第二百五話
火星の行きに見かけたジュピトリスにシロッコが乗っていたらしい。
海賊ごっこをすればよかった。
「大変失礼しました。再度名乗らせていただくが、私はパプティマス・シロッコ。先ほどの無礼をお許し下さい」
と、見事な土下座をする。
なんで木星帰りが土下座なんて知っているんだろう?
「死神への降伏の姿勢と聞きましたが?」
誰だよ。そんなこと教えたの。
まぁそれはいいか、でもよく射撃を躱したな。
「当たっているのに躱したと言われても」
「いやいや、眼球を潰すつもりで撃って額で済ませたのはさすがだ」
失明すればよかったのに。
俺の悪意を感じたのかブルッとシロッコが身体を震わせる。
それでもマリオンちゃんから視線を逸らさない……マジで失明させてやろうか。
「そんなことで褒められても困ります」
「ところでシロッコはなぜここへ来たのかな?」
目的を思い出せ。そしてマリオンちゃんから視線を外しやがれ。
「そうでした。私としたことが申し訳ありません」
もう1度土下座するが……土下座しているのに一々鼻に付く。
どうも俺との相性は最悪っぽいな。マリオンちゃんに怯えるララァ以上に相性が悪いと思う。
なんというか才能ある若者特有の傲慢さがすっごくイラつく。土下座しててそう感じるのだからもう一種の才能じゃないだろうか。
「私をこちらで雇っていただきたい!」
「寝言は寝ていえ」
「給料はなくても構わない!」
「だが断る」
「貴女を祈り奉りたい!」
「死んで出直して来い」
全然話し聞かないんですけど。
こいつ……転生者か?いや、原作でも随分ニュータイプの女性に対しての反応からすると……どっちだ?
「大体お前はティターンズの使者として来たんだからそんな内容なわけないだろ」
「いいや、私はティターンズの一員である前に一人の貴女の信奉者だ!私は女性による世界統治を目指しているのだが貴女はその頂点に立つに相応しい!是非私にその手伝いをさせてもらいたい」
うざい。
超うざい。
マリオンちゃんに付きまとう虫が現れるとは……いや、魅力がないというわけじゃなくて俺達を恐れないやつなんてそうはいないという意味だから、だから俺の足を踏むのをやめてもらえますか。
「世界なんて時間と手間さえ考えなければ(マリオンズ的な意味で)いつでも取れるので必要ありません。それより貴方が跳びかかって来たことがトラウマになりました。賠償を要求します」
100年後だと121人……マリオンちゃんズがいれば世界なんてどうとでもなる。(確信)
そしてトラウマ……明らかに嘘ですね。わかります。
まぁ責任は取らせるべきだろう。結婚なんて言ったらぶっ飛ばすけどね。
「では私が責任を持って結こ——」
俺が飛ばす前にマリオンちゃんがやってた件について。
「ブルーニーさん。どうしましょう……凄く面倒です。この人」
殺したりするとこっちに責任が来るんだよなぁ。
「ゴフッ……とり……あえず……こちらを……受取くだ、さい」
血を吐きながらなにか出してきた。
なんだろうね……って、これはメッサーラ?こっちはパラス・アテネ、そしてボリノーク・サマーンか。
自分が嫌われ始めているのを自覚したのか、貢物(設計図)を提供してきたわけか……というか血を吐くってどんだけ本気で狩るつもりだったんだ?
