第百八十七話
【史上最高額のプラモが原因で殺害?!】
今朝全国ニュースで流れたものだ。
もしかして……いや、そんなまさか……俺が別の意味で死神になった気がする。
【被害者は中小企業の社長。被害者は会社の金を横領してプラモデルを購入。それに気づいた加害者である妻が激怒して鋭利な刃物で複数回刺され、出血多量で死亡】
……案外自業自得かもしれない。
【続いてのニュースです。貴腐人の——】
さて、この前頼んでたバーニィの行方に関しての報告が届いたんだったな。
どれどれ、幼少期から大人びた話し方をして両親からは気持ち悪がられていたが本人は知ってか知らずか特に気にした様子もなく、大きな病気や怪我をすることもなく成績優秀で高校を飛び級して大学へ。
独立戦争には参加せず、研究者として活動、ガルバルディの開発に携わる……ねぇ?
「これって明らかに転生者じゃね?」
「ファさんのようにせっかくアニメの世界に転生したんだから原作に関わりたい……戦争以外で!って人ですね」
「多分な」
けど、中の人は結構才能があるんだな。
俺の前世基準では未来に当たるから
それにしてもガルバルディの開発に携わる時にデザインをザクにしようと訴えているあたりネタに走っているのか素なのか。
バーニィのザク好きはスパロボの模造だというのに。
これが二次創作ならバーニィ転生者とかファンに怒られそうだな。
今まではフラウ、ファ、マリガンとか地味なキャラばかりだったから良かったけど、バーニィとか……ん?地味なキャラという意味ではあまり変わらないか?
「そして最近ギレンとも頻繁に接触有り……ねぇ?」
「ほぼ転生者で確定じゃないですか、ブルーニーさんの言う原作とはかけ離れてますから原作知識というのは役に立たいないでしょうけど」
問題はバーニィが俗にいうチートオリ主とかだったら厄介……でもないか。
どんなに強くても俺達に敵うわけがない。(慢心)
さすがに超能力とか魔法とか……ないよな?だからってグランゾンとか出てきたら泣くぞ?
いかん、これはフラグか?!
ま、見えないもん怯えても仕方ない。
マリオンちゃんと2人ならどんな苦況も乗り越えられる!と主人公っぽいことをいってみる。
「こりゃしばらくバーニィを徹底的にマークだな。ついでにファも裏で何かないか改めて調べさせるか……マリガンとフラウはいいや」
あの2人はもし何かチートがあったらもう使ってるだろ。かたやBL布教、かたや生存のために。
「これで連邦に2人、ジオンに2人か。今のところ連邦とジオンが同数で、性別が綺麗に分かれてるってぐらいにしか共通点がないな」
「ブルーニーさん、連邦は3人ですよ?」
「ん?他にいないだろ」
「自分のこと忘れてます」
おお、そういや俺も連邦だっけか、でも性別って難しいな。
どう考えても無性別、というか無機物だし……一応意識は男だけども。
「そうか、今までの転生者が不甲斐ない奴らばかりだったから忘れてたが転生者(チート)は俺達に対抗できる可能性を秘めているんだよな」
「そうなんですか?」
……マリオンちゃんは知らなくて当然だよな。
転生チートモノなんてこの世界にないのは確認してるし……何より最近小説で賑わせているのはこの世界の架空戦記だ。
前世でも第2次世界大戦とかのIFモノはあったから宇宙世紀だともっと盛り上がるよなぁ。かなり不謹慎な気もするけど。
『それでは開始してください』
その声とともに空で左右に分かれて停滞していたミデアからモビルスーツが次々降下を始める。
数には差がある。
多いのは標準よりランドセルが大きいαタイプ、少ないのはサイコタイプ。
察しのいい人はすぐに気づいただろうが、これはクローン兵vs死神の衣の模擬戦だ。
前回とは規模が違う。
900対50、死神の衣死闘編だな。
フラナガンに注文したのは1000人だったが、やはりクローン兵と言っても不良品がある。
空間認識力が欠如したもの、ニュータイプの覚醒が上手くいかないものなど合わせて1割が不良品となる。
もっとも不良品と言っても処分するなんて勿体無いことはしない。
整備士や予備兵などに回す予定だ。
ハロと併用することでより完璧な整備が可能になった。
そして何よりどんなに扱き使っても文句が出ないのがいい。
「ブルーニーさん、始まりますよ」
おっと、うっかり見過ごすところだった。
両部隊降下が終わり、行動を開始した。
お互いニュータイプではあるが養殖と一応天然の差があり、共鳴は起こらないため索敵自体は普通に行われている。
この模擬戦の想定は、俺達がクローン兵と死神の衣を運用する部隊単位同士の遭遇戦、だ。
つまりクローン兵は1000人で1個の部隊とする運用を考えているわけだ。
死神の衣からはさすがに不平等過ぎるとブーイングが出たが、10機撃破すれば退職金10%upという餌を撒くと黙った。……今回選んだメンバーは精鋭揃いでヒールリストに入っているから退職はいつになるかは知らんがな!退職=戦死でも詐欺じゃないよね?
