第十八話
さて、かれこれ4日ほどインドネシアから離れていたけど、無事帰ってきた。
帰ってきたのはいいんだけど…
「なんで潰した連邦の基地が復旧してんだよ!ジオン何やってんの?!」
『私達がいなくなったことで再侵攻を始めたのでしょう。前回は夜襲で比較的簡単に壊滅できましたけど今度は以前より警戒されているでしょうから難しい戦いになりそうです』
いくら俺達が運動性、機能性に優れていたとしてもビームライフルが実戦投入され始めた今となっては一撃が必殺に近い現状では前とは話しにならないほど難易度が上がる。
こりゃ、ジオンと連携が必要になるか…でもあまり俺達のスペックを知られたくもないし…困った。
『とりあえず情報が必要ですからジオン基地へ向かいます』
「おう、うるさいハエはこっちで処分する」
基地が復活してるって知らなくて連邦の防空網に引っかかってしまい、今追われてます。
ミデアの速度はそれほど速くないので余裕で補足された。
コンテナを開き、バルカンでよく狙ってセイバーフィッシュを4機ほど沈める。
「おろ、逃げはじめたな」
『まだ余裕がありそうだったのに…なぜでしょう』
後で知ったのだが青いガンダムタイプのモビルスーツ(つまり俺達)には中途半端な戦力で攻撃を仕掛けることが禁止されていたんだってさ。俺達が思っている以上に恐れられていたらしい。
「まぁ何にしても食材が手に入らない戦闘なんてやる意味ないんだから助かったな」
航空機は食材とするには低空で飛べないように最低限のダメージを与え、墜落時に爆発しないという運に任せる所が多くて効率が悪い。
『もうジオン勢力圏内に入ったので追撃はないでしょう』
「でもあの様子からするとジオンは…どうか知らないけど少なくともあの基地には余裕がないんだろうな。まさかこんな早く復旧させるなんて…」
『国力、つまり自力の差が表面化しましたね』
確かに基地の再使用を妨害するしかできなかったジオンと数日で爆破された基地をある程度復旧させた連邦では力の差が如実に現れている。
もっとも基地の構築などという宇宙では機会が少ない上に地球とは事情が色々違う分ノウハウがなくて戸惑っている可能性も捨てきれない。
ジオン基地に到着してマリオンちゃんが情報収集、この時の俺は雨の時の某マスタングさんぐらい役立たずである。
マリオンちゃんの情報収集の実況を聞く限り一応連邦に対して妨害はしようとしたんだけど圧倒的な物量で追い返されたらしい。
よくこのジオン基地が落とされないよな。
総攻撃を受ければ耐え切れないことは司令もわかってるらしく、前線の後退を上に進言したが受け入れられず悩んでいるとのこと。
いや、情報が欲しいのは確かだけどマリオンちゃんに相談してもどうにもならんよ。
ただ唯一の救いはインドネシアの資源確保が好調なのを上は評価して増援が送られることが決まったことだ。
それでも攻勢から考えると厳しいと司令は考えらしく、頭を痛めているようだ。
ちなみに増援はドム3機、ザクIIJ型3機、ザクキャノン3機、ドップ30機、ドダイ30機、マゼラアタック30両、ガウ級攻撃空母1機という大増援を予定している。
それほどインドネシアは資源がとれているのだろうか、侵攻ではなく前線の維持がメインだからかモビルスーツより補助兵器が多いあたり結構な量なんだろうけど。
「というか司令、俺達に情報流しすぎじゃね?明らかに傭兵に話していい内容じゃないぞ」
『司令曰く「お願いします。どうか連邦を追っ払ってください」とのことです。私達に頼ってるのか、利用しようとしてるのか。私の印象ではもう限界なんだと思いますけど』
ニュータイプが察知する印象に文句つけるほど俺の能力は高くないんでマリオンちゃんを信じるのは当然だよな。
それにしても司令のざっくばらんさは軍人に、いや司令に向いてないと思う。
もしや野戦任官なんだろうか、それともただ切羽詰まってるだけなのか…まぁ俺達にはあまり関係ないか。
「結局はやりこと変わらずか」
『ですね。できれば対空戦力を借りたかったんですけど無理!って言われました』
そりゃーザクIIJ型2機、旧ザク4機、ザクキャノン1機、マゼラアタック5両、ドップ10機、ドダイ5機じゃ貸すに貸せないだろうよ。
ベトナム行く前にはモビルスーツは旧式ばかりだったとはいえ2桁はいたはずなんだがとうとう1桁になっちゃったか、これでよく守ったもんだ。
「早速出かけますか、マリオンちゃん帰ってきて〜」
『はーい』
基地を出る時、ジオン軍兵士が盛大に見送ってくれたのは印象的だった。
「毎回毎回戦闘描写なんてしませんよっと」
「描写?」
なんでもありません。気にしないでください。
連邦基地を2つ潰したんだけど…なんだか逃げ足が速くなってる。
警戒が厳しくて奇襲は不可能。
最初の基地は作戦を混乱を招くために司令部を最優先で叩く正面突破にしたんだけど、巡廻していたジム改6機を撃破して司令部の破壊にも成功したんだけど…どうもマニュアルがあったらしく司令部が沈黙すると潔く撤退を始めたんだ。
せっかく復旧した基地を簡単に放棄し過ぎだろ、とツッコミながら追撃。
結局スコアは最初のジム改6機と更に6機、ホバートラックなどおまけ25ほどで戦果自体はそこそこに見えるかもしれないが、基地にはジム改が後30機近く居たはずなのに逃げられたということから考えて明らかにハブられてるな。
現状では防御が突破される基地より戦線維持に必要な兵器を優先したようだ。
それと前線に立つモビルスーツはジム改しか見かけない、つまり陸戦型から完全移行しているんだろうね。
次の基地は司令部を潰しても逃げられるだけならと、最初からモビルスーツの撃破を狙って戦果を稼ぐことにした。
どうせ俺達の利益になるでもなく、ジオンが占領するでもないので戦力を削ることが優先だ。
それでも60機近くいたジム改(前の基地から逃げてきた分もいたっぽい)のうち25機しか撃破できず…悔しいですっ!
