第百七十七話
「なかなかの成果だな」
「はい。私(わたくし)共と致しましてもなかなかの仕上がりだと自負しております」
「アレで3ヶ月だったか」
「はい。正確には生産で1ヶ月、教育に2ヶ月となります」
0085年10月、今いるのはサイド5宙域、俺達の宇宙の庭だ。
ジャジャ丸に乗ってサイコタイプ同士が戦う様を見ている。
方や指揮官抜きの養殖ニュータイプ、方や今話しているフラナガン機関自慢の自我なしっ娘量産型でバトってる。
戦力は10対10、戦況は既に養殖ニュータイプの勝利で揺るがない状態だ。
しかし養殖ニュータイプ側も4機落とされていて、たった3ヶ月で生産された自我なしっ娘量産型……面倒だからクローン兵な……なのだから十分な成果といえる。
ニュータイプレベルはファンネルを動かすこともできない(有線式は可能)程度しかないが最低限は覚醒している。
そしてもう少し自我が成長してマリオンズブートキャンプに参加させれば戦力となるだろう
「生産コストは?」
「大体2500万ほど——」
「3500万で、1000人ほど買う」
「あ、ありがとうございます。すぐに取り掛かります」
「ただし、軍機として他国への販売は禁ずる。いいな」
「もちろんわかっております。」
現代では地球しか人類の住処がなかったため、食料生産のために自然を犠牲にすることになって人工の増加に自然と歯止めをかけることになった。
しかしこの世界ではコロニーという大地を手に入れたことによって食料生産の問題が解決、人類増加の障害はなくなった……んだけど、宇宙世紀の人間達は人口増加にトラウマでもあるのか知らんけど虐殺で人口減らしてばっかだよなぁ。
ちったぁ増やす努力をしろよ。
「後、サイコミュ開発もそろそろしろよ」
「もちろんです。はい」
商売がうまくいって嬉しいのはわかるがちょっと浮かれすぎだろ。少しは隠せよ……と、思うとでも思ってんのか?まるで隙あらば噛み付くと目が言ってる。
「ああ、ちなみにクローン兵を他に売ったりしても私やナンバーズが近くにいればすぐにわかりますから発覚したその時は……花火大会を開くことになるでしょうからくれぐれも守ってくださいね」
汚い花火を上げるんですね。わかります。
「承知しております!」
フラナガン博士が背筋がピンっと伸ばして45°のお辞儀をする。
あれ、俺の時とはえらい対応が違うけど、もしかして舐められてる?いや、マリオンちゃんの方が恐れられてるのか。
まぁ何にしてもこれで新しい戦力が手に入ったわけだ。しかも養殖ニュータイプとは違って補充が簡単に行えるのは大きいな。
「ところでクローン兵を冷凍保存しておくことはできないのか」
「……ハ?」
「いや、クローン兵って常時必要というわけでもないんだから必要ない時は冷凍保存して、必要な時は解凍して使えればいいなぁ、と思ったんだが」
「それは弊社ではわかりかねますが」
そりゃそうだよな。分野が違うもの。
問題があるとするとおそらくエネルギーぐらいだろうが専用のコロニーを作れば問題ないだろう。
んー……パーフェクトじゃね?警備にマリオンズを2人ぐらい付けてれば破壊工作だって不可能……うん、ちょっと真剣に考えるかな。
下手すると万単位の常備軍ができそうだ。もっともこれが世間にバレれば一気に崩壊するけど。
「冷凍保存ができるようなら生産数は限定したものになるだろうから頑張って進化、高性能化してクローン兵の更新するように」
「精一杯頑張ります」
やっぱりなんか舐められてる気がする。
俺の思いを感じたのかマリオンちゃんのプレッシャーがフラナガンを襲う。
顔色が悪くなり、汗と鼻水と油と鼻血が同時に出ている。さすがに反省しただろうとマリオンちゃんを抱きしめて宥めるとフラナガンは深く頭を下げて艦橋から出て行った。
「普通の人間にやり過ぎだぞ」
てい、とおでこを突く。
「だってぇ」
可愛いけどダメだぞ。
アレでも大事な駒だからね?代わりはなかなか用意できそうにない人材は扱いに注意しないと。
「はぁ〜い」
拗ねない拗ねない。
ブリッジクルーが呆れたように見ているが気にしない。と言うか君達、マリオンちゃんが気づく前にスルーしておきなさい。でないと照れ隠しに酷い目に合うぞ。
後日コールドスリープ技術を確認したところ現在は冷凍から解凍して意識が回復するまでに2日掛かるが実用レベルに到達しているそうなのでクローン兵貯蔵計画はスタートすることとなった。
どっかの映画みたいな戦争になりつつあるけど……大丈夫だよな?色々と……
「お・わ・っ・たーーー!」
「あなた、お疲れ様でした」
「シロー、お疲れ」
「隊長、お疲れ様でした」
「お疲れ様でした」
「リア充爆発しろ」
大体察していると思うが、シローが組織のトップとして恥ずかしくない程度の教育が、今日終わったのだ。
ちなみに久しぶりにケンタッキーのセリフがあったな。
「さて、一応これから打ち上げかな。それともアイナと——」
「言わせねーよぉ?!」
まさかお笑い芸人としての修練じゃなかったよな?
