰囲気からしてモノホンだよな!最後の哲学っぽいのいらないぞ」
こいつ、俺と喋り方が似てて読者が混乱しそうだよな。
「それで話ってのは?」
「率直に言うと君かマリオン——様のどちらかが転生者か?」
呼び捨てなんかしたら引き金を引くつもりだったんだけど、よく気づいた。
対応が厳しい?気のせいだ。
「俺が転生者だ。それがどうした」
何か知りたいことでもあるのかね。
「いや、そう言われたら困るんだけど……なんでモビルスーツ?」
「知らんがな」
理由なんて知るわけ無いだろ。
突然ブルーディスティニーになってたんだから……本当に今更だが第3者から聞いたら正気を疑うようなセリフだよな。
「知らないって……それ、コスプレだろ?」
ああ、俺の姿をコスプレだと思ってるのか……もしかしてキシリアや眉なし達もそう思ってるのか?いや、むしろこれが生身(?)だと思ってる方が問題か。
何度目になるかわからないお決まりを言うか。
「中の人なんていない!」
「はいはい、ワロスワロス」
今までで1番腹立つな、こいつ。
「それにしても歴史改変し過ぎだろ。原形がないじゃん!」
「転生者なんている段階で気にしても仕方ない。修正力があるなら勝手に修正されるだろうし、されなかったんだから好きに生きていいはずだ。それに結果的に死人は少なくなってるぞ」
なにせスターダストメモリー、つまり星の屑作戦が未実行だからな。
それに宇宙がほとんどジオンの手にあるおかげとバスクを始末した結果ティターンズによる毒ガスもないだろうし、俺達はかなりの人間を助けてると思うぞ。
戦争を長引かせてるけど星の屑作戦の直接的な死者や間接的な経済打撃なんかを考えれば微々たるものだ。
「そりゃそうかもしれないけど、なんで一年戦争でジム・カスタムとかジム・クゥエルが出てくるんだよ」
それはごもっとも。
あまりの進化っぷりに当時の俺も驚いたもんだ。
「それに……こう言っちゃなんだが、なんでマリオン様に意識があるんだ?EXAMシステムが全部破壊されないと起きないはずだよな」
「知らんがな」
どうも他に転生者がいて嬉しいから色々話してるが俺的にはどうでもいいんだけど。
ブルーパプワに所属しているとは言っても微妙な関係だからキシリア派はペットまで昇格してない。どちらかというと軒先に巣を作ったツバメみたいなもんだ。糞の被害が大きいようなら撤去する程度のもの。
「……もしかしなくてもウザいと思ってるか?」
「よく気づいたな」
「ゴフッ……前世のトラウマがあぁ」
とりあえずテキトーに話を付き合ってやって解散した。
結局実入りがある話は何一つなかったな。
さて、ニューギニア特別地区に帰還すると書類整理から始まる。
その中でもっとも多いのはIフィールドと新型拡散メガ粒子砲を採用した開発プランだ。
早速目新しい技術に飛びついたらしい。
もちろん、アプサラスシリーズのものもある。
特に期待できそうなのが一般兵向けのアプサラスVIだ。
マリオンちゃんズにはあまり必要ないIフィールドだが一般兵向けのモビルアーマーには必需品になるだろう……ただ、Iフィールドの覆う範囲とジェネレーター出力の関係でIフィールド(劣)が精一杯なようだ。
ノイエジールはミノフスキークラフトは搭載してないから出力に余裕があったんだろうな。
「拡散メガ粒子砲は使い勝手が難しいな。弾幕という意味ではいいかもしれないけど理論的には普通に狙った方が落とせるとなっている以上採用は見送った方がいいか?」
「でも実際使ってみないとわかりませんよ?それにアンチニュータイプ兵器としては優秀だと思いますし」
面攻撃はニュータイプも避け辛い、マリオンちゃんズですら当たることが……ないか。
「じゃあいくらかは試験機は採用するとして……Iフィールドの採用もまた難しいな」
さっきも言ったがアプサラスシリーズから始まり、Iフィールドと分厚い装甲で実弾を防ぐアイギス級の親戚のようなモビルスーツ、SFSにIフィールドをつけるなんていう突拍子のないものまである。
SFSにIフィールドってどんだけコスト上げりゃ気が済むんだ。
それにやはり出力の問題もある。
「サイコタイプに搭載するにはずんぐりむっくりにするかノッポにするしかありませんね」
「マリオンズならそれでもいいだろうけど、そもそも必要ないし、死神の衣じゃ失った機動力を補えないだろうな」
ニュータイプは基本的に回避重視だもんなぁ。そういう意味ではIフィールドはあまりコンセプトに合わない。
「普通のモビルスーツに搭載するにしても大型化は避けられません」
Iフィールド技術が原作で使われるのが少なかった理由がわかるな。
「とりあえずアプサラスシリーズだけ開発……いや搭載するか」
空きスペースに載せるだけなのを開発とは言わないよな。
「ですね。一番問題が少ないでしょうし」
ただ、少し可動砲の数を減らす必要がありそうではあるがな。
アプサラスシリーズが使うビーム兵器は全てEパックのエネルギーが使われているけど正確に言うとEパックを消費しているがジェネレーターから補充も同時にしている。
電球をバッテリーで光らせているがバッテリーは車の動力で充電しているようなものだ。
アプサラスは腕なんてものがないのでEパックが切れると付け替えるなんてことができないのでこういう形式にした。
放出したメガ粒子は随時補充されてEパンクが切れることはない。
だが、エネルギーCAPが補充するのに膨大な電力量が必要だったようにEパックの補充もそれ相応の電力量、つまりジェネレーター出力がいる。
アプサラスシリーズは可動砲に結構ギリギリまで容量を使っているのでそうなるとIフィールドを動かすには可動砲を減らすしかないわけだ。
「攻撃力より防御力か」
「アレだけ大きいとそうなりますよ」
初期のアプサラスなんか装甲頼りだったし、現在もそうなんだけどな。
まぁ実弾は見事に弾いてたけどさ。
「あ、そういやIフィールド(劣)ってスナイパー部隊に対してアンチだな」
「狙撃だと貫通することは難しいでしょうね」
ま、Iフィールドを常時展開しているかは疑問だけどな。
「ニューギニア特別地区から離れて5日しか経ってないからロシア解放作戦は特に変わってないな」
「ジオンの内乱が早く終息したため連邦やエゥーゴが若干焦っているようではありますけど、その程度ですね」
「ブルーニーさん、エゥーゴからこのような言伝がありました」
マレーネが手渡してきたメモには『ロベルト返してちょ!』と書かれていた。
よほど切羽詰まってるんだな。
「聞いた話によるとクワトロ、リリィ両名共に常に前線で戦い続け、先日お倒れになったそうです」
指揮官少なくて涙目、ってところか。
対価も申し分ないし返すとするか……正直抱えてると食費が掛かって仕方ない。