第百七十三話
ゴップは打ち取れなかったが、これでやつの命運という名の悪運が尽きた。
「そう思ってたんだけどなぁ」
「さすがモグラ、あくどいですね。まさか移動中でまだ着任してなかったことにするなんて」
「かなり強引過ぎる。しかも着任が遅れて敗北を招いたとして軍を勇退、今度は政治家として活動するとかなんとか……」
まぁ、デラーズ紛争をなかったことにした原作の連邦だからこれぐらいはやってのけるだろうけど……腐ってんなぁ。
「そもそもなんでゴップが戦場に出てきたんだ?」
前回出てきたソーラシステムの護衛はまだわかる。
戦闘になるとは思わなかっただろうからな。でも今回は明らかに最前線、なぜ出てきた?
「噂では連邦の力を削ぐためにティターンズが仕掛けたというものやジオンが内乱で消耗した戦力の穴埋めに裏で動いたなんて話までありますけど、証拠や確証は全くありませんね」
そういえばこの戦いで1番得したのは俺達、次点で日本、次にティターンズ。
俺達は戦争が長引けば長引くほど利益が増えるので意味なし、そして次は日本だけど日本は連邦が負けて得することなんてないからな。
そうなればティターンズを疑うのも道理か。
「コーウェンが失脚したことと今回の活躍でティターンズが台頭するのは間違いないな」
「先日兵器の大量発注がありましたからね。今までみたいに連邦の1組織と言うには大きな組織になりそうです」
それに比べてエゥーゴは平壌を落とせなかったがウラジオストクは落としたことにより面目は少しだけ保たれた。
そしてコーウェンが失脚して崩れた勢力の半分ほどはティターンズに敵対するエゥーゴに流れ込んでもう半分は連邦に残るかティターンズに流れた。
どうも原作で言うグリプス戦役に当たる部分は回避不可っぽいな。
もしかしたらティターンズ圧勝で終わるかと思ったんだが。
「これで連邦に残った主な人物はティアンムぐらいか」
「グリーン・ワイアットさんを忘れてますよ。最近、大艦巨砲主義が盛り返してきてるらしいですよ」
「……Iフィールドをどうにかするかレーザー兵器を実戦に耐えうるものにするかしないと復権は難しいと思うんだが」
「あくまで艦を主力にするかモビルスーツを主力にするかの違いですからね。別にモビルスーツを運用しないというわけではありませんし」
まぁ原作の戦い方が正しいかと言われたら微妙だからぜひチャレンジしてもらいたいものだ。
「とは言ってもワイアットは宇宙だからなぁ」
「ティアンムさんは大将に昇格して地上勤務になりましたね」
主要な大将がいなくなって穴埋め的な昇格、正確には政治家連中が身を守る盾が欲した結果だ。
ただし、政治家と相性が悪そうという話だけどな。派閥とかにも興味が無いっぽいし。
「コーウェンは中将だったのにティアンムは大将に昇格させたのはなんでだろ?最初からコーウェンを大将にしてりゃ今回みたいなことにはならなかった……いや、それに気づいたから大将にしたのか?」
「みたいですね。今回のように横槍が入るのを防ぐためでしょう」
一応その程度のことを反省するぐらいには連邦も機能しているらしい。
俺的には銀河な英雄的な伝説の同盟みたいに有能な人間に軍を任せるとクーデターが起こるかも〜とか考えるかと思ったが……まさかとは思うがそんなことを察しないほど腐ってないよな?
「それに比べてティターンズは快進撃中ですね。計略的に近いうちに没落しそうですけどね」
「どこの小覇王さんだ」
またわかりにくいネタを……
「北中国を支配下に入れたので経済がより活発化してジャミトフさんは嬉しそうでしたね」
「ああ、ついつい俺達から金を借りてしまうほどにな」
いやー、あの資産家が金に困るってどうなの?と思ったが一気に領土が増えたから一時的に負担が増えて玉がなくなったんだってさ。
ジャミトフが素で潰れるとは思えないからスパンッと貸したけどね。金利もそこそこで。
銀行からの融資はティターンズが軍である性質上、表立って援助は受けられないそうだし……ヤミ金(俺達)なら金借りても他の人にはわからないからな。
俺達は商人は商人でも比較的善良な部類だから声がかかったんだろうな……うん、自分で言っておいてなんだが善良ってw ないわー。
ただ、アナハイムよりは商売気が薄いんだよ。基本的に毟り取るような商売の仕方してないし、必要もない付加価値つけたりしないしな。
そのせいか注文が山のように来るから自動的に金が入ってくるけどさ。商売ってこういうのが本質だと思う。
……脱税(ただし法を曲げての合法)とかしてるけど気にしたら負け。
「そういやソウルは韓国に返ったんだっけ」
「はい、日本は随分渋ったようですけど、元のエゥーゴ利権に戻ったそうです」
あれ?韓国に戻ってねぇ。
そういや朝鮮半島は元々エゥーゴのだっけ。
