第二百一話
「ギャンも時代遅れというほどではなかったんだけど、俺達の前では中国産のモビルスーツもどきと変わらないな」
「24機、全て沈黙。生命反応あります」
よし、無事無力化成功だな。
酸素は余裕が有るだろうからとりあえず放置。
「火星基地から通信です。どうぞ」
『さ、さすが蒼い死神と謳われた——「では続いて基地制圧作戦を始める。10分猶予を与えるので準備するように。あまりにも無様だと地球に到着するまで隔日飯抜きな」——ハ?』
通信を切る。
彼らにはまだまだ働いてもらいますよ、っと。
10分後。
「火星の大気圏に突入します……と言っても大気が薄いですから問題はありませんけどね」
「何処かのカタクリコンと違ってバリュートを破られて燃え尽きることはないな」
それにしても基地制圧戦のリアルなシミュレーションができるとか嬉しい限りだ。
実はニューギニア特別地区や死神の陽炎の歩兵は脆弱だ。理由はモビルスーツ戦と海戦を重視していて歩兵はハロが主軸としている。
つまり今回の制圧戦は——
「ゆけ、ハロ。アムロさんとメイさんの怨念とともに!」
「ハロ無双、始まります」
多目的可動砲から放たれる球体。
今回の主役ハロだ。ついでにいえばサイコミュハロ。
指揮はもちろん俺達が執る。
大気が薄いから聞こえないが、大気が十分にあればきっとハロハロハロハロと夜中の暴走族よりうるさいことだろう。
対空ミサイルが迎撃に飛んでくるんだが所詮辺境基地。十分な防衛設備はなく、いくらかハロを削るが圧倒的大多数は地上に落着。
ちなみにテストとしてハロの数は5000ほど生み出した。
「さて、見せてもらおうか。ハロの性能とやらを」
「対空ミサイルで迎えてくれたおかげで火星基地の座標はだいたい掴めましたから……あ、発見したようです。どうやら敵は基地内で迎撃するようです」
まぁ宇宙空間で迎撃しようものならうっかり殺しちゃうor事故があるかもしれないから良い判断だ。
「ゲートのロック解除に掛かります」
あ、ゲートの天井部から銃が——瞬く間にトリモチで覆われたな。
5分後ゲートのロック解除に成功。
「これから室内戦ですね。一応火器は装備してませんけど、隔壁突破に時間がかかりそうですね」
「……今度レーザーカッターでも内蔵させるか」
「エネルギー的に無理があると思いますよ」
「まぁ、実戦なら対戦車ミサイルでも内蔵させればいいか」
それに基地制圧を人間使わずでできるなら多少時間がかかっても問題ない。
人的資源は他国より高いのだから……
「って、よく考えれば歩兵のクローン兵も作ればいいのか」
「多分生産費用と教育費用的な意味でハロの方が優秀だと思いますよ?」
「ハロの性質上、対策をしているとはいえミノ粉の影響は少なからずある。それをフォローする要員としてクローン兵を配備すればもう少しマシになるはず」
あ、サイコミュハロの指揮官を任せれば一番いい。そうすればそんなに数は必要ない。
「隔壁突破——あ、敵と接触。手榴弾により4破壊、3中破、1小破。しかしこの程度の損害でどうにかなるハロではありません!」
10人ほどいた敵がハロに呑まれていく。いとあはれ。
それを何度か繰り返すこと4時間ほど、火星基地の人員リストに記載されている人数拘束することに成功した。
「結局ほどんどの時間が隔壁を突破する時間でしたね」
「まぁ敵もセキリティの脆弱性を埋めてどうにか抵抗してたからな。及第点にしてやろう」
よかったな。飯食えるぞ。
今、俺は凄く困ってる。
火星基地の兵士達の奇異と恨みと恐怖がこもった視線?そんなものは溝にでも捨てておけ。
火星の寒さ?俺達にはその程度大したことではない。
何もすることがない退屈さ?地球にいるマリオンズから来る相談とかマリオンちゃんと同行しているマリオンズを可愛がってるから気にならない。
では、なにに困っているのかというと……セラーナへのおみやげだ。
火星なんだから何かあるだろ、とか楽観的過ぎた。
何もない。
一応青いクリスタルやくっ殺せんせーとか探してみたけどなかった。
くっ殺せんせーはやはり火星人じゃなかったのか。
さて、何をおみやげにすべきか。
一応火星まんじゅうとか考えたけど……絶対怒られるよな。
いや、火星丼ならあるいは……駄目か、お子様受けは良さそうだけどおみやげとしては苦しい。
「助けてマリえも〜ん」
「他の女への贈り物を私に選べと」
「ごめんなさいorz」
ジャンピング土下座余裕でした。
「むしろ土下寝を要求します」
マリオンちゃんがドSに?!
