第百八十一話
マフティー・ウエキ・タイラー……いや、なんでもない。
さて、マフティー・ナビーユ・エリンが公式的に組織として設立されたわけだが、開発部が死ぬほど忙しくなっている。
キシリア部もほとんどバイト生活のような立場だったが今ではまっとうに忙しくしている。決してブラック企業ではない。
マフティーに参加したことでの変化はまだある。
参加軍需企業からガンダリウムγの受注が予想を上回るもの凄い量になってロシア解放作戦時以上の需要となっていて供給が追いつかない。
一応ある程度予想していたんだけど、想像以上だった。
以前にも言ったが地球でガンダリウムγの精製はコストが掛かりすぎて商品にならないため、宇宙である必要がある。だから更にエメラルドに追加投資したんだけど……明らかにそれを上回る受注。
そのおかげもあってサイド5全体が好景気、エメラルドで稼ぐ→サファイアで消費して景気が良くなる→職の安定でダイヤへの移住が進む、というコンボが発動している。
宇宙航行資格も流行り始めて来たんだけど、最近は魔改造した(暴走族的意味で)小型船舶による暴走行為が頻発していて問題になってる。
とりあえず未届け改造船舶を所持、運営している場合はブートキャンプの刑。
暴走行為は宇宙の大地、コロニーを損害させる可能性があるとしてサーチアンドデストロイと問答無用な処罰にした。
その代わり、申告すれば生死の保証はしないが自由に飛んでいいエリアを用意するようにしている。
ちなみに監督としてマリオンズが張り付くんだけど、制御不能などになったら問答無用で撃墜されるから利用者は計画的に、ね。
毎度思うけど、独裁って便利だ。
「まったく、痛船や多少の無茶な運転ぐらいは黙認してんだから自重しろよ」
「ほぼ原作と同じ流れの二次小説と同じですね。お目こぼししてもらってるんですからもう少し考えて欲しいものです」
いや、それはなんか違わないか?
改造に関しても無届けなのが問題で、届け出して検査を受ければ普通に運転していいんだから自重しようぜ。しかも検査は宇宙航行資格普及のために無料なんだからさぁ。
「宇宙ボートレースも予定してあるんだから無理されると世論が反対に回る可能性だってあるし」
「まぁ、そのレースにマリオンズを混ぜて八百長しようとしてる私達が言えることじゃないですけどね」
それを言っちゃぁお終いよ。
「そういえばこの前、マリオンズの1人がカミーユさんと会いましたよ。さすがにブルーニーさんに言われた「なんだ男か」なんて言いませんでしたけど」
あら、残念。
カミーユの死亡フラグは見事回避されたようだ。
殴りかかったら逆に頭パンッ!だからな。
……改めて考えると、ちょっとコンプレックスを突かれた程度で軍人に殴りかかったカミーユって随分と精神が病んでるよな。
自分が普通の人間だったとして、今をときめくティターンズの軍人に殴りかかるなんてことはしないぞ。
「それでどうだった」
「随分挙動不審でしたし、多少どもってましたけど普通の対応でしたよ。ファさんがヒヤヒヤしてましたけど……それと私という存在を意識したのが影響したのか少しニュータイプとして覚醒したようですけど……それより問題が起きたようです」
「ニュータイプ覚醒も十分問題だけど、それよりもか?」
「はい。どうやらカミーユさん、サイキッカーの素質があるようです」
「ナヌ?!」
今までサイキッカーの素質がある人間なんていなかった。
それが突然現れたとなると俺でもちょっとマリオンちゃんの言葉を疑ってしまう。
「とは言っても単身で使えるほどのレベルにも達していないのでそれほど問題はないでしょう」
つまり何か、カミーユが廃人になった切っ掛けになった戦いの謎のバリアはサイキッカーの能力だってのか。
……そう考えれば何人もいるニュータイプが同じような現象を起こさなかったことも納得できる……か?
