第二十一話
「サラッと蒼い死神って異名スルーしてたけど、なんでギニアスが知ってんだ?」
「連邦の方は知りませんけどジオンでは結構有名なようです」
連邦にも知れていると思ったほうがいいだろう。
赤狩りならぬ青狩りが行われたところからも間違いない、
その点ではノリスさんは命拾いしたな、出撃する機会がなかったが搭乗機はグフカスタムだから袋叩き必至だ。
「あまり注目されるのも嫌だしカラーを変えてみるか、緑ならジオンから頂戴できそうだし」
「ミデアの隅に白ならありますよ。上半身を塗り替えるぐらいの量ですけど」
「じゃあとりあえず上半身の色だけでもいいからやってみるか」
塗り終わって1時間後。
「…なんか元のカラーに戻ってるんですけど」
「摩訶不思議なのは今更ですよ」
マリオンちゃんは既に悟りを開いたっぽい。
カラーの変更は不可能なようだ。
かろうじで肩のカラーが変えれそうな気がする。白じゃ無理だが赤ならな。
なぜこんな暇つぶしをしているかというと、ただいまミデア回収に向かってます。
シロー達のラブイチャが鬱陶しいのでとっとと俺達から離れてもらう為と働かざるもの食うべからずの精神に則ってである。
今回ミデアの運転はシロー達二人に任せている。
アイナはともかくシローもミデアを運転したことがないらしく、練習もかねて任せてみた。
いきなり初心者二人に任せるのは危険なようだが俺達は墜落しても死なないからデメリットはミデアと二人を失うだけだから別に問題なし、つまり二人は自分達の命をチップに処女飛
行をしているわけだ。
きっと俺の前世はスパルタニアン…あ、日本人でしたね。死んでるかどうかわからないから前世と言っていいかわかんないけど。
「それにしてもシローはともかくアイナはあっさりついて来たな」
「アイナさんと話したんですけど…その…ギニアスさんとサンダースさんが…その…」
顔が赤いのに青いって不思議な現象を実現するとはマリオンちゃんは器用だな。
「サンダース?……………………………………………………ああ、ケンタッキーか」
「前々から気になってたんですけどケンタッキー州がどうかしたんですか?」
エエェェーケンタッキー的なフライドなチキンはこの世界にないのですか?!
なんで宇宙Projectとかパチもんがあってそっちはないの?!あ、もしかして名前が違うのか?
「フライドチキンの有名なチェーン店なんだけど」
「んー覚えてませんね。私のイメージするチェーン店なら小憎寿しですけど」
「え」
いやいや小僧じゃなくて小憎って…いや、割り切ろう。考えるだけ時間の無駄だ。
「それでケンタッキーとギニアスがどうしたんだ?」
「いやーそのー……400.5×2の関係らしいです」
「???」
どういう意味……え、そういう意味?マジで?いやいや、あの二人が…エー…
「シローさんは気づいてないそうですけど、アイナさんはその…見ちゃ——」
「聞きたくない。激しく聞きたくない。そんな汚い薔薇色の話聞きたくない!」
とりあえずケンタッキーが付いて来なかった理由は分かった…分かりたくなかったけど分かった。
モビルスーツの身体じゃなかったら吐いてる自信があるな。
「それではこれからの私達の目標について会議をします」
「マリアさん(マリオンちゃんの偽名ね)が傭兵なのは知ってますが他の方達と相談しなくてよろしいんですか」
「大丈夫です。これから仕事仲間になるということで言っておきますが私の仲間はブルーニーさんしかいません」
「え?確か貴方達は傭兵団だと」
「私とブルーニーさんだけと知られたら舐められる可能性が高いので組織としただけで本当は私達だけです」
「…補給は?」
「大丈夫です」
「戦闘は?」
「大丈夫です」
「メンテナンスは?」
「大丈夫です」
「…」
マリオンちゃん、大雑把過ぎる。
「それでは疑問にもお答えしたところで目標ですが、とりあえずお得意様であるジオンさんと協力しつつ会社の設立を目指します」
「会社ですか」
「私達だけなら前線を渡り歩くだけで生活できますが貴方達はそうじゃありません。将来結婚も視野にいれるなら経済基盤はしっかりさせなくては不幸になる可能性が高くなります」
「結婚なんて…」
「結婚か」
「はいはい、お惚気はいいですから話を進めますよ。まずはミデアの部品工場を目指します」
「狙いがピンポイント過ぎませんか」
「戦中、戦後共に必要なものとはなにか、それは物資の輸送手段です。輸送機のミデアは多少の仕様変更は確認してますがこのスペックを上回る輸送機を開発するという可能性は低いと
