第百八十三話
「おお、なんと愛らしい!」
そんな声が格納庫内に響いた。
これがギニアスだったら「ああ、はいはい」といつものことだとスルーするところだが、今回は発信源が違う。
「可愛らしいウサギのような耳、それでいてクールなその風貌、そして白と黒のコントラスト……いい」
今回トリップしてるのははにゃーん様なんだよな。
待望のパトレイバーの零式ことはにゃーん様専用機……というか私用機が完成してテンションアゲアゲ状態で、俺と遭遇率がやたらと低い側にいるナタリーもドン引き状態。
隣にいるリリーナは分かりにくいが若干嬉しそうにしているところを見ると感性は順調に育っているようだ。尻尾があったら振ってると思う。
ちなみにクリちゃんはここにはいない、理由は5度目のブートキャンプ参加だそうだ……5度目って……実は変態、ドMなんじゃね?報告してたマリオンちゃんも呆れ気味だ。
「さて、機体名はどうしよう。一応商品にもなるからシリーズ名もはにゃーん様に決めてもらいたいんだが……」
「はにゃーん?!」
あ、やっちまった。ついつい心の中での呼ぶ方をしてしまった。
「はにゃーん様」
「はにゃーん様」
「はにゃーん様」
「うるさいうるさいうるさーい!そんな呼び方認めない!」
くぎみー乙。
これより3日後にはブルーパプワ内では『はにゃーん様』が定着してしまい、皆からそう呼ばれるようになり、はにゃーん様がガチの反乱計画を考えたのは少し未来の話である。
「話が逸れたが名前は何にする」
「だ、誰のせいで……ラビットだ」
「まんま過ぎないか?原作と何もかかってないし」
原作といえば実写版があったなぁ……なんでアニメやマンガを否定する社会人が実写化するのかねぇ。
やっぱりテレビ局がチョンに乗っ取られてるからか?偏向報道というやつか?アニメのパチンコ化は北朝鮮の資金源ってのはわかって……あ、察し。(ああ、でもこの理論でいくとガンダムを二次創作してる作者もチョン扱いですか?)
「変に捻ると厨二を拗らせたと思われるからな」
……何気に俺が前に厨二って言ったこと根に持ってるのか?でも今も発言自体はわりと厨二チックだぞ。
本人は気づいてないかもしれないが……まぁそれが厨二だから仕方ないか。
何よりその厨二が操縦技術の向上に繋がってるという眉唾な話もあるし……いつからガンダムはスパロボ系になった。
「ならもう少し耳の部分をウサギの耳っぽくするかな。垂れ耳も捨てがたい……」
「今のままがいいと思う。さすがにそこまでウサギっぽさを出してはパイロットから不評を買うぞ」
残念……そうだ。希望者だけにそうすればいいのか。
うん、バリエーションって大事だよな。
「コストが掛かりますから却下」
「NO〜」
マレーネも最近容赦無いね。
さて、パトレイバー改め、ラビットシリーズだが予定通り、やはり稼働時間が短いことがネックだ。
もっとも稼働時間が短い=暴走しても被害が知れているということでもあるから一長一短という見方もできる。
モビルスーツほど大きくはないと言っても戦車よりは大きい、もしテロになんか使われたら面倒でしかないから30分で丁度いい気もする。
これ、警備業にも売る予定だから……あ、地面から給電するようにすればいいんじゃね?確か現代でも道路を走るだけで給電されるシステムがあったから宇宙世紀なら楽勝だろ。
「それでその予算にどれほど掛かるとお思いで?」
「……ですよねー」
すげなく却下されました。
残念。
「なら口元をモコモコ動かせるように……」
「それになんの意味が?」
(それは可愛いかもしれない)
あ、なんかはにゃーん様が同意してくれてるっぽい気配を感じる。
「特に意味は無いが」
「そんな無駄はいりません」
(む、見てみたかったのに……お父様に頼んでみるか)
「奴が来る!奴が来るぞ!」
「ふっふっふ、私からそう簡単に逃げられると思わ——」
「ならば飛んで逃げる!げ、隣に着地しやがった?!」