まぁそれでも連邦からすれば憤死ものだろうけどね。
キルレシオ的には0:37、戦闘自体は2回だから0:18.5か?なんにしてもアムロと五分ぐらいは撃破してる…と思う。数えたことなんてないからわかんないけど。
「で、問題の3つ目の基地だが…誰もいねーな。逃げたか?」
「ブルーニーさん、すごく嫌な感じがします。少し離れましょう」
「分かった…ソナーにもセンサーにも反応なし、となると…罠か、何処が嫌な感じが強い?」
「あの格納庫あたりです」
とりあえずビームライフルを撃ち込んでみる。
「あ、嫌な感じがなくなりました。言うとおり罠だったみたいですね」
「確認してみるか」
本当にニュータイプって凄いよな。
…ん?ミノ粉の身体を作れるマリオンちゃんをニュータイプって言っていいのか、明らかにニュータイプっていうより人外的な感じなんだが…まさかこれが人類の進化?んなバカな。
「………このマークって」
「核…ですね」
まさかの核爆弾…いやいやいや、南極条約無視した上に汚染も無視して俺達を仕留めに来るって常識何処行った。
俺達ってそんなに危険に思われてる?
「何より…もしかしてビームライフルで爆発しなかったのは運が良かった?」
「核爆弾は起爆しないと爆発しませんよ。ですが今回は放射能漏れも起こさなかったのは運が良かったといえますね。綺麗に遠隔操作用の制御盤を壊してるみたいです」
「すっごい偶然だな。なんかご都合主義を感じる…でも俺達は放射能自体は関係ないな」
「もちろん、もともとザクは核を使ってましたから私達も大丈夫ですよ」
「で、これの処理どうしようか」
連邦が南極条約無視して核爆弾を使おうとしたというのは政治的に使えると思う。けど発見したのが傭兵な俺達じゃ証言も難しい。
あまり大事にしたくないからジオンに渡せない、連邦に返すなんて以ての外、俺達が運ぶのはさすがに嫌だ。となると——
「仕方ない、喰うか」
「ええー、さすがに止めましょうよ。身体に悪そうですよ」
「このまま放置してもまた連邦に使われる可能性があるし、何より持ち運ぶこともできない。爆発させるにしてもやり方がわからないし、さすがに地球で核爆発なんてあまり頻繁にしたくない」
「それは…まぁ…そうですけど」
「じゃあ喰うぞ————うっ?!」
「うえぇ、血の味ですよ。これ」
血の味?血の味で食い物と言うと…すっぽんの生き血か?!
せめてワインか何かで割ってくれよ。
それに血の味って美○しんぼの問題のパロディか?色々問題がありそうだぞ。
「うぅ、早く何かお口直ししたいです」
「賛成だ」
「殺気、右回避」
——ッ!
ご丁寧に格納庫を出た瞬間を狙いやがったな。
「前へ!次は左!」
くっ、ジムスナイパーが複数いるのか。
こういう時俺達だけってのは辛い、核は囮でこっちが本命か?もしかして形だけの核爆弾?
「敵の方角、距離は割り出せました。しかし戦闘ができるかという問題があります」
ですよねー。今まで狙撃タイプはほとんど逃げられてますから。
なんとか対策したいんだけどな。
「とりあえず全速力で——って思った時には前衛がいるんだよなーしかもあれって」
「シム系列の新型機のようですね」
おいおい、あれってジム・クゥエルじゃね?かっこいいなーさすがジムカスタムの親戚。
現代に居た頃から俺はなぜかジム系の中でジムカスタムに凄く惹かれるんだよなーそれの親戚に当たるジム・クゥエルもかっこよくて当然…なんて考えてる場合じゃねぇ、ジオンガチでピンチじゃねぇか。
「こりゃ1機はジオンにお土産しないと連邦が圧勝で終わっちまう」
「みたいですね。私達の標準機動力を上回ってますよ。あれ」
だってジム・クゥエルって確かムーバルフレームを部分的に導入してるんじゃなかったっけ?つまりプロトタイプガンダムmk-IIって感じだったような…うろ覚えだけど。
そもそもジム・クゥエルって地味だから覚えてねぇんだよ。
ただ確実に覚えてるのは開発ルートがNT-1→ジムカスタム→ジム・クゥエルであり、目の前に居るのはジム・クゥエル、つまりジム・カスタムが既に開発されている可能性が高く、NT-1も開発されている可能性が高い。
何が言いたいかというと下手をするとアムロの手にNT-1が渡っているということもあるということだ。
もしそうなるとシャア、マ・クベ終了のお知らせとララァ生存フラグ(シャアを殺してNTRフラグ)が立った気もする。
ひょっとすると逆襲のシャアならぬ復讐のララァになるかもしれないけどな。
まぁ後で知ったんだけど出力や推力はジム・クゥエルそのままで機体構造はほぼジム改と変わらないらしく運動性能は低下してたっぽい。
それでも0083に技術的に追いついた事が問題だよな。3〜4年分の技術加速だぜ?ZZにはギラ・ドーガとか出てくるんじゃね?
「幸いなのが3機だってことぐらいか、ただ支援にジム改39機ってのはちょっと大盤振る舞い過ぎないかい」
「それだけ私達のことを評価してくれてるんですよ。それとジムスナイパーが最低でも3機いることもお忘れなく」
「人気者は辛いな」