第二百二十五話
改めて思う。
SDサイズの隕石(デブリ)バルーン超便利。
ジオンの海賊狩りから逃げるのに使ってるけど絶対見つからない。
まぁ、誰もモビルスーツが人間サイズまで小さくなってるとは思わないし、わかっていたとしても宇宙で見つけるのは至難の業だ。
ただし、進路方向を気をつけないとデブリ粉砕用機銃の餌食になる可能性があるから注意。
そんなわけで突然現れては消えたり、与えたダメージが時間が経つと無くなることからで巷では本当に幽霊じゃないか、なんて噂されているっぽい。
ビーム撃つ幽霊って……物騒すぎるな。こんな幽霊が現実にいたら全人類が怖がるの間違いなし……全人類が滅ぶ方が早い気もするけど。
「それにしてもアナハイムの生産力は侮りがたし」
いや、わかってはいたんだよ?
でもさぁ……クリスマス休戦期間も半分過ぎて、ジオンの目を逃れ、小さい船団を細々と狩っていたが……モビルスーツの補填の速さはわかる。モビルスーツは大量生産が前提で作られてるからな。
でも破壊工作の対象はモビルスーツじゃなくて船団、つまり船も破壊してるわけなんだが……それを不自由なく補填する生産力はすごいの一言だ。
「私達が作ったフィッシュボーンではなくてコストも手間も掛かるコロンブス級の親戚が主流ですからねぇ。造船所をどれだけあるんでしょうか」
やっぱり乗組員は殺した方がいいか?
抵抗できない人間を殺すなんてことはあまりしたくないんだけど……でも食材を多く確保しようとするとどうしても捕虜は多くなるからなぁ。
レインボーゴーストの悪評を高めすぎて死神の陽炎に討伐依頼出されても困るし。
「そろそろ潮時かと思って帰って来たわけだ」
「……随分静かだと思ったらそんなことしてたんですか」
呆れるアイナ、マハラジャ、マレーネ、そしてやっぱりね的な表情のシーマ様。
そう、今回は完全に独断の行動だったんだよ。
まぁレインボーゴーストが出たって噂になった段階でわかってただろうけどな。
「Iフィールドを搭載していたドムを捕獲したことはいいのですが……また予算が——」
「開発費は抑えられますが実用化されればまた新たな予算が——」
揃って似たようなことを呟いているカーン親子。
いやいや、Iフィールドが実用化されたとは言ってもサイズの関係上モビルスーツには搭載できないし、アプサラスシリーズは積載量がギリギリだから同じく搭載できないって。
ノイエ・ジールのIフィールド発生装置よりは小型化されて効率が良くされているがジェネレータが必要な分だけ簡易Iフィールドより重くて出力が必要なのだ。
そしてせっかくノイエ・ジールの設計図を手に入れたのにほとんど無駄になったという事実。
ジオンの精神、哀れなり。
「ノイエ・ジールの有線クローアームは有線可動砲の改良に使えそうだぞ。まだまだ時間がかかるけどビームサーベルが出せるようになるかもしれない」
ギニアスはとうとうアプサラスに近接戦闘をさせる気だぞ。
どこまで行くアプサラス。
良かったな、ジオンの精神!汚名返上だ!俺が勝手に汚名を着せたんだけど気にしない。
「そういえばニューギニア特別地区に特に異変がなくてよかったよかった」
エゥーゴの強襲以来、海上で決着が付いたため本土は攻撃を受けていないと報告はもらっていたが実際にニューギニア特別地区の様子を見て、確かにそれほど変化はないようだ。
むちゃくちゃな大義名分だったが、それを掲げて戦争を始めたのだから民衆へ不安を与えるのではないかと心配してたんだけど。
「そういった輩が居たのは確かです。実際表面化する前にこちらで処理しようと思ったのですが……隠密に狩られましたね」
隠密って。
これは治安維持を行っているマリオンズのことだな。
実はニューギニア特別地区ががら空きだった……みたいなこと言ったけど、マリオンズはいたんだよ。
もっともアプサラスIVはなかったけどな。
ニューギニア特別地区にいるマリオンズは治安維持や破壊工作防止のため常駐しているのは3人、幹部の護衛に1〜3人ぐらいいる。
そしてアプサラスIVはなかったけどサイコタイプはあった……んだけど、特別地区の力を魅せつけたかったから不参加だったわけだ。
まぁ内部に不穏な動きがないか調べさせたり、幹部を狙った暗殺を警戒したりで忙しかったこともあるがな。
事実として爆弾テロを目論んだ者が捕縛されている……入国したとたんに捕縛して自供も取っている。
本当はアナハイムが送ってきた奴らって証拠は揃ってるんだけど、エゥーゴからの工作員ということで落ち着けた。
アナハイムからの工作員だと民衆にバレればアナハイムを追及せざるを得ない、そうなるとどこにも良いことではないための妥協点だ。
エゥーゴが大損している気がするがスケープゴートだから仕方ない。
「そういえば以前頼まれていましたメッチャー・ムチャのデータを入手しました。他の3名に関してはまだです」
渡された資料を見ると……本当に原作との違いがありすぎるだろ。
俺がブルーディスティニーに憑依する前からこちらに存在していたようで一週間戦争当時から前線で活躍するが、これは何処の派閥にも入らなかった結果前線で使い潰される……ように思えたが中の人はかなりの天才だったらしく、潰されるどころか武功を次々上げてしまって油断ならない発言力を持ち始めた。
そして栄転というなの左遷でしばらく前線から離されていたので俺達は気づかなかったようだ。
何で共感したのかは不明だがエゥーゴに参加して今も活躍中、密かにヘンケンより階級が上とは恐れ入る。
しかも暴徒を指揮してティターンズと渡り合っているのは彼らしい。
「こいつは早めに片付けとくべきか」
政治家まで上りつめたフラウとは違った意味で厄介な存在だ。……まぁフラウの方が厄介さは断然上だけどな。
あまり放置していると足元を救われるかもしれん。
「そういえばマリオンズから捕虜の尋問中に性格が変わっちゃった人がいるんですけど……大丈夫かなぁ」
「尋問で性格が変わるものなのか?」
「いつもは従順な態度を取るようになっていくのが自然なんだけど、尋問をするまでもなくかなり怯えていて、尋問を始めると今までろくに口を開こうとはしなかったのですが突然何かが切れたように暴れ始めたので〆て黙らせたんですけどそれからは終始怯えていたようですけど、今ではチンピラみたいに口が悪いとか」
「ふーん」
まぁ気が触れることぐらい結構稀にあるさ。
「確かチャック・キースって人だったと思います」
まさかの原作キャラ。
確か、捕虜にした時もマリオンズにビビりすぎて攻撃したとか言ってたっけ。
「しかも何気にニュータイプに覚醒しちゃってるんですよね」
マジか。
まぁ、ニュータイプの性質上心が弱い方がなりやすい傾向にあるのは間違いないが……ノミの心臓過ぎるだろ。
……また黒いGががががが