第二百二十二話
そんなこんなでルセット(とおまけのファ)の取り込み完了。
さすがに8歳のままにすると大変なことになるので希望通りの年齢に若返らせて2人は帰っていった。
ちなみに24時間以内なら元の年齢に戻せるが、それを過ぎると戻せなくなる。
ヒールは若返らせることはできても老いさせることはできないんだよ。『老い』に関しては回復の範疇に入らないからだろうな。
24時間を過ぎると若返る前の状態に戻せないのは魂の記憶が消えるからとか過ごしてきた時間がなくなるとか色々言われてるが結局はわからないままだし、恐らく解明されることもないだろう。
とりあえず、ルセットから忠誠の証としてR・ジャジャ、アッシマー、ノイエ・ジールの設計図を受け取った。
他はともかくノイエ・ジールなんてなかなかの献上品だ。
スペックがアプサラスIVほどではないにしても発想の刺激にはなるはず……うちでノイエ・ジールが使われることはまずないのは間違いないしなぁ。ギニアス的な意味で
そしてノイエ・ジールの設計図を手に入れたことによりわかったことがある。
注目すべきはジオンがノイエ・ジールの設計図をアナハイムに渡したことだ。つまり新しい決戦兵器の開発が終了している可能性が高いということだ。
そして次に注目すべきはアナハイムにIフィールド技術が渡ったことだな。
ああ、Iフィールドと言えば2秒以内にアッシマーの大型ビームライフルを10発以上当てれば貫通することが判明した。
ということはアプサラスIVとの相性はいいということになる。80門の可動砲を一斉射撃で消し炭間違いない。
どうも原作でIフィールドが主流にならなかった理由はビームライフルの出力が上がりすぎてサイズに見合った効果が期待できないからというのが俺の予想だ。
Iフィールドの出力を上げれば大型化は免れず、大型化すれば的が大きい分だけ命中しやすいんだからバランスが難しいのは間違いない。
「それにしても転生者は思った以上に多いことはわかったけど、目立った活躍をしている人間は少ないな」
「ブルーニーさんのような例外を除けば普通の人間なんですからアニメやマンガの主人公のような活躍が出来る人は限られますよ。むしろ政治家として大成したフラウさんやキシリアさんの側近までのし上がったマリガンさん、企業を起こした上に束ねるファさんがすごいんです」
「原作を知ってる程度で成り上がれるなんてそれこそラノベやweb小説の中だけだよな」
中世ヨーロッパの世界観が好きなのは未来知識でチートするため、なら近未来的な世界観だったら?逆チート、凡人を下回る可能性大だよなぁ。
ファ達の話では2歳ぐらいから意識があったらしいから勤勉ならチートになれる可能性があるか……友達は居なさそうだけど。
「とりあえず、脅威となりそうな転生者がいない追加で調べるようにマハラジャやマレーネに頼むか」
「マハラジャさん達は秘密を知らないままですけど大丈夫でしょうか?」
……そうだな。近いうちバラすか。
なんで突然こんなに俺達の情報公開を始めたかというと、ふと思ったんだ。
マリオンちゃんズが触れるだけで若返り、実質不老になる……なんて情報が拡散したところで誰が信じるんだ?と。
実際体験したファ達は信じるしかないだろうが(それでも人によっては薬を盛られて幻覚を見せられたんだとか言いそうだけど)見ることも体験することもない第3者が信じることはまずない。
なら、必要な人材にある程度漏らすことぐらいはいいだろうと踏んだわけだ。
まぁ20年ぐらい経てばブルーパプワの幹部が若々しいままでいるため疑われるかもしれないが20年経てばマリオンズは20人増え、今のニューギニア特別地区よりも充実したものとなっているだろうから問題はない……はずだ。
そしてヒール以外の能力で隠すべきはマリオンズの存在ぐらいだ。
もっともそれを隠す理由が『敵がいなくなったら困るから』なんていう娯楽要素でしかない。
それでもあまり知られると困るから幹部と永遠に確保したい人材ぐらいにしか教えるつもりがないがな。
……あれ?ファとルセットってどっちにも入らないな……ああ、同郷のよしみボーナスだったな。
さて、そろそろ12月に入ろうとしているのだが戦局は大体ティターンズ有利で推移している。
量産型βの活躍が目覚ましく、1000機ほど納入したにも関わらず更に発注が来ているほどだ。
ただ、なぜか突然ティターンズ、エゥーゴ、暴動代表(そんな奴いたんだね)の間でクリスマス休戦をするという会合がされたらしい。
おい、休戦なんてせず早く畳み掛けろよ!とツッコんだ俺は悪くない。しかもクリスマス当日だけかと思ったら1週間とか舐めてんのか。
「その上、俺達は休み無しときた」
「私達の使い方を心得てるということですよ」
暴動共のストッパーとして俺達はアフリカ中央より南の治安維持の仕事を継続しないといけない。
「どうやら延々と戦い続けると被害ばかりが大きくなるので休戦明けに最終決戦をすることにしたそうです」
「それで、この流れ的に考えて俺達は……」
「不参戦ですね」
「だよねぇ」
俺達が参加したら最終決戦という名の大虐殺になっちゃうもんなぁ。
「ただし死神の衣の参加は認められるようですよ」
「よし、俺だけでも参加しよう!」
「「「ダメです!」」」
圧倒的多数で否決されました。
まぁ確かにマリオンちゃんズに守られてたって自覚はあるから無理に押し通すことはできない。
舐めプもほどほどに、か。
「……なら俺達ここに居なくても良くないか?」
「そうですね。暴動もほとんど沈静化してますし……どうしたんですか?」
ふっふっふ、ならば!!
「海賊ごっこに勤しむまでよ!」
ということで宇宙にやってまいりました。
ちなみに俺達はアフリカから離れたら違約金が発生するからアリバイも作ってるぜ。
忘れてるかもしれないが、分身はマリオンちゃんズだけの能力じゃない。
俺自身も本体と分体に分かれることが可能なのだ。
宇宙に上がってきた方法はアプサラスアーマーを生成して熱圏あたりまで上昇、それからアプサラスアーマーは分体に任せ、俺本体はレインボーゴーストとなって大気圏外へ。
これで俺達のアリバイは完璧だ!
「それに休戦明けに決戦ということはアナハイムから大量の物資が輸送されるはず。ということは——」
「鴨が葱を背負って来ます!」
その通りだ。
ちなみに俺達は今、SDサイズでダミー隕石の中にいる。
まさかSDサイズ、つまり人サイズ大の隕石の中に俺達が隠れているとは思いもしないだろう。
「ブルーニーさんは割りとせこいですよね」
「効率重視なだけだ」
アフリカへの突入ポイントを監視すること12時間ほどするとアナハイムの大船団が見えてくる。
「ん?なんだか船がところどころ損傷してるな」
「もしかして私達と同じように狙った人達がいるんでしょうか」
海賊はかなり減ってきているのでこれほど大規模の船団を襲えるほどの勢力はいないはずだが。
まさかティターンズか?
そうか、すっかり忘れてたが宇宙で戦うこともあるか。ほとんどジオンの勢力下だからすっかり忘れてた。
しかしサイド7やルナツーからアナハイムの月からの軌道まで手を出すのは面倒そうだよなぁ。
「……あ、もしかして私達のサイド6が利用されてるのかもしれません。ティターンズらしき艦に補給してる記録があります」
……結局俺達が原因だったのか。