第百八十五話
「こうやって顔を合わせるのは久しぶりだな」
「まぁ爺と頻繁に顔を突き合わせる趣味はないからな」
「ひどい言い草じゃな」
今目の前にいるのはジャミトフとイーさん。
本当に久しぶりだな。
「その様子だとだいぶ西中国もだいぶ安定してきたか?」
「お前達のように無茶なことはできんからな。時間は掛かったがやっと目処が付いわい」
「おかげで私の資金はほぼすべて資産に変わったがな」
どうせ10倍にも100倍にも増えてんだろ。
同情して欲しいなら多少は残念そうな表情をしろよ。悪人っぽくニヤついてるぞ。
ま、あまり真剣ではなかったにしても何回も戦争があったから効率的とは言いづらいだろうけど。
「中国は心だけは先進国で中身が伴ってないから困ったものだ。まったく始皇帝というのは余計なことをしてくれたものだ」
始皇帝という鬼才がいなければ中国は1つの国となっていなかった可能性が高い、と言ってるんだろう。
それには俺も同意だ。
交通手段が限られていた古代の時代にあの国土の国が生まれるなんてありえないっての。
首都から距離が離れれば支配力が低下して保てない。
それを途切れ途切れでも何回も再征服しているんだから凄い。
多分始皇帝がいなければ中国という国の枠は夢物語だった。
そのせいで中国人は自分達が世界の中心だと思ってる節があるけど、凄いのは始皇帝とその臣下やチンギス・ハーンとかだからな。
……妙なところで結束力があるのは確かだけど。
「それで今回はどんな要件で?」
ティターンズのトップとその補佐が来るぐらいだから重要な話なんだろうがそれほど重要な要件は今はないはずだが?
「フルムーバブルフレーム機を試作したので是非死神の鎌にテストしてもらいたいと思うてな」
「なるほど、ここなら確かに防諜はほぼ完璧だからな……で?」
そんなことが本命なわけない。
ムーバブルフレームのデータは重要ではあるけど既にこちらでも試作機を開発しているのだからそれを完成させてからでもいいはず・
なによりそれだけならどちらかだけでいいはず、つまりこちらは囮で本命が別にある。
いくら政治関係に疎い俺でもそれぐらいはわかる。
(くっ、やはりこれでは納得せんか。本当は冬コミの下見としてオタクの聖地へ巡礼しに行くのが本命なのだが……さすがにそれは言えん)
(だから言ったじゃろ。儂だけなら簡単に逝けるものを……)
ん?なんかとてつもなくどうでも良くなってきたが……なんでだ?。
「実はこの後、少しサイド5にお邪魔しようと思っておる」
「なんでまたサイド5に」
「近いうちにサイド7を連邦の重要拠点にしようという計画が上がっているんだが、その参考までにデータがない特別地区のコロニーを見ておきたいと思ってな」
「なるほど」
と納得した素振りを見せたが、それで納得するはずもない。
コロニーの視察程度で下っ端にやらせるのが普通だろ。
まぁいいか、マリオンズを護衛に付ければおかしな事にはならないはず、最高にして最強のカードバーサーカー(狂化なくても狂化ステ)だからな。
聖杯戦争でも大丈夫だ……多分。
宝具って何かなぁ?能力的にはFate/Zeroのアサシンっぽいけど。
質と量で攻めるバーサーカー……怖すぎる。
ま、実際の配役はライダー(パイロット)だろうけど。
「じゃあ護衛兼道案内としてバーサー……ナンバーズ2人を付けよう」
「(ちょ、それじゃお守り(薄い本)が買えない!)ありがたいがそれには及ばん。何よりナンバーズを雇うための資金など——」
「それこそ遠慮する必要はない。ちょうど交代の時期だっただけだから物の序でというやつだ。それで金をもらっちゃ俺達の信用に関わる」
(ちぃ、護衛としては嬉しいが、これでは——)
(2人ということは儂にも付くんじゃろうなぁ……ハァ、ここまで言われては断るのはマナー違反じゃ。折れるしかあるまいて)
なんかすげぇ諦めた表情してるが、やっぱり何かする気だったのか?