「運にまで見放されたようですね。大人しく——キング貧乏擦り付けられなさい!」
今、俺達がやっているのは友情破壊ゲーの1つである金太郎汽車である。何処までも微妙なパロネタだな。
「くっ!マリオンちゃんズで同盟とか卑怯なことしてるくせに——あ、ラッキー、貧乏に戻ったぜ」
「ブルーニーさんは本当に運がいいですよね!」
プレイメンバーは俺、マリオンちゃん、マリオンズ、はにゃーん様である。
ちなみに順位は上のままで俺がトップ、ビリははにゃーん様だ。
「なぜ私だけキング悪魔カードが3枚……しかもスリの金次で資金0……ああ、物件が——と、刻が見える」
さすがにはにゃーん様が哀れ過ぎる。どうやらはにゃーん様の運の悪さは男運だけではないらしい。……だからと言って手は抜かないがな。
一応指定型妨害(刀狩りや指定うんちなど)は禁止してるんだけどなぁ。指定妨害ありにするとリアルファイトになる可能性がある……俺とマリオンちゃんズのリアルファイトとか盛大な無駄だ。
なぜこんなことをしているかというと、俺達の仕事がなくて若干暇で、はにゃーん様も同様だったらしくなんとなく暇つぶしに始めたことなんだが……かれこれ10時間ぐらいやってね?
「まだだ。まだ終わりはせん!」
「あ、目的地到着です。貧乏ははにゃーん様ですね」
「……よし、ここからなら目的地は近い、まだ行ける」
よく心が折れないな。そこだけは尊敬する。
それにはにゃーん様って呼ばれても怒らなくなったな。そっちは諦めたか?
と言うか暇つぶしに99年はさすがに長くないか、さすがに無理あるだろ。
「ちょっと休憩にしようぜ。少し遅いが昼食の時間だ」
俺達は食事を抜いても問題ないがさすがにニュータイプとは言っても普通の人間であるはにゃーん様には良くない。
食事抜いてゲームなんてしてたらマハラジャやマレーネが怒ってボイコットしかねん。
こっそり注文していた食事が届く。
メニューはご飯、大根人参味噌汁、ほうれん草のおひたし、サンマの塩焼き、きんぴらごぼうと純和風の献立だ。
日本食はガッツリ定着して、今ではニューギニア特別地区の伝統的料理が滅亡しかけている。
ぶっちゃけ日本食から比べたら大雑把な料理ばかりだから仕方ないんだが……
ちなみにはにゃーん様にはマリオンちゃんズの秘密を話してないから普通の人間のように食事をしている……マリオンちゃんズ、ガンバ!
俺は専用の倉庫から取り出した機械オイル、味は色々あるから詳しくは言えないが今飲んでるのは多分ペッパーマンゴー……これを面白いと言って常飲してる「もるです」の幼女(中学生)は味覚破壊されてると思う。
とりあえず、そっとゴミ箱へ。もしかしてマリオンちゃんズより俺の方が過酷なのでは。
「ふ、このゲームだからこうなったがトカホンなら……」
なぜそこまで友情破壊ゲーに拘るのか。
どうせならマリオンシスターズ(俺が作らせた)をやろうぜ。
登場キャラクターの中には俺はもちろん、シーマ様やアイナ、シローにギニアス、隠しキャラでケンタッキーやシロー(勇者)も出てくる……まぁケンタッキーに限っては大体の人が『誰?』状態になるんだがな。
ついでに言うとキャラボイスも本人収録されている。クリちゃんが緊張しまくって超棒読みなのは是非聞いてみて欲しい。
このゲームは俺の趣味で作ったものだから売れることを期待していたわけではないのだが100万本を売り上げてるんだから世の中分からない。
「アレをやり始めると本気になってしまうから却下だ」
ああ、気持ちはわかる。
ボードゲームなんかはまだターン制だから冷静さを保つことができるがアクションゲームになると熱くなりすぎることは多々ある……と言うか普通の格ゲーでもハメ技とかすると友情破壊ゲーとそう変わらないものになるし。
何よりプレイするならキャラクターも自分を選ぶから余計に感情移入しちゃうのは仕方がない。
「ごちそうさま。さて、続きを始めるぞ」
……また一段と気合が入った、だと?!