第二百八話
ソマリアで起きている暴動の鎮圧してハロを散布も終了した。
ただ、現地政府がすごく面倒なことをお願いしてきた。
それはソマリア海賊の一掃だ。
調子に乗って陸地にまで手を出したソマリア海賊は叩いたが、問題は手堅く俺達という嵐を通り過ぎるのを待っている奴らだ。
……どうせ政府と海賊は裏で繋がってる。
そして何よりソマリア現地政府はどうも暴動に賛同している。つまり今回のソマリア海賊討伐は暴動側の時間稼ぎだろうな。
海賊がいるから暴動がいると同じ扱いとされると俺達はここで足止めをされることになる。
しかし肝心の暴動を名乗る海賊に雲隠れされている状態のままだと発見は難しい。
それはマリオンちゃんズのニュータイプ能力を持ってしても、だ。
どうも俺達がソマリアへ向けて進撃を始めた時から考えていたようで、隠れている海賊は怯えて隠れているため、民間人と区別がつかない。
武器庫があるならわかるかと思ったが、見張りすらもいないらしく反応がないとのこと。
「さて、どうしたものか」
「補給の関係上あまり部隊を分割するのはよくありませんし、私達が残るのは久しぶりの出番ですから避けたいです」
んー……面倒だから海岸沿いに住んでるやつら皆殺し!なんてさすがにやったらマズイ……そうだな。
「とりあえずアプサラスを高高度に上げて海賊が出てきたら降下して始末するってのはどうだ?」
「なかなか豪快ですね。それならいつでも駆け付けられますね」
完璧を期すなら宇宙まで行けばいいんだけど、そこまですると大気圏突入角度とかで時間が掛かるからな。
高高度で念のためレーダー対策にミノ粒を散布して待機させる。
そして更に囮として衣とクローン10を置き、海賊達が動きやすいように俺達本隊はエチオピアに向う。
また敵が出るかなぁ、と期待してたんだけど暴動達もエゥーゴも一切出てこない。
どうやら2回の戦いで俺達という理不尽を理解したのか、海賊達から対策を流したのか……何にしても面倒なことになった。
仕方ないので治安維持用ハロを散布してソマリアと同じ作戦を行う。ただしこちらは無傷の状態で隠れているので30を置く。
これ以上部隊を小分けにするのもなんなのでケニアに一時帰宅。
「で、帰り着いた途端に襲撃とか戦い方がよくわかってらっしゃる」
本隊が本拠地に付いてから襲撃する。つまり補給を行わず、もう1度向かわなければならないわけだ。
しかもエチオピアとソマリア同時で襲撃されたらしい。
「でも戦い方はわかってても実力と戦力を見誤ったようですね」
その通り、ぶっちゃけ本隊がいなくても弾薬さえ足りれば海賊や暴動など相手にもならない。
正規軍なら陸と空から同時攻撃されるので撃破される可能性が微レ存(微妙なレベルで可能性が存在するの略)だが、同じモビルスーツ部隊同士の戦闘ではまず負けない。
それが現実になったのは襲撃があったと報告を受けてから1時間も掛からなかった。
襲ってきた敵は全て排除、特に被害なし。しかし敵は少数でとても満足できる戦果じゃない。
「さすがゲリラ、面倒甚だしい」
「でもマリオンズが拠点の割り出しに成功したみたいですから2国ではもう暴動は起きないと思いますよ」
今回はティターンズの依頼でほとんど捕虜、じゃないか、逮捕者を出さずに容赦なく殺している。
どうもティターンズは独裁主義路線でいくらしく、ある程度の虐殺も厭わないようだ。
汚名は情報統制で俺達じゃなくてティターンズが被ってくれるらしいしな。
……ただ、そのやり方だと俺達がティターンズを操ってるように見えないか不安なんだよな。
元々ニューギニア特別地区も独裁主義だから同じような道を進むティターンズは実は俺達が操っていて虐殺を繰り広げている……なんて誰かが言い始めたら面倒なことになりそう。
いっそ情報統制はしないでもらいたいけど、確認したところ依頼の中で決められてるんだよなぁ。
もしかして俺達の排除狙ってる?でもジャミトフが俺達を敵に回すことはあまり考えられない。なら説明されている通り、ティターンズの戦果にしたいからなのかな?
ま、傭兵稼業でこの程度のこと気にしてたら負けか。
「しっかし、このまま行くと俺達がろくに戦えないってことになるなぁ」
「ですねぇ。ちょっと派手にやり過ぎだったでしょうか」
敵が正規軍じゃないんだからもう少し手を抜くべきだったな。今更だけど。
「よし、ならアプサラスアーマーと他のアプサラスは置いていくか、あのデカさだから目立つし、威圧はできるから本来はいいが、相手が相手だから威圧し過ぎている」
「言われてみれば相手は戦える素人でしたね。それを考えるとソロモン決戦の時、ノイエ・ジールから逃げなかった連邦兵はちゃんと兵士だったんですねぇ」
確かに、いきなりあんな化け物(俺達が言えた義理ではないが)と相対して普通に戦ってたんだからな。
という訳でアプサラスアーマーはここでお別れ。
せっかくのオリジナルだから喰わずに残しておこうと思うんだけど。
「どうやって持って帰ろうか」
「私達が着て帰った方がいいんじゃないですか。ザンジバル級2隻でも吊り下げて帰れませんし」
つまり1回ニューギニア特別地区へ着て帰って、脱いで、また来るのか……面倒だなぁ。
「じゃあ食べます?」
「一応置いとく」
なんとなくだけど意味がある気がする。
俺の直感だから進化の何かだと思うんだけど、はっきりはしない。
帰って来た。
泳いで行くのは時間がかかるなぁと思ったが、アプサラスアーマーを生成して、到着したら喰えばいいじゃないかと思い出す。
どうも人間らしい思考がまだ残ってたようだ。
それで帰って来たらタンザニアの暴動が鎮圧されてた。
おのれ、マリオンズめ!
「ソマリア海賊の襲撃は3回ありましたけど被害は無し、全員狩ることには成功してます」
「対戦車ロケット弾で襲撃とか、本当によくやるよ」
自殺じゃねぇか。
普通の人間相手ならいつ襲撃されるかストレスマッハ、民間人誤射とかありそうだが俺達の部隊にそんな効果を期待してるなら間違いだぞ。
「正攻法で潰すの面倒だから搦め手で行くか」
「それでソマリア現地政府をでっち上げ不正摘発で本物の不正を見つけて、そこから釣ったわけですか」
「卵か先か鶏が先かって違いだから気にすんな」
台風の迎撃準備してたら時間がなくなり、短くなりました。
申し訳ないorz