そもそもサイド5には他にもマリオンズが詰めてるんだからあまり変わりないと思うけど。
後日、ジャミトフとイーさんの狙いが薄い本であることが判明した。
マリオンズって凄いよね。もうほぼサトリレベルだ。
護衛(マリオンズ)の目を気にして結局買えなかったようだけどね。
これは悪いことをしたかな?今度お歳暮かお中元で薄い本の詰め合わせでも贈ってやるか。
どんな表情を浮かべるだろうな。(ゲス顔)
「それでフルムーバブルフレームのテストはどうだった」
「さすがはティターンズだね。いい出来をしていたよ。よほど良い技術者を抱えているようだ……私ほどではないがね」
その口ぶりからすると。
「ああ、今開発段階のモビルスーツが完成すればあのガンダムMk-IIを上回る性能を発揮できるだろうさ」
グリプス戦役で登場するMk-IIが1年早く登場、モビルスーツの革新が早かったにしては1年程度しか縮めることができなかった。
ムーバブルフレームの開発がそれだけ困難だったと捉えるか、日中騒動とロシア解放戦争が思ったより影響したと捉えるか難しいところだ。
「1つ気になることがあるのだが……設計者の名前にフランクリン・ビタン、装甲材開発者にヒルダ・ビダンとあるが、ビタンということは……」
「おそらくカミーユ・ビタンの両親だろうな」
原作通りティターンズに所属してたんだな……正しくは連邦所属だったと思うけどティターンズとの縁が深そうだからティターンズってことでいいと思う。
カミーユが日本にいたからちょっと不安で調べてみたんだが2人の情報は入ってこなかった。
情報が入ってこないということは連邦にいるだろうとは思ったがちゃんと確認できたのはこれが初めてだ。
「親子が別々の組織とは……悲劇にならなければいいが」
アイナとシローが一歩間違えば悲惨なことになっていた。それと重ねているんだろう。
ぶっちゃけガンダムシリーズはヒーローとヒロインが敵に分かれるのはパターンだからなぁ。
まぁこの場合親と子だけど。
「それでどれぐらいでフルムーバブルフレーム機は完成しそうだ」
「αタイプは6月には、βタイプ(可変機の正式名称)は早くて10月、遅くて年末ぐらいか」
αタイプは思ったより早いが、βタイプは思ったより遅い。
「今まで通りのモノコック式なら8月には間に合うが、そんな中途半端なものには用がないだろう?」
その通り、という訳で待つしかないか。
「それとデザインも3パターン考えておいてくれよ。モノコック式より融通が効かないんだからな」
む、それは早く決めないとな。
あれ、ザクなら……モノアイを残したアッシマーとかギャプランがあるし、ガンダムヘッドはガンダムエアマスターとかあるからいい。(Zガンダムはガンダムヘッドとはちょっと種類が違う気がする)
でもジムヘッドの可変機なんてあったっけ?(強いて言えばリゼルなのだがブルーニーの知識にはない)
んー、エアリーズは可変って言ってもメタス以上に簡易な可変だし……お、トーラスがあったか。
後でデータを起こしておこう。
「さて、前振りはここまでだ!」
「は?これがメインじゃなかったのか」
「ふっふっふ、このようなもの前戯に等しい!」
えーっと、ここまでテンションが上がるってことはアプサラスVが完成したのか?
「違う。それならばなおさら良かったのだが」
違うのか、他に何かあるのか?アプサラスシリーズが完成する以外にこのハイテンションの説明ができないんだが。
「最近までスランプですっかり忘れていたがやっと完成した!!これこそ!!」
あ、よく見ると壁かと思ってたそれは、でっかい布だった。
それがハラリッと落ち、隠されていたそれが現れた。
それはモビルスーツというにはあまりにも大きすぎた。
大きく、ぶ厚く、重く、そして大雑把すぎた。それはまさにガンダリウムγの塊だった。
「これぞブルーニーの新型装備!アプサラスアーマーだ!!」
「おおお、すっかり忘れてたけどついに完成したのか!」(読み返してたらそんな伏線があった……と思う)
と言ってもパッと見はほとんどアプサラスIVと変わらないんだけどな。
ザクヘッドがあった場所が空洞になっている以外は。
つまり俺達はあそこに乗り込むってことか。
何にしても……詳しいスペックは次回!!