ということはバナージ・リンクスもサイキッカーの可能性が高い、と。
そしてバイオセンサーやサイコフレームはファンタジーモノの定番である杖のような発動媒体の役割を果たしているのか。
「……あれ、でもマリオンちゃんはサイコフィールドを張れないよな?」
「恐らく適正の問題でしょう。私はブルーニーさんに守られてますから必要性を感じませんから発現しないんだと思います」
マリオンちゃんがデレすぎてて生きるのが辛い。
それにしても、サイキッカーねぇ。
カミーユが実戦に出ることはこの世界ではないだろうから、全くの無意味だな。
ニュータイプも同じことが言えるけど。
「ファさんがカミーユさんを愛し過ぎてますからね。ブートキャンプに参加させればサイキッカーとしての覚醒もできると思うんですけど」
わざわざ対抗できる敵を育てる必要性は感じないけどな。
養殖ニュータイプやクローン兵はマリオンズに勝てないから量産してるんだし……そういや何も考えずクローン兵を量産してるけど、マリオンちゃんズのプレッシャーをある程度無効化できるクローン兵はアンチ兵器といえるかもしれない。
だからといって製造を止めないけど、クローン兵相手なら相当な数の差がない限り養殖ニュータイプでどうとでもなる。
「初めてのサイキッカー覚醒をしてみたかったんですけどねー」
「それで世にサイキッカーで溢れたら困るから仕方ない」
宇宙世紀じゃなくて、とあるの世界みたいになられたら俺達の優位が崩れかねない。
嫌だぞ。一方通行みたいな理不尽と戦うなんて。
「あ、もう1つ気になる点があったんでした。マフティー参加企業から養殖ニュータイプを売って欲しいとアプローチがあったんですが、どうします?」
「どこも考えることは一緒か……企業は1人だな。それ以上は売らん。あまりサイコミュの開発が進みすぎてアドバンテージを失うのも面白くないし」
「わかりました」
値段は割高で提供するかな。あ、データ取りをしたいだけって企業もあるかもしれない。
「レンタルも視野にいれるか」
「そうですよね。兵士として使うわけじゃないですからレンタルでいいかもしれませんね」
育成の手間も省けるしな。
契約では本人の意志を尊重することが前提だからそもそも解剖なんてできないし……契約違反したらアプサラスが火を噴くぜ。
マリオンちゃんズに掛からば本人は死んでてもニュータイプの残留思念でわかるから嘘ついても意味はない。
「それにしても、ロシアの日本への対応がカオス過ぎる」
「ですね。まさかBL文化を積極的に取り入れるとは思いませんでした」
熊×熊とか誰得だよ。
そのおかげかウラジオストクは日本とロシアの緩衝地帯となっていて空気を吸うだけで吐き気が伴うようになっているそうだ。
ロシアにはちょっと関わりたくない感じになってきている。
ジオンも俺達と同じでようで、貿易こそしているがつい最近になって文化交流なんかは一切を禁止されることとなった。
ちなみにサファイアに対しても入港を禁ずるか否かを現在進行形で議論中だったりする。
一応隔離してるんだけどなぁ。
「日本の資源の無さと消費地と狙ってるのはわかるけど、そこまで露骨にしなくてもいいだろ」
つまり現代の日本と中国のような関係にしようって考えなんだろう。
でもパイプが貴腐人の党ってのが頼りなさすぎるぞ。当初の勢いは今はないんだし。
「ファ株式会社が最新機であるフジをロシアに卸しているので懇意したい気持ちはわかりますけど……近いうちガンダリウムγ仕様のものを開発する予定らしいですから在庫処分なんですけどね」
ふっふっふ、しかし落とし穴があるのだよ。
ガンダリウムγで可変モビルスーツを作ろうとするとモノコック構造では無理があるとギニアス達が言っている以上、ムーバブル・フレームを導入するしか手はないはず。
無駄に最新機を売っちゃっていいのかねぇ。(ゲス顔