思われます。そして私達が現物を持ってるという強みが有ります。何より!私達が使ってますからあって困らない!」
「やはりメンテが必要なんじゃないですか」
「そうとも言います」
俺達のメンテは必要ないからマリオンちゃんの言ってることは見方によっては間違ってないんだけど、それはアイナは知らないから仕方ない。
「当面はシローさんとアイナさんにそれぞれミデアを操縦していただいて私達が鹵獲するモビルスーツの輸送を手伝いです。覚悟はできてますかシローさん」
「大丈夫だ。覚悟はしてる」
まぁ覚悟してなくてもアイナがいる限り選択肢はないだろうけどな。
アイナを捨てるぐらいなら最初から連れてこないはず…主人公だし大丈夫だろ。
「鹵獲したモビルスーツは…ジオンに売るか悩みますね」
「なぜですか!ジオンに雇われてるんでしょう!」
「それはそうですけど新型モビルスーツ2機とジム改2機合わせてこの値段ではちょっと…」
「た、確かにこれでは厳しいかもしれません」
ジオン派あるはずのアイナが折れました。
どうやら味方から見ても料金が割に合わないらしい。
いくら余裕で倒せると言っても高く買ってくれる方がいいに決まっている。
「という訳で連邦から連邦へという何とも言えない商売を始めようと思います」
「仕方ありませんね」
思った以上にアイナは現実主義者らしい。
シローも若干苦笑気味だ。
「この傭兵家業で貴方達二人を表に出す予定はありませんから注意してください。貴方達が本当に働くのは会社ができてからです。あ、そういえばシローさんの戸籍が新しく作られてる
のこちらを頭に入れておいてください」
「ああ、脱走兵じゃこれから大変だからか…この名前って…」
「いいでしょう。覚えやすくて」
いやいや、さすがにゴローは可哀想じゃね?もう変更できないけど。
アイナの方は正式に軍を退役してるんで戸籍偽装する必要はないが地球で活動するにはサハリンという家名が足を引っ張るかもしれない。
まだアイナは知らないが実はサハリン家の当主は時期が来ればアイナが引き継ぐことになっていたりするがその話はそのうち。
「ではとりあえずお二人の当面の仕事は…これです」
「これは…ペンキですか?」
「はい、ミデアが黄色いままですとジオンに間違われて攻撃されるかもしれませんから塗装してください」
「…」
「…」
「二人の初めての共同作業ですよ!頑張ってください!」
「…」
「…」
いやーミデアの数が増えると楽だね。
早速シーレーンの破壊を頼まれたから適当に輸送船は艦橋を潰して中身を奪ったり、護衛の水中型モビルスーツを鹵獲、不可能なら撃破したりしてウッハウハ。
もちろん最低限喰ってるけど燃料を増やそうとしない限りなかなかの量が確保できる。
輸送中、たまに連邦の航空機に追われて大変らしいけどな。
「それにしてもまさかジオンに食糧が一番高く売れるとは思いもしなかったな」
「そうですね。どうも食糧事情でもジオンは劣っているようです。元々コロニーは植民地みたいなものですから良い物は上流階級に流れてたようですから…ね」
ニュータイプじゃなくても分かる…今マリオンちゃんは怨念を放ってる。
「さて、在庫もだいぶ貯まったことだし連邦と渡りをつけますか」
「でもどうやって」
「そりゃもちろん———」
「正面から堂々とさ」
「ですよねー」
オーストラリアの連邦基地にやってまいりました。
今回は商談ではあるが既に随分と有名になった俺達、どうやってもビビられるので堂々と司令塔まで真っ直ぐ突破してビームライフルを突きつけて一言。
「今回は敵ではなく、商談を持ち掛けに来た。ここの責任者を出せ。そちらから攻撃し——ない限りは攻撃しない」
言葉が途切れたのは不意打ちにジム改が撃ってきたので返り討ちにしただけだ。
「私がここを預かるイーサン・ライヤーだ」
おや、シローの敵役さんじゃないですか。でも外道ではあるけどなかなか優秀な軍人ではあると思うぞ。
「一応確認するが俺の事は知っているか?」
「知らぬはずがない。インドネシアで指揮を執っていたのは私なのだからな」
やっぱりそうだったのか、08小隊がいたからそうだとは思ったけど。
「じゃあ俺の強さもわかってるわけだ。なら話は早い、俺はジオンではなく傭兵だ」
「なにぃ?!そんなバカな、そのモビルスーツは私達が開発したものを奪ったものだろう!そんなことが個人でできるわけが——」
「事実なんだから仕方ないだろ。それで本題だが……俺が鹵獲したオタクラのモビルスーツ……オタクラが買わないか?」
「は?」