第二百二十話
「かの大企業アナハイム・エレクトロニクスさんがアポなしで、しかも他より安全とはいえ戦場にまで出向くとはよほどの要件なんだろうな。もしくはファ社長の首でも届けに来たか?」
ファの顔色が悪くなった……まぁそんな内容ではないだろうがな。
多分俺達の報復を恐れて慌てて抑えに来たんじゃないかと思う。
連邦から釘を刺されていると言っても特別地区が狙われた以上、何もしないわけにはいかない。
俺達の威信は力だ。このまま見過ごすと国家崩壊リーチだからな。
潰すわけにはいかんにしてもかなりのものを引き出さないと矛は収めれん。
「まずは突然の謁見に応えていただきありがとうございます。本日はブルーニー様、マリオン様に是非お願いがありまして伺わせて——」
「そういうのはいいからズバッと本題行こうぜ」
「……では、この戦いから引いていただけませんか」
「無理」
もちろん即答、契約守らない傭兵の結末とか身を滅ぼす以外ないっての。
それはこの……ロセット?……(ログ確認中)……あ、違うルセットか、もわかってるはず。
「そうですよね。ハァ、本社も無茶なこと言うんだから」
いきなり口調が崩れたな。
まさか本気で狙いがそれじゃないだろうな?さすがにそれが本気なら考えを改めないといけない。アナハイムが馬鹿であるという方向で。
「さて、表向きの会合は今ので終了しました。今度こそ本題です」
あんなものが表向きの理由にされると裏向きも安っぽさがあるように思える。
「まずはティターンズとエゥーゴの捕虜交換の仲介をしていただけないでしょうか」
「……その程度のことならアナハイムでもできるだろ」
「私達はティターンズとの関係があまりよろしくないため、ブルーニー様達にお願いしたいのです」
「対価は」
いつもやっていることとはいえ捕虜交換はとても面倒で手間がかかる。
しかも、今回は俺達が捕らえた捕虜ではないため余計に面倒だ。そんな役割を押し付けるんだから対価もしれ相応に用意されているはずだ。
「それは、転生者の情報などどうでしょうか」
「却下だ」
ふっ、間髪入れず断られて目をパチパチしているな。
それにしても転生者をしっている……ねぇ?
「ほら、言ったでしょう。彼らがそんな些細なことで取引に応じるわけがありません」
今まで黙っていたファがルセットに言って聞かせる。
「ファ、お前が教えたのか?」
「いえ、違います。さすがにこんなこと言っても信じてもらえませんし、言う意味もありません……当事者以外には」
「つまり、彼女も転生者であると?」
「はい」
また転生者か、これで5人目だな。
ああ、もしかしてだから口調を崩したのか?まぁ確かにあまり転生者同士で殺伐とした空気になってないし、なによりファという共通の繋がりがあるんだから安心感も多少はあるかも……か?
それにしても俺、フラウ、マリガン、恐らくだがバーニィ、そしてルセット……統一性がない。
こりゃランダムなのかね。ルセットなんてキャラ覚えてないし。
「ファさん!そんなに簡単にバラさないでください!」
「大丈夫ですよ。こういう場合はあえて先に情報を流せば恩が売れますから、ブルーニーさん達は本当に汚いやり方はしません」
「そうかもしれませんけど……」
本当に汚いやり方、ねぇ?海賊行為をしてるんだけどな。
「それでルセットとやらはオリキャラなのか?」
「違います!私は0083STARDUSTMEMORYで出てますから!」
「……?」
「わかってませんね?!原作の私はGP03のシステムエンジニアで、GP03をコウ・ウラキに渡して——」
「ああ、ナカトにパンッされた人か」
「その言い方はやめてください」
「じゃあダイコウジガイされた人ということで」
「それも嫌!」
そういや居たなぁ……それにしてもかなり無茶な性格してたよな。
軍規を破らせようと諭すとか、悪女の代表格である紫豚だけど、十分悪女だと思う。
それにしてもダイコウジガイがわかるってことはナデシコがわかるってことだよな……中の人は男だろうか?TSって気が狂いそうになったりしないのかね。
……あ、そういや俺なんてTSどころじゃないか。
「ふむ、情報はそれだけか?」
「ルセットさん」
「……ハァ、他にも確認しているわ。原作キャラをチェックしているなら多分気づいたでしょうけどバーナード・ワイズマンもそうね。他にもボブ・ロックなんてマニアックなキャラに転生した人もいるわ」
「ボブ・ロック?」
なんだ、そのモブっぽい名前は。
「DCのコロニーの落ちた地で……とガンダム戦記U.C.0081に出てくる整備士よ」
「ゲームの整備士って、マジでモブじゃないか……というかなんでそんなマイナーキャラだと判明してるのかが気になる」
「コレぐらい常識よ」
……ルセットはガノタのようだ。
「確認は取れてないけど可能性があるのはニエーバ、ヒュー・カーター、メッチャー・ムチャの3人よ」
「メッチャー・ムチャ以外は初耳だな」
確かメッチャー・ムチャはZZで出てきたヘタレ技術者だろ。
ギレンの野望だとエゥーゴのゴップ的な存在の。
「ヒュー・カーターもガンダム戦記U.C.0081に登場しているキャラよ。彼の場合経歴に上官を殴りつけて最前線に移動させられるというものがあるんだけど、それがなかったから違和感を覚えたから調べたら……って感じね」
あー、ガンダム戦記は未プレイだから仕方ないか。
一応買ってはいたけど時間がなくて積みゲーにしてた。
「メッチャー・ムチャはもう別人よ。技術士官ですらなく、今も前線で戦って戦線を支える名指揮官でヘンケンさんと並んでブレックスさんの両腕と呼ばれてるわ」
へー、そうなんだー。
よし、消すか。
「ニエーバは08小隊の登場人物でノリス・パッカードのグフカスタムを整備してた人ですが最初の人事でラサ基地所属になったのを断固拒否したことからわかりました……しかし、確認は取れないでしょう」
「なんでだ」
「彼はオデッサ防衛戦で戦死を確認されてます」
なるほど、そりゃ確認できんな。する必要もないけど。
原作通りに進めば死亡フラグだと思って抗った結果が戦死か……しかも原作通りに進んでいたら俺達に拾われてたかもしれないのに。
しっかし、よくここまで調べたな。ガノタだからって普通はできんぞ。
「まぁ、転生者ホイホイみたいな存在がいるから原作キャラを少しチェックすれば簡単だったわ」
「転生者ホイホイ?」
「貴方のことよ。貴方の」
「ああ、なるほど」
この世界で1番のイレギュラーは俺だもんな。
中の人が原作を知っている場合多少なりとも調べたくなるか。
……いや、ちょっと待てよ。別に原作キャラのままでも俺達のことを調べるだろ。
「それはそうかもしれません、でも大体の場合貴方を調べた後にほとんどの場合ニムバス・シュターゼンとユウ・カジマを調べ始めますから」
「主人公とそのライバルか……至極当然か」
「他にも何人かいるのですがそちらは確証らしい確証はありませんが……知りたいですか?」
「いや、いい。じゃあ捕虜交換の件だが……まぁ格安で請け負ってやるよ」
「わかりました。おいくらでしょうか?」
そうだな。これくらいかな?
「……どこが格安なんですか?!コロニー1基作れますよ!!」
「お、よくわかったな。サイド6にもう1基作りたくてな」
「真面目に交渉する気ありますか?」
「2割ぐらい」
肩をガックリ落とすルセット、いや〜こんな面倒な交渉まともにできんよ。
という訳でマハラジャ、マレーネ召喚。
後はよろしく。