「それとマハラジャとマレーネもお疲れさん」
「勉強が苦手だったようですが、根は真面目なのでそれほど苦労はしませんでしたよ」
「むしろたまに勇者化してうるさくて仕方ありませんでした」
……なんでこの世界で勇者化って言葉が出るんだ?
「私が教えました」
「また犯人はマリオンちゃんか?!」
地味に色々広めてるな。
別にいいんだけど、転生者とか憑依者に聞かれたら面倒なことにならんかな。
……もういっそ、勇者王ガオガイガーを作るか。もちろんアニメだぞ?本物はちょっと……。
「とりあえず宴会だな。もちろん会社持ちだから遠慮するなよー」
あっちこっちから歓声が上がる。
皆金には困ってないはずだがやはりタダ酒は嬉しいんだろう。
俺は飲まないけど。
「ブルーニーさん」
「ん、シローがいる時に声を掛けてくるとか珍しいな。何かようか」
「実はマリオンさんの力で妊娠しなくなったことで思わぬことが……」
そんなに困るような事態になるようなことじゃないはずだけど?ヒールになんか欠点が?
「シローが生殖能力に問題があるんじゃないかと悩んでいるようで……」
ああ、なるほど。
毎日盛って妊娠しないんだからどちらか、もしくは両方何かしらの原因があるんじゃないかと疑ってるわけか。
「それならシローには話して問題ないよ。今回のことで一応幹部入りしたんだからな」
「わかりました。ありがとうございます」
早速伝えるためだろう、シローの方へと駈け出した。
と言うか、ここで話すのか?さすがにここじゃちょっと……と思ったらちゃんと離れて話すようだな。
「そういえばクローン兵貯蔵計画はサイド5でやることになるんだが、シローに管理を任せるのは問題があるな」
万が一嫌気が差して内部告発でもされたら面倒なことになる。
そこだけはマリオンズに護衛ついでに管理も任せるか、一向にマリオンズに余裕が無いな。
「そういえば食の聖地の建設も始まるんだっけ」
資源の値段が落ち着いたので日本に改めて確認をしてみたら是非にということなので早速食の聖地コロニーの建設に踏み切ることにした。
更に、何処から聞きつけたのかロシアも1枚噛ませろといってきたので参加させることになった。
それ以外にもオーストラリアや南中国も参加することになったが小さいことだ。
コロニーを2つも同時に建設できないからクローン兵貯蔵計画は少し先延ばしになるか。
「ブルーニーさん、ハマーンさんの専用機がもうすぐ完成するらしいですよ」
「早くないか、作り始めてあまり間がないぞ。大丈夫なのか?」
「マリオンズがテストしているので大丈夫なはずですけど……」
「……一応国内治安維持用に使うんだから真剣にしてもらわないといけないんだが」
「ちゃんと動きますよ。ただ稼働時間が短すぎるんです」
「どれぐらいなんだ」
「2時間がいっぱいなんだそうです。核融合炉なしだとこれぐらいが限度みたいで」
それは……仕方ないな。バッテリーで動かしてるのか。
まるでSEEDだな。
あちらほど滑らかに動かないけどね。
「ムラサメ研究所が何を考えたのかサイコミュを乗せようとしてるようですけど……」
「止めとけ」
いくら変態日本人とはいえ、さすがに今の技術力ではモビルスーツより小さい零式にサイコミュはどう頑張ったって無理。