「冗談は置いといて、そうですね……宝石でも探しますか?」
「宝石って地球しかできないんじゃないか?熱源がいるんだろ?」
「まぁ、本物の宝石は無理ですけど隕石とかどうですか。確か結構綺麗な隕石とかあったはずですし」
なるほど、隕石ね。
地球でもあるし宇宙に出ればそこら辺に転がる、じゃなくて漂ってるだろうけど、火星に落ちた隕石は地球に落ちた隕石とは違った風化の仕方をしてるかもしれない。
まぁ風化し過ぎて眼に見えないものになってる可能性もあるけどな。
「なかったらそのあたりの土を瓶に詰めればokですよ」
「やっぱりそこに落ち着くよな」
俺も1番最初に思いついた。でも、むくれたセラーナが目に浮かぶんだ。
……むくれさせるものいいかな、と思うあたり俺もSなんだろうか。
「艦隊が到着するまでまだ半月以上ありますからゆっくり探しましょう」
土さらいして見た結果、大量のべリベットが取れた。
長年蓄積したものなんだろうね。
地球に帰ったら綺麗に研磨してマリオンちゃんズを始め、セラーナは当然として女幹部全員に配るとしよう。
自分の女じゃなくても平等に接しないと妬みとか怖いから社会に出ても注意な!
一応念の為に火星の土を瓶詰めにもした。
それにしても、火星基地の食事事情は酷いものだ。
基本レーション、たまにハンバーガーや具なし偽チーズたっぷりピザなどだ。
聞いた話によるとキシリアが俺達のところへ亡命してきた頃から食事事情が悪くなったとか。
資金に余裕がなくなってケチったんだろうね。
それでソーラシステムで報復とか、食い物の恨みは本当に怖い。
残念ながら俺達は食べ物を生み出せない……あ、もしかして俺達の中にある緊急用ボックスの中にある非常食なら増産できるか?
「試してみましょうか」
という訳で緊急用ボックスを取り出してみる……すると1分後にボックスごと補充された。
「これで1人ぐらい操縦席で人間が飼えますね!」
「その発想はなかった」
というか監禁すると申すか、更にヒールで若返らせれば永久に閉じ込められると……なんという地獄。
「それ誰得よ」
「もちろん冗談ですよ。でも緊急時に助けてあげるぐらいはできそうですね」
それはそうかもだが、あまり操縦席に誰か乗せたくない。
もちろん操縦自体はロックするから動かせないだろうけど、マリオンちゃん以外が乗るのはちょっと……。
「話は戻しますけど……この緊急用ボックスの食べ物って皆さんが主食にしてるレーションなんですよねぇ」
だめじゃん。
帰ったらもっといいのに変えるか。
「世界各国の美味しいレーション集めて詰めておきましょうよ!」
「俺達は食べれないんだからそこまでする必要性はないだろ」
「見て楽しむぐらいはいいと思いますよ」
「多分操縦席がいっぱいになるから却下」
「ええぇぇ」
「……10種類だけなら許す」
「やったー!」
マリオンちゃんには勝てないぜ。
ああ、食事といえば——
「ギャン喰おうか」
「あ、そうですね。せっかく確保してるんですし」
では実食!
……
「なぜスイートコーン?」
「とっても甘くて美味しいですけどね」
ビームサーベルがそれっぽく見える……か?いや見えないだろ。
でも、まぁ……あまり食べれなくても悔いはないかな?