第二百九話
ソマリア現地政府でっち上げ作戦、大成功。
下調べなく、テキトーなでっち上げだったけど7割が正解だったことに苦笑していたら黒人差別暴動ではなく、現地政府に対しての暴動が始まった。
なんというか、行動的な人達である。
「実は現地政府相手なら私達は動かないと情報を流した結果なんですけどね」
「マリオンちゃんが現地政府を殺しにかかっている件について」
「今までの暴動は地球連邦という上位組織に対してのものでしたけど、責める相手を下位組織に変更して上げただけですよ」
まぁ現地政府も連邦には違いないし、現地政府の方が殴りやすいよな。近場にいるし。
こうして軽く現地政府を叩き潰して——
「さて、調子に乗っている暴動を叩き潰すぞ」
「これで任務は終わりですね」
暴動を鎮圧するのが俺達のお仕事、つまりこの暴動を治めれば俺達は晴れて自由の身だ。
え?ソマリア海賊?現地政府の情報で居場所がわかったから規模が大きいのは処分したよ。
居場所がわかってる海賊なんて雑魚だからな。
「最近ハロの活躍が目覚ましいな」
「と言うより、私達の無限ハロ生成が便利過ぎるんですけどね。コストが原料だけですから原価が安くて質は悪くても物量でどうにかなりますし」
生産して散布なんてしてたら目も当てられない出費だよな。
実際ティターンズ観戦武官(リリ丸に乗ってる)とか微妙に怪しんでいるようだ。
まぁ今はアプサラスの理不尽さを見て放心状態のようだけど。
それはともかく、暴動の鎮圧は面白いお仕事ではない。
気分的には蟻の巣に如雨露(じょうろ)で水を掛けてる気分だ。たまに対戦車バズーカとかで狙ってくるけどな。
ハロ以外の戦力では俺達(アプサラスアーマーなし)と衣1、クローン3という少数で見回っている。
そのおかげで6機のものドムIIが俺達に襲いかかってきた。俺達と言うのはブルーディスティニー単機のことな。
普通に考えれば1機のモビルスーツ、しかも見た目は旧式っぽさがある俺達だから6機で襲い掛かれば倒せると踏むのもわからなくもない。
「でも残念」
「私達はチートなのでした」
いつもいつも回避してコクピット焼きをするだけで芸がないと思い、ライフルのビームがこちらに飛んでくるのをビームサーベルで斬ってみた。
Iフィールドで形成されてるビームサーベルだからビームライフルを斬れるのも道理だよね。
「どっかの種の自由っぽいとか言ってはいけない」
俺達はこれぐらい当然のこととしているが、された相手としては意味不明だろう。
まだモビルスーツにIフィールドを搭載していると言われた方が納得できるほどに……もっとも暴動参加者程度がIフィールドという単語を知っているかは疑問だけどな。
ビームライフルがどういう原理で動くかなんて使う上ではそれほど必要な知識ではないわけだし。
「それにしても、またドムIIか」
「とうとう旧αタイプを上回りましたね」
最後の敵を斬り伏せ、コクピット以外のほぼ無傷なモビルスーツを見る。
旧αタイプはドムIIより単価が高いことから数を揃える上ではドムIIの方が好まれているのは知っている。だが、そもそもの問題として旧αタイプは密輸されたものだから更に少ないから不自然ではないが……
「やっぱりアナハイムがバックについてると思うのが自然だよな」
「エゥーゴのスポンサーですから不思議ではありませんね」
……あれ?もしかしてこれって俺達にとっての関ヶ原か?
ティターンズとエゥーゴの覇権争い、そしてブルーパプワとアナハイムの代理戦争と言えなくはない。
代理戦争にしては俺達が普通に戦ってるけどな。
「私達にとっては関ヶ原でもアナハイムにとっては桶狭間ぐらいでしょうけど」
桶狭間だと俺達が織田家でアナハイムが今川家だろ?アナハイム滅亡の危機じゃん。
「気持ちの話ですよ。私達だってエゥーゴが勝ったとしてもブルーパプワ自体は残るでしょうし」
「俺達の立場を保証してくれてるのはジオンだからな……そういえばティターンズは今どうしてるんだ」
すっかり忘れてた。
「現在エゥーゴと激戦を繰り広げています。特にララァさんを感じて暴走気味のシロッコさんとそれを抑えようとするシャアさんの戦いが凄いですよ」
NTRキタ━(゚∀゚)━!
ま、多分ララァがNTRことなんてないだろうけど……ああ、でもレコアはNTRされるかもしれんな。正直どうでもいいけど。
「シロッコさんはこの前来た時に買っていったサイコタイプに乗ってますね。なかなか上手く使っているようですよ。死神の衣の中でも上位余裕かと」
さすが天才、ムカつくわ〜。
「それに比べてシャアさんは相変わらずあのドムもどきに乗っていますが技量と機体が合ってないようで防戦一方です。ララァさんがいなければ既に落とされていたかもしれません」
ドムもどき……リック・ディアスのことか、ちょっと役不足だな。
この世界の状態だと百式は登場しないだろうけど、何に乗るのかちょっと楽しみだ。
「他の戦いに関しては10機納入したβタイプが大活躍中で制空権は維持しているようです」
ティターンズがZガンダムを運用……凄い違和感だ、これが普通なんだけど。
ティターンズってなぜあれほどジオン系モビルスーツに傾倒したんだろうか、連邦組織なんだからジムかガンダムヘッドでいいようなものなのに。
やはりエゥーゴと見分けがつかなくなるし、神の見えざる手のせいなのか。
「あれ、ティターンズに結構腕がいいパイロットがいると思ったらいつぞやのヤザンさんじゃないですか」
ああ、あのトラウマ(模擬戦)を克服できたんだな。
マリオンちゃん曰く、ティターンズはパイロット層が厚く、それに比べてエゥーゴで目立つのはシャアとララァ、ロベルトぐらいで他はそこそこ熟練度が高いがパッとしない。
つまりエゥーゴの主力となるパイロットは抑えられ、ティターンズのヤザンとそのフンや目立たないジェリド、エマ(抜けてない)、カクリコンが自由に……
「ん?不死身の第四小隊()がいない?」
「あ、そういえばエゥーゴに所属していたはずですね…………見つけましたけど、とってもマズイです」
「どうした」
「ジャミトフさんが率いる艦隊に近づいてます!」
ちっ、よく考えたら寡兵のエゥーゴが正攻法で戦うわけ無いよな。
暴動とエゥーゴ相手に指揮官不足で総帥直々に戦線に出てきたのが裏目に出たか。
「上空にいるマリオンズに全速力で向かわせろ。アプサラスが壊れてでも食い止めろ!」
「わかりました」
まさか暴動対策に配置しておいたアプサラスをこんな風に使うなんてな。
<不死身の第四小隊・サウス・バニング>
『やっこさん、こちらに気づいちゃいないようだ』
『エゥーゴのほぼ全戦力で掛けた陽動だ。気づかれたらたまらん』
『さすがに6機程度で奇襲するなんて思いもしないでしょう』
『お、俺達生きて帰れるんでしょうか』
『キース!今更怯えても遅い!』
『最近の若いもんは根性が足りん!後で模擬戦だな』
「お前ら!少しは静かにせんか!これが終わったら腕立て伏せ100回だ!」
まったく、こんな時にも騒がしい奴らだ。
しかし気持ちはわからんではない。
あの艦隊の中にたった6機で突撃しようなどと無謀過ぎる。
「それに……嫌な予感する」