「お、接敵……と思ったら速攻で沈めたか、さすがはマリオンちゃんズが育てた兵士だ」
「この最初ぐらいは優位に立ってもらわないと私の立つ瀬ないです」
しばらく眺めていると大体のスタンスが見えてきた。
死神の衣は10機を1部隊として5個に分けて索敵行動、攻撃を仕掛ける際に合流して攻撃部隊と撤退支援部隊という形を取り、攻撃を仕掛けては撤退し散開を繰り返している。
クローン兵はそれを読んでいるようで100機を1部隊として9個で索敵行動、接敵すると包囲するように動いている。
最低2倍の敵と戦わなければならない死神の衣は序盤こそヒットアンドアウェイが成立していて優位だったが——
「1部隊と引き換えに半包囲、完全包囲まで時間の問題だぞ」
「さすがにこの数とこの腕だと戦線の維持は難しいですね。それに以前とは違ってクローン兵が使っているのはサイコタイプではなく、サイコミュを外付けしたαタイプと質の面では劣ってこの結果、クローン兵の仕上がりは上々と言えるでしょう」
1部隊、つまり100機を消耗して死神の衣の精鋭50機を半包囲、殲滅する頃にはどれだけの損害が出るのか、普通の戦いなら敗北ととってもいい結果だろう。
でも大量生産が可能なクローン兵ならば悪くない。
例えるなら拳銃1000丁で核ミサイルを無効化しているような感じか?いや、核ミサイルは言い過ぎかな。陸戦なんて想定しづらい島国で配備されている1台10億円もする戦車ぐらいか?
「まだ小破しかしてない現状で敗北を決めるのは早いでしょう」
珍しく俺達の近くにいるのは黒い三連星代表ガイアである。
いやー、確かにまだ死神の衣が撃墜されてないとは言っても、さすがにこの戦況をひっくり返すにはアプサラスIVぐらいないとキツイぞ。
「そういうのをフラグ、というのではなかったか?」
まさかガイアにそんな返しをされるとは思わなかった。
「ってか、クローン兵を鍛えたのはお前なんだからちっとはクローン兵を応援しろよ」
「鍛えたのは仕事だからで、心情的には死神の衣を応援しています」
まぁ死神の衣はガイアの後輩にあたる奴らが多くいるから心情的には理解ができなくはないけど……ちなみに死神の衣の中にクリちゃんはいるがはにゃーん様やリリーナはいないぞ。
はにゃーん様達は別枠扱いだから不参戦。
それにしてもクリちゃんはパーソナルカラーを地味なのに目立つ。サイコタイプは黒で、クリちゃんは10円玉の色だからな……決して錆びてるわけじゃないぞ。
「とか言ってる間に包囲突破してるし……まぁその代わり死神の衣は10機沈んじゃってるけど」
「いやいやクローン兵を更に50機落としているのでまだまだこれからだ」
ガイアも死神の衣を信じてるねぇ。
……なんて思ってたらいつの間にか500対30になってる。
今こそ、ありのまま今起こった事を話すぜ!的なセリフを言うところだろうか。
クリちゃん粘りすぎだろ。
結局、この戦い……3機残して死神の衣の勝利……ええぇぇ、マジでぇ?!
「……クリスさん、頑張った。それとクローン兵は指揮官を失ってからの消耗が早かったですね」
「結局指揮官がいないとこんなものだ」
くそ、ガイアのドヤ顔がウザイ!