第二百十一話
<サウス・バニング>
『あなたは、そこにいますか』
「こいつが……蒼い死神」
言ってる意味はわからないが、噂では普通のモビルスーツだという話だったが所詮噂でしかなかったようだ。
『いいえ、違います。私は死神の鎌、ナンバーズとも呼ばれる存在ですね』
律儀に答えてくれるが好転する要素はない。
死神の鎌と言えば最近では蒼い死神を上回る理不尽さで名を馳せている存在ではないか。
曰く、ビームをビームで相殺する。
曰く、被弾0。
曰く、完璧とも思えるコンビネーションで蹂躙する。
曰く、撃墜は万を超える。
そして1番問題なのはそんな存在が10人以上存在を確認していることだ。
「すぅ……はぁ……」
深呼吸をして精神を落ち着かせようとする。
幸い、突然目の前に現れた巨大なモビルアーマーに敵も膠着して攻撃してくる様子は——
「ウラキ!」
1機がこの状態を気にせずにライフルの狙いを定め、引き金を引くところが見えた。
間に合わん!と思った瞬間、爆発が起こった。
くそ、若い奴から死ぬなんてのは戦場ではよくあることだが……と自分の不甲斐なさや後悔などが押し寄せた……が目に入ってきたのはなぜか変わり無い姿のウラキが乗るフジだった。
なぜ?と思って周りを見ると、攻撃した敵の機体の腕が消し飛んでいる。
しかしあのタイミングで誰が……
『私が降伏勧告している最中に何やってるんですか』
ま、まさか今のがビーム同士が相殺した現象か?!
これは——
「勝てん、な。各員降伏しろ」
『了か——『うわあああああああああ!』——キース!止めろおぉ!』
他の奴らは白旗(空中のため土下座できない)を挙げたがキースは恐怖に耐えられなかったか?!ライフルを死神の鎌に向ける……が次の瞬間にはそのライフルが融解する。
『敵対行動ですね。ブルーニーさんがコレクションしたいと言っていたのですが残念です』
可動砲が一斉にキースに向く。
今度こそはあのような奇跡は——
『これだからあまちゃんは!!』
白旗を靡かせつつキースの前に盾になるように躍り出たのは……
「モンシア?!」
モビルスーツ1機程度が壁になっても意味はない。それはモンシアも分かっているだろう。
それがわかっていても動いてしまったんだろう——くっ、また俺は何もできないのか!!
可動砲に粒子の光が見えた次の瞬間、破砕音が響く。
しかし再び奇跡が起こった。
『ハァ……白旗を挙げているものを殺したとあってはナンバーズの名に傷がつきますからこの程度で許してあげます』
モンシアとキースのモビルスーツの頭と四肢は全て失うことになったがコクピットはだけは無事ということが確認できる。
もっとも手足や頭がなくなりバランスが保てず、地上に凄い勢いで落下中だが脱出装置があるから無事なはずだ。
噂に違わぬ寛容さ、軍同士の戦いではこうはいかない……それにしてもモビルスーツの四肢と頭を落としたのは狙ってのことなのか、それとも偶然の産物なのか。
『もちろん狙ったものですよ。この程度のことは当たり前ですね』
やはり降伏して正解だったか。
無事マリオンズがエゥーゴの強襲を阻止。
不死身の第四小隊とコウ・ウラキ、キース……フルネーム誰だっけ?バンデット・キース……は別人だっけ、確かサモナーさん……はただのキースか……チェック・キース?
「チャック・キースですね」
「おお、それだ」
それらがマリオンズに降伏したらしい。
キースが狂って攻撃仕掛けてきて、殺そうとしたらモンシアが庇うとか思いがけないイベントが起こり、マリオンズの感心から降伏を認めた。
「これで俺達に引き抜けたら文句ないんだけどなぁ」
「初期の方に原作キャラを殺したことを今になって後悔してましたしね」
いやー、こんなヌルゲーになる予定じゃなかったからな。
もっと殺伐とした殺し殺されな展開が多いと思ってたから容赦なく殺したけど、今なら原作キャラコレクションをしたかった。
よりにもよって自分出典の原作キャラをほとんど殺しちゃってたりしてる……今更だけど後悔してる。
あの頃は国を経営するなんて思ってなかったからなぁ。
原作キャラを生き残らせても俺達にとっての死亡フラグでしかなかった。
気まぐれでシロー達を助けたことによって変な方向に進むようになり、今では曹操の趣味のようなこともできるようになるとはねぇ。
まぁシャアとララァみたいに受け入れてない奴もいるけどね。
あいつらはマリオンちゃんズをビビりすぎるからディスってる……そう考えるとアムロは勝ち組か?
さて、仲間に入ってくれるかはともかく、現代で言うコンゴ民主共和国に位置する場所の暴動鎮圧中なわけだが。
「本当にアプサラスアーマーとアプサラスを外して正解だったな」
「ですね。次々襲ってくれて撃破できて効率的です」
やっぱり見た目が普通のモビルスーツだと、どんなに強くても繰り返せば殺せると思うんだろうね。
ドムIIとかドムIIとかドムIIとかがめっちゃ襲ってくる。
コンゴに入ってから合計して80機は撃墜している……てかドムII多すぎねぇか?
「まるで在庫処分のように売っているが……まさか、ここで来るか新作?」
「でもムーバブルフレームが導入されてない段階でそれほど脅威とは思えませんけどね。あ、そういえば例の不死身の第四小隊の方々がリック・ディアスの派生機を乗ってましたね」
それなんだけど、なんでシャアとララァはシュツルムディアスじゃなくてリック・ディアスのままなんだろ?
追従性はそんなに変わらないから?でもシャアは加速性とか機動性とか欲しいだろうに。
「少数精鋭による強襲部隊ですから最新機を回したんじゃないですか」
「まぁ、そう考えるのが自然か」
原作ではブレックスはシャアを後継者に指名するぐらい評価が高かったんだからディスってるわけではないだろう。
そういや、シャア、ララァvsシロッコの戦いはどうなったんだろ。
「シャアさん、ララァさんがマリオンズにビビって逃げたようですね。シロッコさんが追いかけられないほどの見事な逃げっぷりだったとか。その代わりシロッコさんが前線指揮をするようになり、ティターンズ有利が更に勢いがついた感じです」
このまま順当にティターンズ勝利で終わると俺達的にありがたいんだけど、なんともしっくり来ないよなぁ。
原作の激戦を知っている身としてはもっと……ねぇ?
まぁ、俺達を筆頭としてカミーユとファが完全に離脱しちゃってる段階で原作のような展開にならないのはわかってるんだけど。
「ブルーニーさん、こういう話をすると何か起こりそうですよ」
「世に言うフラグってやつだな」
さすがにほとんど宇宙を支配しているジオンがいる限りコロニーレーザーはないだろうから、多少の問題ならいいんだけどねぇ。
「ん?ブルーパプワから通信?」
『ブルーニー、大変なことになった。今エゥーゴがニューギニア特別地区に進軍中だ』
「……は?」
シーマ様が何か言ってるけどちょっと意味分かんない。
『以前繋がりがあった韓国に忍ばせていたようだねぇ。到着まで後1時間無い』
「ちょ、近いな。俺達飛ばしても間に合わないじゃん」
どんなに飛ばしても片道2時間はかかるからな。
『という訳で私達だけで防衛することになりそうだ』
まさか俺達の本拠地が攻撃されるとか思いもしなかったぜ。