第二百十八話
アプサラスIVの改装完了。
そしてほぼ同時にアッシマーが大量配備が始めた。
SFSでの対抗が難しいのでドップブースターで補っているのだが戦果は芳しくない。
ビームライフルの射程に差があることと旋回性能の違いで苦しめられている。
とりあえずジャミトフの護衛に改装済みのアプサラスIV、つまりマリオンズを付けとくことにした。ジャミトフが死ねば自動的に俺達も敗北なのだから当然の処置だ。
「そういえば珍しくナタリーさんから報告がありましたね」
ナタリー?誰だっけ?
「ハマーン様の子守役をしている人ですよ」
「ああ、あの」
三角関係ご苦労様な人だな。
思春期はいい加減難しい年頃だというのにはにゃーん様はニュータイプだから複雑怪奇だっただろうな。
で、そのナタリーからなんだって?
「量産型可変モビルスーツに関してなんですけど、アッシマーをムーバブルフレーム仕様で再設計が完了したので量産可能とのことです」
……随分早くね?
アッシマーを捕獲してから7日しか経ってないんだが、それにギニアスからの報告と随分違うぞ。
「どうやらナタリーさんはギニアスさんとは別に再設計していたようです。ギニアスさんは量より質に好む傾向がありますから……確認してみたところβタイプとアッシマーの融合したものを考えていたようです。ナタリーさんは市場の流れを読んで開発期間とコストを削減したものを重視したようですね」
またギニアスの暴走か?!
そういうのはアプサラスだけにしてもらいたいんだけど……しかし、ナタリーナイスだ。
もしかして、βタイプの開発に時間がかかったのってギニアスのせいか?
そういえばβタイプって元となったフジより高性能なのは……まさか?
「可能性はありますね。それでナタリーさんから送られてきた設計図はこちらになります」
アッシマーを解析した設計図と見比べてみる……うん、中身はほとんどアッシマーだな。
あれ、アッシマーってガンダリウムγじゃないのか?アナハイムが協力してる割りには……ああ、さすがにあれほど大型モビルスーツだとコスト的に痛いか。
うちで用いる予定の装甲材も同じチタン合金セラミック複合材か、生産性もだけどβタイプにガンダリウムγを回したせいで在庫がないからな。
それでもムーバブルフレーム化したお陰で軽量化されるようだし、円盤っぽさがなくなり戦闘機っぽくなってるのはいいな。
どうやらまだムーバブルフレームの技術は俺達とティターンズの独占状態が続いているようだ。
俺達はともかくティターンズはよく秘匿に成功しているな。正直ちょっと尊敬する。ただでさえアナハイムは強大な企業だ。
それなのにマリオンちゃんズのような特殊な存在を抜きに情報の秘匿できるなんて自信は俺にはない。
今まで俺達が飼い犬に手を噛まれることがなかったのはマリオンちゃんズという規格外のニュータイプ能力があるからだ。
「……これだけ仕事が早いならナタリーに専属の開発チームを作らせるか」
「それがいいと思います。ギニアスさんはエース機や新技術の開発設計、ナタリーさんは量産機や応用技術の開発設計を任せればいいかと」
今までこんな人材が埋もれてるとは思いもしなかった。
だってナタリーが出てくるC.D.A.若き彗星の肖像とか1回通してみただけだし……と言い訳してみる。
「何にしても可変モビルスーツの目処が立ったのは良いことだ。生産に取り掛かるにはいつ頃になる?」
「試作機は3日後には完成します。それ以降は試運転次第ですね」
早ければ10日ぐらいには生産を始められるかもしれないな。
……こう考えるとアッシマーを頭だけ変えて量産した方が良かったか?そうすれば試運転もそこそこで済ませれた。
問題はあの形か、色を変えても敵味方見間違いそうだよな。
同士討ちなんてされた日にはクレーム必至だからやっぱりこれでいいか。
なんだか最近暴動鎮圧に赴くとゲリラ達は地中に潜って出てこなくなってきた。
本格的に俺達が恐れられるようになったっぽいな。
暴徒が俺達に心理的圧力を掛けるために昼夜奇襲をしてもほぼ無傷(たまに被弾するが小破程度)で対処されたから怖気づいたのかな。
通信を使って挑発してみたがそれでも無反応でちょっと虚しい。
『もしかすると暴徒では私達への当て馬にすらならないとアナハイムが兵器の供給をやめたのかもしれません』
ありえるな。
アナハイムとしてはあまりに不甲斐ない負け方を繰り返されると会社の名前に傷を付けられ、信用問題になってくる。
暴徒に兵器を提供することには人種差別による黒人応護という名目が立てて大義を得た。しかしあまりに悲惨な戦果ではアナハイムの商品が欠陥品ではないかと疑われることになるだろう。
一応見せかけとはいえ善意で提供しているのに評判が下がるなんてデメリットが多すぎる。
「その代わりティターンズが苦戦中なんだがな」
R・ジャジャとアッシマーの登場、そしてアナハイムの強化サイボーグ(正式呼称と認定)の存在もあるが、どうやら暴徒もかなりの割合でそちらに合流しているようだ。
それでも俺達がいなくなれば各地域で暴動が起きるんだから潜在戦力がどれだけいるのか……考えると頭が痛い。
『ジャミトフさんの護衛に回してるマリオンズから撃墜機数200を突破したと報告がありましたね』
「……護衛だよな?」
『はい、護衛ですね』
マリオンズがアプサラスIVで前線に立っているなら圧倒的に少ない戦果だ。しかしマリオンズがしている今回の仕事は護衛、しかも組織のトップが乗る旗艦の護衛だ。
いくら前線が近いからと言って組織のトップが乗る旗艦近くまで200機も突破してきたというのは大問題だ。
『この劣勢はやはり強化サイボーグの存在が原因です。さすがハマーン様が若干苦戦しただけのことはあります』
「……よし、養殖ニュータイプを追加で売るか。エゥーゴが敵になったからな。遠慮も要らなくなったし、強化サイボーグなんてものまで出てきたんだしな。サイコタイプと抱合せで20人ぐらい売ればしばらくは保つだろ」
派遣するだけで良いように思ったけど、これからは今まで以上にティターンズと親密な関係になる。
ならばここはある程度サービスしないとな。
『わかりました。手配します。後ジオンと連邦にも打診しておきます』
それぞれの組織に同数売ることが契約で決まってるから当然だな。
クローン兵を売ることもチラッと考えたけど、強化サイボーグは元々普通の人間を科学的に強化した方向性こそ間違ってるが拡大解釈をすれば人工臓器の1種と言えなくもないため心理、道徳的ハードルが低い。
それに比べてクローン兵は宗教的にも心理、道徳、その他色々的にやばいぐらいハードルが高いので却下した。
やはり生産は稼いでこっそりするべきかな。生産さえ見つからなければ遺伝子を少しずつ突いてしまえば科学的には数が多い親戚としかわからないはず。
「それにしても……俺達、だんだん戦争から遠ざかってる気がするな」
『本当ですねぇ。食事には事欠きませんが娯楽がなくなるのは辛いです』
後30年ぐらいしたら本当に世界征服でも始めるかな?……でも世界征服が成功したら本当の意味で退屈になりそうだからやっぱ無しか。
むぅ、このまま平和が来ても退屈だし……せいぜいアナハイムと経済戦争するか、謀略で落とし合いするぐらいだからな。
原作のようなドロドロ戦争プリーズッ!