「ブルーニーさんの話をあまり聞いてなかったのでイラッとしてやった。今は後悔してない。反省もしてない。これで帳消しです」
明らかに過剰徴収な気が……いや、マリオンちゃんに手を出そうとしてたんだからまだまだぬるいか。
マリオンちゃんが可愛いん可愛いからよしよしする。
とりあえずシロッコは体調不良のため一時退場。
しかしシロッコがロリコンだったとは……知ってたな。
原作でもその傾向があったな。でもレコアも対象だったから守備範囲が広いな。さすが天才。
「何某の様態ですけどあのままだと死ぬところでしたのでこっそりヒールを掛けて最低限の負傷にしておきました」
まさかの死にかけ……ま、そんなどうでもいいことは置いといて、メッサーラはともかくパラス・アテネにボリノーク・サマーンねぇ……正直あまり強い印象はない。
特にボリノーク・サマーン。
偵察機という性質上仕方ないんだけど、仮にもニュータイプであるサラに偵察機ってどうなんだ?偵察ならニュータイプの必要性ないだろ。
パラス・アテネだって火力に傾倒し過ぎてて使い難そう、機動力がないのは設計図の段階でわかってるし。
メッサーラだけは変形機として参考になるかな。
ジ・Oがなかったのはまだ設計されてないからか?でもパラス・アテネとボリノーク・サマーンとで3機編成を基本としたものじゃなかったっけ?
ああ、そういえばジ・Oはほとんどシロッコ専用機って設定があったような気がする。だからないのか。
「とりあえず……ジャミトフには黙っとくか」
「ですね。無駄に話を拗らせたくありませんから」
気になることはパプティマス・シロッコが転生者かどうかはわからなかったことだ。
どうやらシロッコは転生者ではないようだ。
なぜそう思うかというと……偶にイラつくぐらいカリスマ性を発揮するんだよ。
あれで転生者だったなら大したもんだ。
結局友好の使者なんて言ったが、シロッコの挨拶回りの一環だったわけで、治療が終わったらすぐに帰っていった。
信奉者としても一流(?)らしく、信奉対象が嫌がっているのを察知してか、早々に切り上げて帰っていった。
実際はそろそろ俺達がティターンズ側として参戦するからその受け入れ準備のために帰ったのではないかと読んでいる。
そういう心遣いはありがたいが……マリオンちゃんに近づく虫だと思えば感謝も木っ端微塵だけどな。
「さて、そろそろ俺達の衣装を着用するとしようか」
「まさかこれほど早く実戦テストができるなんて思いもしませんでしたね」
オリジナル衣装(生成じゃなく製造したアプサラスアーマー)を着る。
そういえば少しギニアスが改良したんだっけ、確かアプサラスアーマーにコクピットを付けたとか。
「分離した状態のアプサラスアーマーのエネルギー消費が私達の燃料消費のままだったこと利用して私やマリオンズがアプサラスアーマーを操縦すればEXAMシステムに頼らなくてもいいかもしれないと言っていましたね」
簡単に言うとメンテ不要、燃料無限アプサラスアーマー+マリオンズ=永遠の無双をお届け。
SAN値ガリガリどころかSAN値直葬ものである。
ただし、まだ実験はしてない。
俺達の能力は未知数が多いからひょっとするとマリオンズが操縦した瞬間に俺達との繋がりが切れる可能性がある。
俺達が離脱しているアプサラスアーマーはファンネル扱いにしているため、パイロットがいるとファンネル扱いにはならず……最悪は墜落する。
動力まで俺達に依存しちゃってるから……うん、今回は使わないでおこう。
俺達の衣装は攻撃力だけで考えると素っ裸の俺達より圧倒的だからな。
雑魚掃除には持ってこい……あ、つまり清掃着ですね。わかります。
「むしろ正葬儀って感じじゃないかい」
「シーマ様上手いこと言い過ぎ」
「私達の通ったあとは墓だらけ、葬儀屋さんから金一封もらっても不思議じゃないレベルですね」
こらこら、俺達は時間制限とかなければ捕虜目当てで殺さないだろ。
これでも戦争被害者を10%減らしたって言われてるだろ。本当なのかは知らんけど。
さて、始めての蒼い死神、死神の鎌、死神の衣のコラボレーションが実現するわけだ。
「負ける要素がないな」
「いや、死神の鎌と衣だけで十分だと思うんだけど」
「シーマ様ともあろう方が、油断はいけないぞ」
「そんなだから取引相手に裏切られるんですよ」
「いや、裏切られた覚えがないんだけど……裏切りはしたけどね」