第百九十三話
結論から言おう。死神の陽炎クーポン、正式に採用されることになった。
上位クーポンで死神様基本料金無料クーポンという物も検討中だ。キャンセル依頼が成立している場合は打ち消しされる。
これが出回れば俺達の活躍再び!って感じだな。
もっとも色々と不信を煽るものでもあるからばら撒くつもりはない。ジオン建国50終年……じゃなくて周年記念ぐらいだったらやってもいいか?
ちなみに掲示板で俺達とマリオンズが死神様(本家)と死神様(分家)って呼ばれてたからクーポンでもそうしている。
「でもリュウさんにやるのは却下されたんだよなぁ」
「それなら現金でも贈ってください、なんてどうかと思いますけど」
現金がいやらしいから世の中図書カードとかクオカードとかがあるんだぜ?
とはいえ、うーん……なにかいい贈り物はないものか。
いっそGディフェンサーでもいいか?カツ的な意味で……って明らかにネタが過ぎるか。
「もう面倒だから旧αタイプ3機ぐらい送っとけばいいか」
「さすがに扱いに困ると思いますよ」
「じゃあ美味い日本の肉でも送っとくか松阪牛とか神戸牛とか」
「妥当なところですね」
後日、リュウから子供達が普通の肉を食べて文句を言うようになったと苦情が来た。
知らんがな。
「そういやこの前やっとシローが帰ったんだっけ?」
「はい、交代でマレーネさんも帰って来ました……って先ほど会ったからわかってますよね」
……マレーネのこと完全に忘れてたわ。
ちなみにこんなにシローの休暇を長くするつもりはなかったんだけど戦争の兆しも見えないからアイナに種付けさせることにした……さすがにこの表現は失礼か?
つまりこれからアイナはヒール無しで過ごすことになるから身辺に注意が必要だ。
死なれると闇堕ちシローになりそうだからな。
アイナは出産さえしてしまえば次の日にはヒールで元通りだから出産後の後遺症(妊娠線とか太るとか)はないから喜んでたな。
女性の体型維持は大変だ……マリオンちゃんズには縁がない話だけども……胸も——
「なにか?」
「いえ、なんでもありません!」
これだからニュータイプは!
本当にすみませんでした!
「アイナさんの子供が生まれたら私が教育(調教)します」
「せめて初めての子供ぐらい育てさせてやれよ」
まさかと思うが小さい頃から英才(ブート)教育(キャンプ)する気じゃないだろうな?
さすがにそれは不憫過ぎる。人間なんてペットだと公言してる俺だが、いくらなんでも不憫過ぎる。
「目標はハマーンさんを上回るニュータイプ!」
現状、はにゃーん様がニュータイプのレベルはトップだ。
カミーユという存在がいるが、マリオンちゃん曰く、あれは原石としてはいいけど後2年(思春期)もすれば最盛期が終了して普通に落ちるだろうとのこと。
ニュータイプには覚醒期ってのがあるらしい、子供はみんなニュータイプは案外当たってたようだ。
つまり、大人になれば覚醒率が落ち、子供の内にトラウマ作れば強いニュータイプができるというのは間違いないっぽい。
それを未覚醒の大人を人工的(科学的)に作り出すのが強化人間、根性論で成立させたのが養殖なんだと。
……それってなんて外道?俺でも抵抗あるわ〜子犬にトイレ躾けるのはともかく、警察犬の教育とかスパルタ以上の何かだろ。
え?クローン兵にそれと同じようなことしてるだろって?
いやいや、観賞用熱帯魚と養殖マグロを同じ扱いにはしないだろ?それと同じだ。
「じゃあ3人目ぐらいに期待します」
……どうやっても諦めないのね。
もしかするとブルーパプワの幹部では出生率が悪くなるかもしれん。
「ふと思ったがシーマ様って結婚しないのかね」
「実はシーマさんには結婚する気があるみたなんですけど相手の方がヘタレ状態でまだ当分先のようです」
まさかのヘタレw
「あれ、結局シーマ様の逆ハーなんだ?」
「ええ、コッセルさんとガイアさんは熱い友情で結ばれてますよ……Mの友情」
最後なんか言ったようだけど気のせいだな。
なんか突発性難聴になったっぽい。
「まぁあのシーマ様に怖気づくのはわからんでもないが」
三十路を超えてあの貫禄だったのが、今となっては成人したてのピッチピチ(マジで)だからな。
どこも垂れてない!
「人聞きが悪いことを叫んでんじゃないよ!」
「おっとここでシーマ様が突然の乱入」
「あんたらが来たんだろう!」
そういう見方もあるな。
「ところで、これ、マジなの?」
「至って真剣に出したつもりだが?」
「……罰ゲーム?」
「それは私に対して何か言いたいことがあるんでしょうか?」
お、落ち着けマリオンちゃん!
なんか邪王的な炎殺っぽい黒龍らしい波が出そうな雰囲気は止めよう?ね?
「でもブルーニーさんではありませんが、ブートキャンプになぜ参加しようと?」
「……クローン兵に負けるようじゃ前線指揮官なんて務まらないさ」
あー、なるほど、この前やったシミュレーション大会でボッコボコにされてたもんな。
ガイアは5機撃破してたのはさすがブートキャンプ2回目経験者だと感心した。10対1だからね。
シーマ様は3対1で1機撃破、オールドタイプにしては凄い戦果なんだけど死神の陽炎ではちょっと……ね?
「指揮官だから戦闘能力は必要ないといえばないけど」
「前線に立つんだ。戦闘ができないようじゃいけないさ」
勤勉なことはいいことだから確認に来ただけで否定するつもりはない。
「……実はガイアに負けたかったのが悔し——「そ、そんなことあるわけないだろ!」——」
どうやら図星のようだ。
負けず嫌いだねぇ……ま、パイロットが負けたら死ぬんだから当然か。
「そういや聞いたかい。連邦の例の部隊、引き抜きに成功したって報告があったんだが」
「まさかスナイパー部隊の引き抜きが成功するとか」
気持ちは劉備のところから関羽張飛趙雲が引き抜けた気分だ。
「私は死神の衣下位待遇で引き抜けたのは少し計算外だけど、引き抜けるとは思ってたさ」
死神の衣下位待遇って特別な優遇は少ないけどいいのだろうか?せいぜいラビット所有資格とか最新医療無料とかぐらいだけど。
「給料が倍になるからね」
「なるほど」
ってか連邦の給料安すぎねぇか?
「実はスナイパー部隊と言っても特殊部隊でもなんでもなく、普通の部隊だからあまり良い待遇ではなかったようだね」
え、特殊部隊ですらなかったの?
連邦の腐り具合は酷い、今更だけど。
「もちろんブートキャンプには参加させる予定だよ」
「なんか詐欺をしてる気がするんだけど……いいぞもっとやれ」
「連邦の精鋭を鍛えるんですか。腕がなります!」
気合入れ過ぎて壊さないようにね?
それにしても俺達を唯一苦しめた……というか手間を掛けさせられた敵が味方になるとは……皮肉なもんだな。