アレだけ戦ったんだから統治しづらそうだ、ナムナム。
「そういえば連邦とジオン、エゥーゴから養殖ニュータイプを売って欲しいと言ってきてますよ」
モスクワを占拠する際に活躍したのが俺達が売った養殖ニュータイプ10人で、それを知った他が欲したわけか。
「養殖ニュータイプ自体は売ってもいいけどサイコタイプはティターンズの契約があるから売らない旨は伝えてあるか」
「はい。伝えてありますよ」
「なら売るか」
試算したんだけどリック・ディアスより高いけどいいのかね?まぁニュータイプを探しだして教育することを考えると費用は安いだろうけど。
そうそう、リック・ディアスといえば……
「モビルスーツパーティーだぜぇ!」
「ヤハー!やっと食べられますよ!」
最近は戦争のせいで兵器需要が高まってたから絶食してたんだよな。
やっとガンダリウムγも余裕ができて復元したリック・ディアスや何気に食べてなかった自社製品のαタイプ(ドートレス、ジェニス、リーオー)、ロシアが鹵獲したものを売ってもらった初可変モビルスーツのフジが並ぶ。
添え物としてはロシアに無理言って運んでもらったビックトレー、大量に拾ってきたジェットコアブースター、余程の怨みを買ってだろうボコボコになったガンタンクII、忘れられていたハイザックなどだ。
気分は立食パーティー。
「いやー、マリオンちゃんがモビルスーツを分解してエネルギーにできると説明したから今度から簡単に餌が確保できるな!」
「アイナさんがエンゲル係数がー!って叫んでましたけどね」
そう、今までは俺達の食生活を隠していたが、アイナ達に暴露したついでに協力してもらうようにしたおかげでこれからは気軽に食事ができる。
ちなみにドップブースターも喰ってないけど、ロシアやティターンズにまだ需要があるので余裕がないからお預けだ。
「さて、そろそろ」
「いただきます!」
まず口にしたのは本命、リック・ディアス。
味は……
「いきなりデザートだったか」
「これはブラックベリーですね。しかもジャムじゃなくて生の」
ちょっと酸味が強いけど、久しぶりの食事だ。ウマイ。
……ん?なんかオプションがついたか?もしや——
特殊オプション: EXAMシステム(マリオン・ウェルチ)
マグネットコーティング
憑依
ハイドロジェット
電磁波吸収塗料
アンダーグラウンド・ソナー
ミノフスキー粒子散布
ミノフスキー粒子体(マリオン・ウェルチ)
ミノフスキークラフト(低)
ミノフスキー粒子体(ブルーニー)
サイズ変化
マリオンちゃんニュータイプ占い
サイコミュ
ニュータイプ(ナナイ級)
マリオンエディッタ(目、髪、肌)
マリオン分身の術(満年齢と同数だけ)
サイキッカー(マリオン・ウェルチ)能力:ヒーリング、テレパシー
チョバムアーマー生成
Iフィールド(中低)
装甲材換装(ルナチタニウム・チタン合金セラミック複合材・ガンダリウムγ)
スペースドアーマー化
リアクティブ・アーマー化
簡単に言うと防御力アップ!って感じだな。
実弾やミサイルに強くなってガンダリウムγに換装すれば重量が軽くなる……ダイエットか?!
「リアクティブ・アーマーは火薬が詰まってるので重くなってる可能性がありますね」
「と言うより実弾なんてバルカンぐらいしか当たらないのにいらなくね?」
「いらないですねー」
幸いリアクティブ・アーマー『化』って書いてたから無効化できるっぽい。
そして劣化するチタン合金セラミック複合材とか使い道がないだろ。
αタイプはジェニス、ドートレス、リーオーの順に肉まん、あんまん、カレーまんだった。
俺は肉まん派、マリオンちゃんはカレーまん派、2人揃ってあんまんは無いでまとまった。
「自社製品がなぜ中華まんなんかね」
「製品のほとんどがパクリだからじゃないですか?」
「なるほど!」
フジは……
「……」
「……」
「「水、ですね」」
アレか、富士のおいしい水的なものか。この身体になって水なんて飲んでないから味なんてさっぱりわからんが。
「……しかも変形機能付かないし、もう少しって感じなんだけど」
「何か足りないんでしょうか」
皆目検討がつかないのでスルー、なんとか頑張って1機喰ったが、まだ2機あるんだよなぁ。
喉も渇かない俺達には苦痛で仕方ない。
しかも装甲材換装に発泡金属が追加されたけど、チタン合金セラミック複合材と同じく使い道あるのか?確かに軽くはなるけど。
「おお、ハイザックは高菜おにぎりか」
「でも私は鮭の方が好きです」
俺は梅干しかな。
続いてジェットコアブースター。
「フライドポテトだな。食べ応えからするとロッ○の方か」
「ついでに言うとケチャップがついてます。小腹が空いた時にはいいですね」
多少期待はずれもあったが久しぶりに余は満足じゃ。