第二百二十一話
「あれ?もう出番終わりじゃないの?」
「まだ話は半分しか終わっていません」
再びルセットに呼び出された。
本題は捕虜交換だけじゃなかったようだ。
「これはあくまで個人的な質問なんだけど……貴方達はこのままアナハイムと争うつもりですか」
「経営者たるもの争わずしてどうするんだ。それに争い事はアナハイムの十八番だろ」
アナハイムが起こした争い事に俺達は乗っかって勢力拡大しているだけだぞ。
今まで俺達が仕掛けた戦争なんて1度もない……あ、海賊ごっこがあったか。でもあれは意趣返しだからノーカンノーカン……今もやってるけど。
「その争い事を起こせるほどの大企業を敵に回し続けるということができるんですか」
「それはつまりアナハイムの傘下に入れと?」
マリオンちゃんが久しぶりに口を開く。
今回は目の前にいるのは敵だから注意を払ってもらえっているから静かなのだ。
警戒しているマリオンちゃんが近くにいれば安全だからな。
でも、ルセットの言い様にイラッとしてつい言葉を出してしまったのだろう。
「我が社としましてはそれが最良、妥協点としては軍事産業からの撤退をしていただきたい」
個人的な意見から企業の意向に変わってるぞ。
しかしなぁ。
「何を勘違いしているのか知らないが俺達は社会のルールに(一応)則って行動しているからアナハイムは存在していられるだぞ」
「……」
「わからないみたいだからハッキリ言うが、俺達が社会のルール、法律を守らずにアナハイムを排除しようと思えば24時間以内に可能なんだからな」
「は?」
理解が追いつかないらしい。でも事実なんだよな。
アプサラスIIIとIVで連邦の主要都市を焼いて回るのに12時間、これで連邦は機能を一時的に停止する。
ジオンとロシアは根回しでどうとでもなる。
そうなるとアナハイムを守る存在はいなくなりサイド6に駐留しているマリオンズ5人と防衛隊が月に侵攻。
「ほら、アナハイムを潰すぐらい訳ないだろ」
「そんなこと不可能よ……それではニューギニア特別地区が——」
「ニューギニア特別地区自体が俺達の玩具に過ぎないんだ。今度は世界という玩具に変わるだけだ」
そう、多少愛着があるとはいえニューギニア特別地区は玩具、もしくは遊び場に過ぎないし、守ることを考えなければ勝者になるのはそう難しいことではない。
「それに正攻法でも潰すことだって可能だぞ」
世界を動かしている上層部にマリオンちゃんズのヒールで永遠の若さと寿命(死ななければ)、健康を手に入ると聞かせてやれば大恐慌が起こるとわかっていてもアナハイムを切り捨てるだろう。
まぁ、これをやるとすごく面倒なことになるから最終手段だがな。
……ん?……ふむ、ここは1つ、手を打っておくのも有りか?
「ルセットもファも化粧で誤魔化しているが……肌荒れが酷いな。仕事のやり過ぎ何じゃないか」
「「突然失礼ね(です)!!」」
月育ちで地球の営業は辛いのよ。
マフティーを設立してから書類が減らないんです。
などとブツブツと呟く。
営業?と思って話を聞くとルセットは原作とは違いシステムエンジニアとしてではなく、営業をしているらしい。外回りご苦労さまです。
「さて、そんな君達にTENSEIショップ『マリオンニューギニア』がお送りするは究極のアンチエイジング!老若男女全ての方が歓喜!5秒で誰もが若返ったと実感!これを体感してしまうと2度と手放せないこと請け合い!」
「でも、お高いんでしょう?」
意外とノリがいいな、ルセット。
「そんな君達に朗報です!転生者の方なら今漏れ無く無料体験実施中!ただし守秘義務が課せられますのでご容赦ください。ちなみに漏らした場合——」
マリオンちゃんが何処からか玉を取り出し、軽くクシャッと潰してグニャグニャになったものをルセットに渡す。
受け取ったルセットは意味がわからず、少しの間色々な角度から見ていたが途中で何かに気づいたようで顔が青くなる。
まぁガンダリウムγより硬度が高くて加工が難しいと言われるルナチタニウム合金の玉を片手で握って潰されたら肝が冷えるよな。
アレが男の金……だったらと思うと前世が男だった俺でも股間がキュッとしてしまう。
ルセットとファの場合は頭蓋骨がああなるんだろうけどな。
「ちなみに拒否権はない」
「押し売り通販なんて詐欺ですよ」
それでも拒否権はない。
「では、レッツアイジング」
マリオンちゃんが手をニギニギさせながら近づくと2人はなぜか口角を引き攣らせる……笑顔の練習か?こんな状態でも努力を惜しまないとはナカナカヤルナー。
そして瞬く間に終了、2人は思ったほどリアクションがない。まだ自分の身体の変化を認識できてないのだろう。
5秒で実感というのはこういう時間も含めてのことだ。
「あれ、視界が低——声も高い?!」
「手が……ちっちゃい?」
こうして出来上がったのはロリロリ仕様(約8歳頃)のルセットとファだ。
「そういや、これって合法ロリなのか?違法ロリなのか?」
「どちらでしょうね。あの姿だとDNA鑑定でもしないと同一人物だとわかりませんから違法な気もしますがDNA鑑定すると合法ですし……」
いや、そこまで真剣に答えを求めてたわけじゃないんだけどな。
それにしても——
「若返らせすぎじゃね」
「ですがファさんは元のままでも若いのでこれぐらい若返らせた方が分かりやすいと思いまして」
そういやファさんは中の人の年齢が足されているから大人っぽさがあったが実年齢は20にもなってないんだよな。
部屋に置いてあるスタンドミラーを見て、現在の容姿年齢相応にはしゃいでいる2人を眺める。
俺自身が摩訶不思議な存在ではあるが、やはりマリオンちゃんの方が摩訶不思議だよなぁ。
「いえいえ、私もブルーニーさんの一部ですから」
ナチュラルに心を読んでいる当たりもな。
…………あれ?あの2人、なんで服着てるんだ?
元の服はいつの間にかハンガーでしっかり掛けられてるし。
「子供用服は従業員さん達の子供を預かってるのに必要で、ここにもストックしているんですよ」
いや、ここって……リリ丸だぞ?さすがに必要ないだろ。
『クローン兵には身体があまり成長しない個体もいますから』
なるほど、それならわからんでもない……か。
「ちなみに服を着せて、元の服を片付けたのは私ですよ」
だろうね。わかってたよ。でも全然見えなかったな。
……色々と残念だ。
10分もすれば落ち着いたのか、恥ずかしそうに元の座っていた場所に戻る。
あれだけテンションが高い状態を見られたら黒歴史確定だ。ちなみにしっかり録画してある。
「これは魔法か何かですか?まさか年齢詐称薬?」
ファはネギまもご存知のようだ。
もしかしてファさんもTSか?だってネギまの読者ってほとんど男だろ。(勝手な決め付け)
「そんな残念魔法アイテムじゃない。正真正銘文字通り若返りだ。ちゃんとこの世界でもある能力だ」
「……サイキッカー?!」
おお、最小限のヒントで良く辿りつけたな。さすがルセット、伊達にガノタしてない。
「これが……本当に?」
まさか永遠の若さなんて手に入るなんて宇宙世紀では思いもしなかっただろう。
宇宙世紀の終着点である∀のディアナですら人工睡眠を使ってたぐらいだし。
「さて、価格の方ですが、アナハイムのスパイとマフティー参加企業の技術でプライス——」
「「是非お願いします!!」」