第二百二十四話
新型Iフィールドドムを捕獲したのはいいが喰う前に解析する必要がある。
というわけでサイド6の近くまで行ったわけだがブルーディスティニー状態でもレインボーゴースト状態でもサイド6に入ると、万が一気づかれてアリバイの矛盾とかレインボーゴーストを匿ってるなんてことになると面倒だから適当に放流してマリオンズに回収を頼んだ。
そういえばサイド6といえばニューギニア特別地区に攻撃を仕掛けてきたくせにこっちには何もしてこなかったな。
「アプサラスIVが3機配備されてますから対象から外したんでしょう」
サイド6の重要度は実のところニューギニア特別地区より上だからしっかり防衛戦力を常駐させてたかいがあったか。
ちなみにこの場合マリオンズが3人ではなく、アプサラスIVが3機ね。
サイド6にマリオンズ自体は4人配備してあるけどアプサラスIVは3機、足りない理由はアプサラスシリーズは図体がデカイから維持費もそれ相応に掛かるんで大量配備はなかなか難しい。
現在全シリーズ(III、IV、VI)合わせて20機も維持するのは大変だ。
もっとも通常のモビルスーツと比較すると断然アプサラスの方が安いんだけど……問題はアプサラスとマリオンちゃんズは核兵器と同じような扱いになりつつある。
抑止力にはなるけど実戦投入する機会が少なく、そうなると出番がないのに大量生産すると維持費が無駄に掛かる。
そんなことからマリオンちゃんへの全機配備は難しい。
サイコタイプでも一騎当千だけど、アプサラスIVだと一騎当万を超えて億ぐらいの活躍するからなぁ。
「やっぱり最低限マリオンズにはアプサラス全機配備すべきか」
「βタイプと量産型βを加えるとと維持費が大変なことになりますよ」
βタイプも量産型βも軍費の増大に拍車を掛けてるのは事実だけど、用途が国防だけでなく傭兵稼業に使えるから多少維持費が掛かっても元は取れるから問題ない……はずだ。
できれば量産型βを主力としたいがβタイプとの戦力比が卓越したパイロットなら10:1と酷い差がある。
さすがカミーユが作ったZガンダム、バイオセンサーは未搭載にしてもこの高性能っぷり、エース機としては火力を除くと重力下ではサイコタイプを上回る。
パイロットの操縦技術次第で使い分けることになるだろう……と言いたいが1年以内に死神の衣の半数はβタイプを使うに値する技量が身につく、って報告なんだよなぁ。
「βタイプを500機とか消耗する分にはいいけど維持するのはちょっと遠慮願いたいな」
「年間でアプサラス2機生産する以上の費用ですからね」
おーぅ、共通規格部品で作ってるのになんつー維持費……まぁその共通規格部品がほとんど使えないからこの維持費なわけだが。
「さて、せっかくサイド6に来たから月見へと向かうか」
「お月様は地球から見てる方が綺麗ですけどね。近くで見ると……」
人間の欲にまみれた姿がよく見えるから風流じゃないよなぁ。
「まぁ風流ではないけど月見団子ぐらいは喰えるだろ」
「ほとんどジャージャー麺ですけどね」
…………
そして1週間。
2回ほど大船団を狩ると以前のように船団を分散して行うようになった。
ティターンズの海賊部隊に狩られはしているものの俺達が与える被害より少なくなっているのは間違いない。
ジャージャー麺を喰い飽きてきたところだったので丁度いい……決して強がってるわけじゃない。
それに分散して運ぶようになったということは時間がかかるようになったということだから立派な成果といえる。
そしてちびちび海賊していた今日、クリスマス休戦が決定した。
ちなみに休戦期間は20日……って長すぎるだろ?!
「ティターンズが提案して、そのまま通ったようですね」
まぁ優勢なのはティターンズだから要求が通っても当然といえば当然、しかもエゥーゴや暴動側からすれば軍の再編を行える時間は多い方がいいはずだ。
「だから気になる。20日も待つ必要があったのか?」
「エゥーゴを徹底的に叩いておくべきだと踏んだんでしょう。それに暴動側への謀略でもあると思います」
「その心は?」
「暴動は一時的な感情で起こります。そこへ平和な時間が多少なりとも生まれれば冷静に考える余裕が生まれます」
そして暴動を抜ける、か。
なるほど、余裕を与えて心を攻めるか、ジャミトフも黒いな。でも、こういう黒さならあってもいいぞ。
「さて、ここからが本番か」
「エゥーゴと暴動側に渡す物資が増大するでしょうからね」
「と言うか暴動を増長させる兵器売買って法律で取り締まれないのかね?」
「それは言っちゃ駄目ですよ。万が一それが通ったとしても私達もロシアに随分売っちゃってますからまとめて戦犯です」
それもそうか。
本番と言ってもやることは変わらない。
アフリカの治安維持は相変わらず平穏で、たまに攻撃を仕掛けてくる無謀な奴がいるが所詮他人の力を借りた自殺に過ぎないので俺達が帰る理由も特になく、今まで通り海賊でサーチ・アンド・デストロイ。
調子の乗ってガンガン狩ってたら……
「ジオンが出てきちゃったよ」
「宇宙の治安が乱れると責められるのはジオンですから当然ですね」
しかも新型モビルスーツまで投入するなんて、海賊狩りにしては力入れすぎ……でもないか。
航路を守るのは大事なことだよな。
「それにしても、ここに来てザク系列か」
サイズが普通のモビルスーツと同じという違いがあるがザクIIIかな?
このあたりの違いはテクノロジーの進み具合よりジオンという国が存在することが起因するんだろうな。
ネオ・ジオン(アクシズとも)よりも国力がはるかにあり、人口的にも余裕があるから汎用モビルスーツに重火力を採用しなかったんだろう。
汎用モビルスーツを大型化重火力化なんてしてたらいい的にしかならない。
「それでどうするんですか?食べてみたい気もしますけど、ここで逃げればジオンとアナハイムの疑心暗鬼に追い込む……ことはできないかもしれませんが疑わせることぐらいはできるかもしれませんよ」
「ふむ……今は逃げとくか」
あれだけ生産されてればそのうち喰う機会はあるだろう。
ここはジオンに花を持たせるか……まぁ逃げて振り切られることも不名誉だろうけど、そこは堪えてもらおう。
それにしてもザクIIIということはドーベン・ウルフは主力機にならない……ん?ドーベン・ウルフはガンダムMk-Vが発展したものだからジオンは開発できないのか?
確か連邦の技術士が亡命したからできたものだから、亡命がなくなれば開発されない。
それともサイコミュ好きのキシリア派の流れを汲むネオ・ジオンだからドーベン・ウルフを採用したがジオン的にはザクIIIの方が魅力的だったか。
「何にしても情報が必要だな」
「準サイコミュですか、他で使われたら私達のアドバンテージを少し失うことになりますね」
一般兵がオールレンジ攻撃とかやめて欲しいものだ。
ニュータイプが行うオールレンジ攻撃は正確な分だけヤザンみたいに腕が良ければ躱せるが一般兵が行うオールレンジ攻撃は恐らく酷いものだろう。その酷い射撃が避け辛い。
そういう意味では散弾のような規則正しい面攻撃も躱しやすい部類になる。
まぁ、そんなことを思うのは俺達と死神の陽炎だけだろうけどな。